子供の頃、弟が生まれたらまだ本人が小さくてもお姉ちゃんにならなくてはいけなかったモモ。
少しだらしない夫と結婚し、苗字が変わり、職場でもそれなりにベテランになってしまい後輩に持ち上げられたり、ただ過ごしているだけでも周囲や環境は自分を大人として押し上げていってしまう。
子供の頃に子供でいられる時間が短かったせいなのか、男が女をそうさせるのか、周りは「私」を無責任でいられる子どもでいさせてくれない。
無責任に誰かに依存して寄りかかっていていい存在でいたいだけなのに。
「男なんてみんないくつになってもガキなんだから」
「…じゃ 女はみんな大人なの?」
女性が男性に向けて言う「男はほんとガキなんだから」とは決定的にニュアンスが違って上の言葉には、ある種の開き直りのような「男がガキでいられるよう女が大人になって面倒見てくれなきゃ」という押しつけがましさを感じる。
その後に続く言葉でも、勝手に分かったようなことを言って「私」を、「女」を、勝手に大人にさせようとしてくる。
不倫なんて無責任な関係に大人も子供もなかったはずなのに。
家に帰ると夫は文句は言うくせに歯医者には行かず、洗い場もそのまんまだ。大人になんかなりたくないのに。
子供でいたかっただけなのにきっとそれはもう一生叶わないんだろう、というのがどうしようもなくやるせない。
なんとなく周囲に合わせて、顔色伺って、無難な毎日を繰り返して、大きな不満はないけれど、否応なく年月は重なって、年相応の人物像にならなきゃいけなくて。
いっそすべて捨ててしまえば、とは考えても実行には移さないんでしょう。
いまの生活もそれなりに大切だから。
自分が少しだけ我慢すれば済む話だから。
でも、たまにはガス抜きさせてよって不倫もする三十代女性のリアルということなんでしょうか。
いろいろと考えさせられました。
夫にも、職場にも、大きな不安は別にないけれど。『恋のツキ』の著者が贈る、大人の女のリアル。(コミックビーム2021年12月号)