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相馬雅之を、たぶん、もう知るものは少ないだろう。
しかし私にとってこの漫画家は、ヤンマガの「漫画の可能性を広げるほどにトンがった青春物」という偉大なる系譜、大友克洋『AKIRA』をその淵源として、望月峯太郎『バタアシ金魚』と古谷実『行け!稲中卓球部』の間を埋めるミッシングリンクとして、ずっと忘れることができない存在なのだ。
『桜金造登場』が刊行された時、その「予感」は充分にあった。ここから新しい時代が始まるかもしれない…そう信じられた。
だが相馬雅之は、その後『パオパオアッコ』という、ごくありふれた小ヒット漫画を一定期間連載し、そして、シーンから消えていってしまった。
当時自分が感じた「輝き」の信頼性を確認しようと思ったのだが、まったく整理の追いついていない自室の書棚から、当該コミックスを見つけ出すことが出来ず、読み直せていない。
それでも、このマンバにある書影を見ると、あの時の「ざわめき」を鮮やかに思い出す。
漫画界には、それこそ数え切れないほど「幻の逸材」が存在してきた。
相馬雅之もまた、そのひとりだった…と、私は言いたいのだけれど。
B6判256ページ 1992年03月04日刊行(ヤンマガKCスペシャル)