淡々と描かれた壮大な温泉物語
熊本県黒川温泉。温泉旅館・新明館の長男として生まれ、新明館のために生きた後藤哲也さんの生き様を描いた作品。 竹を切り石を運びわらじを編み……ただひたすら新明館のために働く日々。 家のために身を粉にして働くのが当たり前の時代だったという側面もあるだろうけれど、日当を前借りしては仕事をサボる人も出てくるので、哲也さんは当時の価値観でも勤勉なのだと思う。 哲也さんが凄いのは、嘆いたり迷ったりしないところ。 他の町と比べて見どころがないと思えば、山を切り拓きつつじを植える。ノミ一本で岩を掘り洞窟温泉を作る。どんな木がどんな石が新明館にふさわしいかを考え、常に良いものを作り続ける。 誰に反対されても、協力を得られなくても、嘆かず迷わず淡々と働き続ける。 点滴穿石、磨穿鉄硯とはこういうことを言うのだろう。 小さな努力の積み重ねを淡々と描いているからこそ、現在へ続く歴史の壮大さを感じられた。
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※
良くも悪くも淡々とした筆致が黒川温泉の臨場感を生み出しているかなと思った。
・特に好きなところは?
ノミで岩を彫って洞窟温泉を生みだしたり、配管に使う竹を入れ替えたりと、
哲也さんの苦労が伝わってくるところ。
・作品の応援や未読の方へオススメする一言!
もう少しドラマティックな演出を意識して欲しかったけど、
間違いなく力作だと思います。
哲也さんのと工夫すごいですよね!ありのままを描いていてドキュメンタリーみたいでした。