透明な膜で外界から隔離されてしまった町で閉じ込められながら生きていく人たちの話
シェルターとか刑務所として使うために開発中だった技術の事故に巻き込まれて、生きているものを通さないようにする透明な膜で町が覆われてしまった。復旧のめどは立たず町から出られずに生きていく人々の話。短い短編がちょっとだけ繋がっている形で描かれている。 閉鎖された空間で生きていかなければいけない閉塞感や、色々な可能性(職業とか)を強引に閉ざされてしまった感じとか、その中でちょっとした生きがいを見つける感じの心理的なところをかなり緻密に描いていて、さすがヤマシタトモコと思った。 この漫画の主軸にもなっている希のストーリーだけど、外の世界に恋人がいてどうしても触れ合えない悲しみをそのまま描いているのでかなり心にきました。
花井沢町は小さな町だ。変わった人が住んでいるわけではない。なにか特別なものがあるわけでもない。だけど、隔絶されている。
透明な膜に丸ごとすっぽりと閉じ込められた町。そこで暮らす人は、町の中からは出られない。そんな普通の人が暮らす小さな町には、法律すらも届かない。
どこにも行けない、小さな町だからこその苦しみと喜び、ちょっとした幸せ。花井沢町で暮らす様々な人の感情が瑞々しく描かれている。そして、ある女の子のバラバラに描かれた時系列が、この漫画の魅力を引き立てる。何度も読み返したくなる作品。