老犬とつづ井

犬といられる奇跡と幸せと愛 #1巻応援

老犬とつづ井 つづ井
兎来栄寿
兎来栄寿
″愛犬というのは愛が犬のかたちをしているという意味です″ もう、冒頭のこの部分からして「流石つづ井さんッ!」と膝を打たずにはいられませんでしたよね。 『腐女子のつづ井さん』、『裸一貫! つづ井さん』でお馴染みのつづ井さんが、いつもより少し穏やかなテンションで綴る老犬Aとの思い出の物語。あえて名前を公表しないところにも、つづ井さんの想いが伝わってくるようです。 最初に断り書きがある通り、「犬が死ぬ」「犬が死ぬまでの話」です。読む前から「こんなの読んだら泣くに決まってる……」と思いながらも、つづ井さんの優しくて面白い筆致で読まないという選択肢はなかった犬飼いです。 Aは、グレートデンや土佐犬に間違えられるほど大きなラブラドール。たまにいるんですよね、規格外に大きくなる子って。私の知り合いでも、1歳ちょっとで20kgになり30kgを超えてから先は計るのが怖いと言われていた超巨大芝を飼っている方がいます(そもそも「芝」が小さいという意味で成犬の平均が10kgくらいです)。でも、大きい子はまた大きい子のかわいさがあるんですよね。小さい子がかわいいのはもちろんなんですけど。 老犬になってもなお成長してできることが増えていく部分があったり、人間への甘えが不足していたりという部分は、考えてみれば人間でも同じようなところはあるよなぁ〜学びだとなりました。 つづ井さんがソファで寝ている時に、近寄ってきてひとペロしてそばで寝るという動作をした時に、穏やかに同じ空間で暮らしていられることの奇跡、その喜びなどで自然と涙が溢れてくるシーンではこちらも早くも目から汗が出てきました。 おばちゃんが大切にしてくれた「いぬき」のエピソードにもほっこりしながら、本当に少しでも辛い瞬間は少なく、穏やかで幸せな時間を1秒でも長く過ごして欲しいなと願うばかりでした。 そして、つづ井さんのように伝えても足りない愛情を、伝わらないかもしれないけれど今まで以上にどうにか目一杯伝えていきたいと思いました。 犬を飼っている方もそうでない方も、笑って泣けて心がじんわりと温まる1冊です。
まわるドーナツと金曜日

思い出のドーナツをめぐって #1巻応援

まわるドーナツと金曜日 こやまけいこ
兎来栄寿
兎来栄寿
先日、かりんとうを気に入ったアメリカ人がその正体を砂糖たっぷりの小麦粉の生地を油で揚げたものだと知って友人に「これは日本のオールドファッションドーナツだ」と紹介したら「日本のドーナツは硬いな……」というコントが成立してしまっていたという笑い話があり、好きでした。 皆さんはドーナツはお好きですか? 私は大好きです。サクサクでシンプルな味わいに飽きが来ないオールドファッションも良いですし、香ばしいチョコレート系も美味しいですし、ソフトな食感のシュー系も魅惑的ですし、ふわふわのエンゼルクリームやもっちもちのポンデリング系も外せないですし、ヘルシーで優しい味わいの豆乳ドーナツも好きです。食べ過ぎには注意ですが、ドーナツ最高です。 そんなドーナツ好きが読むと、ドーナツを食べたくて仕方なくなってしまうマンガが本日発売されました。『かわうその自転車屋さん』のこやまけいこさんが描く新たなハートフルストーリーで、移動販売のドーナツ屋さんのお話です。 幼稚園の栄養士だった亡き母が作ってくれた思い出のドーナツが忘れられない赤髪の少年わたる。恩義ある園長の孫であるわたるのために、そのドーナツを何とか再現しようと奮闘する黒猫の黒鉄(くろがね)。 キッチンカーの外装のデコレーションや内装の設備などが整っていくさまにとてもワクワクします。食品衛生責任者の講習を受けに行く件などもリアルで笑ってしまいましたが、大事なことです。また、キッチンカーといえど好きな所で勝手に営業して良いわけではなく、その場所を見つけるためのやり取りの部分も好きです。 イーストドーナツとケーキドーナツの違いや、実際にドーナツを試作してみるところまでかなり詳細にドーナツ描写もなされていくのでドーナツ食べたい欲がモリモリ高まります。 そして何より良いのは、お店を通して関わる人々にドーナツを通して美味しさのみならない幸せを振りまいていくところです。例えば1話では、人と喋ることが苦手な引っ込み思案の美容師のエピソードが描かれます。彼女が、まわると出逢い彼らの作った温かみのあるドーナツを食べることで救われていく様子に心が和みます。 今日はホワイトデーでもありますが、ドーナツと一緒にこちらを楽しんでみるのも良いのではないでしょうか。
クジマ歌えば家ほろろ

妙なリアリティのある奇妙な鳥人間と居候コメディ!

クジマ歌えば家ほろろ 紺野アキラ
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
めっちゃくちゃ好きです!! 中学一年の鴻田新(こうだあらた)が学校からの帰り道に出会ったのは腹をすかせた奇妙な人型の鳥みたいな人語を話す生物・クジマ。 聞くところによるとロシアから来たという。 日本食が食べたくて来たというが…。 いろいろあって翌年の春にロシアに帰るまで住むことになったクジマと鴻田家のホームコメディ! https://gekkansunday.net/work/4466/ 1話あたりそこまで長くない話で、寒くなると日本に来て暖かくなるとロシアに行く渡り鳥みたいなやつに居候されるっていう奇妙な設定が素晴らしくハマって面白いです! 奇妙な鳥ってだけでも面白いのに、ロシアから来てるからロシア語話せるしロシア料理作れるし、たまに外国人みたいな「分からないデス」みたいなとぼけ方を入れてきたり、ブチ切れるとロシア語で罵倒したりともう、面白い! 単純にロシア人の留学ものとして見てもいいのかなって思ったら、最悪、虫食べて生きていけるっていう、それはもうマジで鳥じゃんっていう部分も垣間見せたりでクセになる! 紺野アキラ先生、いままで読切も漏れなく全部面白かったので、連載始まって本当に嬉しいです! ホラーも面白かったので、この鳥にも少し怖さがある気もしますが、ホラーとコメディって表裏一体なので楽しみです。
いきものがすきだから

犬を飼っているし愛しているからこそ

いきものがすきだから カレー沢薫
さいろく
さいろく
私は老犬を飼っていて、もう永くないというのを聞かされて早2年ぐらい。まだまだ長生きしてほしい。 でも現実を見つめると結構色々ネガティブというか暗い思考に囚われて、無償の愛を提供し続けてくれる愛犬を抱きしめながら枯れるまで涙が出る時がある。 そんな愛犬家だからこそ、というと語弊があるかもしれないけど 保護団体ってどういうシステムなんだろう、とか 世の中は実際どういう実態なんだろう、とか そういうのはぶっちゃけとても気になる。 でもニュースでペットショップ問題とか暗い話題が出るとシャットアウトしてしまう。わかってるつもりだからこれ以上知りたくないと考えてしまう。 本作はそういうシステムというか、どちらかというと「なんでやってるのか」とかそういう人間のエゴみたいなところにも焦点が当てられていて、カレー沢薫先生はきっと生き物が超好きなんだろう、葛藤があってなんとかしたいんだろう、でも解決できないというのも理解しているんだな、というのを感じられる気がする。 とても深いツラい話もあり、人間のエゴというか業というかもあり。 でも犬猫かわいいよねっていうそこに帰って来る。 こんな絵でギャグテイストなのに泣かされるとは思わなかったなぁ。 2巻読むの怖いけど買ったので今から読む。
トラさんと狼さんシリーズ

トラさんと狼シリーズ。同じ世界線のシリーズもの。

トラさんと狼さんシリーズ 春野アヒル
るる
るる
「トラさんと狼さん」 可愛い作品! トラ猫だった頃のトラがめちゃくちゃ可愛い😍 2人の寿命差が気になる。 トラが一夫多妻、でもトラは狼に一途なのがとても良いし、兄もそうなると予想w 「トラ兄さんとワンコさん」 引き続きトラ兄さんとクマ(ワンコ)の話。 クマにとって主従関係から夫夫に変化。 あれ、でもトラ兄さんハーレム持ってるけどどうなるの? 「続 トラさんと狼さん」 トラの寿命が気になり始めた。 自分の後継者的に甥のコドリと接触し出したトラにウルッとした。トラ父の長寿の原因は分かるのかな。 「終 トラさんと狼さん」 トラ父は人間の暮らしで長生きしているってこと? そこがよく分からなかったけど、最後の最後、アレは約束通り狼がトラを迎えにきたってことなの? 一気にダーッと涙腺崩壊した😭 「大冒険」 可愛かったトラ猫(偽w)が大好きだったから、成長前の出来事が読めるんだ😊って油断してたら途中で大号泣になりました。 クマとトラ兄のお別れ(短期w)にも泣いたけどこれはちょっとトラ兄ー😂って噴き出してしまった。(不謹慎w) そしてトラ兄のモノローグで狼の最期を知ってトラのこと想像すると号泣。 天国での2組の再会、とても良かった。 「スカーフとキツネ」 スカーフがオトコマエ🥰 天敵だけどカフカも落ちた。 あとはトラと狼がちょこちょこ登場。 「ちびトラさんの日常」 シリーズ最後にまたちびトラ登場🥰 狼の初恋、森の天使がまさかのトラ兄😆 これが最後なのはちょっと締まらない気がするけど、 そのままタイトル「日常」の回収かな。
うちのむっくはいつも楽しそう

「いぬ」という神秘的な愛の顕現 #1巻応援

うちのむっくはいつも楽しそう じゅん
兎来栄寿
兎来栄寿
ポメラニアン飼いとしては、読まずにいられませんでした。 『こんにちは、いぬです』のじゅんさんが描く、実際にじゅんさんと一緒に暮らしている若いポメラニアンのむっくくんとの生活の様子を描いたフルカラーエッセイ4コマです。 ゾウボールに夢中だったり、「〜する人」という言葉に敏感に反応したり、ドッグランでみなに挨拶して全速力で駆け出したり、前からくる人の買い物袋やキャリーケースをいぬだと思ったり、さまざまなむっくくんの仕草がとてもかわいく和みます。幕間で、時折実写のむっくくんの写真も掲載されておりただただかわいいです。 我が家のポメはポメにあるまじき大人しさでおもちゃ類にもまったく興味を示さないし、食に対してもそこまで執着がないので同じ犬種であっても全然違うなと思うところも多いです。 けど、それでもやはり同じポメラニアン。 ・人間の間に挟まろうとしてくる ・まるいふわふわベッドを与えてもはみ出す ・舌をしまい忘れる ・喜びが限界突破して高速回転しCDになってしまう ・食べ物を少し離れた場所に持って行って食べる ・時々日本語を理解している ・玄関の「ピンポーン」には反応する ・うれしいと耳がなくなる(アザラシ化) などなど、「あるある!」と深く頷いてしまうところが盛りだくさんです。 飼ってない人には伝わらないと思うんですけれど、本当にポップコーンやパンの匂いがするんですよね。肉球の汗腺から出るにおいのようなんですけど、外見も声もかわいいのに匂いまでかわいいってどういうこと? といぬかわいすぎ宇宙にいざなわれます。 「ポメラニアンには″猿期″がある」 というのも、犬が好きな人でないとなかなか知らないことですよね。他の犬種でもこういうことはあると思うので、無限に読みたいし知りたいです。 「ニトウシンフワフワザウルス」などの豊かな語彙力とかわいい絵柄でとても楽しませてくれますが、92ページからの ″「いぬ」それは神秘に満ちた存在 「愛」そのもの″ というフレーズから始まる、いぬという存在そのものを褒め称える件は真理に他なりません。 番外編にじのはしは、いぬはもとより他の動物と暮らしている人や暮らした経験がある人は涙なしには読めないでしょう。 いぬ、いてくれてありがとう。 ときどき大変なこともあるけれど、今のこの穏やかな一分一秒を大事に大切に一緒に生きていきたいです。
世界の終わりに柴犬と

犬好きによる、犬好きのための

世界の終わりに柴犬と 石原雄
ゆゆゆ
ゆゆゆ
小難しいことを話すご主人様と、喋る柴犬はるさん。 犬種による特徴がよく現れた話もあったりと、犬が好きな方が描いているんだなあと、読んでいてほのぼのしてしまう。 ちなみに人は存在しない世紀末だけど、喋る犬と宇宙人と他の生き物(猫以外)はいる。 喋る犬と書いたが、作品に登場する動物はだいたいみんな喋っていて、ご主人様は宇宙人とも会話は問題なくできる。 世紀末だからかと思えば、その前からご主人さまはハルさんの言うことがわかっていて。 つまるところご主人様は、人類最後の1人であり、他の生き物の言語がわかる凄い能力を持つ人。 多数派の宇宙人からしたら、その能力が特殊かどうか確認しようがないし、そんな特技がなくても希少。 動物が喋る設定を考えるだけでも奥が深い。なんて中二病。すごく良い(褒めてます)。 ちなみに私は、動物に対する愛情が詰まっている漫画を見るたびに、『カワイスギクライシス』をふと思い出して、これは作中で争いが起きてしまう…と思うようになってしまった。 本作では人の世としては終わっているので、どちらがかわいい論争は起きそうにない。 人と人との争いが生まれない、平和な世紀末の物語でよかった。
ザ・にゃんフィクション

われわれはみんな「お猫様の奴隷」 #1巻応援

ザ・にゃんフィクション たなかふじもと
兎来栄寿
兎来栄寿
たなかふじもとさんが描く、実話ベースの猫マンガです。 大吉・中吉・小吉の3匹の猫と暮らす漫画家と、マネージャーの愉快な日常がコミカルに繰り広げられています三猫三様の性格や特色がしっかりと描かれますが、基本的にどの子も自由奔放なのは共通しています。 たなかふじもとさんは絵もスタイリッシュで読みやすい上に猫の所作や体勢がリアルでとても良いですが、文才を感じるセリフや文章もまた非常に味があり、特に猫をあやしながら悟りの境地に達するシーンが大好きです。 マネージャーはかわいい外見としっかりとした性格に反して、一生「◯◯」ネタを擦るのもまた好きです。 「誰だって◯◯に息を吹きかけられたら声出すでしょ!」 はあまりにその通り過ぎて笑いました。 漂白中のお風呂に侵入しようと次から次へとやってくる猫たちを、ちぎってはリリースちぎってはリリースしてタワーディフェンスのような状態になったときの 「こういうゲーム作ったら売れそう!!」 も的確すぎますし、幕間では実際の写真もたくさん出てくるのですが、PerfumeやEXILEなど似ているアーティストになぞらえたシリーズもとてもかわいく面白おかしくて笑みが溢れました。着眼点の良さを感じさせるネタが続出します。 3匹を飼うにいたった理由を描いたエピソードでは、とても共感を覚えました。私は犬飼いですが、コロコロの扱いが熟達していくのはよく解ります。 かわいくて面白くて癒やされる猫マンガが好きな方にお薦めです。