人それぞれのアイデンティティ
大人になった今、振り返ると子供の頃は視野が狭かったことがわかる。 それは色んな生き方を知り、憧れや妄想、時には挫折なんかを味わい、知識を得て世界が広がってきたから今と比べたらそうだ、というだけなのだと思う。 LGBT(Q+)が今では自由として認める風潮があり、良いことであると思う反面、わからないものに対する人の態度までを制限するのは違うんじゃないかという気持ちもちょっとあるんだけど(強く思うわけでも議論したいわけでもないし、擁護したいわけでもないですが)これは自分がもう大人になってしまっているからに他ならない。 実際に"ノーマルではない"ことを苦にしている子たちは視野を広げる事が出来ない狭い世界に閉じ込められてしまっているのかもしれないと思うと、子供の頃の残酷な無邪気さは命に関わるぐらい大きな問題なのだろう。 最近は幸せなBLばかり読んできたんだなーと非常に強く感じる、心に刺さる作品だった。 添付は愚かな男の例としてわかりやすいシーン。最悪である。上の言い方でいうとこいつは視野が広がることも、広げる必要性も感じずに生きてきた大人になるのだろう。
学校でいじめられている高校生・安良城貴は、片思いをしている学校の先生・黒田への気持ちを心の支えにして日々の学校生活を耐え忍んでいました
しかしある日 その黒田先生が職員室での雑談中に"同性愛への偏見"の言葉を口にしているのを偶然聞いてしまいます。
その言葉に深く傷ついた安良城は「ゲイじゃない何かになりたい」と強く願ううちに、気が付くと顔面が怪獣になってしまう、という導入の物語です。
同性愛がテーマになっている作品ではあるのですが、物語の本質は人間が誰しも持ち合わせている様々な"感情"にあると私は思っています。
安良城の顔が怪獣になってしまった要因や怪獣になった跡の安良城の感情の変化、そして彼に接する黒田先生の様子…後を引く物語の幕引きも含めて、全てが取り繕いのない"生の感情"に溢れていて、
"ゲイ"とタイトルに入ってはいますが セクシャルマイノリティとは関係なく
全ての人の心に刺さる内容だと思います。
それでいて、作品の持つ強いメッセージがストーリーにちゃんと溶け込んでいて、
ファンタジー性も合わさってとても読みやすい作品になっています。