ネタバレ

といっても、それなりの年齢がある方にはこの村田ひろゆきという名前にそれ程いい印象は持ってない人も多いだろう。
なんせ代表作の工業哀歌バレーボーイズは超が付くほど下品なギャグ漫画で、バカでエッチな男子高校生のアホな日常を時折青春や人情を感じさせる話を交えつつ描いていた作品で
その下品さと御世辞にも上手くはない絵、良い話もあるとはいえ、人を選ぶ作風だった(とはいえ50巻に渡り連載されたように人気は有った)のは間違いない。
しかしその村田ひろゆき氏は2010年に癌と闘病中であることを告白し、背筋がうすら寒くなるような闘病漫画をあっけらかんと載せ、そうして復帰後に描かれたのがこの医者漫画であるドクター早乙女である。
絵や時折でる下品なギャグこそ村田作品らしいのだが、死線を彷徨ったのを嫌でも感じさせる病院や病気の強烈な描写…
医療漫画なのに監修無しという作者の気合いを感じまくった姿勢が内容からビシバシ伝わってくる。
紙版では「馬鹿でエッチな漫画を描いてた村田でーす」等と自虐していたが、この作品から感じる気迫は正直その「バカでエッチな漫画を描いていた」過去があるのは間違いない、バカでエッチな漫画を描いていた村田ひろゆきが、癌で死に掛けた後に医者物描いているという事実は正直空恐ろしさすら感じさせる。
基本的には優れた医療技術を持つが、ぶっきらぼうで口の悪い早乙女医師が病院内でであう様々な患者や事件を、新人の姫野看護師の目を通して見ていく作品で、村田流の下品さは姫野看護師が女性という事もあり、不快に感じてツッコミを入れている分、印象としてはバレーボーイズ時代より緩和されている。
病院勤務とはいえ医療技術といい、アウトロー臭さといい、かなりブラック・ジャックを意識したキャラと作風だが、あちらに比べるとあっけなく失われる命も多く描かれているが、架空の症例も多いあちらと違い現実的な症例に終始しており、バレーボーイズでも描かれた人情もの的な作風はある種の生々しさを出している。
画風も下品さも含めて正直まだまだ人を選ぶ作風だとは思うが、間違いなく作者入魂の一作、出来れば1話だけでも読んで欲しい。

読みたい

この作品連載当時めちゃくちゃ語りたかったんですが、2ちゃんねるの書き込み規制常態化と時期が重なってるもんだから全然語れなかったんですよね……
ヤングマガジンは比較的読まれてる雑誌ですが、絵や村田作品と言う事情を加味しても、ネット上で語ってる人ほとんど見なかったので
連載時の熱は消えてるのですが、もっと多くの人に読まれてほしいとは思ってる作品です

嬉しいこと言ってくれるじゃないの
いやほんと徳弘正也氏とか、下品だけど根底に血の通ったストーリーを描ける漫画家は居るけど
村田ひろゆき氏に関してはその手の中でも高い下品さと画風に現代劇と言う点で、色々とお勧めしにくい作家であったのですが
このドクター早乙女に関しては下品さのバランスと医者物と言う点も含めてすごい新境地に到達した感があります
…まぁその切っ掛けがおそらく癌の闘病にあったと思うと、無邪気に喜んだり称賛すべきではないかもしれませんが
連載中ドラマ化あり得るんじゃないかと思ってましたが、そういう話がなかったのは残念でしたね

一応7巻完結とはいえ休載も多かったので期間的には結構な長期連載だったりします。(癌治療後ということで体調に気を使ったのかもしれません)

ゴラク…早乙女先生が「大きなシノギの匂いがするな…」とか、悪徳医師に鉄拳制裁とかいう話になりそう。

下品なエロネタがきついなと思ってたらとんでもなく良い話を挟んでくるから油断できないマンガだ

こんなセリフもバレーボーイズ時代からは想像できないというか
人情路線だけじゃなくちゃんと真剣に医者漫画を描いているって感じが出ててまた凄い

こんなセリフもバレーボーイズ時代からは想像できないというか
人情路線だけじゃなくちゃんと真剣...
白竜

気が付けばシリーズ累計100巻以上

白竜
ピサ朗
ピサ朗

ちっぽけな組に過ぎない黒須組に、ある日白竜の異名を持つ若頭が台頭してからあれよあれよと裏社会で頭角を現していく、揉め事の解決は暴力やダーティーな手段だったりの、良くも悪くも普通のヤクザ漫画。 …だったのは初期の話、天王寺大氏が実際の事件を広げたネタを扱う事も多かったので、ゴルゴ13のような「実はあの事件の裏には白竜が関与していた!」オチのネタが結構あったりする。 シリーズ後半ではその手のネタが増えて行くが、この第一シリーズである無印は比較的そういうネタは薄め、なんだかんだ危険な香り漂う裏社会でのし上がっていく姿は正直ワクワクする部分も有り、強引すぎたりアレな解決も「こまけえことはいいんだよ!」の精神で十分楽しめる。 …後のシリーズでは陰謀論を加速させかねない色々と不幸で幸運な現実に見舞われたりしてるけど、それも割り切れば作品の魅力。 組のメンツも少人数な分、上も下も描きやすいのか、若頭主人公だが下っ端から組長まで交流があり、それなりにキャラを立たせつつキャラ被りも無しと、今見ると設定時点でなかなか秀逸。 ヤクザ漫画としては、シノギの描写が意外と広く、これもまた第2シリーズ以降の時事ネタを扱うのに違和感が無い要因だろうけど、解決手段はシンプルに非合法だったりで「できるか んなもん!」な、描写がてんこ盛りで、これをツッコミどころとするか、展開が早くて良いとできるかで面白いと感じられるかは分かれそうな気がする。 とはいえシリーズ累計で100巻以上を成し遂げてしまってるように、こういう作品が好きな男自体はなんだかんだ根強く存在している事も実感するが。 実際のあれこれをネタにしている部分とか、多々あるツッコミどころにせよ、素直に名作と認めたくはないが読んでて楽しい部分も有るのは確か。 作風が完全に確立したのは第2シリーズのLEGENDだが、その移り変わりも含めタバコと酒臭さが似合う漫画ゴラクの象徴の一つ。

ドカ食いダイスキ!もちづきさん

女の子が自殺してる姿なんて見たくない

ドカ食いダイスキ!もちづきさん
ピサ朗
ピサ朗

可愛い女の子が底辺おじさんがハマるような趣味をやってるという、最近の流行である作風なのだが 「食」という生活に密着してハードルの低い分野で、注意書きも一切無いので正直恐怖の方が勝る。 自分も結構食べる方だが、30越えてからは多少なりとも控えめになったが、21で運動量も少ない女性がこんなん10年後に一気に来るというのが容易に想像できてしまう。 ハッキリ言えばもちづきさんがやっているのは「緩やかな自殺」レベルの暴食なので、ここまで来てるとむしろ中年男性がやってる方が遠慮なく笑える。 ひでえ事言ってるけど、「中年男性の自殺姿は笑えても、かわいい女の子の自殺姿を見て笑うことはできない」のだ。 とはいえ暴食に心を囚われ不健康な生活を送ってる人にとって、ここまでではないにしても己を顧みる切っ掛けになりえる狂った生活描写は見事で、逆説的に食事に対する節制や再考を推奨していると言えなくもない。 そういう方向性ならむしろ吾妻ひでお氏のアル中病棟のように、数年後に作者が死亡するか、もちづきさんが入院して暴食を強制的に楽しめない終わりが似合うだろうけど、流石にそんなもん見たくないので、どういう終わりを迎えるのかすごく気になってる。

イムリ

頭おかしくなるくらい圧倒的に壮大なSFファンタジー

イムリ
ピサ朗
ピサ朗

地球とは異なる惑星で暮らす、奴隷民族であるイコル、支配民族であるカーマ、そして先住民にしてタイトルのイムリ、これらの戦争が描かれていくのだが、 三民族それぞれの文化、いわゆる魔法に相当する技術、支配種族の権力闘争、逆転に次ぐ逆転が続く展開、とにかく徹底して「世界」のディテールが細かく濃い。 ハッキリ言ってこのディテールの細かさは間違いなく人を選ぶ。 巻末で登場人物紹介や用語解説が掲載されているが、独自用語で耳慣れない単語が多いもんだから、別ウインドウ表示か小冊子にして読みながら確認させてくれと言いたくなるし、世界設定の説明や大まかな登場人物紹介と序章に当たるストーリーに3巻を費やしていので、ストーリーが動き出すまでも遅く、正直序盤はじれったい。 しかしほとんど説明なのにめちゃくちゃ中身が濃いし、後から見るとこれでも足りないくらいで、スケールのデカさに戦慄する。 最低3巻読まないと殆どストーリーが動かないという展開の遅さなのに、一度物語が動き始めてからは息をもつかせぬ急展開の連続で、疲労感すら漂う重い展開の嵐だが、ある種の絶叫マシンに乗ったような気持ちよさもあり、それぞれの戦いの方法も見応えがあり、胸を打つ場面も多い。 序盤の展開の遅さとオリジナリティの高さ故の入りにくさはあるが、描かれていく世界史と陰謀、英雄譚に和平は非常に読みごたえがあり、間違いなくハマれる人はハマれるタイプの作品。

ダンピアのおいしい冒険

未知を既知にするのは何時だって機知に富んだ無知な奴ら

ダンピアのおいしい冒険
ピサ朗
ピサ朗

17世紀の海賊の航海日誌を膨らませた「事実を基にしたフィクション」の伝記漫画なのだが、とても素晴らしい。 昔の学習漫画のようなシンプル絵柄だが、当時の海賊という事情からも病気や戦闘などのともすればグロテスクな部分も読みやすく、またダンピアも実年齢より若々しく感情移入がしやすいし、異常なまでの参考資料から読み取ったであろう先住民や欧州、東南アジアなど各々の文化を、しっかり漫画に落とし込み、題材となった人物をしっかり主人公として魅力的に描くのは相当な筆力を感じる。 英国生まれの青年ダンピアは、貧困と教育を軽んじる当時の価値観から大学に通えず、紆余曲折の果て、はみ出し者だらけの海賊船に流れ着いた、当初は悲観していたが、誰も知らない事の発見者になれる喜びを噛みしめ、未だ未知なる事に溢れた太平洋の冒険に胸を躍らせる。 当時航海も盛んになっていたとはいえ、人々にとっては日々を生きるのが精一杯というのは珍しくもないだろうし、ダンピアのような青年はきっと多かっただろうけど、どんな状況にあろうと好奇心と探求心に満ち溢れ、恐れず行動し、海賊というヤクザ稼業をすらチャンスとして学ぶダンピアが実に魅力的。 「おいしい冒険」の名の通り、食事に関する描写が豊富だが、当時誰も食べたことの無い未知の食材を調理するその風景は、その航路からも正に「先駆者であることの歓喜と偉大さ」を訴えかけてくる。 しかし食事だけでなく、授業料の無いフィールドワーク、税金にせよ犯罪にせよ許され、実力勝負故に人種差別の薄い海賊という職業、それらもひっくるめてのダンピアの「おいしい冒険」であるのも面白い。 危険に溢れた海賊稼業が「おいしい」と言えるかは人によるだろうけど、職業選択の自由もない時代で、海賊以上に劣悪な環境の海軍の事情なども併せて語っているのでダンピア達にとっては正においしい冒険だったのだというのが伝わってくる。 教科書には載らなくとも歴史を彩る偉人の生涯を実に魅力的に描いていて、とても良い読後感を得られる名作。

ダイヤモンドの功罪

めっちゃ現代的な梶原一騎

ダイヤモンドの功罪
ピサ朗
ピサ朗

小学五年生で運動に異常な才能を持つが心はエンジョイ勢な主人公が、野球と出会う事で巻き起こしてしまう波乱とドラマなのだが、滅茶苦茶梶原一騎作品の様な雰囲気がある。 物理法則こそねじ曲がっていないのだが、主人公が競技をやるのが競技が好きで自発的というより、周囲に才能を見込まれ運命というか半ば強制的に競技をすることになってたり、主人公が強すぎて勝負という形にはなってないのだが、競技よりもそこから生じる人間ドラマの方を主軸としてたり、全体的に漂う陰鬱で重い悲劇的な雰囲気は、かなりあしたのジョーや巨人の星とかの60年代スポ根ドラマに通じるものがある。 とはいっても、基本的にキャラデザはイケメン少年で、物理法則が現実そのものという点でやはり現代スポーツ漫画らしい部分も多い。 ただそういうストーリーの為とはいえ、主人公である綾瀬川の運動能力が完全に人間離れしていて、受け入れられるよう慎重に書いているにせよ、もはやゲームやギャグ漫画に片足突っ込んでるレベルで尋常ではなく、冷める人も相当居そうに思う。 しかしそういう並外れた才能だからこそ、勝負を通じたスポーツマンシップの美しさの裏にある残酷さ、才能に振り回される大人も含めた周囲、エンジョイ勢とガチ勢の溝などと言ったストーリーが映える部分も多く、特にその才能に魅せられてしまう大人というのは野球という競技と、主人公の圧倒的な運動能力から強烈な生々しさが漂っている。 主人公以外のキャラも弱小チームにせよ強豪チームにせよ、それぞれの年齢や居場所に合わせたメンタリティをしているために抱く苦悩も描かれているが、主人公自身もその能力の高さゆえに馴染めない苦悩も描かれていて、強烈な負の面白さが出ている。 この手の「才能により歪んでしまう」スポーツ漫画としては黒子のバスケとかが記憶に新しいが、そういう才能が複数人居たお陰でバトル漫画的になっていたあちらに比べると、たった一人だけそういう才能を持っている事により周りが一般人である分、その人間ドラマが際立っている。 プロトタイプに当たる読み切り(高校・プロ年代)も幾つか存在するが、こちらはあくまでプロトタイプとして別物と思っていて、こちらで描かれた未来に収束するかは未知数。 野球を題材としてはいるが、才能により才能の持ち主も含め全てが振り回されるドラマは非常に生々しくも強烈で面白い。 幸か不幸か大谷翔平という、一昔前なら漫画でしかありえなかった活躍をする人間が現れていて、ギリギリでリアルとファンタジーのバランスはとれているように思うが、主人公が本当にゲームかギャグ漫画並に突出した運動能力があるので、ココで脱落する人もいるように思う。

ドクター早乙女(1)
ドクター早乙女(2)
ドクター早乙女(3)
ドクター早乙女(4)
ドクター早乙女(5)
ドクター早乙女(6)
ドクター早乙女(7)
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バ令和ボーイズ

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村田ひろゆき氏、入魂の一作にコメントする
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