ヒラマツ・ミノルさんの作品は基本ギャグが多目のストーリーで安心して読めるんですが、時折挿入されるシリアスな描写の印象もまた、この作者の「真実」なんだろうなあと思います。
この「ヨリが跳ぶ」も、物語の8割くらいはギャグでコーティングされています。ただそのギャグというのは、懸命な生き方の人間が全力でぶつかる結果であり、小賢しい生き方とは無縁の痛快さがあります。
物語の中盤に、あるシリアスなシーンがあります。そこまでのギャグまみれの物語とは異なる、ある女性のラスト・ダンス。アスリートが死に場所を迎えた時に笑顔を浮かべて、それを観ている人間が納得出来るというのは、その物語の語り手の企みが成功したと言えるのではないかと思います。
全20巻というのはちょっと長いかもしれませんし、序盤と終盤で物語のテイストも多少変わってきます。とはいえ面白い作品ではあるので、もし良ければ。

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魔境斬刻録 隣り合わせの灰と青春

長い時を経て #1巻応援

魔境斬刻録 隣り合わせの灰と青春
ナベテツ
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原作小説を読んだのは中学生の頃、近所の図書館で借りたことがきっかけでした。30年後にこの作品がコミカライズされると聞かされたら、少年はどんな感想を抱いたのでしょうか。 ドラクエなどのRPGに多大な影響を与えたウィザードリィ。死亡したキャラの蘇生に失敗すると灰になり消滅してしまうというシビアな設定が、この世界を伝える物語のタイトルとなり、やがてコミックへと転生を遂げました。 版権の都合で、ウィザードリィの固有名詞は一切使えず、アイテムや呪文、固有のモンスター名などは全て変わっています(ガディは原作よりだいぶおっとりしてる気もします)し、気を抜くと先の展開のネタばらしをしてしまいそうになりますし、ここでもなるべく注意をして言葉を選びたいと思います。 昭和~平成のファンタジーのコミックも好きなタイトルはあります。ただ、令和に描かれるとやはり迫力が違うなあと感心しますし、(物語を既に知っているとはいえ)迷宮での冒険がどのように描かれるのか、展開を楽しみにしています。ペース的に、原作を描ききるには相応の話数が必要だとは思います(稲田先生はかなり丁寧にストーリーを紡いでいますし、連載の継続の一助にでもなれば、との思いでこの口コミを投稿しています)。 魅力的なキャラはこれからも沢山登場しますし、日本のファンタジーの金字塔として語り継がれるベニー松山さんの傑作を、1人でも多くの人に知って貰えれば(原作小説、紙だと高騰してるんですよねえ。電子で簡単に買えるんでまあ良い時代になったなあと思います)。 続編の「風よ、龍に届いているか」や外伝の「不死王」もコミカライズされて欲しいもんだと、古いオタクは願ってます(不死王はKindleで100円ですからほんと良い時代です。一応紙でも持ってます)。

機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還

幻獣達の物語

機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還
ナベテツ
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ジョニー・ライデンという名前を知ったのは、テレビのガンプラのCMでした。アニメには出ない、設定先行のキャラであり、知名度と実像が一致しない、謎めいた呪文のような存在でした。 ガンダムを下敷きにしたアンソロジーなどでその姿を描かれることがあり、短編は幾つか持っていますが、26巻ものサーガになるとは思ってもみませんでした(沖一さんの短編集が佳作であると思います)。 一年戦争の最中、エースパイロットを集めたジオンのキマイラ大隊。多くの謎を残したまま闇に消えた「幻獣」。エース達を率いたジョニーに関しても、様々な噂が錯綜しており、それが様々なジョニー像の由縁であると作中で語られます(この辺がアークさんの作劇の巧みなところだと思います)。 作中はZZから逆シャアの間の時期であり、他の 作品で語られて来なかった空白の時代でした。制約のある中、過去作の登場人物やMSを絡め、先行作品へのオマージュやアークさんの過去の作品との関連性もあり、宇宙世紀に描かれた新たな歴史の一篇として、この作品の完結を祝いたいと思います。宇宙世紀の物語を知らない人にはちと勧め辛い作品ではありますが、戦闘シーンの格好良さも含め、ガンダム好きに勧めたい名作です。

がんばりょんかぁ、マサコちゃん

誠実な官僚と陥穽 #1巻応援

がんばりょんかぁ、マサコちゃん
ナベテツ
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以前に赤木雅子さんと相沢冬樹さんのノンフィクションを読んでおり、連載が始まったと知った時、単行本を楽しみにしていました(確か6月くらいに発売予定が出たので、伸びたのにやきもきしていました) 流石に森友事件を知らない人はいないと思いますが、幸福な夫婦を襲った不幸な事件であることは、論を俟たないところです。 赤木さんという人は、官僚として誠実に職務を果たそうとした人でした。本来の官僚というのは全体への奉仕者であり、特定の人間への利益を優先させるようなことを許容することは自己の存在を否定する事になります。己の職務が犯罪へと繋がるとなれば、官僚でなくとも耐え難いことでしょう。まして、仕事にプライドを持つ人であれば、その苦痛からの解放のために「最後の手段」を用いてしまったことへ何か言うことは出来ないと想像します。 ただ、遺された家族は違います。誠実に生きた人生に何が起きたのか、その事を知り、故人の名誉や尊厳を取り返す権利があります。たとえそれが権力者にとって不都合な出来事であったとしても。 この物語は、遺された妻の戦いの物語です。これからどれほど険しい旅路が待つのか、読者はただ見守るとしかできません。でもささやかながら、マサコちゃんへエールを送れればと思います。

1978年のまんが虫

まだサブカルという言葉も無い時代に#1巻応援

1978年のまんが虫
ナベテツ
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若くして成功を収めた作家に対して、その才能を讃えたり、羨望の眼差しで見つめても、その労苦へと想像力の翼を伸ばすことは難しいのではないかと思います。 作品がヒットして経済的な成功を得たとしても、その裏でどのような苦労を抱えたり葛藤を抱いているのか、受け手が知ることは叶いません。勿論、クリエイターに己の事情を明かす義務は存在しませんし、秘すべき事柄であるのかもしれません。 ただ、どれほどの才能を持っていても、彼ら彼女らも人間です。嬉しいことがあれば喜び、悲しいことには涙する。そんな素顔が垣間見えることが、漫画家マンガというジャンルの魅力の一つなのではないかと思います。 この作品は細野不二彦先生(作中では細納不二夫)がデビューに至る迄の物語です。進路に迷い、不確かな未来への夢と現実との間に揺れるその様は、多くの人々と変わらない、等身大の青年の姿です。 一人の青年の青春譜は、その時代を瑞々しく描いており、当時の世相を知ることが出来る一級品の資料としての価値もあると断言します(ヤマトからガンダムへの間を知ることが出来る作品を、自分は寡聞にして知りません)。 同級生の天才達(河森正治さんと美樹本晴彦さん)やトップランナー(高千穂遥さんや宮武一貴さん達)との交流は、自分の知らなかったことでしたし、日本のサブカルの歴史のページとして広く知られ、読まれて欲しいと願う作品でした。長々と書いてきましたが、シンプルに面白い作品なので、まずは試し読みから是非。

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アグネス仮面

アグネス仮面

プロレスが今よりもダイナミックだった20数年前。羽田空港に、ひとりのレスラーが降り立った。彼の名は山本仁吾。5年に及ぶ海外修行を終え、日本のリングに帰って来たのだ!だが、彼の大和プロレスは、ライバル・帝日プロレスとの真剣勝負に敗れ、崩壊の危機にあった。亡き社長・ジャイアント安藤の未亡人から命を受け、道場破りに赴く山本だったが…!?ハイスピードで展開する、爆笑本格プロレスコメディ!!

REGGIE

REGGIE

メジャーリーグ名門チームの4番ながら、不振で解雇されてしまったレジー。再びメジャーに返り咲くため、不本意ながら日本の『東京ジェントルメン』と契約するが……。メジャーのプライドを捨てられないレジーを待っていたのは、“ベースボール”とは似て非なる“日本式野球”のキツーい洗礼だった!

最強ロマン派 毎月父さん

最強ロマン派 毎月父さん

▼第1話/vs.ぞうさん ▼第2話/vs.ピアノ塾講師 ▼第3話/vs.バザーの値札 ▼第4話/vs.バカップル ▼第5話/vs.昔の男 ▼第6話/vs.おさるさん ▼第7話/vs.カエルの王様 ●主な登場人物/鈴木・グレーテスト・総四郎(500余戦無敗の総合格闘家。何事にも“最強”であることにこだわる)、その子(総四郎の奥さん。美人。総四郎に“普通の夫”になってほしいと願っている)、ひろ子(総四郎の長女。かわいい)、かの子(総四郎の次女。かわいい) ●あらすじ/連勝街道をひた走る地上最強の総合格闘家、鈴木・グレーテスト・総四郎。家に帰れば美人の妻と、2人のかわいい娘を持つ父親だが、絵本もまともに読めないとバカにされたことから、自分がいかに「地上最強」かを示すことで父親の威厳を取り戻そうと考え、「地上最大」の動物・象と闘うことを決意。早速翌日、サファリパークで象と対峙するが、闘いを前に妻から「負けたらどうするの?」と賭けを持ちかけられ… (第1話)。 ●本巻の特徴/妻との賭けに負け、マイホームパパになることを約束させられた総四郎。だが、男は最強へのこだわりを捨てきれず、立ちはだかる困難と次々闘い続ける…。『アグネス仮面』の作者が描く地上最強コメディー、待望の第1集!!

アサギロ~浅葱狼~

アサギロ~浅葱狼~

無垢な少年は、幕末最強の「狼」となる。幕末――浅葱色の羽織を身にまとい京都の街を駆け抜けて、人々から「狼」と恐れられた「新選組」。時はさかのぼり、江戸――のちに沖田総司となる惣次郎12歳は、その「強さ」を持て余しながら少年時代を過ごしていたが、一転…!?鬼才ヒラマツ・ミツルが放つ「新選組」堂々始動!!

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