『あそびあい』『恋のツキ』の新田章先生の読み切り。 本当にこの作者は男性の心をエグる漫画を描くのが上手だ。 ある種のダメな男性を描くのが上手とも言えるが、世の中の男性全てに共通しそうな点でもあるのでとても他人事とは思えない。 男性からしたら一滴も思いもしなかったことが起こる。 そして思いもしなかったこと自体が罪であり、とうにターニングポイントは過ぎていたことを思い知らされるのだ。 同棲中の結婚適齢期の二人。 そんな幸せに見えた二人の生活にはひたひたと影が迫っていた。 絶対にしそうに見えなかった女性側の浮気。 それは忙しくして相手をしてやれなかった男性の責任かもしれないが、あくまで行為に移してしまったのは女性の方だ。 これに関して男性が悪いのか、女性が悪いのかという議論はここでは些末な問題だ。 この世に絶対なんて無いし、表面的には理想的にさえ見えた二人は女性の努力だけによって支えられていて男は自分の力だけで気持ちよく立っていると思い込んでいるだけのピエロだ。 相手を見ていない。 相手の本質を見ようとしない一方通行のコミュニケーションであり、理想の押し付けだ。 女性を一人の人間という個人ではなく役柄で見てしまっているよくいる男性像が浮き上がってきて、自分が根本的に何が間違っているか気づけず救いがないまぬけなまま華麗にしっぺ返しを食らうのだ。 世の男性が好むであろう愛想の良い女性の姿は、求められているから演じてはいるがそこに本当の彼女らはおらず、本心は別にありそれを見抜けない男性は滑稽であるという強いメッセージ性が込められているように思う。 それにしても釣った魚に餌をやらないタイプの男の趣味が魚釣りとは皮肉が効いてる。 素晴らしい。 たった一話の読切でハッとさせられるとはさすがの一言である。
吉川きっちょむ(芸人)
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