愛と呪い
作者の半自伝的作品。平成初頭のノスタルジックな空気感や思春期の閉塞感がリアルに表現されている。新興宗教を信仰する家庭において父親から性的虐待と母親から肉体的虐待を受ける主人公が、誰からも助けを得られず追い詰められていく過程が痛々しい。読んでいて重苦しくなるが、目を逸らしてはいけない。
物心ついた頃には始まっていた父親からの性的虐待、宗教にのめり込む家族たち。愛子は自分も、自分が生きるこの世界も、誰かに殺して欲しかった。阪神淡路大震災、オウム真理教、酒鬼薔薇事件……時代は終末の予感に満ちてもいた。「ここではないどこか」を想像できず、暴力的な生きにくさと一人で向き合うしかなかった地方の町で、少女はどう生き延びたのか。『ぼくらのへんたい』の著者が綴る、半自伝的90年代クロニクル。
……誰も懲りないのほうがマシに思えてしまいます