ダイヤモンド・プリティー!

絵はすごく良かった

ダイヤモンド・プリティー! 恒吉民子
名無し

が、内容はここ10年で読んだ漫画の中で一番最悪だった。1冊読み終わったあと怒りが沸いてきた。絵が可愛くてあらすじが面白かったので期待して読んでしまった分、失望感が半端ない。基本的にAmazonの評価は良かったら「★5」、それ以外は付けないんだけど、あんまり腹が立ったので迷いなく「★1」をつけたほど。 これに収録されている ・「ダイヤモンド・プリティー!」 ・「グラウンドの彼」 ・おまけ 著者の家族とペットについてのエッセイ漫画 のうち、一番面白かったのがおまけのエッセイ漫画なのが笑える。 ものすごく可愛らしい画風で、コマ割りなどの見せ方の技術は本当に素晴らしいのに、話の展開の仕方が雑で本当に酷い。 「ダイヤモンド」はとにかく不愉快なキャラしか出てこない。 自分のことしか考えておらず、浅慮で他人に迷惑を掛けまくる主人公・サリ。(「こおゆう」という、間違った書き方で表現された幼気な口調がまたムカつく) 高校生にもなって幼稚ないじめをするクラスメイト。 私服校なのに生徒の服装をいちいち注意し、何かトラブルが会った際に生徒の言い分を一切聞かず、主人公たち交際を無理やり禁止しようとする教師。 学校にダイヤの指輪を持って来て窃盗をなすりつけ、PTAを動かして主人公たちを不純異性交遊で退学にしようとするいじめの主犯。 (この主犯がダイヤの指輪を持ち込んだことは当然お咎めなし) 娘の話を聞かずに「あんなのと付き合うのはやめろ」と言う母親。 不愉快な展開や登場人物が出てくること自体は構わないけど、カタルシスがなくては不愉快な展開にする意味が全くない。(不愉快さそのものがウリの漫画なら別だけど) おかげさまで、こちらはただ不愉快な思いをさせられただけに終わった。 純のことが好きなのに2カ月で帰国してしまうこと知った途端、サリはキスされたことに怒り、純を諦めるために仲良しのオカマちゃん・かなめが想いを寄せる紳介と付き合い、かなめから「紳介を傷つけないでね」と言われたのに結局すぐ紳介を振り、そのせいで虫の居所が悪い紳介がかなめを公衆の面前で傷つけかなめは飛び降りを図り、騒ぎが収まると教師はいきなり手のひらを返して不純異性交遊と盗難を不問にし、母親も何故か2人の仲を認めハッピーエンド。 「…ハ?」以外の感想がない。 主人公のサリに微塵も好感度がないのが、最後の急なハッピーエンドを意味不明ぶりに拍車をかけてる。なんでお前が幸せになってんだよ。 2作品目の「グラウンドの彼」は、コンビニに一つしか置いてないチーズ蒸しパンがきっかけで写真部の主人公・松村と陸上部の喜内が仲良くなる話。 こっちは途中まですごく繊細でピュアな王道少女漫画って感じで最高だったのに、途中で喜内が彼女と別れたことに対して主人公が逆ギレして、喜内の元カノの言い分も「はぁ、そう…」っていう感じで微塵も共感できないし、でも結局最後喜内といい感じになっててこれまた意味不明だった。 本当に、最後のおまけ漫画が普通によかったのが救い。 迷いインコを家族で大切に可愛がってたり、お父さんがうっかり水虫の薬を目にさしちゃったり…これぞ単行本のおまけ漫画というほのぼのした家族エッセイで、これがなければiPadブン投げてたかもしれない。 怒りのままものすごく批判的に書いてしまった。 他の人の感想も聞いてみたいけど買って読んでとは決して言えない。

水曜日のトリップランチ

日常も非日常も気持ちよくてかわいい

水曜日のトリップランチ たじまこと
野愛
野愛

リアリティーがあるけどファンタジックでキュンキュンできてお洒落だけどお洒落すぎなくて恥ずかしくならなくて負担にもならない漫画が読みたい! お仕事漫画も恋愛漫画も飯漫画も好きだけどどれも中途半端じゃないのに重たくなくてでもちゃんとおもしろい漫画が読みたい! という我儘に全部答えてくれる作品がこちらです。 寝食を犠牲にしてまで研究に没頭しちゃう十和博士と、毎週水曜日はそんな博士の世話を焼くのがお仕事な岸田くんとの美味しくてキュンキュンしちゃって適度に現実逃避できるのがこの漫画。 天才肌で変わり者だけど無邪気でかわいい十和博士と、料理が得意で世話焼きでよく見たらちゃんとかっこいい岸田くんという漫画ならではの夢のような組み合わせなのに、なんでかしっかり感情移入しちゃうんです。 最初は岸田くんのごはんと博士のVRでロケーションも最高でいいコンビだな〜くらいにしか思ってなかったのに、2人の距離が近づくにつれてこちらも楽しくなってしまいました。見所が多いと疲れちゃうのに、この漫画は味つけがちょうどよいのですよ。スパイスとかハーブは効いてるのに塩分は強すぎない感じなんですよ。食べすぎちゃってももたれない感じなんですよ。 などと特にうまくもないことを言ってしまいましたが、十和先生と岸田くんのかわいくて美味しい距離感に存分にキュンキュンしてみてほしいです。

同棲生活

みんな百合同棲で幸せになろうぜぇ

同棲生活 さつま揚げ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

いゃぁ、ぶっちゃけ出生率が下がろうが「私」の幸せには関係無いじゃないですか?だから百合同棲で幸せになれるならガンガンすれば良いと思うし、足立区は滅びれば良い※(追記あり) 『同棲生活』の社会人女性カップルは、少しのすれ違いや言い合いなんかはあるけれど、深刻な対立にならない。なので、現実の荒んだ日常に疲れた人の癒しになるし、なんなら女性同士の同棲に夢を見られる。 ……百合同棲で、自分も幸せになれるかも?って。 ただ難易度高いと思うのは、お互いを「責めない」事。例えば片方は料理苦手だし、仕事のコトをグジグジ愚痴る。方やタバコを吸ったりして、互いに喧嘩になる要素はありそう。それでも互いに「愛されている」という自信(作中では「慢心」)があるので、逆にどこまでも相手を赦し愛する。 大きな情動は少ない代わりに、どこを切り取っても楽しさしか無い。良いパートナーに巡り合えた二人の、日常の遣り取りをただただ眺めて、幸せになる作品です。 攻め受けがくるくる入れ替わるエロ要素も、トキメキいっぱい!(俗に言うリバですが、二人の関係は対等なので、割と自然です) ※「足立区は滅んでしまう」発言については下記記事を参照下さい。 https://www.google.co.jp/amp/s/www.tokyo-np.co.jp/amp/article/61336 ※追記:その後2021年代4月1日に、足立区でパートナーシップ・ファミリーシップ制度が施行されました。カップルに子供がいる場合、家族として証明するという、もう一歩進んだ制度となっているそうです。 区の真摯な取り組みに敬意を表すると共に、足立区が全ての人にとって住みやすい地となる様、祈ります。 https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/95246?__twitter_impression=true

お金ためます!

Netflixで実写化してくれ!! ドケチ令嬢が小銭を稼ぐハイスクールコメディ! #完結応援

お金ためます! 忠津陽子
たか
たか

このあいだ新刊ページで見つけたのがこれ。レトロな絵柄でオシャレなデザインの表紙だったので邦キチ映子さんタイプの最近の作品かな?と思いきや、調べてみたらなんと1972年の少女漫画。 >「型破りなヒロイン、アニー・モーガンはカワイイのにケチでガメツイ女の子。モーガン財閥のご令嬢でお金持ちなのだけれど、父から20歳までに1万ドルためられない怠け者には、財産を譲らないと言い渡されていた。将来の遺産相続権を得るため、アニーは日々、小銭を稼ぎつつ、常にビジネスチャンスをうかがうのだった!」 というあらすじがメチャクチャ良かったのでソッコーで買ったのですが、期待通りの面白いコメディでした。 https://i.imgur.com/o6UDV1b.jpg https://i.imgur.com/AHhVyzl.png **【アニーの小銭を稼ぐ執念が半端ない】** 6歳のときから10年間お金をためているというアニーは、現在目標金額の半分である5千ドルまで到達。忍たまのきり丸ばりの商売っ気の強さで、24時間息を吸うように小銭を稼ぎまくっている。 宿題代行業で顧客を獲得するため成績1位を維持したり、イケメン・ラフティが溺れているときに救助用品を売りつけようとしたり(ちなみに5ドルだと藁1本、10ドルなら空気の抜けた浮き袋)と、ラフティから懐中電灯を借りて電気代を浮かそうとしたり、ドケチな商人根性は筋金入り。 あまりのドケチ商売人ぶりに、アニーのことを財閥令嬢だと知らない人も多い。 まったく恋愛要素がないこのお話の中で一応アニーのヒーローポジションというか、イケメン枠で登場するラフティもまた、アニーの正体を知らない。 **【アニーと似て非なる生き方 逆玉狙いのイケメン・ラフティ】** マイアミにあるアイスクリーム屋の息子・ラフティはなかなかスッキリした見た目に成績優秀・スポーツ万能という少年なんだけど、彼が人一倍努力して女の子が好む条件を揃えた理由というのがお金持ちの女の子を捕まえるため。 https://i.imgur.com/F7kfS3w.png 1代で財産を築いた父のように自分の力で1万ドル稼ごうとしている少女・アニーのカウンターが、逆玉のために自分磨きをするイケメンという構造が面白い。 ちなみにアニーはラフティのやり方にあんまり納得はいっていないんだけれど、決してムキになって相手を否定したりせず >「人それぞれやりかたがちがうわ とにかくわたしはわたしのやりかたでお金をためるの」 と、相手を尊重して自分のやり方を貫くところが素敵。 物語の中で、ラフティはことあるごとにアニーに金を巻き上げられる(たまーにやり返すところが面白い)んだけど、2巻の最後の方になってついにアニーが財閥令嬢だと知ってしまう展開がしっかりあるのでお楽しみに。 **【ドケチ・アニーの名セリフ集】** >「ようするに頭はかざりじゃないのよ」 ラフティの父のアイスクリーム屋を勝手に手伝い、全部売ってみせたアニーが言ったセリフ。もちろん、手数料としてしっかり3ドル貰っていった。 >「くやしい 1割もらって逃してやればよかった」 空港でトランクを拾ってやった相手から謝礼の1割をもらおうとしていたアニー。しかし相手は公金横領の犯人で警察に捕まってしまいこの一言。 >「わかった? お金ってのはこうやってもうけるものよ」 https://i.imgur.com/6FDVVBK.png 隣人の壁ドンに腹が立ったラフティが隣の部屋に文句を言いに行くとなんと隣人はアニーだった。驚いたアニーが貯金箱を割ってしまいお金を拾い集めるが5セント足りず、ラフティの身ぐるみを剥がしてまで探しているところにラフティの友達がやって来る。ラフティは焦るが、みんなは服まで借金のカタに取られたのだと誤解しアニーはすぐさま「3ドル返して」とのたまう。これを断れば当然、ラフティの紳士の名にキズがついてしまうわけで…。流石アニーの手腕は鮮やか。 **【Netflixで実写ドラマにならないかな…】** 「1万ドル稼ぐ」というテーマがキャッチーでわかりやすく、アニーとラフティの掛け合いが小気味よいので米ネトフリで旬のティーンの俳優を揃えてドラマ化してほしいくらい。 舞台を現代日本に変えてドラマ化しても面白そうなのでテレビ関係者の方に売り込みたい。(身の回りに関係者とかいないけど) アトム ザ・ビギニングみたいにリブートで再コミカライズとかもありだと思います…! メディアミックスで成功する可能性をビンビン感じる完成度の高い作品なのでたくさんの人に届いてほしいです。

明るい記憶喪失

え!?私が「する方」ですか!? #完結応援

明るい記憶喪失 奥たまむし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

イェーイ私アリサ!目が覚めたら目の前に美人のお姉さんが。何か私、三年間の記憶失っててお姉さんは恋人なんだって!ウソーお姉さんめっちゃ好みだし私よくやった!でもどんな風に同棲してたか思い出せない〜! ♡♡♡♡♡ 概ねこんなノリで、アリサは記憶喪失をモノともしないポジティブさで、年上のマリさんとの同棲を再開。 関係を再構築しようとする二人に立ちはだかるのは、元の関係の「捻れ」。 年下で記憶の無いアリサを引っ張らないといけないマリさんが、何故かモジモジしている。どうやらかつてマリさんは「引っ張られる」方だった様で、キスの仕方すら忘れているアリサと向かい合って固まってしまう……みたいな様子は初々しくも焦ったい。 アリサはおバカだけれど超ポジティブ。真面目なマリさんを引き摺り回して、周囲も明るく認めさせて、関係を前進させる様が楽しくて気持ち良い。しかしこと「性」に限っては、十代の知識と恥じらい。そしてマリさんにガンガンエロい事していた「昔の私」に嫉妬する羽目に……可哀想だけれどウケる。 記憶喪失は重くは描かれないが、二人の捻れは意外と尾を引く。互いに好きすぎて、体の関係も持ちたいのに、望む形になれなくてあたふたするエロコメディは、見ていてあ゛ーーってなる(語彙力… アリサのおバカテンションにソワソワしっぱなしになる作品。お願いだから、二人のエロを暴露するのはやめてあげてよ!

アエカナル

悪意の介在しない"たった2人だけ"の日常 #1巻応援

アエカナル 笹倉綾人
sogor25
sogor25

サラリーマンの定井光臣は自らの命を絶つために山の奥深くに足を踏み入れていました。 彼がしめ縄の巻かれた大樹の側を死に場所に選んだそのとき、高い木の枝に縄を掛けようとする少女を発見します。 「彼女が首を括ろうとしている」と咄嗟に思った彼はその少女を助けようとしますが、実はその少女は単に干し芋を作ろうとしていただけでした。 ただしその少女・アエカは自分のことおただの人間ではなく、その土地の山の神に嫁入りしたため800年間生き続けている"八百比丘尼"(やおびくに)だというのです。 この作品はそんな2人の出会いから始まる異類婚姻譚のような物語です。 『ホーキーベカコン』を描かれていた笹倉綾人さんの新作。 仕事の多忙さに疲れて死を決意した定井でしたが、天真爛漫で朗らかなアエカに接するうちにいつしか生きることに対し希望を見出していきます。 一方のアエカも、山の神が去り、元いた村も滅び、150年もの間たった1人で過ごしていて、久々に接する人間であり、謎多き彼女にも優しさを見せる定井に徐々に絆されていく様子が描かれています。 作中で描かれていく、悪意の介在しないたった2人だけの日常は何気ない日々ながら心に染み入るものがあります。 ただこの作品、2人の日々を描くにはやや変則的な導入をしていて、それが今後の物語にどう関わってくるのかも気になるところです。 1巻まで読了

僕は先日死にました。【単行本版】

こんな風にDVの「後」を描くとは流石です。

僕は先日死にました。【単行本版】 時計
兎来栄寿
兎来栄寿

時計さんの作品を読む度に、「絵も綺麗でお話も面白くて素晴らしいなあ……!」と満足感に浸れるのですが、本作も例外ではありません。 2016年〜2020年の間に発行した同人作品を3作品収録した短編集で、時計さんとしては6冊目の単行本となっています。 表題作の「僕は先日死にました。」は設定的にはよくある感じではありますが、中心人物となる占い師ちゃんの振れ幅が魅力的です。とても人間味があり、その感情を丁寧に掬い 「お父さん、私アイドルだったんだよ。」は自宅での介護士経験のある身としては非常に刺さるところの多いお話です。最近観たとある人気海外ドラマでも似た展開がありましたが、時計さんの方が4年早いな!と。 「元DV夫と私のその後」は、個人的にこの本の中でも特に好きな一篇です。『AV女優とAV男優が同居する話。』に収録された「一日一回、あなたを好きだと言わせて。」と繋がる物語。DV加害者である男がそれを悔いてカウンセリングに赴くところ、そしてまたDVを受けた女性の精神的な再起を丁寧に描いています。普通の物語においてはさまざまな事情によりクローズアップされない部分、しかし現実的には非常に大事なところを解像度高く描いた意欲作です。 幕間に各作品の解説も書かれていますが、非常に思考を巡らせた上で物語が構築されていることがうかがえて、この面白さにも納得です。こうしたことを明瞭に言語化できる、あまつさえ面白いマンガとして仕上げることができるのは本当に素晴らしいなと。私は時計さんの作家性に惚れ込んでいるので今後も作家買いを続けさせていただきます。 1冊で充実の読書体験ができるので、お薦めです(可能であれば先に『AV女優とAV男優が同居する話。』も読んでおくとより楽しめます)。 なお、表紙の菊の花は時計さんの御母堂が描かれたということで、美しいものを描く血筋を感じました。

欠けた月とドーナッツ

欠落した私は貴女の側で満ちる

欠けた月とドーナッツ 雨水汐
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

百合漫画に出てくる、異性愛を前提とする恋バナ女子集団の同調圧力に、イラッとする。しかし一方で、自分も圧力をかける側だったかもしれない、と緊張もする。そういう事に気付ける百合漫画には、万人に読んで欲しい普遍性があると思う。 ♡♡♡♡♡ 普通の恋愛が出来ない事に思い悩む女子は、会社の友達との恋バナに疲弊しながら、言い寄る男性を拒み続ける。 周囲への劣等感や男性への嫌悪感等々、幾つもの苦しみを抱えた彼女は、それを軽くしてくれる人に出会う。 会社では真面目な堅物、一匹狼なその人に自分を肯定し、受け入れて貰えた喜びは、やがてもっと近づきたい、という感情に変化する。しかしその人もまた恋情に疎く、妹に対する強い思いに縛られていた。 人目を気にして外面を取り繕ってきたオシャレ女子の心の解放に、こちらの心も軽くなる。一方で真面目女子の物語はまだこれからの様で、予断を許さない。しかし妹の、姉への思いと動向が意外で、物語を楽しくしてくれている。 二人で歩く月夜の秘密と開放感に、私も救われる感覚がある。苦しみの先に生まれ続ける優しさを、スマートでふんわり美麗なページを繰りながら見続けたい。 (2巻までの感想)