極上! 給食(秘)グルメ

子供の”食”に関わる問題と向き合う

極上! 給食(秘)グルメ 西村ミツル 野間ろっく
マウナケア
マウナケア

日本人なら誰でも、給食にさまざまな思い出があることでしょう。学期末のケーキが楽しみだったり、嫌いな食べ物とにらめっこして休み時間をつぶしてしまったり、なぜか腐った夏ミカンが机の中からでてきたり。そんな馴染み深い給食をテーマにとりあげた、少々変わったグルメ作がこれ。奇をてらっているのではなく、子供の”食”に関わる問題に真正面から向き合っていることに好感がもてます。主役は元名ランナーで栄養教論の坂上裕二と元レディースで学校警備員の稲島今日子で、このふたりのコンビが絶妙。栄養学の知識はあるものの料理はからきしの坂上と、粗暴だが料理はプロ級の今日子。坂上が生臭くないレバーの料理法で悩めば今日子がささっと作り、かと思えば坂上の熱血家庭訪問に今日子が無理やり付き合わされるなんてことも。人間ドラマの隠し味も程よく効いていて、バランスが非常にいい。栄養学、調理法、子供の精神面、そして社会問題などを盛り込んで、いろいろと考えさせられる内容になっています。私にとって最も気になったのは「油脂分の取り過ぎ」のくだり。あぁでもこれは手遅れか…。

山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記

的確に 狩猟の世界を描いている漫画

山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記 岡本健太郎
名無し

小さい頃から、やることなすこと漫画に影響されて生きてきたと自負しておりますが、30歳にもなってもその性分が抜けていませんでした。この『山賊ダイアリー』を読んで、妙なテンションになってしまった私は、突発的に狩猟免許を取ろうと志し、現在、試験の結果待ちという状況です。  『山賊ダイアリー』のなにがそんなにも私の心を動かしたのか。それは、鳥・狩猟をし、それを捌いて調理し、おいしくいただくという、猟師の日常に対する、とてもシンプルな憧れです。『山賊ダイアリー』はダイアリーという通り、作者である岡本健太郎の猟師としての日常を描いています。仲間と獲物を探したり、罠を仕掛けたり、先輩猟師からおすそ分けしてもらってり…そんな出来事が淡々として描かれているのですが、狩猟とは縁遠い人間にはそのどれもが新鮮に映ります。  よくよく考えてみれば、狩猟という文化も間違いなく日本の文化の一部で、2~3代遡ればもっと身近なものだったのに、今はとても遠くのものにあるように感じます。実際、狩猟について色々調べてみましたが、やはり銃を持つということは大変に難しいということがわかりました。そりゃそうです。人口の大部分が熊害も鹿害も猪害も無関係な都市に住んでいる現在、市民生活を脅かすおそれのある銃を許可する必要があるのかということですから。  それでも、この『山賊ダイアリー』に描かれている「DIY【Do It Yourself】精神」には自分の日常を変えるきっかけになるのではないかと思います。

月夜のグルメ

鉛筆画のぬくもりが優しい、新感覚グルメ漫画

月夜のグルメ 舞城王太郎 奥西チエ
nyae
nyae

全編、おそらく鉛筆で描かれているために騒々しい客の声も心地の良い賑わいに感じられる今まであまり読んだことがないタイプのグルメ漫画。 主人公の朔良は週末の夜遅く、亡くなった父が残した手帳に記されているお店をひとりで巡っている。子供の頃は多忙で一緒にいる時間が少なかったが、父の足跡をたどり思い出を共有することで、空いてしまった隙間を埋めている。 遅い時間帯の食事はカロリーの面で気になるが、できるだけ父の記録したものは注文するのがポリシー。 専門用語や、わからない食材の名前などは店員に聞き、食事の内容によって飲むお酒も変える。とくに朔良はお酒の飲みっぷりがよく、気持ちがいい。 1人で飲んでいる人間はほとんどいない店に、躊躇なく入っていけるのがすごい。そういうの憧れるけど難しいよなー… 料理や店の雰囲気の描写に説得力があるから、絶対にモデルにしている店があるはずなのに、情報が一切載っていないのもこの本の特徴。 ただ、両国にある店の回でとても印象的な名前のメニューが出てきたので検索したところ、すぐにヒットした。笑 こうやって自分で調べれば朔良が行った店には行けるのでは、と思う。 ポスト孤独のグルメ的なコメントがあるけど、これもドラマ化とかするのかな〜