あらすじ夏の甲子園準決勝・花湧東(はなわきひがし)戦!! 両チーム決定機を逃し、延長戦へ突入! ピンチとチャンスが目まぐるしく入れ替わる展開と夏の日差しで選手たちの疲労はピークに。そして次第に主砲の1発への期待が高まる。トクさんの想いを背負う七嶋(ななしま)と東北の悲願を背負う大月(おおつき)。どちらにも勝ってほしいと4万大観衆が見守る中、雌雄を決する時がくる!! 目指せ! 1千万円で高校野球の頂点!! クレバー球児の熱血甲子園ロード、完結!!!
『砂の栄冠』をもう一周してしまったのですが、終始泣き腫らしもいいところ、とくに夏の甲子園からエンディングにかけては目が充血しすぎてコマを追うこともできやしません。 しかし、どちらかといえば三田紀房という漫画家は『ドラゴン桜』に代表されるように、どこかケチで現実主義的な物語を得意とするひとでしょう。夢と希望の対極にあるといいますか、ひたすら合理的で実践的な行為を選択するといいますか、こんなものに感動していいんですかと思わなくもない。 それで今回また最後まで読んで気づいたんですけども、作中人物が実践する合理性とは別に意外と演出がクサいんですね、大袈裟ともいえるかもしれません。試合でもいきなりワケのわからない毒蜘蛛がでてきたり、バイクにまたがった不良がでてきたり、神がでてきたり、ガーソが拘縛された地蔵としてでてきたり、登場人物たちは合理的で小賢しいんですけど、なんかとにかく演出に気合いが入っている。冷静に読んでみるとバカバカしいと思われても仕方ないと思えるぐらい気合いが入っているんですね。 そして極めつけには、エンディングで、亡くなったはずのトクさんがいつものベンチに座っている。そのトクさんに七嶋が言葉を発する。もうここで涙腺は崩壊、甲子園の魔者のごとく誰の手にも負えません。なにせあの合理的で実践的な七嶋がそこにはいるはずのないトクさんに声をかけるのですから。