二人の世界に引き込まれていく。にコメントする
※ご自身のコメントに返信しようとしていますが、よろしいですか?最近、自作自演行為に関する報告が増えておりますため、訂正や補足コメントを除き、そのような行為はお控えいただくようお願いしております。
※コミュニティ運営およびシステム負荷の制限のため、1日の投稿数を制限しております。ご理解とご協力をお願いいたします。また、複数の環境からの制限以上の投稿も禁止しており、確認次第ブロック対応を行いますので、ご了承ください。
Veil

3つの芸術の総合作品 美しさしかない本…!

Veil コテリ
たか
たか

全2巻を30分ほどで読み終えたのですが、まだ夢見心地です。あまりにも2人の関係性が、ファッションが、世界観が良すぎて、物語について分析的なことや自分の感想を進んで書く気になれないですね…どう頑張っても野暮なことしか書けない気がします。 なので「この本の構成」について書こうと思います。 https://j-nbooks.jp/comic/original.php?oKey=175 この本の発売を楽しみに待っている間、「まるで美しいシネマのようなコミック&イラスト集」という謳い文句で宣伝されているのを聞き、「結局漫画なのか、画集なのかどっちなんだ?」と謎だったのですが、読んで納得しました。 漫画のように「物語がコマごとに割った絵で語られるだけ」ではない。画集のように「文脈のない絵がズラズラ並んでいるだけ」でもない。 まさに「コミック&イラスト集」と表現するのが相応しい構成になっているんです。**しかも全編フルカラー…!** https://twitter.com/_K0TTERl_/status/1202975764280299520?s=20 まず驚くのが、表紙をめくるとすぐに目に入ってくる「見返し」や「扉」といった、一般的な漫画ではただ実用的でそっけない部分まで美しく、物語に入り込むための素晴らしい導入になっているところ。 そして各話の「幕間」に当たる扉ページもまた、読者の集中力を途切れさせないよう、世界観に沿って美しくデザインされています。 さらにすごいのが、**ストーリーの幕間にイラストと文章を挿入し、複数の表現方法を組み合わせて総合的に「彼と彼女」のことを描いているところ。** あらすじでは本書のことを「まるで美しいシネマのような」と表現していますが、映像・ストーリー・音楽の総合である映画を引き合いに出していて非常に的確だなと思います。 https://twitter.com/_K0TTERl_/status/1162700555304595457?s=20 そして読み終わってみて感じたのは**「Veilのことを世に出回っている多くの漫画と同じものとして分類できないな」**ということです。 **・今作を出すまで長期に渡り制作されている(2017年〜2019年に発表された作品が収録されている)こと ・アシを雇わず1人で作り上げていること(おそらく) ・フルカラーで高価格であること ・幕間(物語外の物理的な部分)まで世界観の一部となるようにデザインされているところ** こうした特徴を抜き出すと、日本のMANGAというより**「日本のBD(バンド・デシネ)」**と呼ぶほうが相応しい気がします。 (加えて言えば、日本の漫画の9割(※個人の勝手な体感です)は、商業的な成功に結びつきやすいエンタメ性の高い作品に占められています。そのため、ただただ美しさを追究した芸術性・文学性に富んだ漫画というだけで主流から外れてしまい、やはり日本のMANGAっぽくない。 長々書いてしまいましたが言いたいことをまとめると、**自分にとって「Veil」は、作品としてあまりに美しすぎるために漫画と呼ぶことに少し抵抗がある総合芸術**です。 百聞は一見に如かずなので、今すぐ手にとって読んでください…! (紙質と装丁がいいので紙がおすすめです…!) https://manba.co.jp/boards/112451 https://manba.co.jp/boards/112451/books/2 (2人を並べてあげたい)

COBRA THE SPACE PIRATE

夢と呼ぶにはあまりに厳しく余りに哀しい影に向かってのオデッセイ

COBRA THE SPACE PIRATE
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

著者のライフワークなので一言で括れない幅がある作品で、私は 1.手塚治虫的なタッチが残り奇想展開なアイディアの楽しい「少年ジャンプ初期」(「コブラ復活」~「ラグボール」) 2.線がややソリッドになりシニカルな描写の増えた「少年ジャンプ中期」(「二人の軍曹」~「黄金の扉」) 3.ヒロイックな描写の光る「少年ジャンプ後期」(「神の瞳」~「リターンコブラ」) 4.「聖なる騎士伝説」 5.CGフルカラー期 で分けている。どの期間も見るべき所のある漫画であるが、4.の「聖なる騎士伝説」について書きたい。  「聖なる騎士伝説」は青年誌に掲載された長編で他の話より暗く、いつもよりシリアスでアダルトな展開や描写が多い異色のエピソード(何てったって、レディーさえ出てこない) だ。ここでは新世界の興奮は悪鬼に蹂躙され、コブラのいつもの剽軽な態度やヒロイックな勇気は鳴りを潜め、笑みは嘗て見られなかった暗い影を忍ばせている。絵の線もどの辺よりも細く、陰影もまた濃く、混沌とした悪意蔓延る世界をこれでもかと描き出す。筋も宝や冒険ではなく悪鬼の暗殺と言う剣呑な代物で、終盤に明かされる種も周到に張られた伏線もあり陰惨な世界観を補強する。  今までのスペースオペラと比べると余りにもノワールであり、退廃的でもあるが、それだけに強烈であり、私はこのエピソードが一番好きだ。けだし、このノワールが単なる露悪に終わらず、コブラが常に世を儚むようなニヒルな皮肉を呟きながら銃をぶっ放しながらもどこか善や正義を諦めきれていないからではないかと思う。有名なコマでもある様にコブラは終盤、実際には何の利益を齎さなかった教会を批判し「神か……最初に罪を考え出したつまらん男さ」と呟いてみせたが、これはやはり神や正義についてどこか夢を持っている証拠に他ならないと思う。さもなくばこんなセリフは決して言わないだろう。  コブラの海賊としてのアウトローな性格や享楽主義は上記の理想主義的な思想やストイックさに支えられている。寺沢武一は彼の初期作品を「思弁的」と批評していた記憶があるが、そういった性格が彼の作品から消えた事は一度も無かったことは確かだろう、そしてそれこそがこの漫画をいつまでも輝かせているのだろう。海賊と言う自由とギルドに対抗する高潔な戦士の顔を持つあの男のとこしえの旅に祝福を。

ゔぇーる
Veil(1) オレンジの体温
Veil(2) 凪いだノワール
Veil(3) たおやぐビェルイ
Veil(4)透明な火傷
Veil(5)黄金の時間
Veil(6)ほぐれたルージュ
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
※本棚・フォローなどの各アクションメニューはこちらへ移動しました(またはフローティングメニューをご利用ください)