ものかげのイリス

それは恋というものなの

ものかげのイリス
野愛
野愛
1年以上前

狂おしいほどの、身を焦がすほどの恋に出会うこと。それは幸せなことなのでしょうか。 何もない日々を過ごす真面目な高校生・利也が謎の美女・七彩と出会い、性に目覚め恋に落ちる物語。 七彩との出会いによって、年下の恋人や母親と過ごす利也の日常は変化していきます。 知り得なかった彼女たちの女の顔を知り、穏やかな居場所を失くし、日常を失くし、七彩以外見えなくなっていく利也。 恋を知らなかった頃と知ってしまった後の利也の顔つきの変化が素晴らしく、艶々先生の表現力に改めて感嘆させられました。 艶々先生の描く生命力に満ち溢れていながらも、儚くて美しい女性が好きなのですが、この作品は少年から大人へと変化していく利也の表情が何より印象的でした。 狂おしいほどの、身を焦がすほどの恋。 溺れている間は幸せなのでしょう。 しかし、ひとつの恋を終えて焦がれた身体と甘い記憶だけを抱えて生きるのはあまりにも辛く苦しいことのように思えます。 それでも、ラストシーンの利也は穏やかな笑みを浮かべているように見えました。 物語を見届けて、艶々先生の言葉を読んで、ひとつの恋を終えたあとの甘い痛みのようなものが、胸を締めつけて離れないのです。

埋もれた楽園

教科書に載らない偉人

埋もれた楽園
名無し
1年以上前

90年代に週刊少年マガジンで掲載されていたドキュメントコミックシリーズ 実話を描いた作品で当時ご存命だった人たちを取り上げており、作者の三枝先生が直接インタビューなどを行っています。 ドキュメンタリーということもあって、漫画としての表現が!ストーリーが!という部分での評価はしにくいですが、本筋を邪魔しない作風だと思っています。1エピソード前後編で100ページでとても読みやすいです。 特に雑誌で掲載されていたこともあり、まったく接点がない人たちにも興味を持たせることに一役かっていたのだと思っています。 昨今なかなか見なくなったドキュメンタリーマンガですが、復活してほしいシリーズです。

どんぐりの家

学級文庫で出会った漫画

どんぐりの家
nyae
nyae
7ヶ月前

小学生のとき、教室に置いてあったことが強く記憶に残っています。ただ内容については、印象的なシーンを断片的に覚えているというだけでした。 いま読むと、確かにこれは平凡な小学生が読むには少々ハードルが高いかと思う。しかし、そこ(教室)にあったというだけで強烈な印象を私の記憶に残したのも事実。そしてこうして大人になってからちゃんと読んでみようと思えたこと、当時の担任の先生には感謝したい。 身体的・精神的に関わらず、障害を持つ人に対して、彼らは生きてくうえで何が“出来ない”のかに焦点を当てがちである。しかし本書では、彼らには何が“出来る”かを一緒に考えることが大事であると教えてくれます。 そして何より、著者の山本おさむ先生も実際にどんぐりの家を立ち上げる支援者の1人であり、当事者に近い目線で描いているからこその圧倒的リアリティ。 一文字も見逃さずにとは言わない。パラ見でもいいから、若い人がこの本に触れる機会が増えると良いなと思います。

鴨居家のマルちんは猫です

Instagramでも人気の鴨居さんちのマルティくん

鴨居家のマルちんは猫です
かしこ
かしこ
1年以上前

「にれこスケッチ」をきっかけに鴨居まさね先生のファンになりました。ねこねこ横丁で猫エッセイマンガを連載していたことは知っていたのですが、先生が猫のマルティくんメインのInstagramをされていて、フォロワーさんが一万人いることは知りませんでした…!先生ネコスタグラマーだったんですね!!そしてマルティくん大人気!!すごい!! マルティくんはスコティッシュフォールドの男の子ですが、よく犬に間違えられるらしいです。鴨居先生と一日でも離れると不安になっちゃうくらい甘えん坊で、先生も目に入れても痛くないほど溺愛されています。現在14歳を超えて高齢になったマルティくんのお世話は心配なことも多いようですが、先生が愛情と責任をもってお世話されてるからマルティちゃんも幸せそうです。

公園兄弟

ラストが無茶苦茶良い

公園兄弟
マンガトリツカレ男
マンガトリツカレ男
1年以上前

公園兄弟という言葉だけの響きだとジョエル・コーエンとイーサン・コーエンのコーエン兄弟を思い出すけどそんな良いものではなく公園の池に浮かぶ屋形船で暮らすもっさんと心平のホームレス兄弟の話。第10話の「仕事の流儀」の流れと想像を超える荘厳なラストからの最後のページが特にいい

女の子同士で付き合ってます。

リアル同性カプは甘々で複雑 #1巻応援

女の子同士で付き合ってます。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前

普段から百合漫画を嗜んでいると、つい女性同士のお付き合いについて「知った気」になっていて、それではいかんな!と思って手にした、エッセイコミックである本書。どうだったかと言うと…… めっちゃ甘々やないかい! 作者は元々は男性が恋愛対象。パートナーは性自認は女性でありながら恋愛対象は女性。そんな二人が付き合うまでは確かに複雑なのだが、共通の友人の少し異常な男女関係が同時進行で描かれる時、キチンと互いに向き合う二人の「真っ当さ」の方が浮き上がる。 そして思いが通じてからのお付き合いは、やはりどこまでも「真っ当」だ。互いを受け止め肯定する遣り取りは優しく、甘い。女性同士だから分かり合える部分もありつつ、それ以上に相手への気遣いに溢れている。 同性だろうが異性だろうが、共に在るのに必要なのは、恋愛感情以外の部分だとはっきり気付かされる。あらゆるカップル(予備軍)に読んで欲しい、パートナーシップ指南書だ。

一杯の魂‐ラーメン人物伝‐

ラーメンは研究開発

一杯の魂‐ラーメン人物伝‐
hysysk
hysysk
1年以上前

時価総額世界1位の企業で働くアメリカの友達が「日本のラーメンはあれだけ研究開発されてるのに1000円くらいで食べられるのはあり得ない」と言ってひたすら食べ歩いていたのだが、これを読むとすごくそう思う。 全くの素人から始めた人、別の料理業界から転身した人など、色んな人が出てくる。約20年前の作品にも関わらず、紹介されている店のほとんどが今もしっかり現役で、当時は目標として語っていたことを実現していたりするのがすごい。冒頭に「豚ガラ鶏ガラ人柄の調和」というポエムを載せていて心配になったが原作者の目(と舌)は確かだ。今ではインスタントでも食べられてしまう「すみれ」は主婦がたまたま空いた店で始めたものだったとか、ガチンコ世代のスーパースター佐野実にこんな背景があったなんて知らなかった。 みんな大体ラーメンなんて簡単だろ、というところからスタートするのだが、徐々にその奥深さにはまっていく。スープは長時間火にかけると酸化する、気温や天気に合わせて麺の配合を変える、麺が変わるとスープにも影響する、旨味調味料に頼らないためにはどうするか、行列ができたら苦情にも対応しなければならない、複数店舗のオペレーション…そんな中で安定しておいしいラーメンを作るにはやはり職人的な技術や努力が必須で、味だけでなくインフラや組織作りにも工夫とイノベーションが要求される。 雑なバイトに読ませたいし、ヘッドフォンしてスマホ片手に食ってる客の画面に強制的に表示させたい名作。

超世界転生エグゾドライブ -激闘!異世界全日本大会編-

君はもう異世界転生(エグゾドライブ)したか!?

超世界転生エグゾドライブ -激闘!異世界全日本大会編-
ANAGUMA
ANAGUMA
1年以上前

「キミだけの最強のチートスキルを組み合わせて、ライバルと異世界転生バトルだ!!」やった〜! 本作の世界線では異世界転生はいかに「俺TUEE」しながら対戦相手より先に異世界を救えるかを競うゲームと化しました。ゲーム開始時に「エントリィイイイイ!!」つって全速力でトラックに突っ込んでいく絵面が衝撃です。 ハーレム展開なりがちとか最弱魔法で圧倒しがちとか「異世界モノあるある」をどう組み合わせるかがそのままゲームの攻略法に繋がっているっていう設定が面白いです。 異世界もの読んでて「無理あるやろ」ってなることをゲームの仕様として説明されると納得しちゃうっていう味付けが絶妙。普通にこういうゲームやってみたいなって気持ちになります 個人的にはいかにも主人公って感じのタツヤじゃなくて、クールライバルっぽいシトの方が主人公なんだ!っていうのも驚きがありました。絶対「おまえはエグゾドライブを楽しんでねえのかよ!」って展開になると思ってたんですが、読み進めると意外性があっていいです。 異世界ものにハマってたり、逆にちょっと胃もたれしてる人はもちろんのこと、ホビーアニメファンは絶対にお気に召すハズ。絵もめちゃうまです。 ドライブリンカーとチートメモリが玩具で発売されるまで応援し続けたい!

つづきはまた明日

漫画版『子供の情景』には小さな痛み

つづきはまた明日
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前

一年前に母を亡くした藤沢家。小五の兄・杳(はるか)と妹の小一・清(さや)は、隣に越してきた原田家の一人娘・小五の佐保を見て驚く。 「お母さんの、子供の頃の写真とそっくり……」 ◉◉◉◉◉ 男女なのに似ている杳と佐保。佐保に親しみを感じる清。杳と似た雰囲気を持つ杳の幼馴染の綾瀬ことみ。不思議な縁で繋がる彼らには、取り立てて大きな事件もドラマも無い。優しいタッチと植物の装飾で描かれる「夢と現」の日常は、明るさも切なさも子供らしい下ネタすら可愛らしく包摂して、ただ其処にある。 彼らの日々を綴りながら、子供の感性について、子供・大人双方の視点から描かれる。幼い清の空想世界を楽しむ大人。少し遠くを見る杳の詩情に魅せられる佐保。人の心に寄り添う佐保の優しさ。子供を見守りつつ自らの心を見つめる大人達……そこにある感性は豊かだ。 楽しい事ばかりでは無い。折々に亡き母を思う兄妹は、時に感情の処し方に迷い、それでも日常を、悲しみ切なさと共に笑って生きる。その在り方は、何があっても「生きていかなければいけない」私達の心の処方箋でもある。 シューマンの楽曲よりは、心が「痛む」感覚のある『子供の情景』と言いたい。

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