高卒1年目の元バッテリーが名門と弱小に分かれプロで激突する1年間の物語 #推しを3行で推す
※ネタバレを含むクチコミです。
夏の甲子園大会、決勝戦。西東京代表の国分寺南高校は9回裏に逆転サヨナラ負けを喫したものの、春のセンバツ優勝に続き、夏も準優勝という成績を収めた。その原動力になったのが、海部一樹と武藤洋介という超高校級のバッテリーだ。ドラフトを前にし、2人のもとに名門・東京イーグルスのスカウトがやって来て…。甲子園をわかせた黄金バッテリーがプロに入団。プロ野球界にフレッシュな旋風を巻き起こす!!
かわぐちかいじ先生と言えば
「沈黙の艦隊」「太陽の黙示録」など、
国家問題・国際紛争レベルのテーマを扱った大作を
幾つも描かれた巨匠だ。
その巨匠が描いた野球漫画「バッテリー」。
最初は「え、かわぐち先生がスポ根物を描くの?」
と戸惑った。
とりあえず読み始めたら、
「沈黙の艦隊」の登場人物の海江田と深町を
そのまんま野球選手にしたようなバッテリーが
主人公のようだった。
なのでああ野球が舞台だけれどスポ根ってわけじゃないんだ。
もしかして沈黙の艦隊の海江田や深町のキャラを
先生自身が気に入ったので、そのキャラを使って息抜き的に
ゴラク作品を描く気にでもなったのだろうか。
などと思った。
海部は沈黙の艦隊の海江田をそのまま投手にしたような
天才肌で何を考えているかわからない男だったし、
武藤は深町をそのまま捕手にしたような
武骨な男だったし。
あのキャラを使った野球漫画ってのも面白いかもね、
くらいに考えていた。
プロ入りした海部が
「自責点ゼロ、失点したら引退」
を宣言し、
徐々にそれが現実的になっていく展開を読んでも
「風呂敷を広げまくる野球娯楽漫画か」
くらいに感じていた。
天才児・海部と努力家・武藤がそれぞれ成長して、
クライマックスは二人が桧舞台で勝負して、
とかになるんだろうな、と。
良い意味で裏切られ、自分の読みの浅さを思い知らされ
そして感動した。
まさか、ラストに向かって、こんなにもダンディズムが
溢れる話になっていくとは思わなかった。
なんせ国際問題をリアルに描き切った大先生なんだから、
それに比べたらたかが球技を舞台にしては、どうやっても
スケール的に小さい話で終わらざるを得ないと思っていた。
もちろんプロ野球の世界で「自責点ゼロ」を貫くことが
とてつもなく困難な偉業であることはわかるが、
所詮は漫画なんだし、達成しました、大団円です、か
達成は出来ませんでした、これも人生です、か、
どっちかで終わるんだろうな・・くらいに考えていた。
だがそれだけじゃない、かわぐちかいじ先生流の
ダンディズムが溢れ出しまくるいい終わり方だった。
面白かった。さすがは、かわぐちかいじ先生。