渚 ~河野別荘地短編集~
ハズレのない短編集。
短編集を読めば、その作家との相性がわかると思うんです。
短編という基本1話完結形式のなかで、物語上最低限必要なエッセンスのみつまっているから、その取捨選択というか、核となる部分だけみせてくれると相性も定まる気がするんですね。
そういう意味で、本作を読んだ瞬間、この作家さん好きだなと思いました。
個人的に石黒正数先生に近しいイメージなのですが、何気ない日常の中にファンタジーやホラーっぽい要素をスパイス的にいれてくるの、ホント好きなんですよね。
この作家さんも、似たような感じで、ドツボでした。
日常の切り方って、作家さんの個性が光ると思うんですよ。
え、そんなとこ注目するの?
ってポイントが、興味深かったりするとそのままハマってしまいます。
(逆もまたしかり・・・)
本作も、短編の中にぎっしり作家の魅力がつまっております。
「スマートアシスタント」では、突然意識や感情を持ち始めたスマートアシスタントとの交流を描き、「生水」ではスライムみたいな生き物「生水」が当たり前のように日常にいる世界を描き、「旬」では書道教室の未亡人と、書道教室に通い始めた女子高生、そして主人公の3人をエロスこみでリアルな肉体関係(そしてほんのり切ない関係)を描き、そして表題作「渚」では人魚が、下半身を手術して人間になるという話たち。
題材とする着眼点もさることながら、人物の描き方もリアリティがあって自分好み。
作風も派手さはないのですが、じんわり染み込んで惹きつける魅力があります。
なんにせよ今後が楽しみな作家さんでした。
スマホのアシスタントAIとの小旅行を楽しむ「スマートアシスタント」、人間の足を作る手術の為にバイトする人魚の「渚」シリーズなど、出会いと別れと、出会いを描いた短編たちに20ページ以上の描き下ろしをくわえて待望のコミックス化。
スマホのアシスタントAIとの小旅行を楽しむ「スマートアシスタント」、人間の足を作る手術の為にバイトする人魚の「渚」シリーズなど、出会いと別れと、出会いを描いた短編たちに20ページ以上の描き下ろしをくわえて待望のコミックス化。