千歳くんはラムネ瓶のなか

リア充になりたいかー!

千歳くんはラムネ瓶のなか 裕夢 ボブキャ Raemz
六文銭
六文銭

クラスカーストなるものがある。 いわゆるバラモン的な最上位がリア充といったところで、オタクや引きこもりは最下位みたいな。 本作は、主人公が最上位のリア充で、クラスメイトの引きこもりにリア充とはなんぞやを教えていく話。 まず、これはライトノベル原作で、しかも「このライトノベルがすごい」で今年1位になったということで、ラノベ界では一定の市民権を得ていることに驚いている。 つまり、 え、ラノベ読んでいる層の方々、リア充になりたいの? と驚いたのだ。 そもそもラノベを読んでいる層とリア充とは水と油みたいなもんで、双方相容れないというか、たぶん生態系としてお互い興味関心がないんじゃないかと思っていたから。 (すいません。多分に偏見があります。自分がそうなので。) 令和の学生たちは違うのかしら?と驚いた。 と、ここまで書いていて思ったのが、 こんな感じで相容れなかった二つの種族が歩みよっているのが新しいのかもしれないと考え直した。 今までは、理解されないもの同士、対立構造(ないしは交わらない平行関係)だったのが、本作は、リア充から陰キャに対して歩み寄りともいえるコミュニケーションが生まれているのが斬新なのかもしれない。 そう考えると、今までのカテゴリにない面白さがある作品なので、ぜひ一読をしてほしい。 そうでなくても、安定運用のラノベ原作の可愛い女の子が盛りだくさんなので、そのラブコメ要素でも楽しめると思います。 しかし、スクールカーストとか、リア充がどうとか、他人にどう見られているかとか、学生時代とはなんとも生きにくいもんですね。

姉を好きなお姉さんと

恋は無くとも「エモい」同居 #1巻応援

姉を好きなお姉さんと 真くん
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

勿論ただの同居なら、別に恋愛は無くても、友情とか利便性とか契約とか、どんな関係でも構わない訳です。 で、この作品ですが、同居する二人の関係はかなりヘンテコ。 空き巣に入られて身の危険を感じた社会人・きのめは、一時的に居候させてくれる女性・あけびを姉に紹介される。しかし彼女、実は〈姉に〉恋してる! 漫画家のあけびはカッコよくて優しくて、変な男性に纏わり付かれるきのめには、頼れる存在。一方きのめは、得意な料理を振舞ってあけびに喜ばれる。win-winな関係は噛み合っていて楽しげですが、きのめの気がかりは、あけびの姉への恋心。 最初「姉を好きな人」とどう接して良いか分からずテンパる所から始まり、あけびの純愛に触れるきのめの、情緒が激しすぎて可笑しい。そして二人の生活は次第に楽しくなって行きつつ、あけびの恋はブレない。純情なあけびのポンコツな挙動も、また可笑しい。 心通わせてゆくコンビですが、恋になる感じは、する様なしない様な……姉の本心含めて、1巻ではゴールが全然予想出来ない。けれど同居物としては既に、互いへの思い遣りが「熱い」内容だし、今後もエモい展開が見られそうな気がします。

青のアイリス

可愛い女の子に憧れる“イケメン女子”の正体は!?

青のアイリス やぶうち優
たか
たか

12月28日発売のちゃお2月号から始まったやぶうち優先生の新連載。今更ながら1話を読んでみたのですがものすごく時代を感じました…! https://ogre.natalie.mu/media/news/comic/2020/1228/201228_chao.jpg 主人公の中学2年生の愛理は、2階から落ちたプリントを追って飛び出し空中で全部キャッチして見事に着地するという、頑丈な体ととんでもない運動神経との持ち主。その言動とさっぱりした性格で周囲の女の子たちからは、男子の克樹と椿とともに「津辺中のイケメン御三家」と呼ばれているけど、本当は「か弱くてかわいい『女のコ』」になりたいと思っている。 友達の綾芽からはVtuberに興味がないと思われている愛理だけど、実は今年現れ早くも100万フォロワーを達成したVtuber「青野アイリス」の正体は愛理だった……!! https://i.imgur.com/jWVf8Y5.png いやー、めっちゃ時代だ〜〜…! 「芸能人(女優・アイドル・モデル)の正体は実はヒロインだった」っていうのは昔からある展開だけど、Vtuberっていうのが時代。 しかもVtuberは選ばれないとなれない芸能人より““ありそう””な感じがするところがいいですよね。 愛理も映像クリエイターのお兄ちゃん(19歳)の協力のもと受肉して活動しています。 私は子供の頃、学年誌でやぶうち先生の可愛い男の子が正体を隠し女の子として芸能界デビューする物語『少女少年』を楽しみに読んでいました(性癖に多大な影響を受けました)。 それから20年近く経ち大人になって、今度はボーイッシュな女の子が正体を隠して可愛いVtuberになるお話が読めるなんて…なんだか不思議な気分です。 単行本発売前からボイスコミックが公開されていて宣伝の力の入り方がすごい。 いずれアニメ化(もしくはガチでVtuber化)して動いて喋ってるところを見せてほしい…! https://youtu.be/GjcyDbWsDMo

ダイヤモンド・プリティー!

絵はすごく良かった

ダイヤモンド・プリティー! 恒吉民子
名無し

が、内容はここ10年で読んだ漫画の中で一番最悪だった。1冊読み終わったあと怒りが沸いてきた。絵が可愛くてあらすじが面白かったので期待して読んでしまった分、失望感が半端ない。基本的にAmazonの評価は良かったら「★5」、それ以外は付けないんだけど、あんまり腹が立ったので迷いなく「★1」をつけたほど。 これに収録されている ・「ダイヤモンド・プリティー!」 ・「グラウンドの彼」 ・おまけ 著者の家族とペットについてのエッセイ漫画 のうち、一番面白かったのがおまけのエッセイ漫画なのが笑える。 ものすごく可愛らしい画風で、コマ割りなどの見せ方の技術は本当に素晴らしいのに、話の展開の仕方が雑で本当に酷い。 「ダイヤモンド」はとにかく不愉快なキャラしか出てこない。 自分のことしか考えておらず、浅慮で他人に迷惑を掛けまくる主人公・サリ。(「こおゆう」という、間違った書き方で表現された幼気な口調がまたムカつく) 高校生にもなって幼稚ないじめをするクラスメイト。 私服校なのに生徒の服装をいちいち注意し、何かトラブルが会った際に生徒の言い分を一切聞かず、主人公たち交際を無理やり禁止しようとする教師。 学校にダイヤの指輪を持って来て窃盗をなすりつけ、PTAを動かして主人公たちを不純異性交遊で退学にしようとするいじめの主犯。 (この主犯がダイヤの指輪を持ち込んだことは当然お咎めなし) 娘の話を聞かずに「あんなのと付き合うのはやめろ」と言う母親。 不愉快な展開や登場人物が出てくること自体は構わないけど、カタルシスがなくては不愉快な展開にする意味が全くない。(不愉快さそのものがウリの漫画なら別だけど) おかげさまで、こちらはただ不愉快な思いをさせられただけに終わった。 純のことが好きなのに2カ月で帰国してしまうこと知った途端、サリはキスされたことに怒り、純を諦めるために仲良しのオカマちゃん・かなめが想いを寄せる紳介と付き合い、かなめから「紳介を傷つけないでね」と言われたのに結局すぐ紳介を振り、そのせいで虫の居所が悪い紳介がかなめを公衆の面前で傷つけかなめは飛び降りを図り、騒ぎが収まると教師はいきなり手のひらを返して不純異性交遊と盗難を不問にし、母親も何故か2人の仲を認めハッピーエンド。 「…ハ?」以外の感想がない。 主人公のサリに微塵も好感度がないのが、最後の急なハッピーエンドを意味不明ぶりに拍車をかけてる。なんでお前が幸せになってんだよ。 2作品目の「グラウンドの彼」は、コンビニに一つしか置いてないチーズ蒸しパンがきっかけで写真部の主人公・松村と陸上部の喜内が仲良くなる話。 こっちは途中まですごく繊細でピュアな王道少女漫画って感じで最高だったのに、途中で喜内が彼女と別れたことに対して主人公が逆ギレして、喜内の元カノの言い分も「はぁ、そう…」っていう感じで微塵も共感できないし、でも結局最後喜内といい感じになっててこれまた意味不明だった。 本当に、最後のおまけ漫画が普通によかったのが救い。 迷いインコを家族で大切に可愛がってたり、お父さんがうっかり水虫の薬を目にさしちゃったり…これぞ単行本のおまけ漫画というほのぼのした家族エッセイで、これがなければiPadブン投げてたかもしれない。 怒りのままものすごく批判的に書いてしまった。 他の人の感想も聞いてみたいけど買って読んでとは決して言えない。

水曜日のトリップランチ

日常も非日常も気持ちよくてかわいい

水曜日のトリップランチ たじまこと
野愛
野愛

リアリティーがあるけどファンタジックでキュンキュンできてお洒落だけどお洒落すぎなくて恥ずかしくならなくて負担にもならない漫画が読みたい! お仕事漫画も恋愛漫画も飯漫画も好きだけどどれも中途半端じゃないのに重たくなくてでもちゃんとおもしろい漫画が読みたい! という我儘に全部答えてくれる作品がこちらです。 寝食を犠牲にしてまで研究に没頭しちゃう十和博士と、毎週水曜日はそんな博士の世話を焼くのがお仕事な岸田くんとの美味しくてキュンキュンしちゃって適度に現実逃避できるのがこの漫画。 天才肌で変わり者だけど無邪気でかわいい十和博士と、料理が得意で世話焼きでよく見たらちゃんとかっこいい岸田くんという漫画ならではの夢のような組み合わせなのに、なんでかしっかり感情移入しちゃうんです。 最初は岸田くんのごはんと博士のVRでロケーションも最高でいいコンビだな〜くらいにしか思ってなかったのに、2人の距離が近づくにつれてこちらも楽しくなってしまいました。見所が多いと疲れちゃうのに、この漫画は味つけがちょうどよいのですよ。スパイスとかハーブは効いてるのに塩分は強すぎない感じなんですよ。食べすぎちゃってももたれない感じなんですよ。 などと特にうまくもないことを言ってしまいましたが、十和先生と岸田くんのかわいくて美味しい距離感に存分にキュンキュンしてみてほしいです。

同棲生活

みんな百合同棲で幸せになろうぜぇ

同棲生活 さつま揚げ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

いゃぁ、ぶっちゃけ出生率が下がろうが「私」の幸せには関係無いじゃないですか?だから百合同棲で幸せになれるならガンガンすれば良いと思うし、足立区は滅びれば良い※(追記あり) 『同棲生活』の社会人女性カップルは、少しのすれ違いや言い合いなんかはあるけれど、深刻な対立にならない。なので、現実の荒んだ日常に疲れた人の癒しになるし、なんなら女性同士の同棲に夢を見られる。 ……百合同棲で、自分も幸せになれるかも?って。 ただ難易度高いと思うのは、お互いを「責めない」事。例えば片方は料理苦手だし、仕事のコトをグジグジ愚痴る。方やタバコを吸ったりして、互いに喧嘩になる要素はありそう。それでも互いに「愛されている」という自信(作中では「慢心」)があるので、逆にどこまでも相手を赦し愛する。 大きな情動は少ない代わりに、どこを切り取っても楽しさしか無い。良いパートナーに巡り合えた二人の、日常の遣り取りをただただ眺めて、幸せになる作品です。 攻め受けがくるくる入れ替わるエロ要素も、トキメキいっぱい!(俗に言うリバですが、二人の関係は対等なので、割と自然です) ※「足立区は滅んでしまう」発言については下記記事を参照下さい。 https://www.google.co.jp/amp/s/www.tokyo-np.co.jp/amp/article/61336 ※追記:その後2021年代4月1日に、足立区でパートナーシップ・ファミリーシップ制度が施行されました。カップルに子供がいる場合、家族として証明するという、もう一歩進んだ制度となっているそうです。 区の真摯な取り組みに敬意を表すると共に、足立区が全ての人にとって住みやすい地となる様、祈ります。 https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/95246?__twitter_impression=true

お金ためます!

Netflixで実写化してくれ!! ドケチ令嬢が小銭を稼ぐハイスクールコメディ! #完結応援

お金ためます! 忠津陽子
たか
たか

このあいだ新刊ページで見つけたのがこれ。レトロな絵柄でオシャレなデザインの表紙だったので邦キチ映子さんタイプの最近の作品かな?と思いきや、調べてみたらなんと1972年の少女漫画。 >「型破りなヒロイン、アニー・モーガンはカワイイのにケチでガメツイ女の子。モーガン財閥のご令嬢でお金持ちなのだけれど、父から20歳までに1万ドルためられない怠け者には、財産を譲らないと言い渡されていた。将来の遺産相続権を得るため、アニーは日々、小銭を稼ぎつつ、常にビジネスチャンスをうかがうのだった!」 というあらすじがメチャクチャ良かったのでソッコーで買ったのですが、期待通りの面白いコメディでした。 https://i.imgur.com/o6UDV1b.jpg https://i.imgur.com/AHhVyzl.png **【アニーの小銭を稼ぐ執念が半端ない】** 6歳のときから10年間お金をためているというアニーは、現在目標金額の半分である5千ドルまで到達。忍たまのきり丸ばりの商売っ気の強さで、24時間息を吸うように小銭を稼ぎまくっている。 宿題代行業で顧客を獲得するため成績1位を維持したり、イケメン・ラフティが溺れているときに救助用品を売りつけようとしたり(ちなみに5ドルだと藁1本、10ドルなら空気の抜けた浮き袋)と、ラフティから懐中電灯を借りて電気代を浮かそうとしたり、ドケチな商人根性は筋金入り。 あまりのドケチ商売人ぶりに、アニーのことを財閥令嬢だと知らない人も多い。 まったく恋愛要素がないこのお話の中で一応アニーのヒーローポジションというか、イケメン枠で登場するラフティもまた、アニーの正体を知らない。 **【アニーと似て非なる生き方 逆玉狙いのイケメン・ラフティ】** マイアミにあるアイスクリーム屋の息子・ラフティはなかなかスッキリした見た目に成績優秀・スポーツ万能という少年なんだけど、彼が人一倍努力して女の子が好む条件を揃えた理由というのがお金持ちの女の子を捕まえるため。 https://i.imgur.com/F7kfS3w.png 1代で財産を築いた父のように自分の力で1万ドル稼ごうとしている少女・アニーのカウンターが、逆玉のために自分磨きをするイケメンという構造が面白い。 ちなみにアニーはラフティのやり方にあんまり納得はいっていないんだけれど、決してムキになって相手を否定したりせず >「人それぞれやりかたがちがうわ とにかくわたしはわたしのやりかたでお金をためるの」 と、相手を尊重して自分のやり方を貫くところが素敵。 物語の中で、ラフティはことあるごとにアニーに金を巻き上げられる(たまーにやり返すところが面白い)んだけど、2巻の最後の方になってついにアニーが財閥令嬢だと知ってしまう展開がしっかりあるのでお楽しみに。 **【ドケチ・アニーの名セリフ集】** >「ようするに頭はかざりじゃないのよ」 ラフティの父のアイスクリーム屋を勝手に手伝い、全部売ってみせたアニーが言ったセリフ。もちろん、手数料としてしっかり3ドル貰っていった。 >「くやしい 1割もらって逃してやればよかった」 空港でトランクを拾ってやった相手から謝礼の1割をもらおうとしていたアニー。しかし相手は公金横領の犯人で警察に捕まってしまいこの一言。 >「わかった? お金ってのはこうやってもうけるものよ」 https://i.imgur.com/6FDVVBK.png 隣人の壁ドンに腹が立ったラフティが隣の部屋に文句を言いに行くとなんと隣人はアニーだった。驚いたアニーが貯金箱を割ってしまいお金を拾い集めるが5セント足りず、ラフティの身ぐるみを剥がしてまで探しているところにラフティの友達がやって来る。ラフティは焦るが、みんなは服まで借金のカタに取られたのだと誤解しアニーはすぐさま「3ドル返して」とのたまう。これを断れば当然、ラフティの紳士の名にキズがついてしまうわけで…。流石アニーの手腕は鮮やか。 **【Netflixで実写ドラマにならないかな…】** 「1万ドル稼ぐ」というテーマがキャッチーでわかりやすく、アニーとラフティの掛け合いが小気味よいので米ネトフリで旬のティーンの俳優を揃えてドラマ化してほしいくらい。 舞台を現代日本に変えてドラマ化しても面白そうなのでテレビ関係者の方に売り込みたい。(身の回りに関係者とかいないけど) アトム ザ・ビギニングみたいにリブートで再コミカライズとかもありだと思います…! メディアミックスで成功する可能性をビンビン感じる完成度の高い作品なのでたくさんの人に届いてほしいです。

明るい記憶喪失

え!?私が「する方」ですか!? #完結応援

明るい記憶喪失 奥たまむし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

イェーイ私アリサ!目が覚めたら目の前に美人のお姉さんが。何か私、三年間の記憶失っててお姉さんは恋人なんだって!ウソーお姉さんめっちゃ好みだし私よくやった!でもどんな風に同棲してたか思い出せない〜! ♡♡♡♡♡ 概ねこんなノリで、アリサは記憶喪失をモノともしないポジティブさで、年上のマリさんとの同棲を再開。 関係を再構築しようとする二人に立ちはだかるのは、元の関係の「捻れ」。 年下で記憶の無いアリサを引っ張らないといけないマリさんが、何故かモジモジしている。どうやらかつてマリさんは「引っ張られる」方だった様で、キスの仕方すら忘れているアリサと向かい合って固まってしまう……みたいな様子は初々しくも焦ったい。 アリサはおバカだけれど超ポジティブ。真面目なマリさんを引き摺り回して、周囲も明るく認めさせて、関係を前進させる様が楽しくて気持ち良い。しかしこと「性」に限っては、十代の知識と恥じらい。そしてマリさんにガンガンエロい事していた「昔の私」に嫉妬する羽目に……可哀想だけれどウケる。 記憶喪失は重くは描かれないが、二人の捻れは意外と尾を引く。互いに好きすぎて、体の関係も持ちたいのに、望む形になれなくてあたふたするエロコメディは、見ていてあ゛ーーってなる(語彙力… アリサのおバカテンションにソワソワしっぱなしになる作品。お願いだから、二人のエロを暴露するのはやめてあげてよ!

アエカナル

悪意の介在しない"たった2人だけ"の日常 #1巻応援

アエカナル 笹倉綾人
sogor25
sogor25

サラリーマンの定井光臣は自らの命を絶つために山の奥深くに足を踏み入れていました。 彼がしめ縄の巻かれた大樹の側を死に場所に選んだそのとき、高い木の枝に縄を掛けようとする少女を発見します。 「彼女が首を括ろうとしている」と咄嗟に思った彼はその少女を助けようとしますが、実はその少女は単に干し芋を作ろうとしていただけでした。 ただしその少女・アエカは自分のことおただの人間ではなく、その土地の山の神に嫁入りしたため800年間生き続けている"八百比丘尼"(やおびくに)だというのです。 この作品はそんな2人の出会いから始まる異類婚姻譚のような物語です。 『ホーキーベカコン』を描かれていた笹倉綾人さんの新作。 仕事の多忙さに疲れて死を決意した定井でしたが、天真爛漫で朗らかなアエカに接するうちにいつしか生きることに対し希望を見出していきます。 一方のアエカも、山の神が去り、元いた村も滅び、150年もの間たった1人で過ごしていて、久々に接する人間であり、謎多き彼女にも優しさを見せる定井に徐々に絆されていく様子が描かれています。 作中で描かれていく、悪意の介在しないたった2人だけの日常は何気ない日々ながら心に染み入るものがあります。 ただこの作品、2人の日々を描くにはやや変則的な導入をしていて、それが今後の物語にどう関わってくるのかも気になるところです。 1巻まで読了