サラリーマンの定井光臣は自らの命を絶つために山の奥深くに足を踏み入れていました。
彼がしめ縄の巻かれた大樹の側を死に場所に選んだそのとき、高い木の枝に縄を掛けようとする少女を発見します。
「彼女が首を括ろうとしている」と咄嗟に思った彼はその少女を助けようとしますが、実はその少女は単に干し芋を作ろうとしていただけでした。
ただしその少女・アエカは自分のことおただの人間ではなく、その土地の山の神に嫁入りしたため800年間生き続けている"八百比丘尼"(やおびくに)だというのです。
この作品はそんな2人の出会いから始まる異類婚姻譚のような物語です。
『ホーキーベカコン』を描かれていた笹倉綾人さんの新作。
仕事の多忙さに疲れて死を決意した定井でしたが、天真爛漫で朗らかなアエカに接するうちにいつしか生きることに対し希望を見出していきます。
一方のアエカも、山の神が去り、元いた村も滅び、150年もの間たった1人で過ごしていて、久々に接する人間であり、謎多き彼女にも優しさを見せる定井に徐々に絆されていく様子が描かれています。
作中で描かれていく、悪意の介在しないたった2人だけの日常は何気ない日々ながら心に染み入るものがあります。
ただこの作品、2人の日々を描くにはやや変則的な導入をしていて、それが今後の物語にどう関わってくるのかも気になるところです。
1巻まで読了
死に場所を求め山奥に分け入るサダイは、アエカなる不思議な少女と出逢う。彼女は廃墟で百五十年もの間姿無き神に仕えてきたと話すが…。死にそびれた男と神さびた未亡人、人生を棒に振った二人の第二の生が始まる。
死に場所を求め山奥に分け入るサダイは、アエカなる不思議な少女と出逢う。彼女は廃墟で百五十年もの間姿無き神に仕えてきたと話すが…。死にそびれた男と神さびた未亡人、人生を棒に振った二人の第二の生が始まる。