あらすじ

「俺は赤木しげるとして勝ち、負けたいのだ…」偶発的に起きたトラブルにより、赤木は敗北を認め、席を立った。自らの信念を貫き通すため。
天(1) 天和通りの快男児

顔に無数の傷をもつ男――天。見かけの豪放さとは違い彼の打つマージャンは繊細で思慮深い。権謀術数の卓上に彼の不敵な微笑が浮かぶ。ある日、なじみの雀荘のピンチを聞きつけた天はその店へとおもむく。しかしそこにいたのは、まだあどけなさの残る若者ひろゆきであった。

天(2) 天和通りの快男児

卓上の張りつめた虚虚実実の闘い。敵の裏の裏を読み、またその先を推理する。全身を鋭利な刃物のようにして考え抜く。顔に多くの傷をもつ男――天。彼のマージャンは至高の闘牌。代打ち勝負に身を投じたひろゆきであったが惨敗。交替で入った天が仇をとるも、伝説の打ち手・赤木の登場により、天は苦戦を強いられる。

天(3) 天和通りの快男児

赤木との対決は天が辛くも勝利をおさめた。一方、ひろゆきは大阪の地で麻雀東西対抗戦の話を聞き、東軍のリーダーに会うのだが、そこにいたのは…!?

天(4) 天和通りの快男児

天は西軍との対抗戦に備え、メンバーを捜すも苦戦。やっとの思いで赤木を始め強力な八人をそろえた。「くそみたいな配牌が役満をテンパったような気分だ…」

天(5) 天和通りの快男児

東西対抗の初戦。西の実力者・僧我のまえに手も足もでない東軍であったが、そこに赤木が名乗りをあげた。東西頂上決戦が早くも勃発!敵、味方、絡み合った卓上に妙手、巧手、鬼手が飛び交う。その手練手管の自刃の中、天の機略いかに!?

天(6) 天和通りの快男児

残り決勝へのイスはあと二つとなった。西軍は天の決勝進出を阻止すべく、天対策の切り札・尾神をぶつける。尾神の目的はただひとつ。天を倒す、それのみ…深海の怪物のように不気味に襲いかかる!!

天(7) 天和通りの快男児

最後の決勝進出者をかけた半荘。ひろゆきの鷲尾へのアシストぶりに、誰もが東軍の作戦を確信していた。ただ一人ひろゆきをのぞいて…。絶体絶命のひろゆきの奇策いかに!?無法ぎりぎりの攻防!!東西対決、水火も辞さず!!

天(8) 天和通りの快男児

必死の思いで決勝へと進んだひろゆきであったが、西軍の格好の的にされてしまう。そんな中、銀次は必殺のガン牌で西の頭・原田をあと一歩まで追いつめる。

天(9) 天和通りの快男児

点棒がなくなった者から脱落というルールの中で、ひろゆきは東軍の足を引っ張り始める。しかし、極限状態をむかえたひろゆきは打ち手としてついに開眼する。西も東も智力、体力、精神力、限界の闘い!!もはや理では凌ぎきれない。生き残るためには切っ先勝負!!

天(10) 天和通りの快男児

「俺は赤木しげるとして勝ち、負けたいのだ…」偶発的に起きたトラブルにより、赤木は敗北を認め、席を立った。自らの信念を貫き通すため。

天(11) 天和通りの快男児

クリア麻雀の肝、三暗刻をアガり、勝負を優位に進める東軍であったが、次第に勝負は均衡する。そんな中、勝負を決める手を天がツモるのだが…。東西対決決勝戦。勝ち残った四人は天、原田、僧我、ひろゆき。四人はまさに天運と地運を総動員して戦う。

天(12) 天和通りの快男児

天のアガリが勝利と敗北の両方の条件を満たしたことにより、勝負はつかず。そこで原田は二人麻雀を提案し、天に最終決着をつきつける。

天(13) 天和通りの快男児

依然、展開は原田優位のままであったが、ここにきて天にテンパイが入る。アガリ牌を見抜かれないよう絶好のタンキまちにした大三元!果たして…!?

天(14) 天和通りの快男児

逆転手をつぶされた天の耳に終了を告げる非情のベルが鳴る。祈るような気持ちでとった配牌は最悪。一方、原田はイーシャンテンをむかえていた。

天(15) 天和通りの快男児

最終局面、先にテンパイを宣言したのは天だった。天と原田の二人の戦いは東西対抗という枠を越えていよいよ決着のときを迎える。天と原田にとって、ここまでの戦いの意味を問う最後の一局。原田有利のまま進むが、苦しさは同じ。可能性を信じ、最後の最後まで和了に向かう!

天(16) 天和通りの快男児

アカギ死す!赤木しげる逝去の突然の報は東西決戦の歴戦の戦士たちを驚かせ、嘆かせた。が、赤木はまだ生きている。病に冒された赤木の選んだ道は、自らの命を絶つことだった!!赤木の死生観いかに!?

天(17) 天和通りの快男児

「死は怖くなんかない」「あったかい人間はあったかく死んでいける」自ら命を断つ決心をした赤木しげるはそう語る。それでもなお、死を思いとどまらせようと、かつて仲間たちは翻意を促すが…!!赤木vs僧我!!最後の戦いか!?お互いの命を賭けたナイン勝負!!

天(18) 天和通りの快男児

自らの命を断つことで自分の生に決着をつけようとする赤木。それを思いとどまらせようと、かつての仲間たちが必死に説得を続ける。銀次、原田、僧我、…ひろゆきもまた条理と愛を持って翻意を促す。そして…最後の面会人は天!!

天

福本先生の魅力と成長が詰まった代表作

天 福本伸行
完兀
完兀

「初期の作品にはその人の要素が全て詰め込まれている」なんて話を聞いたことがある。 反例がいくらでも出てくる主張だが、比較的合致する例だってある。福本先生の場合、この「天」が合致するだろう。 人情話、ピカレスクロマン、極限勝負下の心理描写、緻密な勝負を構成する理による駆け引き、勝負を制する理の守破離、そして福本先生による人生哲学… 面白いと評される福本先生の要素が、ほぼ全て詰め込まれていると思われる。欠けているのは敗者の悲惨な末路描写と格闘描写ぐらいだろうか(ただしバイオレンスシーンなら天にもある)。 成長も詰め込まれている。絵の成長、演出の成長、話の構成の成長も魅力的なキャラ描写の成長も全てある。初期~中期の福本先生と共にあった漫画なんだからそれは当然なわけだが… そういった点で、天を軸に他の同時期作品と並読するのも面白い。 ただし、葬式編からは並読はできない。読んでいて涙がぼろぼろ出てしまうあの最終章に、横槍は禁物だ。       この漫画には、私がどうしても取り上げたくなる一節がある。 あまり顧みられることのない、ともすればあまり触れないでおこうみたいな風潮もみられる最初期赤木の、印象的なセリフだ。 私はそれを、作者による自己言及も含んだ創作論だと勝手に思い込んでいる。 というわけで、独断と偏見に基づいて私的解釈によるセリフ改変を傲慢にも以下に記す。     『お前この世で一番うまいもの何だか知ってるか? たとえば漫画だ…世の中には頓狂な奴がいてよ こんなラチのあかねえ娯楽に… 自分の分こえた代価 人生さえ賭けちまう奴もいるのさ…… まあそんな奴だから… 頭は悪いんだけど…… 描きたい気持ちはスゲェーもんだ… 後のない…勝負処での大事な一作に バカはバカなりに必死さ… 持てる全知全能をかけて描き上げる 決断して そして躊躇して それでもやっぱりこれしかない……て そりゃもうほとんど 自分の魂を切るように描く漫画があるんだよ その魂の乗った漫画 そういう漫画を読むこと…… それはまるで人の心を喰らうようだ… この世じゃ人の心が一番うまいんだ……』

天

が…ダメッ…!

天 福本伸行
酒チャビン
酒チャビン

個人的には福本先生の最高傑作だと思います。それまであまり売れてなかったらしいのですが、この作品でブレイクを果たしたそうですね。さもありなん。傑作です。 序盤は今の作風からするとなぜなのかというありがちな人情ものなのです。「しろうとのたけし軍団相手に本気でホームランかっとばしちゃうヤクルトの大杉です」などギャグも豊富に出てきます。 ですが、2〜3巻くらいから初期カイジとかアカギっぽいビリビリした勝負ものの感じが出てきます。 最後16〜18巻はなんと麻雀なし(注:近代麻雀掲載マンガです)。が…そこが特に素晴らしいです。アカギの某選択をめぐって「生きるとは」というテーマを深く抉ります。メッセージ性もあり、すごくよかったと思います。 ちなみに「アカギ」という作品は本作からのスピンオフです。本作では50過ぎの一線からは退いたジジイで、初登場時は目の下のたるみもやばいのですが、切れ味は衰えてません。「オレのアンコはそこにある」など名言も多数です。 もしカイジしか読んだことないよって方は、絶対に読んだ方がいいと思います。ハンチョウしか読んだことないよって方は、やめた方が無難だと思います。