2021年12月18日、マンガプレゼン大会に出場しました。ご視聴くださった方、ありがとうございました!まだご覧でない方は、下記リンクよりアーカイブをご覧下さい。

私の今回のプレゼンは『合格のための! やさしい三角関係入門』について。女子ばかりの困難な三角関係と、その中の一人の辛い恋愛感情にフォーカスを当てて紹介しました。ここからは、その内容に二つの言葉……恋愛の常識だけ捉えていると見落としがちな視点を添える試みをします。

★★★★★

主人公の受験生・真幸の家庭教師・凛は「一人の特別を選べない人」と紹介しました。どうしても複数の人を愛してしまう彼女が指向する恋愛感情・恋愛スタイルには、実は名前があります。

それは「ポリアモリー」と言います。

(引用※1)
きのコさん:
ポリアモリーは、複数人と同時に関係を持つことが大きな特徴なので、「浮気を肯定している」と言われてしまうことも多いんですけど…それは違うんです。

浮気や不倫のように、パートナーに隠して他の人と関係をつくるわけではなく、全員から合意を得たうえで、複数人と交際をすることを大切にしています。

「本命」や「浮気相手」という優劣もありません。
(引用終わり)

二人の大切な人を失いたくない凛がもし、このような関係を築ければ、それはこの上ない幸せなのかもしれません。しかしそれがとても困難であることは、作中でも描かれます。

何よりも恋愛対象者が、ポリアモリー関係性を拒否すれば、関係は結ばれません。凛が大切に想う一人・親友のあきらは、特別な「一人」との恋愛を夢見る人。また凛は過去に、別の三人組のうちの一人に「私だけを特別に想って」(引用※2)と求愛され、三人組を壊すのを恐れて断った事がある。

他にもポリアモリーの実践には、当事者間にも社会的にも、いくつか困難がある。しかしポリアモリーが

(引用※3)「自分自身の愛のあり方について大切な相手に対して包み隠さず正直である」「付き合っているパートナーが、自分が複数人と付き合うことに対して否定的になった際は、そのたびに話し合いを重ね、どうして行くべきか考えていく」(引用終わり)

という誠実さを持つ限りにおいて、ふしだらとか人の道を外れているといった誹りからは遠い場所にいるのではないでしょうか。

この「ポリアモリー」という道は、誰よりも目の前の人に誠実な凛にこそ、開かれた道かもしれませ。なにしろ彼女は、関係を継続させるために目の前の人に嘘をつく事は一切しないのです。

★★★★★

さて、プレゼンにおいて私は、三角関係の中で三人が相手に向ける感情を一つ一つ明らかにしましたが、そこで分かるのは「一つとして同じ感情が無い」という事です。

尊敬・憧れ、強い信頼、理解者への寄りかかりといった精神的な強度を持つ感情がある一方で、キスの肉欲や一目惚れといった本能的な衝動もある。そして彼女達としては、どれも蔑ろにはできない。

一般的に誰かとお付き合いを始める時、そこに恋があるとされる。でもその「恋」とはなんだろうと思うと、途端に不安になる。相手と私の恋は、同じ感情だろうか?同じ強度を持つだろうか?……相手を疑い始め、疲弊するうち次第に自分の心すら分からなくなってゆく。

そして己の恋を実際に分解してみると、確かに強い想いは存在するけれども、それがいつ恋になったか?これが本当に恋なのか?一緒にある肉欲は恋なのか?と分からなくなる。

真幸・あきら・凛それぞれの想いも、確かに強い。でもその中には、恋には見えない物もある。しかしそれも恋かもしれない。もしくは恋と同じくらい強い気持ちかもしれない。いや、そもそも恋である必要があるのか?

相手が大切で、何かしてあげたいと思うのなら、それだけで尊いじゃないか!

「クワロマンティック」というアイデンティティがあります。

ときに「自分の感情が、愛情か友情か分からない人」という(やや雑な?)紹介をされるこの言葉。社会学研究者でクワロマンティック当事者でもある中村香住氏は『クワロマンティック宣言』(※4)の中で、そもそもこの語が

(引用※4)「恋愛の指向」や「恋愛的魅力」といった言葉が意味をなさない(引用終わり)

と当事者が感じたところから生み出された、と解説します。つまり自分が相手を想う感情が恋愛かどうかについて、尺度もなければ実感もないので、「恋愛」というカテゴライズ自体を拒否する。そして恋愛以外の感情で、一人一人と親密に、それぞれに独特な関係を構築する。この様な「恋愛に振り回されない」親密圏の在り方は(たとえ「クワロマンティック」の傾向を持たなくても)恋愛に疲れた人には魅力的に映るのではないでしょうか。

『クワロマンティック宣言』の中で中村氏は

(引用※4)数少ない「恋愛」経験を通して、私には「恋愛」そのものが向いていない、というか「やりたいと思えない」と感じるようになった。たとえば、そもそも日本の「恋愛」規範には、契約としての「付き合う」と「別れる」がある。始まりがあれば終わりがあるという発想がある。それは本当に窮屈なものに私には思えた。それから「恋愛」をしていれば「独占欲」やそれに基づく「嫉妬心」があるに違いないという前提が、私にはとても辛かった。(引用終わり)

という告白をする。ここで書かれる疲労感というか、絶望感は、『合格のための! やさしい三角関係入門』においてポリアモリー的感情を抱くために人一倍他人との関係維持に苦しみ、挙句人間関係そのものを諦めてしまった、凛という人の苦悩の描写とどこか重なるのです。

凛という人は必ずしも「恋愛」だけで人と繋がりたいとは思っていない……ように描写される。プレゼンでも引用した『おばあちゃんになるまで三人で…いたかったよ…』(引用※5)というセリフには、情熱的な恋愛というよりは、安心感を得られる穏やかな関係性のニュアンスが感じられます。

しかし、そんな凛が求める繋がりは、関係性の中の誰かが抱いた「恋愛」によって、壊されていくのです……少し「恋愛」が憎らしくさえ感じられますね。

★★★★★

『合格のための! やさしい三角関係入門』は2巻しかない小品ではありますが、そこに込められた問題意識は、恋愛観の常識を揺さぶります。

まず「恋愛」は一対一でなくてはならないのか?という事。そして「恋愛」って特別視される割にそれに囚われると辛いばかりだし、他の大切にしたい感情とどれほど差異があるの?という事。

人との繋がりで喜びを得たい筈が、思いもよらない苦しみしか得られなかったりする私たち。そこから逃れるためには、何が必要なのか……本作の斬新な関係が構築される場所で、三人が(特に主人公の真幸が)何を願ったかを読み取ると、恋愛の一歩先にある「強い絆に必要なもの」が見えてくると思います。


引用
※1
新R25「結婚しても、1人だけを愛することができなかった」複数人を愛するポリアモリーの恋愛観

※2
『合格のための! やさしい三角関係入門』1巻p72

※3
Job Rainbow MAGAZINE「ポリアモリーとは?【日本の現状を実践者が解説】」 ライター: Ricke

ポリアモリーとは、複数のパートナーと愛の関係を築く恋愛スタイルを指します。今回のコラムでは、日本ではあまり浸透していない「ポリアモリー」という恋愛スタイルについて、ポリアモリーとして生活するポリアモリストの私がまとめていきます。

※4
『現代思想 2021 vol.49-10』青土社

※5
『合格のための! やさしい三角関係入門』 1巻p157

また『現代思想 2021 vol.49-10 特集〈恋愛〉の現在』より、特にポリアモリーについては『ポリアモリーという性愛と文化』(深海菊絵)、クワロマンティックについては『クワロマンティック宣言』(中村香住)より、概念の成立過程から社会における実践まで様々な知見を得、作品の読みを深めることができました。

読みたい
合格のための! やさしい三角関係入門

誰か一人を選べぬ苦しみを知る #1巻応援

合格のための! やさしい三角関係入門 缶乃
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

タイトルはコメディ調なのに、読み進めるごとに切なくなる物語。登場人物皆が心の奥底に何かを隠し、その感情が昂る瞬間に、胸が苦しくなる。 登場人物は ●憧れの先輩を追って難関校受験を目指す中3女子・真幸 ●真幸の家庭教師になる高1の凛 ●真幸の憧れの先輩で、凛の親友でもあるあきら 主人公は真幸のように描かれるが、物語のキーマンは、家庭教師の凛。 彼女は実は「複数の人を愛する女」。そのことは誰にも理解されず、ずっと仲良しだと思ってきた大切な仲間も、傷つけ失ってしまう。その過去話も、辛い話だ。 〈倫理にもとる〉本能を持つ人の、絶望的な感情……傷つけたい訳ではないのに、存在するだけで誰かを傷つける、という凛の苦しみは、とてつもなく切ない。救われて欲しいと思うが、そのために越えるべき〈倫理〉の壁は高い。 そんな過去故に、もう友人は作るまいと思って来た凛だが、思いがけずあきらという親友を得て、さらに生徒の真幸に自分を肯定される。 意図せず新たに生まれた、大切な「三人の」関係。1巻にしてもう、波乱の予感しかない。凛と真幸の危なすぎる距離、親友としての凛とあきらの関係のおぼつかなさ、そして凛の生徒が後輩の真幸である事を、あきらが知る時は来るのか……この困難、この複雑さと切なさ、2、3巻程度で「やさしく」完結する筈がない……のか?

不揃いの連理

タイトルから見る"伴侶"の形

不揃いの連理
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

ここではタイトル『不揃いの連理』の語義と内容をリンクさせながら、(6巻までで)四組の女性ペアの関係を追う本作の魅力を書いてみたいと思います。 「連理木(れんりぼく・れんりぎ)」というのは、隣りあった木々の接触した枝や幹が一つにくっつき、木目まで混ざり合った状態のこと。そこから「連理」という言葉は二人の深い契りを表すのだそうです。 幸せな予感のある「連理」という言葉。では「不揃いの」という言葉はどうでしょう? 登場するペアは、いずれも全然タイプの違う二人。そしてどちらか片方、もしくは両方とも「ダメな人」だったりもします。 まっとうな会社員×元不良は見た目に反して、ダメなのは会社員の方。いかにも悪そうな人と優等生のJKコンビは、優等生が意外と暴力的etc……。でもそんな二人が何故か寄り添う。 ではそこにどんな心があるのか。 ある人に惹かれる理由を、言葉で言い表すのは難しい。でも、なぜある人の側にいるかは、理由を言える場合もある。 この作品でそれが分かりやすいのは、ダメな漫画家に接する生真面目な編集者。彼女は恋愛的惹かれの他に、ダメな漫画家を支える動機としての「ある気持ち」を持っている。そして同じようなものは、他の三組にも見て取れる。「ある気持ち」はおそらく頼りない人に対する普遍的な心情なので、納得する人は多いと思います。 「ある気持ち」で支え合い、接するうち、彼女たちはいつのまにか離れ難くなっていく。そこには理屈ではなく、もはや必然として一つになった連理木が生まれている。 伴侶って、こういうことだよな……大きな安心感とエモーションが同居する感じ。実はかなり暴力描写・しんどい内容も多いのにそれはとても不思議な感覚で、いつまでもこの物語を追う動機となってゆくのです。 ダメな人に対する、共通する「ある気持ち」......どんなものか、ぜひ本作から探してみてください。 さあ、まだ不穏な堅物教師×生徒の物語はどうなるかな? (6巻までの感想) (追記:実はマンバ読書会でリアルタイムで書いたものから、細かく改稿しています。どんなふうに変化しているか、ぜひ配信と比較してみてください! https://www.youtube.com/watch?v=FgBPuVvUHFI) #マンバ読書会 #クチコミを書く回

バウンスバック

今から追いつける「山あり谷あり」な女子ゴルフマンガ #まだ追いつけるマンガ

バウンスバック
あうしぃ@カワイイマンガ
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「バウンスバック(bounce back)」は「立ち直る」という意味で、ゴルフだと「ボギー以下のスコアの後にバーディ以上のスコアを出すこと」なのだそうです。 逆境から立ち直る、辛い境遇から復活する……ままならない人生のようなゴルフを活写する、それが本作『バウンスバック』。 主人公は出入りの激しいプレーをする、崖っぷちの女子プロ。勝ちにこだわらない姿勢で結果を残せなかった彼女は、共に歩んだキャディーの祖父の危機に直面します。 祖父の夢・全英へ……脅威の覚醒を遂げる主人公は、祖父の教え子の力を借りて僅かな可能性に賭けますが、しかしそう甘くはなく、常にギリギリの戦いを強いられる。繊細でハードなゴルフのリアリティにハラハラさせられます。 出入りの激しさは変わらず、しかし乗った時の爆発力で周囲に夢を見せる主人公。一方ライバルのトップ選手達は安定しているのに、様々な理由で崩れ、それでも己を保って戦い続ける。選手の能力的にはマンガ的な夢もありつつ、その背景や崩れ方、回復の仕方に心理的リアリティを持たせてドラマとして魅せる。 現在11巻(2024.7.26時点)。全英へのラストチャンスは最大のピンチ。「最強のレアキャラ」と土壇場での耐久勝負。手に汗握る結末は12巻に持ち越しか……? ゴルフマンガは『あした天気になあれ』『ライジングインパクト』以来の私ですがメチャクチャ熱くなっています。「ゴルフマンガはみんな長編で追いつけない……」とお嘆きのあなた、これなら今からでも追いつけます! (ハッシュタグ #まだ追いつけるマンガ は勝手に考えました。今からでも読んでほしい作品によければ使ってみてください)

君のためのカーテンコール

殻を破った先にある絆へ

君のためのカーテンコール
あうしぃ@カワイイマンガ
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内気で自己表現できない女子高生が、堂々とした転校生女子に引っ張られて演劇部を立ち上げる物語は、意外にも内気な主人公に脚本の才能がある一方で、転校生女子の方が焦っている様子が描かれる。読み始めの二人の印象は、少しずつ変わってゆく。 主人公も、そして転校生も、「本物」を得るために殻を破る必要に迫られる。次第に突きつけられる現実、問われる覚悟。その中で主人公は転校生の側にいるために、転校生は恐れている現実に抗うために、先へ進む。熱くて緊張感のある物語。 そこに高校生ながら劇団で活躍する「本物」の同級生、彼女らに当てられた新入生が加わり、学園祭のステージへ……この新入生の苦闘に引き摺り込まれる。 彼女はやりたいことがあるのに、その才能が決定的に欠ける人。その現実を突きつけられた彼女は、新たな道を模索するしかなかった。目指すものへの未練と、現実との葛藤……それでどこまでも若い時間を消費できると知っているので、彼女の先行きが俄然気になる。 高校演劇を描きながらプロの劇団と交流する点や、転校生と他の生徒との関係など「目指すものと現実の距離」「内部と外部」を意識的に描いて、冷静でシビアな視点がある物語。そんな中で主人公と転校生の関係は強固だが、互いに成長することでその絆がどのように変わってゆくのか、先が楽しみだ。

ヘレナとオオカミさん

創作者の物語として #1巻応援 #完結応援

ヘレナとオオカミさん
あうしぃ@カワイイマンガ
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作家、画家、漫画家など、創作者の物語はたいてい苦しい。独自の表現を追求する戦いは必ず、己のつまらなさ、発想の貧困、そして個人的な問題とどう向き合うかのせめぎ合いになる。 まだ幼い子どもが創作と向き合うのは、さらに困難だ。絵が上手な本作の主人公・ヘレナは孤児で、弟の命も失われようとしている。そんな中で「願いを絵にしてみよう」と絵本作家「悪いオオカミさん」に言われ、できずに涙を流すが、自分でもその苦しみを理解できていない。 物語を完成させるために「悪いオオカミさん」と共同作業に挑むヘレナは、その過程で作家に煽られ、引っ張られて、自分の本心に踏み込んでゆく……それまで明るく振る舞ってきたヘレナが感情をむき出しにする様に、苦しみを感じると共に、子供らしさを見出して少し安堵してしまう。 泣いて眠った夢の中で見せる心の解決は、切なくも美しい。 ヘレナのあまりの境遇に、彼女の明るさがいつか崩れてしまうことを想像しながら読むことになる物語だが、優しい大人たちの支えでヘレナは心に安寧を取り戻す。そしてその感動的なラストから、さらに彼女が創作者としても成長することまで想像してしまう。ヘレナはきっと素敵な絵本作家になると思う(もちろん悪いオオカミさんとは全然違う方向性で)。 (『ヘレナとオオカミさん』台湾の漫画賞「金漫奨」の年度漫畫奨&金漫大奨をダブル受賞おめでとうございます!)

女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました

女性差別社会をブン殴れ! #1巻応援

女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました
あうしぃ@カワイイマンガ
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女性差別がはびこる異世界で、パーティに理不尽な扱いを受けた魔導士の主人公は、八つ当たりの中で伝説の魔女の封印を解いてしまう。二人が手を組みパーティへの復讐を目指す物語は、現実世界にもある女性差別を数多く描き出す。 現実世界での女性差別は、とても見えにくい。例えば〈女性議員が少ない〉という問題意識に「実力のある女性議員希望者が少ない」「そもそも議員になりたがる女性が少ない」という、もっともらしい反論がある。しかしこれは女性に対する教育の不平等(女性に教育は要らないという意識、入試不正等)や女性は表に出るべきではない(=女性は男性に庇護されるべきだ、女性は家庭を守る人だ)という意識等、社会構造に練り込まれた多様な通念、しきたりが起因していて、それは男性にも、そして多くの女性にも気付かれない。 本作の異世界でも、現実世界で行われる差別が全く同じ形で表現される。主人公は身に降りかかった決定的な差別をきっかけとして、社会にある差別構造を伝説の魔女に教わりながら少しずつ自覚するようになる。主人公と一緒に、私もいちいちハッとさせられる。 魔女に肯定される主人公、主人公が肯定する女性達。世の中のおかしな構図に武力で立ち向かう二人の進撃は痛快だ。難しく考えずに勧善懲悪をなしてゆく水戸黄門的なカタルシスを与えながら、差別構造を分かりやすく描いて「女性差別はこんなに分かりやすく〈悪〉なんだ」と気付かせてくれる。 二人が社会をギッタギタにするのを期待したい。

琥珀の夢で酔いましょう

付箋を貼って読む漫画

琥珀の夢で酔いましょう
あうしぃ@カワイイマンガ
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こんなに寄り添ってくれるメッセージに溢れた、胸熱くなる作品ってそんなにあるだろうか……大好きすぎるので6巻までを再読して、大切なところに付箋を貼ってゆく。 クラフトビールの話題が満載な本作。しかしそれと同じくらい、苦しい人・心折れそうな人の再生を描いて切実な物語でもある。 就労地位格差、身体的特性、人種差別、男性性に脅かされる女性性、性差別……さまざまな苦悩を秘めて生きる、大人になりたての登場人物たち。しかし彼らはクラフトビール専門店「白熊」で、次第に前向きになる。 クラフトビールを盛り上げるべく、打たれる幾度かのイベント。好きなものを学び、広げながら、人と繋がる。出会いの中で、自由へと解放されてゆく人たちに共振する……何かを始めたくなる! 燻る現状を告白し合うことで、主人公の派遣デザイナー・七菜は女性俳優の慎と同志になる。ピアノを諦めた同級生に、写真家の鉄雄は作品で、いつの間にか何かを伝える。ページを捲るたびに心が沸き立つ。 一方随所で、冷静かつ痛烈に、私の中にある残酷さ、思い込みや偏見を言葉にして伝える。はっとさせられたり、胸が痛くなったり。それでも西陣麦酒のブランドコンセプト「多様性(ダイバーシティ)と社会的包摂(インクルーシブ)」を取り上げ、ビールを介した人の輪の中でエンパワーメントの連鎖が起こるビジョンを語る本作は、とても力強く優しい。 私の本は、付箋でいっぱいになった。特に3巻と5巻が多いようだ。お読みの方はどうだろうか。

ローラ・ディーンにふりまわされてる

恋愛クズに振り回されるな! #1巻応援

ローラ・ディーンにふりまわされてる
あうしぃ@カワイイマンガ
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「恋愛クズ」という存在は確かにいる。自分がモテることに自信があって、恋愛をゲームのように楽しんで、いつも自分が好かれていないと嫌で……という人物であると気付いた時には既に振り回された後。あぁぁクズ、お前に割いた時間を返せ! 本作の主人公は、人気者のクズ女に振られては復縁し、を繰り返す女子。別れるたびに友人達に慰められるけれども、何が辛いってクズ女しか見ていない主人公が、次第に親友をなおざりにしてしまうところ。 舞台はアメリカの、同性愛もポリアモリーも当たり前になっているコミュニティー。そこでは多様なパートナーの形、恋愛の形が描かれ、女性同士の恋愛も当然のことと描かる。それゆえ視線は別の点にフォーカスされる。 画面がとてもPOPだったり、ちょっとサイケだったり。ピンク+スミの二色で鮮やかな画面が楽しく、しかしそのピンクは、恋愛に振り回される主人公の閉塞感、息苦しさを演出するようでもある。 恋愛にはまり込んで大切な物を失うのはもったいない、ということがひしひしと伝わる。もっとバランスよく恋愛できないのか……とヤキモキし、渦中にいると気付かない恋愛の難しさに思いを馳せ……と一段上の次元に視点を誘う本作。恋愛と人生の見方がクリアになる、かも。 ※余談だが、本作の「恋愛クズ」はポリアモリーなのかというと、「当事者同士で合意をとった上で行う複数間の関係」がポリアモリーの定義で、それには当てはまらない。作中でも「ノンモノガミー」と紹介されている。

ごうかくのためのやさしいさんかくかんけいにゅうもん
合格のための! やさしい三角関係入門(1)
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