かつみ

高校生になった『おらが村』のかつみ

かつみ
hysysk
hysysk
1年以上前

大好きな作品『おらが村』のかつみが主人公で、田舎の暮らしに憧れて東京から森田家にやってきた北川との生活が中心。北川が村の生活と農業に馴染んでいく過程で、田舎の良いところも悪いところも見えてくる。人間模様だけでなく、生活の知恵や習慣、野生の動植物の解説も描かれており、資料としても非常に素晴らしい。これを読めば片栗粉の作り方まで分かる。 当時の恋愛観や結婚観は今と違って非常に厳しく、自分は嫌だが、tinderとかで「ピピー!可愛すぎ警察の者です!」みたいな文章を送ってる人には最低3回くらい読み返して欲しい。 最後が『おらが村』に出てきた政太郎の言葉で締められていて良かった。

ドナー法―ある臓器移植コーディネーターの記録―

肉親の臓器で生きる他人へ向ける感情

ドナー法―ある臓器移植コーディネーターの記録―
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前

『1718』のいなずまたかしさんの新作は、医療監修が入った「臓器移植コーディネーター」という職種(日本では70人程度)を描くマンガです。 医療AIの技術が発達した近未来的な世界観で、「全国民に死亡時の臓器提供が義務付けられている」という法が制定されているという設定で描かれています。しかし、多少の違いはあれど実質的にはほぼ現代劇です。 1巻で描かれるのは ・幼い娘が脳死して受け入れられないまま臓器提供をし受給者に会う権利を行使する両親 ・70代の母親に養われる50歳になったニートの女性 ・就職で不利になる臓器移植受給者の若者 ・自分を捨てた父親から臓器提供を受けて生きながらえることになる青年 といったエピソード。どのお話も現代社会に存在する問題を端的かつ的確に切り取っており、人によっては自らに近しいテーマのお話に強く共感できることでしょう。 主人公のコーディネーター・立浪は、臓器提供という1分1秒を争う仕事を完遂するために時に非人道的に見える言動で反感を買いますが、ある意味ではそうして憎まれ役になることも死に行く者や遺族へのサポートになっている面もあるだろうなと感じます。 また、臓器提供というテーマについても改めて考えさせられました。他人の一部を体に宿して生きるということが持つ意味。提供する者、受給して生きていく者、それぞれの側面から生まれるドラマは重厚で深いです。 実写ドラマ化されても良い作品です。

じゃあまたね 完全版

清原なつの先生の猫マンガであり自伝マンガでもある

じゃあまたね 完全版
かしこ
かしこ
1年以上前

金沢大学の薬学部に通いながら少女マンガにSFを描いていた清原なつの先生。『じゃあまたね 完全版』は、編集者さんからの「猫のマンガ描きませんか?」という提案をきっかけに描かれたそうで、猫のタイガーを飼い始めた少女時代からタイガーが亡くなる大学卒業までを回想した自伝マンガになっています。 読んでみてオリジナリティに溢れた作品がどうして生み出されたのか少しだけ分かったような気がしました。りぼんでデビューしたのが偶然だったのには驚いたし、ペンネームにまつわるエピソードも面白かったです。就職ではなくマンガ家を専業に選ばれた理由も先生らしいと思いました。 大学生の頃にはすでに花岡ちゃんシリーズも描き始めていたそうで、これから先の清原なつの先生のまんが道も知りたい!というのが正直なところですが、タイガーが亡くなってから40年ペットロスだと語られていたので、これはこれで完結するべき作品なのでしょう。でも気が向いたらぜひ続きを描いてくださいね! ちなみに紙版の単行本には収めきれなかった複数のエピソードが電子版には収録されています。なので電子版はタイトルが『完全版』となっています。

夕凪の街 桜の国

ポスト「はだしのゲン」

夕凪の街 桜の国
なかやま
なかやま
1年以上前

学校に置いてあるマンガは人生に大きく影響を与えると思う 『マンガで作ろうマンバ学級文庫』学校に置きたいマンガを語るマンバ読書会開催! ということで真っ先にこの作品が思い浮かびました。 第二次世界大戦後の広島の被爆者とその家族をテーマとした作品です。 すべての地域・年代かはわかりませんが、私の学校には中沢啓治先生の「はだしのゲン」が学級文庫に常備されており、それこそ読み漁ったものです。 その影響は凄まじく、戦争の悲惨さ無残さが私の中に深く刻まれました。 ただ、一部のニュースや投書を見ると「はだしのゲン」は「内容がグロすぎる」という意見があるようです。 (私はそのグロさも含めて知る必要がある事実として捉えていますが、この意見に対して否定はしません) この作品はこうの史代先生の優しいタッチもあり、表現こそマイルドではありますが読後の心に刻まれる気持ちはゲン同様だと思います 是非学級文庫へ

今際の国のアリス

鬼滅ブームに思う

今際の国のアリス
mampuku
mampuku
1年以上前

「『鬼滅の刃』は難しいテーマを背負わず純粋な娯楽としての少年漫画だから万人にウケている」と何かのウェブ記事で読みました。確かにそうだと思います。面白いし、感動や勇気を与えてくれる、娯楽の本分を全うした作品だと思います。ですが敢えて厳しい言い方をすれば「消費されて終わり」なんですよね。 今際の国のアリスという作品は、ある意味カウンターのような、またある意味では一歩先を見据えたような、そんな漫画でした。少年漫画のサイズと値段で販売され、尚かつ一見して「デスゲームもの」という消費型の娯楽の最たるジャンルの皮を被っているので、いざ読んでみるとその想像を遥かに超える懐の深さに面食らうかと思います。手に汗握る心理戦やアクション、出会いと別れを経て成長していく主人公。心理学に精神医学、経済学、人文科学。死生観、命の価値。余りに予測不能な曇天返し。 「凄いものを読んだでしまったぞ」といてもたってもいられなくなるw 思考停止した娯楽を貪る社会への痛烈な問いかけのようでもあり、全てを肯定しているかのようでもあり。読むと世界のことをもっと知りたくなる、そんな本です。

僕は兄になりたかった

慈愛の兄、依存の弟、そして愛

僕は兄になりたかった
名無し
1年以上前

すっごく沁みる話だった気がすると、ふんわり思い出したもののタイトルや作者名まで思い出せず、もやもやしていたところ、マンバの「思い出せないマンガ」のコーナーのおかげで再び読むことができました。 ありがとうございます。 さちこ=瀬川環 と忘れないようにしておきます。 瀬川環さんの作品はちょうど全部読んでてどれもガツンと来て好きだったのでここが繋がって嬉しいです。 http://www.moae.jp/comic/chibasho_bokuwaanininaritakatta/1 引きこもりで依存気質の弟と、弟が書く小説の面白さを知っていてあたたかく見守る優しい兄。 そんなある日、弟の小説に出版社から声がかかり…。 そんな兄弟の話。 優しいまなざしの先にいて兄に依存していた弟、話題の渦中で兄にも変化があり、失いたくなかったばかりに。 優しさだけが正義ではなく、突き放すのも愛だ、とくるかと思ったら上をいかれた気分でした。 そしていつまでも兄の目線は変わらず。 いいラストでした!

さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」

いのちだいじに。

さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前

朝の唱和、厳しいノルマ、パワハラ、恫喝、休日出勤、飛ぶ同僚……典型的なブラック企業で働く契約社員の水城リコ(25)の退職から始まる物語です。限界を迎えつつあったリコが、「退職代行」を生業とする弁護士・不知火に出逢うことで人生に転機が訪れます。 はたから見れば絶対に辞めた方がいい、と思える状況でも追い詰められた当人はまともな思考力も奪われ、どうやっても抜け出せない状況にあると思わされてしまうのがブラックな環境の恐ろしいところです。そんな時に利用できる「退職代行」というサービスの存在を知っているだけでも人生は大きく変わることでしょう。 「耐えていればいずれ報われるなんて考えは…自分を殺すことになる」 という作中のセリフの通りです。 この作品が面白いと思ったのは、ブラック企業から抜け出したことで開放感・幸福感に満ち溢れたヒロインがかつての自分と同じような苦しみを背負っている人に無自覚的にマウントを取ってしまうシーン。人間の業を感じさせられました。 幕間には、監修を務める実際に退職代行を行っている女性弁護士のコラムもあり、参考になりつつ仕事とは、雇用とはと考えさせられます。 真面目な部分も面白いですが、美人でデキるお姉さんの不知火さんは格好よくて惚れてしまいますし、ゆるふわに見えてバリバリに仕事ができるスーパー事務員の恋川さんなどキャラも立っています。 追い詰められる前に読みたい、あるいは周りに追い詰められていそうな人がいるならその人に差し出したい一冊です。

古見さんは、コミュ症です。

コミュ症もここまでいくと才能に思える

古見さんは、コミュ症です。
名無し
1年以上前

タイトルからもわかるように主人公の女の子はコミュ障なのですが、みんなから崇拝されているという設定が斬新で面白かったです。 そのせいでたまたま隣の席になった只野君は波風を立てない暮らしを目指していたのにいきなり周りから嫉妬の目で見られるところも楽しかったです。 隣の席ということもあり少しずつちょっとした古見さんの態度から、コミュ障じゃないかと感じ取り、偶然二人きりになった教室の黒板を使って筆談をして親交をふかめる見開きのシーンには何とも言えない感動があります。 その後も、幼馴染などいろいろな性格というか特技をもったキャラが出てきてテンポもよくて面白いです。

すみっこの空さん

小1と亀、対話と鮮やかな発想の書

すみっこの空さん
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前

亀のプラトンは主人と引っ越したギリシャで、師たるソクラテスと出会う。主人を神さまと呼ぶソクラテス先生と、日々を共にしながら交わす対話は、プラトンを哲学の深淵へと誘うのでした……。 ☆☆☆☆☆ という感じのプラトン(亀)のモノローグで進む本作。とにかく驚く程の「鮮やかさ」に満ちている。 ソクラテス先生と呼ばれるのは、小1の少女・空さん。彼女の発想には、軽やかな飛躍と本質的な物の捉え方がある一方で、常に人を肯定し人の背を押す優しさがある。触れた瞬間、迷える人の目の前がパッと開ける様な、鮮やかな言葉。 その鮮やかさは、都会で負けて帰郷して来た主人、田舎から飛び出したい女子高生といった、こんがらがった人達を救っていく。彼らの行く先のエピソードも、日々を迷走する私達の救いとなる物語だ。 空さんと級友達のコロコロしたフォルムと、(日本の)田園風景の鮮やかさが相まって、そこは神の庭なのか?空さん達は天使なのか?と思う程の、愛らしくも神々しいイラストレーションが展開され、癒される。宗教画の天使図の中で、プラトンと一緒に空さんの「てちゅがく」に何度も驚嘆する「しんはっけん」に満ちた書だ。

19XX昭和の旅

ショワワワ!昭和「時代」という衝撃

19XX昭和の旅
hysysk
hysysk
1年以上前

先日「昭和時代」という言葉を目にして驚いたのだが、考えてみれば自分も明治や大正のことは「明治時代」「大正時代」と呼ぶので、令和からすれば「昭和時代」でもおかしくはないだろう。 作者の記憶と共に当時の流行や風習が紹介されていて、とにかく熱量がすごい。合間に手書きの解説も入るのだが、これが本当に昭和のオタクという感じでめちゃくちゃ良い。 私は昭和57年生まれなので、全然知らなかったものから「あったな〜」というもの(口裂け女とかパワーリストとか)まで、とても面白く読めました。長らく不況とはいえ、今の方がよっぽど成熟してるし多様化してるし充実してると思うけど、少しはあの頃のワイルドさを思い出してみてもいいかも知れない。

ブスだけどエロい姉

味は濃いけど後味は残らない感じ

ブスだけどエロい姉
野愛
野愛
1年以上前

タイトル通りの漫画だけど想像したエロいと違った。 彩りが少ないけど出汁が効いてて優しい家庭料理的なものを想像してたけど、肉を揚げたものに大量にマヨネーズかけたみたいなものが出てきた感じ。 結果美味いならまあいいかみたいな。 肉を揚げたものに大量にマヨネーズかけたみたいなエロい姉だった。まあはそれもよし。 エロい姉ではあった。デカくてエロい姉だった。

300年封印されし邪龍ちゃんと友達になりました【同人版】

連載でまた邪龍ちゃんに会いたい!!

300年封印されし邪龍ちゃんと友達になりました【同人版】
名無し
1年以上前

主人公の陽太が召喚した邪龍は、300年間の封印による孤独のせいでコミュ力がよわよわとなってしまっていた・・・!という話。 邪龍らしい尊大な口ぶり多少残っているものの、だいぶメンタルがやられてるみたいでかなりの寂しがりやさん(ちょっと魔王城でおやすみの魔王に似てるかも) やってることは邪龍ちゃんがベソかいては陽太の言葉で立ち直るってそれだけなんだけど、邪龍ちゃんの愛くるしさが存分に出ていて見ていて飽きない。 あとがきによると連載の準備をしているとのことで楽しみです。 https://twitter.com/yakitomahawk/status/1209025067989864449?s=20

じょじむらのじゆうちょうまんが!!

読むと頭が空になるやつ

じょじむらのじゆうちょうまんが!!
名無し
1年以上前

本になったと知って購入。日下幹之先生が漫画家デビューを目指して頑張っていた頃に、自尊心を回復するために始めた「女児セラピー」がこのじょじむら爆誕のきっかけだったと思うのですが、それがまさか本になるとは…感慨深いです。 https://twitter.com/jyojimura/status/994921225116831744?s=20 一番好きな話はアザラシのやつ。なんの脈絡もなく唐突に迷路が始まって吹きました。女児すぎる。 あとチョコにタイガーバームつけるやつはガチで自分でやってそうで怖くて笑った。 全体的にイカれた調子なんだけど、うつネコとげんきネコのエピソードは毎回いい話で清涼剤になっていていい。 ちなみにこのうつネコが主人公のお話が「きみが元気のない時に見る本・きみがさびしい時に読む本」というタイトルでKindleインディーズで出てて¥0で買えます。 https://www.amazon.co.jp/dp/B08BS2MLZY/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_CpZVFbM04JECH ちなみにこれ1冊目の星の評価が1000件越えていて呪術廻戦1巻に肉薄するレベルなのですが、その理由は読めばわかります。全人類元気のない時に読んで…。 考えるな感じろという1冊なので頭を空にしたいときに読みましょう。

そこに山があったとしても

双子ってやっぱり神秘かも

そこに山があったとしても
nyae
nyae
1年以上前

なにか起きているようで、なにも起きてないといえばそうかも知れない、という感じの、双子の男子高校生兄弟を主人公とした淡々とした青春ストーリー。 「双子」というものは世の中に当たり前に存在しているけど、やはり年の違う兄弟姉妹とは何かが違うんじゃないかと思わされる。神秘を感じる。 双子は、自分じゃない方を"片割れ"だと思ってるんだろうか。一心同体なんだろうか。相手の痛みや感情の変化に共鳴するんだろうか。 同じ顔だけど、親しくなれば見分けがつくようになるんだろうか。 双子と密に接したことがない人間の想像力はこんなもんです。

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