丁寧な日常描写にコメントする
34歳無職さん
休むも歩むも自分で決める
34歳無職さん いけだたかし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
仕事を失った34歳の女性、バツイチ子供と別居……その「無職さん」は、一年間「何もしない」と決めて、安アパートで一人暮らし。 この作品は物語というよりは、生活の描写をひとつひとつ積み重ねる。それは淡々としていながら、かなり心が痛くなる。 仕事の無い平穏なはずの生活は、気楽さの中に意外な程の腹立たしさ。何度も描かれる、ぼんやりした無職さんの小さな失敗。それを見てモヤッとする私も、実は同じ事を日々している事に気付けば……ああ、無職さんは、私だ。 無職さんに大きなカタルシスは望めない。小さな喜びと不幸がランダムに訪れる日々。しかし彼女は暮らしをきちんとしようとして、それが達成できた瞬間「ちゃっ」とポーズを取る。この時、妄念に満ちた私の心に、リアルな身体感覚が蘇る。これは殊の外、清々しい。 ただ普通に生きる事が難しい……無職さんはそう嘆く。独り身でも〈一人で〉生きている訳では無く、人との関わりに苦しむ事からは逃れられない。それでもなるべく自分の在りたい様に、休むも歩むも自分で決める。 そうして人生を自分の物にして脱力している無職さんの在り方は、私の肩の荷を少し、降ろしてくれた。
回胴創世記 パチスロを創った男達
バジ絆はいかにして作られたか #1巻応援
回胴創世記 パチスロを創った男達
兎来栄寿
兎来栄寿
『ロックンリール』や『《魔力無限》のマナポーター ~パーティの魔力を全て供給していたのに、勇者に追放されました。魔力不足で聖剣が使えないと焦っても、メンバー全員が勇者を見限ったのでもう遅い~(コミック)』の伊藤ひずみさんによる、パチスロ版『プロジェクトX』や『ガイアの夜明け』的なドキュメンタリーです。 私はパチンコ・パチスロは付き合いで多少嗜んだくらいですが、元々『バジリスク』の原作もアニメも山田風太郎さんも好きだったので、『バジリスク』シリーズは多少触りました。 当時はカラオケでの十八番が陰陽座の「蛟龍の巫女」だったので、『バジリスク2』で激アツの際に流れる曲として採用されたのは望外でした。 1/16000の白バジが揃ってエンディングまで到達し、弦之助と朧の悲痛な最期を見て泣きながら打ったのは良い思い出です。 そんな『バジリスク』シリーズの中でも人気の高い『バジリスク絆』がいかに誕生したのかというエピソードからこの本は始まります。 『バジリスク2』から絵やアニメーションの素材はそこまで増やせない中で、どうやって新鮮味を生み初心者から玄人までを楽しませる台を作るのか? その苦心惨憺ぶりが描かれていきます。他の分野と何ら遜色のない、モノ創りへの熱情がそこにはあります。 他にも『アナザーゴッドハーデス』、『ディスクアップ』、『ハナビ』など長年ホールで愛された名器たちの誕生秘話が記されています。この辺の台に思い出や愛着がある方であればとても楽しめるのではないでしょうか。 伊藤ひずみさんの絵はスタイリッシュで読みやすいですし、パチスロを打たない方でも「こういう世界があるんだなぁ」とビジネスマンガとして楽しめる作品であると思います。
しれっとすげぇこと言ってるギャル。―私立パラの丸高校の日常―
トロッコ問題すらしれっと解決するギャル #1巻応援
しれっとすげぇこと言ってるギャル。―私立パラの丸高校の日常―
兎来栄寿
兎来栄寿
https://youtu.be/JfvbpGcwyc8?si=87H35GAwt33QJS70 ここから始まった『私立パラの丸高校の日常』。YoutubeやTikTokで人気でしたが、コミカライズもされその1巻が本日発売となりました。 本作は全員何かしらの特殊能力を持っている世界における、私立パラの丸高校を舞台にした、ゆるい群像コメディです。 元々は、ぴかるんことただ体が発光するだけの能力を持った多々光(ただひかる)が主人公でしたが、元の動画版の方でも別格の再生数を誇り大人気のギャルズがこちらのコミカライズ版では主人公のようになっています。 未来視(ヴィジョン)の能力を持つ見里未来(みさとみらい)さんと、平行世界移動(バタフライエフェクター)の能力を持つ黒髪ロングストレートギャルの「へー子」こと平翔子さん。 共に超絶チート級の能力を持ちながら、ギャル特有の異常に軽いノリが合わさって化学反応がものすごいことになっています。 2話の平行世界移動を繰り返す話での 「ここ有機生物が酸素を必要としなかった世界だ」 「えーじゃこっちのうちらなにで代謝してるん?」 「ベリリウム」 「やば 緑柱石かよ」 「まあ酸素と同じ第二周期だしね」 という会話など大好きです。「あーね」とか「が?」「が」くらいのテンションで気軽に物理法則が捻じ曲がっていくのえぐちです。 皆大好き、オタクに優しいギャル回では、マンガを描いていたクラスメイトに 「てかこれワンチャン『転スラ』に影響受け過ぎ?」 「『盾の勇者』もじゃね?」 と、異世界ものへの解像度が高く的確にアドバイスする様も激チルです。 「説ある」が「説あるコアトル」に進化するなどの語彙の無限の羽ばたきも、ギャルらしさが溢れていてエモです。更に、本作には競馬回ありホラー回あり巨女ありと、さまざまな属性の人が引っかかるフックが存在します。 作画を担当しているのが『いびってこない義母と義姉』や『通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキー』のおつじさんということもあり、ヴィジュアル的にもつよつよで、未来とへー子がより魅力的になっています。 時折捩じ込まれる『ハンターハンター』や『エヴァ』ネタも私には効きます。巻末おまけも10Pもあるので、単行本でまたじっくり楽しむのも良きでしょう。
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