ラーメンも含めてグルメ漫画が好き。
けれどなかには好みでない漫画もある。
美味さを表現しようとしすぎて、
危ないポエマーな世界に逝っちゃった漫画とか。
料理や料理人の価値を強調しようとしすぎて、
命賭けで食材を調達したり調理技術を修行したりとか。
漫画なんだからドラマチックじゃなければつまらないけれど、
リアリティがなさ過ぎると、私的には楽しめなくなってしまう。
この「ラーメン王子」も最初に表紙を見たときには
「上品でイケメンな主人公が
ラーメンをまるで超高級料理のように
格調高く礼賛する漫画なんだろうな」
と想像した。
ああこれは多分、俺が嫌いなタイプの漫画なんだろうな、と。
食わず嫌いだった(笑)。
確かに主人公は見た目は超イケメン。
しかし中身はどちらかというとラーメン・キモオタだ。
「イケテル王子」ではなく「オモロイ原始人」だった。
そういうギャップを狙った設定の漫画だったのだろうけれど、
いっぽうで単に設定が甘くてツッコミどころが
ボロボロ生まれちゃったのでは、と思う面もあったりする。
遭難して10年間無人島にいたわりに
仕事は出来るし
ラーメンだけじゃなく中国のことわざや
フランスの美食家の名言も知っているし、
藤子不二雄先生やトキワ荘を崇拝しているし(笑)。
マナーには気を使うが小さいミスを多発して悩むし、
この主人公、キザなイケメンどころか、
無邪気馬鹿で庶民的なキャラだった。
そしてそれらがどこまで作者の計算通りかわからないが
結構いい味をだしている。
また、全てのエピソードが、実在するラーメン屋さんを
取材して作っているそうで、
2000年~2010年位のラーメン界のリアルなレポート漫画でもある。
またそれが、上から目線ではなく過度でもなく、
それぞれのラーメン屋さんへの作者の敬意が
感じられる内容でいい感じだ。
大爆笑するとか驚愕の薀蓄ネタ披露とかの漫画ではないが
わりといい味がして、まさに
「お高くとまってるんじゃねーかと思っていたら
ざっくばらんな感じの面白さだった」
という、まさに
「ラーメンのような味わいの漫画」
だった。