パリの女性達を記述する少女 #1巻応援
舞台は十九世紀、膨張をはじめたパリ。十四歳の少女が老紳士に請われるがまま、さまざまな職業を体験する物語。 端正で美しい筆致で、笑わない少女と職業夫人たち(時に男性とも)の出会いが描かれる。派手な演出は少なく、冷静に描かれることで、少女の心の僅かな機微、理性的で正直な思考と行動、その目で捉えた正確な人物像が伝わってくる。 少女は女性たちと触れ合い、少し何かを渡し、何かを受け取り、記述してゆく。そこには少女の頬の赤みのような、微かでも強いエンパワメントがある。 少女が何かの道を極める物語ではない。その歩みは彷徨と呼ぶのが相応しい。しかし民俗学者の採集のような地道さと、少女特有の丁寧さと鋭さで記述されたその彷徨が、どんなパリ職業婦人記として完成されるのか、考えるとワクワクしてしまう。
19世紀フランス・パリの雰囲気を体験しているような気持ちになれる漫画だと思う。
細やかなところまで描かれていて、見たことないパリを見たことがある気持ちになれた。
『月から来たような』と先生に表現された女の子セリーヌが主人公。
文字を書くことや裁縫、掃除など、基本的なことはひとつひとつ丁寧にこなすことができるので、ぼんやりとした子ではないのだけど、どこかぼんやりしている印象がある。
パリとは違う街から来た彼女を通して見る、パリを成り立たせている仕事。
100年以上前に存在した街の雰囲気を味わえるのはとても楽しい。
セリーヌの独特なテンポが、一緒に働く人の心を緩めるのもまた楽しい。
絵画のような表紙の漫画だと思って読み始めたのだけど、あとがきで漫画そのものが「印象派が描いたパリに対する憧れ」から描かれたとあり、直感が完全な的外れでなかったようでフフンと思ってしまった。