この愛を終わらせてくれないか

"愛する地獄"と"愛される地獄" #1巻応援

この愛を終わらせてくれないか 筒井いつき
sogor25
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高校2年生の八河柚には"神様"がいる。現役高校生の速水瞬、現役高校生女優である彼女は柚の唯一無二の存在である。実は2人はクラスメイトなのだが、柚がスクールカーストの最下層にいる一方、瞬は仕事の合間の限られた登校日にもカースト上位の世木幸子らとともに過ごしている。だから柚にとって瞬は"近くて遠い神様"。そんな柚が、瞬と最も仲良く接している幸子と最悪の邂逅を果たすところから物語が始まる。 柚は幸子に対し日頃から抱いていた怨嗟の念をぶつけるが、そんな柚に対し幸子"誰かに愛される地獄"を教えてやろうかと凄む。その後、幸子との邂逅を契機として柚は瞬との距離を近くするのだが、瞬を神様と半ば崇めるように想い、またそれに対応して自らを卑下するため、自身の瞬に対する感情に苦悩することになる。 柚の"愛する地獄"と幸子の"愛される地獄"、そして作中ではまだ明確にされていない瞬の感情。3人の想いが複雑に混じり合って起こる化学反応、その先にあるのは幸子の言うように"地獄"なのだろうか。 最初この作品を読んだ時、公式でも"ラブストーリー"と銘打たれているにも拘らず、描かれているものが恋愛感情とは微妙に違うんじゃないかという感覚を覚えた。これに似た感覚は「アタシのセンパイ【電子版特典付】」を読んだ時にも感じたが、もしかしたらこの物語も同じようなベクトルに収束していくのではないかと思うと黒い期待が膨らんでしまう、そんな作品。 1巻まで読了

寄生獣

誰もが認める名作「寄生獣」

寄生獣 岩明均
名無し

人に寄生し、その体を乗っ取り、人間を捕食していく謎の生物…これだけ言うとホラーの趣がありますが、これはヒューマンドラマです。 テーマも環境問題がどうのと言う、今の時代ではありふれた陳腐な物に感じられるかも知れませんが、逆にそれが寄生獣(パラサイト)の「自然の摂理」的な物を感じさせます。 パラサイトには悪意があるわけではなく、単に「この種を食い殺せ」と言う本能に従っているだけなので、弱肉強食の摂理に従えば、彼らは普通に生きているだけと言うことになります。 つまり彼らも自然の一部なのです。 それが環境を破壊している人間へのカウンターとしての生物なのかが分からないため、パラサイト当人達も「我々は何故こうして生きているのか」と考察する者もおり、中々深いです。 結局、パラサイトの中で一番の能力を持ち、リーダー格である「後藤」は、環境破壊の権化である、ゴミ捨て場の毒を主人公に打ち込まれてトドメを刺されますが、これも皮肉が効いています。 主人公に寄生し損ね、共同生活を送ることになる「ミギー」にも妙な愛嬌があり、明言はしませんが、最後彼らがどうなるかは涙無しには見れないかもしれません。 名言や名シーンの多い漫画でもあるので、それだけでも読んで損はしないでしょう。 作者の岩明氏の絵も、人間と人間で無い何者かの違いがきちんとわかる辺り凄いです。 特別綺麗とか特別美しいとかそういうのではありませんが、生きた眼とそうでない眼の描写が抜群に上手い。 視線だけで「コイツはヤバイ」とか「コイツ人間じゃねぇ」と言うのを分からせるのは類い希なるセンスだと思います。