あらすじ

ついに始まった夏の甲子園準決勝!! 相手は最強のライバル・大月翔真率いる花湧東。いきなり150キロ台を連発する大月に対して、七嶋も左投げによって身に着けたバランス感覚のもとキレのある投球で一歩も譲らない。果たして今大会最高の投手戦を制するのはどちらか!? 更に場外戦もヒートアップ!? 日米の記者が高校野球について国を懸けた大舌戦!!
砂の栄冠 1巻

1千万円で甲子園を買え!『ドラゴン桜』の作者が描く、完璧に新しい高校野球ストーリー!――創立100年目での甲子園初出場を目指し地区大会決勝に挑む、埼玉の名門・県立樫野(かしの)高校。3年生の不動のエース・中村(なかむら)に圧し掛かる、とてつもなく大きな重圧。2年生のショート・七嶋(ななしま)は、中村に、かける言葉がない。涙も涸れる甲子園ロードが、今スタートする!

砂の栄冠 2巻

邪悪な心がどんどん広がっていってる!「甲子園に出るまで使いません」と宣言し、トクさんから託された1千万円をグラウンドに埋めた新主将・七嶋(ななしま)。だが、舌の根の乾かぬうちに掘り返して、甲子園へ向かった。1千万円が、七嶋を黒くする!?大好評につき、巻末企画「(熱闘裏)甲子園研究所」再登場!

砂の栄冠 3巻

良い子の特権「21世紀枠」でセンバツ出場だ!?1千万円を手に入れ、黒い七嶋(ななしま)がセンバツを狙う!――甲子園マニアの目利き・滝本(たきもと)さんのアドバイスを受け、ガーソ監督に見切りをつけた七嶋。良心を封印しカワイイ球児を演じセンバツ初出場に邁進だ!だが、掘り返した金・10万円を母に見つかってしまった!!マニアにバカうけ!巻末企画「甲子園研究所~21世紀枠編~」付き!

砂の栄冠(4)

「いい子ちゃん」を演じてセンバツ21世紀枠GETだ!――勝てば21世紀枠でのセンバツ初出場がほぼ確定する秋季県大会準決勝。相手は、夏の予選決勝で敗れた強豪私立・浦和秀学(うらわしゅうがく)だ。樫野(かしの)は1回表に首尾よく1点を先制したが、ドライチ確実のエース・榎戸(えのきど)と4番・郷原(ごうはら)はケタ外れの選手!「おおきく猫かぶって作戦」発動だ!!巻末企画「甲子園研究所~極細眉毛編~」付き!

砂の栄冠(5)

エンドランが「金返せ」と詰め寄る!伝説のノックマンが立ち上がる!?ガーソがドヤ顔をキメる!?――強豪私立・浦和秀学(うわらしゅうがく)に勝ち、秋季関東大会に進出した樫野(かしの)高校。だが1回戦でボロ負けすれば、21世紀枠でのセンバツ初出場が危うくなる!?ボロボロの守備を改善するため、伝説のノックマンを3ヵ月三百万円で雇い「利き腕とは逆特訓」を開始!ところが最悪の事態が……?巻末企画『甲子園研究所~強豪私立編~』付き!

砂の栄冠(6)

勝って歴史に名を刻め!センバツへ向けての最終関門・秋の関東大会1回戦。相手は、高校野球界の頂点と言われる超強豪私立・東横浜(トーヨコ)高校。エンドランがスタンドで見守る!ノックマンがスタンドから指示を出す!ガーソがベンチで固まる!?1対1の同点で迎えた8回表。「殿、ご乱心」で、まさかの捕手交代!どうする七嶋(ななしま)!?巻末企画「甲子園研究所~強豪私立に勝つには?~」付き!

砂の栄冠(7)

センバツの切符が賭かった秋の関東大会・東横(トーヨコ)戦。延長15回表二死一塁、突如訪れた魔の時間!七嶋(ななしま)は4番・瀬良(せら)に痛恨の一打を喰らってしまう。樫野(かしの)、三度目の1点ビハインド、絶体絶命!だが、勝って歴史に名を刻め!!さあ、みんなで黒くなってセンバツへ行くぞ!!!

砂の栄冠(8)

センバツ初戦は優勝候補筆頭ナニワのヤンチャ集団・大阪杏蔭(きょういん)だ!昨夏はスタンドで滝本(たきもと)さんから甲子園の勝ち方を学んだ。伝説のノックマンの3カ月300万円也の神業ノックを浴びた。トランペットを餌に唐木(からき)にオリジナル応援曲を作らせた。トクさんの1000万円のおかげで万全の準備で臨めた樫野(かしの)だが……それでも、甲子園の魔物に魅入られてしまう!

砂の栄冠(9)

作れ、宇宙空間!歩け、男の花道!!――21世紀枠で初の甲子園、センバツ出場を決めた樫野(かしの)。初戦は優勝候補筆頭・大阪杏蔭(きょういん)!樫野1点ビハインドのまま迎えた6回表。二死満塁で杏蔭の4番・権上が放った大飛球をセンター志熊(しぐま)がスーパーキャッチし甲子園に宇宙空間が登場!入院生活を送るトクさんへ、1000万円のお礼は勝利しかない!!そしてガーソは甲子園の男の花道を歩けるのか!?

砂の栄冠(10)

21世紀枠で初の甲子園、センバツ出場を決めた樫野(かしの)。優勝候補筆頭・大阪杏蔭(きょういん)戦との初戦で大活躍した七嶋(ななしま)が甲子園のスターになった!そして、2回戦の相手は横綱・帝城(ていじょう)。1回表に七嶋のタイムリーで2点先制し裏の守備も七嶋が3人でピシャリとおさえ樫野の勝ちムード演出大成功……!!と、思ったらプルプルガーソが今にもやらかしそう!勝てばベスト8進出の一戦はハプニングの連続!

砂の栄冠(11)

21世紀枠で初の甲子園、センバツ出場を決めた樫野(かしの)。初戦・大阪杏蔭(おおさかきょういん)、2回戦・帝城(ていじょう)と強豪との対決に勝利しベスト8進出!!そして、投打に大活躍した七嶋(ななしま)は甲子園のスターになった!肉食系マネージャー・荒川(あらかわ)が水着で迫ってきたりその荒川のお母さんが甲子園に来ちゃったり七嶋の周りもなんだか騒がしくなってきた!!ベスト4をかけた対戦相手は狼集団・兼六(けんろく)学館!!猫かぶり・樫野高校がんばるんだニャ!!!

砂の栄冠(12)

21世紀枠で初の甲子園、センバツ出場を決めた樫野(かしの)。七嶋(ななしま)の投打に亘る大活躍でついにベスト4進出を決める!しかし、準々決勝のラストバッターの打球処理で七嶋が右肋骨を骨折してしまう!準決勝、絶体絶命の樫野にベンチの七嶋が立ち上がる!まさか、まさかの、サウスポー登板!?お金も久しぶりに掘り起こしちゃいます!

砂の栄冠(13)

21世紀枠で初の甲子園、センバツ出場を決めた樫野。七嶋の投打にわたる大活躍でついにベスト4進出を決める!しかし、準々決勝のラストバッターの打球処理で七嶋が右肋骨を骨折してしまう!準決勝当日、テーピングの魔術師の治療を受け1回ノーアウトからベンチの七嶋がサウスポーで緊急登板!!ピンチの連続をくぐりぬけ目指すは、甲子園の伝説!!巻末企画「甲子園研究所~逆投げ~」あります。

砂の栄冠(14)

21世紀枠で初の甲子園、センバツ出場を決めた樫野。準決勝・苫大駒小牧戦サウスポー七嶋の快投にベンチや球場は大盛り上がり!甲子園を味方につけ、8点ビハインドから怒涛の反撃をみせる!

砂の栄冠(15)

夏の甲子園を目指したい=太眉派センバツ、4強で大満足=細眉派!?眉毛戦争勃発!!――センバツが終わり再始動の樫野(かしの)野球部。期待のルーキーも加わり、夏に向けて再始動!しかし、一部の部員になにやら異変が……これが噂の燃え尽き症候群!?さらに新主将・グンと七嶋(ななしま)の不仲からチームを巻き込んだ細眉派と太眉派の対立に発展!どうなる七嶋!?巻末企画「甲子園研究所~燃え尽き症候群~」収録。

砂の栄冠(16)

七嶋(ななしま)と並ぶ超高校級ピッチャーの花湧東(はなわきひがし)・大月(おおつき)と東国(とうごく)・才賀(さいが)がついに登場!!オーラも黒さもケタ違い!?――最後の夏はもう目前!樫野(かしの)野球部の貧打を打開するために頼もしい助っ人がサッカー界から登場!!課題山積みの樫野を引っ張る七嶋。なりふり構わず、カネを惜しまず、ひた走る!!

砂の栄冠(17)

夏の甲子園初出場を目指し、七嶋(ななしま)最後の夏が始まった!初戦から春ベスト4の強豪・修望学園が相手の樫野(かしの)、未だ低迷するチームにとって七嶋が唯一の頼み!……だが、絶不調で立ち上がりは最悪……。調整の失敗が噂されるなか、ガーソや部員たちは七嶋に責任をなすりつけ始める!……もしかして、樫野の夏は、七嶋の夏は意外にあっさり終わっちゃう!?

砂の栄冠(18)

夏の甲子園出場に向けてなんとか勝ち続ける樫野(かしの)野球部!しかし、右肩上がりに調子をあげていた七嶋(ななしま)に突如、試練が降りかかる……。意気消沈したエースと共に樫野の夏は終わりを迎えてしまうのか!?

砂の栄冠(19)

夏の甲子園を懸けた埼玉県予選決勝浦和秀学戦クライマックス!!味方の奮闘が、七嶋の心に火をつける!追い上げる樫野の勢いが勝るか、絶対王者・浦秀が意地を見せるか?はたして埼玉の栄冠を手にして夏の甲子園の切符を掴むのは!?

砂の栄冠(20)

夏の甲子園の初戦を突破した樫野(かしの)!!次なる相手は恩師・ノックマン率いる下五島(しもごとう)高校!!試合は七嶋(ななしま)が左投げを選択したことで一気に波乱の展開へ!!冴えるノックマン!!キレるガーソ!!グレる七嶋!?直接対決の行方は如何に!!

砂の栄冠(21)

夏の甲子園3回戦、下五島(しもごとう)戦は最終局面へ!! 1点をもぎ取り、逃げ切りたいノックマンに七嶋(ななしま)は個の力で食い下がる!! 試合は延長までもつれ込みベンチも含めた総力戦!! さあ甲子園の神様は、どちらに微笑む!?

砂の栄冠(22)

ノックマン率いる下五島(しもごとう)高校を倒した樫野(かしの)の次なる相手は岡山の錦道(きんどう)高校!! 強打のチームに対し、七嶋(ななしま)は、なんと左投げで2連戦目のマウンドへ。なにか秘策が?と思ったら初回から打たれまくって圧倒言う間に大量失点!! もしかして、もしかして……バッシングされ過ぎてただムキになっちゃっただけ?? このまま珍名揃いの錦道に手も足も出ずあっけなく負けてしまうのか!? 誰もが戸惑う甲子園準々決勝・七嶋ワンマンショー開演!

砂の栄冠(23)

ついに始まった夏の甲子園準決勝!! 相手は最強のライバル・大月翔真率いる花湧東。いきなり150キロ台を連発する大月に対して、七嶋も左投げによって身に着けたバランス感覚のもとキレのある投球で一歩も譲らない。果たして今大会最高の投手戦を制するのはどちらか!? 更に場外戦もヒートアップ!? 日米の記者が高校野球について国を懸けた大舌戦!!

砂の栄冠(24)

怒涛の三ヵ月連続刊行第1弾!!! 夏の甲子園準決勝・花湧東(はなわきひがし)戦!! 世代最強を懸けた七嶋(ななしま)と大月(おおつき)による圧巻の投手戦は続くがチーム力の差で花湧東が試合を有利に進め終盤戦へ! パーフェクトピッチング目前の大月に沸く甲子園。諦めムード漂い始めた樫野(かしの)陣営だが、七嶋は勝負を諦めていなかった! そして樫野の命運は、七嶋と大月の最後になるかもしれない直接対決に託された!!

砂の栄冠(25)

夏の甲子園準決勝・花湧東(はなわきひがし)戦!! 両チーム決定機を逃し、延長戦へ突入! ピンチとチャンスが目まぐるしく入れ替わる展開と夏の日差しで選手たちの疲労はピークに。そして次第に主砲の1発への期待が高まる。トクさんの想いを背負う七嶋(ななしま)と東北の悲願を背負う大月(おおつき)。どちらにも勝ってほしいと4万大観衆が見守る中、雌雄を決する時がくる!! 目指せ! 1千万円で高校野球の頂点!! クレバー球児の熱血甲子園ロード、完結!!!

砂の栄冠

野球マンガが好きすぎて…

砂の栄冠 三田紀房
影絵が趣味
影絵が趣味

『砂の栄冠』をもう一周してしまったのですが、終始泣き腫らしもいいところ、とくに夏の甲子園からエンディングにかけては目が充血しすぎてコマを追うこともできやしません。 しかし、どちらかといえば三田紀房という漫画家は『ドラゴン桜』に代表されるように、どこかケチで現実主義的な物語を得意とするひとでしょう。夢と希望の対極にあるといいますか、ひたすら合理的で実践的な行為を選択するといいますか、こんなものに感動していいんですかと思わなくもない。 それで今回また最後まで読んで気づいたんですけども、作中人物が実践する合理性とは別に意外と演出がクサいんですね、大袈裟ともいえるかもしれません。試合でもいきなりワケのわからない毒蜘蛛がでてきたり、バイクにまたがった不良がでてきたり、神がでてきたり、ガーソが拘縛された地蔵としてでてきたり、登場人物たちは合理的で小賢しいんですけど、なんかとにかく演出に気合いが入っている。冷静に読んでみるとバカバカしいと思われても仕方ないと思えるぐらい気合いが入っているんですね。 そして極めつけには、エンディングで、亡くなったはずのトクさんがいつものベンチに座っている。そのトクさんに七嶋が言葉を発する。もうここで涙腺は崩壊、甲子園の魔者のごとく誰の手にも負えません。なにせあの合理的で実践的な七嶋がそこにはいるはずのないトクさんに声をかけるのですから。

砂の栄冠

甲子園に受け継がれるアウトローの系譜

砂の栄冠 三田紀房
影絵が趣味
影絵が趣味

さて、春の選抜高校野球大会が今日から始まりましたが、アウトローを制するものが甲子園を制するという物言いを皆さんはご存知でしょうか。すなわち、各地区の代表が集う甲子園といえども、高校生レベルの打者では、外角の低めギリギリのコースにピシャリと決められると攻略は難しいということです。まさしくアウトローを制して甲子園を制覇した実在の人物に早稲田実業の斎藤佑樹選手がいます。いつもここぞの時にはいちばん練習を積み重ねてきて自信のあったアウトローの直球を放っていたといいます。甲子園の決勝で最後の打者でありライバルの田中将大を三振に切ったのもアウトローの直球だったとか。 そしてここ、三田紀房の高校野球マンガにもアウトローの直球を武器にする投手が登場します。そもそも三田紀房というひとは生粋のスーパースターを描くようなタイプのマンガ家ではなく『砂の栄冠』の七嶋のような選手を主人公に据えるのは稀であり、そうというよりはむしろ、あくまでも凡人の域は抜き出ないけれどスポーツなり、受験なり、ある定められたルール内の隙を突いて「人生では負けても、試合では勝利する」といった、ある意味では小賢しく、ある意味では賢明な、物語の展開を得意とするひとでしょう。 三田紀房には『砂の栄冠』の以前に『甲子園へ行こう!』という高校野球マンガがあり、その主人公、鎌倉西高校の四ノ宮がまさしく小賢しくも賢明なピッチャーとして描かれています。彼もまた高校生レベルの打者では外角低めの攻略は難しいとの理由からアウトローの練習に励みます。そして、やはり、『砂の栄冠』にもアウトローの系譜は受け継がれている。ノックマンに率いられた下五島高校の下手投げエースの本多がまさしくそれでしょう。 けっして素材そのものには恵まれなくても、小賢しさと賢明さをもってどうにか立ち回ることができるのが高校野球という舞台、こうした選手たちが才能溢れる屈強な選手たちの足元を掬うことができるからこそ、高校野球は面白い。イチローが引退会見で語っていた「メジャーは頭を使わなくなってきている、日本は日本の野球を貫いてほしい」という言葉が今更ながら身に染みてきます。