切ない・・・。
なんて初々しくて、清々しくて、切なくて ・・・。 素敵な作品なんでしょう。 一冊読んだだけで、映画を見終わった感覚になりました。 小学生のひと夏の経験とは、言えないもっと大きくて深い感じ。 心が揺さぶられます。 是非、手にとって読んで欲しい!!
転校先の学校で、同級生・理生の秘密を知ったなつる。少年と少女の、幼い恋と冒険の物語。――七尾(ななお)なつるは東京から転校してきた小学6年生。クラスの女子に無視され、サッカーチームの新任コーチともソリが合わない。そんな時、大人びたクラスメイト・鈴村理生(すずむら・りお)の、誰にも言えない秘密を知ることに……。夕立、お祭り、「とうふ」という名の白い猫。小学校最後の夏。ふたりの、ひそやかな冒険が始まる。
アフタヌーンで「金のひつじ」を連載中の尾崎かおり先生による過去の傑作。大人には相談できない秘密を抱えて、誰にも内緒の初恋をした11歳の夏。強烈なノスタルジーに加え、逃避行のドキドキと背徳感、爽やかさと切なさが心地よい1冊です。
こんな象徴的な台詞がありました。
「どんな理由があっても…悪いことだとわかってても それしかできないときって」
「他にどうしたら──どうしたらよかったんだよ!?」
周りより大人びて見えていても少女はどうしようもなくまだ子供で、その「重荷」は小さな肩に背負うにはあまりにも大きくて、そんな彼女の力になりたいと願う少年もまた何もできない子供でしかなくて…
幼い彼らは大人の力を借りなければ生きていけないけれど、彼らの中にはたしかに守りたい世界があって、でもそれって紛れもない「愛」そのものなんですよね。愛という確かな意思によって突き動かされた物語であるからこそ、彼らの努力も涙も旅の結末も、儚くも美しく感動的なのではないでしょうか。それがたとえ子供故に浅はかで、拙い足取りだったとしても。
小学校高学年のこの時期ってなかなか自分の素直な気持ちが自覚できなかったり、思ってても言えなかったりしたものでした。けれど勇気をもって一歩踏み越えて行動した先にはまったく違う世界が広がっていて、そこから得られる高揚と不安それこそがまさしく冒険のワクワクに他ならないわけです。異世界ファンタジーでも得られないほどのドキドキで感情を揺さぶられる、少年少女たちが精いっぱいの冒険をする話がたまらなく大好きなのです。
「四月は君の嘘」とか好きな人にも薦めたいですね。