思春期だった頃の私に読ませてあげたい
私が中学生だった頃「ソフィーの世界」という、哲学を題材にした本が流行ってましたが、あの本が読みこなせなかったんですよね…。この漫画もタイトルや世界観に近いものを感じました。 「クーの世界」も、現実世界の死や、心のありかたに関する悩みが中心にあります。ソフィーのように難解で哲学的な言い回しはなく、説教くさいところもないので読みやすいです。純粋に作品世界に浸りながら、主人公と一緒になってあれこれと悩んだり、心について考えながら楽しめました。 ちなみにこの本は講談社版と秋田書店版がありまして、秋田版には描き下ろしページとあとがきが加筆されています。 https://www.akitashoten.co.jp/comics/4253104711 作者の小田ひで次先生によると、親戚の姪っ子さん達に楽しんでもらうようにと描かれたそうです。まるで「不思議の国のアリス」を生み出したルイス・キャロルのようなエピソード!なんて思いましたが、ちょっと言い過ぎでしょうか。大人でも充分楽しめる作品ですが、できれば自分も思春期の頃にこの作品に出会いたかったなあと思うばかりです。
もうすぐ中学生になる主人公・ねれいは悲しみに暮れていた。それは10歳上のお兄ちゃんが交通事故で亡くなってしまったからである。ある日「お兄ちゃんに会いたい…」と思いながら眠りについたところ、目が覚めたら不思議な世界にいて、クーと名乗るお兄ちゃんにそっくりな男がいるではないか。しかもその不思議な世界で眠って目が覚めると現実世界に戻っているのだ。こうしてねれいは奇妙な二重生活を送ることになって…という話。子供も大人も楽しめるような純ファンタジーだった。漫画というより文学っぽい。もし中学校の図書室にあったら歴代の本好き達が読破してそう。あんまりネタバレになるのもどうかなと思うのでフワッとした感想にするけど、お盆の時期にぴったりの漫画を読んだなと思った。それとおばあちゃんが活躍するのがよかったな。あとがきに「夢の空地」という続編があると書いてあったのでそちらも読んでみたい。