寄生獣

誰もが認める名作「寄生獣」

寄生獣 岩明均
名無し

人に寄生し、その体を乗っ取り、人間を捕食していく謎の生物…これだけ言うとホラーの趣がありますが、これはヒューマンドラマです。 テーマも環境問題がどうのと言う、今の時代ではありふれた陳腐な物に感じられるかも知れませんが、逆にそれが寄生獣(パラサイト)の「自然の摂理」的な物を感じさせます。 パラサイトには悪意があるわけではなく、単に「この種を食い殺せ」と言う本能に従っているだけなので、弱肉強食の摂理に従えば、彼らは普通に生きているだけと言うことになります。 つまり彼らも自然の一部なのです。 それが環境を破壊している人間へのカウンターとしての生物なのかが分からないため、パラサイト当人達も「我々は何故こうして生きているのか」と考察する者もおり、中々深いです。 結局、パラサイトの中で一番の能力を持ち、リーダー格である「後藤」は、環境破壊の権化である、ゴミ捨て場の毒を主人公に打ち込まれてトドメを刺されますが、これも皮肉が効いています。 主人公に寄生し損ね、共同生活を送ることになる「ミギー」にも妙な愛嬌があり、明言はしませんが、最後彼らがどうなるかは涙無しには見れないかもしれません。 名言や名シーンの多い漫画でもあるので、それだけでも読んで損はしないでしょう。 作者の岩明氏の絵も、人間と人間で無い何者かの違いがきちんとわかる辺り凄いです。 特別綺麗とか特別美しいとかそういうのではありませんが、生きた眼とそうでない眼の描写が抜群に上手い。 視線だけで「コイツはヤバイ」とか「コイツ人間じゃねぇ」と言うのを分からせるのは類い希なるセンスだと思います。

永世乙女の戦い方

女流棋士として普通なのが、むしろ良い

永世乙女の戦い方 くずしろ 香川愛生女流三段
六文銭
六文銭

同著者の作品「千早さんはそのままでいい」が好きで、将棋マンガも好きだったので、ある種流れで読んでしまったが、いい作品に出会えた。 女流棋士を題材にした作品だが、特に気に入ったのが、主人公がその業界ではいたって「普通」な感じなところ。 もちろん主人公になるくらいなので、ある種センスみたいなものはあるようだが、神童だったとか、業界から一目おかれるズバ抜けた才能があるとかない。 なんなら奨励会に通う年下に、ハンデをもらうくらいだ。 伝聞推定だが、将棋界とは、幼少の頃から化け物みたいな強さでしかプロにはなれないし、ゆくゆく生き残っていくにはそれ以上でないと厳しいと聞いているなかで、主人公の能力はいたって平均値(ちょっと強い?)くらいの印象しかない。 ずっと続けていくのかも不明だ。 ただ、将棋を教えてくれた憧れの女流棋士と指したい、その一心のみで指している。 この普通なのが、なんとも良いんです。 将棋よく知らない一般人と目線が揃うというか、特に女流はぬるま湯とか腰抜けとか、この普通さに女流の現実を切り込んできちゃうのもいい。 そんな主人公の香が、これからどう化けていくのか、そのきっかけは何なのか、将棋界における女流の現実と、どう立ち向かうのか? 色々、今後が楽しみな作品です。

ふしぎ遊戯

何度読み返しても、何年たっても、色褪せない作品です。

ふしぎ遊戯 渡瀬悠宇
名無し

本の世界に入り込んでしまった中学生の美朱が、朱雀の巫女として朱雀七星士を集める旅に出る恋愛ファンタジーであるこの作品。最初は、かっこいい男の子の鬼宿はじめ、魅力的な人物たちばかりの朱雀七星士にドキドキ!で、胸キュンな場面もたくさん!! 主人公と同年代だった私はあっという間にのめり込んだものです。 しかし、それだけでないのが「ふしぎ遊戯」。 中学生には残酷でしかない悲しい現実や裏切りなどに直面し、身も心も傷つくシーンがたくさんで・・・一体、何度泣いたことか・・・。 けれど、恋愛や友情の難しさと大切さ、国や立場が違えばそれぞれの正義が違うということ、死生観など、同時に多くのことを教えてくれました。はじめて読んでからずいぶんたつけれど、その間に何度も読み返すたびに、登場人物たちへの共感は増していく作品です。 ・・・最初のころは、同年代ということもあり、主人公びいきだったけれど。今では、美朱を見守る面々はもちろん、敵対する面々の気持ちにも納得し理解も出来るからなぁ。 面白いと思える作品は、楽しいばかりではなく、こうして現実として考え自分の糧に出来るものだなとしみじみ思います。 少女漫画にしては、戦いのシーンも誤魔化すことなく描かれていて、大人でも満足できるの間違いなし!なので。これからも、たくさんの人に愛され、ぜひぜひ後世に残っていって欲しいものです。

ゴクウ

左眼に最強スマホを持つ男

ゴクウ 寺沢武一
名無し

「コブラ」で有名な寺沢武一先生が描く 絶対的サイバー・ヒーロー漫画。 完全なるコンピューター社会となった近未来。 元警官で今は探偵の無頼漢・ゴクウは、ある事件に関わり 負傷し意識を失う。 気がついたときには何者かによって 左眼がコンピューターの端末に換わっていた。 世界中のコンピューターと、それにネットで繋がる全機械、 それらをゴクウの意思で自由にコントロールできる端末に。 ゴクウが望めば世界中のコンピュータが意のままになるのだ。 望む情報は瞬時に検索・分析されて左眼に映る。 敵も味方も関係ない。パスワードもセキュリティも意味が無い。 全コンピューターを入力の手間すら要らずに瞬時に動かせる。 ハイパー如意棒(伸縮自在で衝撃波も撃てる)も装備し、 神の眼をもつゴクウが、 ネオ東京CITYで巨悪を相手に大激闘! あえてツッコミを入れるならば 世界中のコンピューターを操れるゴクウは、 ベッドに寝転がりながらアメリカのICBMをソ連に 打ち込むことも可能な筈だし、 コーヒーを飲みながら軍隊を他国に侵攻させることも可能な筈。 部屋に篭ってゲーム三昧しながらネットバンクの貯金残高の 桁数のゼロを無限に増やす事だって可能・・な筈(笑)。 まあそれをやったら、漫画としてヤマもタニも なくなってしまうわけだから、絶体絶命の危機におちいり、 そこをサイバー能力で逆転してくれないと面白くない。 そこらへんを、読者にツッコマさせずに サイバーでハイパーでスペクタルな世界を演出し、 読者を面白がらせるのが「流石の」寺沢先生。 部屋から出なくてもいいのに、自らが動く。 ハイパーメカニカルだけれど妙にオリエンタルな 未来忍者やサイボーグ鬼や思念体の天女と戦う。 血ヘドを吐いて死にそうになりながら、 古臭くてキザなセリフを口にしつづけ、 報酬は助けた美女のキス。 なにかが足りなかったらただのトンデモ漫画だが、 寺沢先生独特なキャラや舞台設定の力で 凄くカッコイイ漫画にしてくれている。 世界中のコンピューターを操れる端末、なんてのも、 これをスマホみたいなアイテムにしていたら なんの面白味もロマンも生まないわけで、 端末をアイテムとしてではなく 左眼として肉体の一部にしてしまうところが 寺沢先生の上手さ、凄さ、ロマン。 ビバ!寺沢ワールド! コブラが好きな人が読んだら ゴクウも絶対に気に入ります。