名無し

いわゆるファンタジー的な魔女から現代にいるとしたらこんな感じ、みたいな魔女まで。第2集の『うたぬすびと』がすごく良かった。五十嵐作品は科学の知識を得る以前の自然の感じ方を思い出させてくれる。

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魔女

モザイク画のような美しさ

魔女 五十嵐大介
名無し

僕の曾祖母は信州の山奥の村でまじない師をしていました。その村は、とにかくマムシが多く、噛まれて死んでしまう人が後を絶たなかったそうです。ある時、通りかかった旅の僧が、うちの先祖にマムシ毒に効く薬草とまじないを伝えました。その力は確かで(実際、マムシ毒に効果があるアルカロイドは植物由来であるそうです)、血清が普及するまではたくさんの人を救ったそうです。その薬草とまじないは代々長男の嫁に受け継がれてきたのですが、それも、ここ三代続いた嫁姑大戦争によって途絶えてしまいました。  自分のすぐ近く、当たり前の生活の中に、超自然的なものとの繋がりがあるのはとても不思議に感じます。  『魔女』に描かれるのは様々な魔女です。草原に住む魔女もいれば、都市に住む魔女、雪国に住む魔女や、ジャングルに住む魔女がいて、それぞれが違う体系の魔法を使います。ただ、自然と人間を仲立ちする者として魔女が存在するということだけが共通しています。  「KUARUPU」で描かれるのはジャングルに住む魔女。森を破壊し、開発しようとする政府に反対する魔女クマリは最後の手段として自分をエサにして森の強力な精霊を呼び寄せます。政府軍は先も見えない白い霧の中、緑の地獄を見るのですが……。クマリたちの一族は自然と共に生き、森を支配する精霊の力を得てきました。しかし、自然から切り離され精霊を信じない人間たちには、生命の尊厳を問う霊の声も届くことはありません。ただ最後に彼らは畏れるべき精霊の世界を目の当たりにするのです。  『魔女』に登場する精霊や魔術の世界は荘厳だったり、気色の悪い異形だったりさまざまなものが描かれています。そこにはモザイク画のような美しさがあります。細やかなものの集まりが全体を構築していくというモザイク画の美しさはこの作品のテーマそのものを表しているようにも思えます  誰かが生み出したもの、作ってくれたものの実態を知らず、出来上がったものの上でしか生活していない我々と違って、魔女たちの生活はそのどれもが自分で得た経験と行動を根っことした地に足がついたもの。今、目の前にあるものとが全ての宇宙につながっている……そんな宇宙を感じさせてくれる、『魔女』稀有な作品なのです。。

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かまくらBAKE猫倶楽部

かまくらBAKE猫倶楽部

古都鎌倉には猫にまつわる古くからの噂があるーー鎌倉のどこかにある「化猫倶楽部(ばけねこくらぶ)」に行けば、いなくなった猫に会えると。マヤとガクトが働く「かまくら猫倶楽部」には、今日もまた、その噂を頼りに人が迷いこみ、物語を語り出す。それが、怪異を呼び寄せるとも知らずに…。人と動物、この世とあの世。意識と無意識の境界に現れる怪異譚第1巻!

シドニアの騎士 トリビュートマンガ・イラスト集

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『シドニアの騎士』の世界を、真鍋昌平をはじめとした様々な作家がマンガ・イラストで描く! 正道スピンオフから日常系ギャグまで、幅広いジャンルがそろう「シドニア」ファン必読の書! ●マンガ 「千年の執着」真鍋昌平 「ふろうじょし!」小川彌生 「圧縮教育用仮象空間」やしろ学 「弐瓶先生ごめんなさい★」東村アキコ 「命がけの週一食」蟹江鉄史 「SDN48計画」清水幸詩郎 「エナノキョウイ」タツヲ 「衛人強化の全貌」石口十 「機動衛人 ツルウチ」道明宏明 「しっぽ」小川彌生 「弐瓶勉先生からシドニアを感じれた瞬間の思い出」東村アキコ ●特別寄稿イラスト すぎむらしんいち/五十嵐大介 ●コラム シドニアの騎士誕生物語

リトル・フォレスト

リトル・フォレスト

スローフードって楽じゃない。手間ひまかけて、汗かいて。だけど、そうやって辿り着いたひとくちには、本当の美味しさが満ちているのです。都会から生まれ故郷の小森に戻り、農業を営むいち子。四季折々の収穫に舌鼓を打ちながら、彼女は自分の生き方を模索する――。当世きっての漫画家が描く、本物のネイチャー・ライフ。

そらトびタマシイ

そらトびタマシイ

稀代の表現者・五十嵐大介が解き放つ珠玉のエンターテインメント全6編。他の追随を許さぬ独創世界、人間の体温をも伝える描写力。“漫画”という表現が内包する無限の可能性を鮮やかに提示する!月刊「アフタヌーン」掲載の読み切り作品4編に加え、週刊「モーニング」にて発表されたオールカラー作品、そしてアフタヌーン四季賞1993年冬のコンテスト応募作品(雑誌未掲載)も収録。眩(まばゆ)き結晶、待望の登場。

はなしっぱなし

はなしっぱなし

まさに現代の「遠野物語」。伝説的コミックを復刻!このたび長らく入手困難だった五十嵐大介さんの作品集『はなしっぱなし』を、河出書房新社から上下巻で復刻させていただくことになりました。この作品は、漫画ファンの間ではすでに伝説と化していたもので、一遍一遍が独立した幻想綺譚の傑作になっています。近年、ハイレベルな新作を次々と発表し、再評価の高まる五十嵐さんですが、この『はなしっぱなし』には、デビュー作ということもあり、彼の作風のすべてが含まれているように思えます。切ないメルヘンから背筋のゾッとするような怪奇物まで、様々なファンタジーが収録されたこの希代の作品集を、ぜひ、御一読ください。上下巻ともに描き下ろし短編が掲載されます。

ディザインズ

ディザインズ

自然界を超越した異形の生物──HA(ヒューマナイズド・アニマル)。それは遺伝子を“設計”された、ヒトと動物とのハイブリッド。HAが備える驚異的な身体能力は、野心を抱く人々の策略によって殺りくの現場へと投入され、その真価を発揮していく。ヒトは何のためにこの異形をデザインしたのか──その背景には、人類の未来へとつながる壮大な計画が横たわっていた! 稀代の表現者・五十嵐大介が放つハードSF、ついに登場!

ウムヴェルト 五十嵐大介作品集

ウムヴェルト 五十嵐大介作品集

『ディザインズ』『リトル・フォレスト』『海獣の子供』などで絶対的な支持を獲得している五十嵐大介の作品集、待望の登場! 2004年から2014年にかけて描かれた短編は、「この世界のどこかにいる、かもしれない」──そんな「未確認生物」をモチーフとした珠玉の10タイトル。『ディザインズ』の原型となる読み切り『ウムヴェルト』も網羅し、五十嵐大介の環世界が惜しみなく放たれた1冊!

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