三日月のドラゴン

長尾謙一郎、まさかまさかの新境地

三日月のドラゴン
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前

喩えるなら井上雄彦さんが日常系百合4コマを描き始めたとか、あだち充さんの新連載がデスゲームものとかそれ位の衝撃でした。 『クリームソーダシティ』や『おしゃれ手帖』など今まで非常に癖の強い作品を数多く手掛けてきた長尾謙一郎さん。しかし、この最新作は今までとは打って変わってまさかの王道青春スポ根もの!! 所々に従来のテイストやセンスは見え隠れするのですが、大筋は驚くほど超王道であり、甘酸っぱい純愛まで含まれています。そして、まさかのその王道作品が実に上質で面白い! 自分の弱さを何度も思い知らされ、大事な人を失ってきた人生の中で最後に残された大事な人を守るために強くなりたいと真っ直ぐに願う主人公。その直向きな気持ちと努力に心撃たれます。 同じく空手マンガ(『帯をギュッとね!』)を描いていた過去がある河合克敏さんが、「今一番続きが楽しみなマンガ」と言うのも納得です。 長尾さんの過去作品を読んで合わないな、と敬遠した方も本作は騙されたと思って読んでみて欲しいです。

黒虎

瞬間最大風速は間違いなく高かった #マンバ読書会

黒虎
チャンピオンスキー
1年以上前

色々荒削りな点はありますが、スピード感と迫力のある絵で少年誌らしい熱さのある王道の少年マンガです。世界観は、銀魂やらムシブギョーに近いですかね。5巻でスッキリ完結という作品ではないですし、サブキャラ達を見てもマンガ好きな方々には既視感バリバリな作品かもしれません。しかし、他のバトルマンガに無い斬新な表現が飛び出してくるのがこの黒虎という作品。2010年代半ばのチャンピオン漫画で、間違いなく確かな爪痕を残したマンガだったと思います。『バガボンド』もビックリするような毛筆で描かれた迫力あるバトルが一番好きでしたね。

獣王星 完全版

全5巻の超傑作SF #マンバ読書会

獣王星 完全版
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前

「全5巻の名作」として思い浮かぶマンガの筆頭、少女マンガでは『獣王星』です(『ポーの一族』や『アンの世界地図』など無限にありますけれども)。『OZ』も後から出た版では全5巻であり、樹なつみさんの2つの名作SFは併せて想起されます。樹なつみさんは他にも『朱鷺色三角』や『ヴァムピール』なども全5巻ですね。 『OZ』も『獣王星』もハードなSFで、重厚な設定のの下に一度読み始めると続きが気になって仕方ないサスペンス性の高いドラマが繰り広げられます。それぞれ80年代後半、90年代前半から描かれた作品ですが、今読んでも十分面白いです。 『獣王星』は、地球から離れた星系とコロニーの中で繁栄する未来の人類を描いた物語です。なぜか極秘裏にされほとんどの人がその存在を知らない流刑星である「獣王星」。そこに主人公の少年が陰謀に巻き込まれて落とされるところから物語は始まります。 常に命の危険に身を晒され生き残ることすら過酷な環境で、未知の星の生態系やルールに抗いながらサバイバルしていく部分だけでもエンターテイメント性たっぷりです。謎が謎を呼ぶ展開で、怪しい人物が多過ぎて誰の言っていることが真実なのか、真意はどこにあるこか解らなくなります。SF的な設定を巧みに用いながら目まぐるしく状況が変わっていく中で、全5巻でテンポよく駆け抜けてしっかりまとめていく疾走感はたまりません。 現代の地球とは異なる様々な価値観の下で、懸命に生きる人々に触れられるところも良質なSFの良さが溢れています。 『獣王星』に限りませんが、樹なつみさんの絵はスタイリッシュで美しく、内容的に男性が読んでも楽しめるという点でお薦めしやすいです。 #5巻くらいのマンガ

ラブロマ 新装版

全5巻完結ラブコメの金字塔 #マンバ読書会

ラブロマ 新装版
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前

「5巻完結の名作」というと色々と思い浮かぶ作品はあるのですが、私の中で真っ先に出てくるのはこの『ラブロマ』です。新装版でも全5巻ですが、とりわけまだとよ田みのるさんがこれを初単行本として出したフレッシュな時に描かれた、初々しさも残るコピックで塗られたカラフルな表紙の方の全5巻を思い出すのです。 本作は、主人公の少年・星野がクラスメイトの根岸さんに人目も憚らず告白するところから始まります。二人が付き合うところまでは非常に早く、付き合ってからの甘酸っぱい時間がじっくりことこと煮込むように描かれます。その後に完成する美味しい料理を早く食べたいような、完成に至るまでにずっと漂ってくる甘美な匂いに浸っていたいような、不思議な感覚を与えてくれます。 二人以外の周囲の人間の個性や関係性も含めて青春の粋が詰まっており、無限にかわいらしく無限に愛しみが湧く物語です。二人を笑顔と拍手で応援するモブが好きすぎる! そして、意外と清らで品行方正なわけでもないところもまた魅力です。星野は根岸さんとキスはしたいし、乳にも触りたいし、何なら「みかん」もしたい。少し変わった性格の星野は、その欲望すらも包み隠さず明け透けに見せてちょくちょく根岸さんに殴られます。たがそれがいい。こういうのがいい。 一人一人全然違う人間同士が一生懸命生きて、時にぶつかり合いながらも同じ時を過ごして感動を共有する瞬間の尊さ、掛け替えのなさ。この作品から溢れ出るそういったシーンの輝きに、読む度に心を満たされて幸せになります。 全5巻を読んで最後に必ず笑顔になれる傑作です。

けだものたちの時間~狂依存症候群~

安易に読まないほうがいい

けだものたちの時間~狂依存症候群~
野愛
野愛
6日前

今世紀最大のトラウママジキチ作品。茶化すこともできないくらいの切実な狂気があり気づいたら真剣に読んでいる。理解の範疇を超えているのに感情移入してしまっている。 ストーカーに拉致監禁された人気モデルの愛理。食事もトイレも管理され性的暴行を受ける日々の中、とある過去の秘密を共有し、心を通わせるようになる。 「ヒロくん」「愛理」と呼び合い、恋人のように過ごす2人だったが……。 あらすじだけでも頭を抱えるようなストーリーだけど、更にとんでもない展開になるから凄い。犬(人)の世話をしてる強烈なバナー広告を見たことある人も多いのでは。 そもそもの出会いが間違ってるのに愛理とヒロくんに幸せになってほしいと思ってしまう。絶対有り得ないし許されないことなのに、愛理は洗脳されてるだけだと思うのに。 不幸へのデスロードが敷かれているような状態で2人がどう生きていくのかを見守りたいと思います。 とりあえず安易な気持ちで読み始めないほうがいいです。でも面白がるくらいのスタンスでいたほうがいいです。とんでもないので。

【単話版】ゾンビのあふれた世界で俺だけが襲われない(フルカラー)

ネット広告(というかコラ画像)につられて

【単話版】ゾンビのあふれた世界で俺だけが襲われない(フルカラー)
六文銭
六文銭
1年以上前

ネット広告が死ぬほど出ていたので、読んでみました。 ネット広告・・・というか、コラ画像って言ったほうが正しいかもしれません。 添付画像の、セリフや画像を改変しているものが色々あって、逆に興味が湧いた感じ。 内容としては、まぁ、あの広告通りの展開(その後も含めて)なんで、 期待していた方、安心してお読みください。 現場からは以上です・・・と終わりたいところですが、内容をもう少しだけ。 ゾンビが溢れた世界で、主人公だけなぜか襲われない設定。 俺TUEEEというわけではなく、主人公自体、一般人で強くはないのですが、他の人間と違って自由に動き回れることで色々メリットがあるのが面白いです。 街を歩いていると、偶然、ショッピングモールに「SOS」の垂れ幕がおりて、入ったところ、添付画像の女性キャラと兄弟に出会い・・・という流れ。 彼女たちは主人公のような特異体質がないし、本作のゾンビは俊敏なので、立てこもっている場所からでれない。 そこで、食料などを取りに行くかわりに、体を要求するという主人公。 ゲスの鑑です。 このご時世に、なかなか思い切ったことします。 まだ6話なので、基本はここまでなのですが、 自給自足するため、件の兄妹と街から出て山に移住を考えたり、 何か裏がありそうな無線の連絡がきたりと今後の展開がヨミにくくなって結構楽しみだったりします。 ゾンビサバイバルにご興味のある方はぜひ、おすすめします。 全ページフルカラーだというのも一応補足しておきます。

もしもアンテナ

おしゃれかわいい大喜利

もしもアンテナ
野愛
野愛
1年以上前

ゆるいし癒されるしかわいい。でもしっかり面白い。 インターネット的というか大喜利的な面白さが好きなひとは絶対好きなやつ。 「もしも◯◯だったら」「こんな◯◯は◯◯」とかそういうのをひっそりコツコツやってきたひとの面白さ。ほら面白いでしょ?じゃなくて、こんなんできましたけど〜的なスタンスの面白さ。 おしゃれかわいいくて面白いけど鼻につかない大喜利のうまさ。ロングコートダディの堂前さんとか好きな人は好きかも。

銀河の死なない子供たちへ

短いけど壮大で、残酷だけど深い愛を感じる

銀河の死なない子供たちへ
nyae
nyae
1年以上前

マンバ通信の記事きっかけで読みました。記事内でまあまあなネタバレをしてたので楽しめるか不安もありましたが、全く問題なかったです。久々に一瞬で読んでしまったなと感じました。実際そんなにページ数も多くないので短くて面白い漫画が読みたい!という人におすすめしたい。 マンガ沼で話されていた、最後のマッキの判断が作者にとっても想定外だったというのを踏まえて読むと痺れます。更にそれをπが予想よりすんなり受け入れるところも3人の間に確かにある揺るぎない愛を感じたというか、これでいいんだなという納得を得られました。 命に限りがある中、なんとなく適当に生きるのも死ぬ気で生きるのも自由だけど、幸福な時間を積み上げるという意識を持つことって大事だなと思えます。間違いなく名作だと思います。

金のひつじ

友人って・・・。

金のひつじ
干し芋
干し芋
1年以上前

皆それぞれが、最終的には、自分の弱さを認めて、成長していく様子が見届けられてよかった。 あと、周りの大人たちがいい。 まじめなコロッケ屋のおじいさん、好き。 人は、嫉妬によってこんなにも冷淡に意地悪ができるのか。 人間とは、自分とは、分かっているようで本当のところは分かっていないし、自分の間違いを認められる人は、強い人なんだと思う。 今回、4人が分かり合える友人に戻ったが、今後、大人に成長する過程でもう一つ大きな波乱がありそう。 恋愛も絡むと面倒なことになるかも!?

ものつく~手作り生活、はじめました。~【合本版】

スローライフは憧れか。

ものつく~手作り生活、はじめました。~【合本版】
Pom
Pom
1年以上前

スローライフ大変なことも多そうだけど、楽しそうだな〜 お水もご飯も美味しそうだし、時間もゆったり流れるのだろうか。 自分の肌に合う場所探しができる時って、人生限られているのかも。 いや、人生100年時代そんなこともないのか。笑  桧由の様に、自分には現実住むこと作ることはないのかもだけど疲れてしまった時に、ここ行きたい!って思える場所を探してみるのもいいな。なんて思いました。

黒博物館 スプリンガルド

今最もちょうどいい藤田和日郎入門マンガ #マンバ読書会

黒博物館 スプリンガルド
名無し
1年以上前

藤田和日郎作品大好きな自分が藤田マンガをオススメするときにいつも困るのが「めちゃくちゃ巻数ある」ということ。うしとら33巻、からサー43巻、月光条例29巻、双亡亭25巻。いきなり読んでもらうにはさすがにハードル高いですよね(でも全部読んでくれ)。 そんなわけでこの黒博物館『ブラック・ミュージアム』シリーズは藤田和日郎入門にピッタリかと思います。 第一作「スプリンガルド」は1巻完結、第二作「ゴーストアンドレディ」も全2巻、現在合計3巻とコンパクト。 https://manba.co.jp/boards/11724 メインの舞台装置はロンドン・スコットランドヤード所管の黒博物館。 さまざまな犯罪にまつわる証拠品や資料が収蔵された怪しい雰囲気の博物館にこれまた怪しい雰囲気のキュレーター(学芸員)が勤めており、読者は博物館の入館者とともに収蔵品の秘密に迫る…というのが基本の流れ。 ブラック・ミュージアムは実際に存在する施設だけあって、毎回歴史上の事件や人物が登場するリアリティのある描写も大きな魅力です。 https://youtu.be/lRusAqLia1U 「スプリンガルド」ではロンドンを騒がせたバネ足男の怪奇、「ゴーストアンドレディ」では劇場に住み着いた幽霊ととある女性の出会いを描いていて、それぞれ独立したオムニバスのシリーズになっています。読みやすいですね!(アピール) さらに2022年3月現在、モーニングで新シリーズ「三日月よ、怪物と踊れ」の連載も始まりました。既存の3冊を読んだころには新作にスムーズに合流できる、まさに「今最もちょうどいい藤田作品」が黒博物館シリーズなのは間違いないでしょう。 https://manba.co.jp/boards/156757 …というかうかうかしているとまたすぐ次の長期連載が始まるか、なんならちょっと目を離した隙にこの黒博物館シリーズ自体が10作以上増えているかもしれん!「ちょうど今」なんです、マジで! 以上、藤田和日郎沼に浸かろうという方はまずはこの黒博物館に入館してみては…読み終わる頃にはミステリアスなキュレーターさんと謎に満ちた収蔵品の物語の虜になっているはず。

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