にがくてあまい

にがくてあまいのは行為ではなく心理

にがくてあまい 小林ユミヲ
名無し

にがくて美味い、と にがくてあまい、は違うものだと思う。 この漫画「にがくてあまい」に例えて言えば にがくて美味い、は、そのまんまBLでありゲイの味覚だと思う。 にがいのが美味いんだよ禁断の味で、というか、 ゲイとしてストレートに味わう快楽の味というか。 自分はゲイでもないしBL信者でもないので想像だが。 にがくてあまい、はBLでありゲイである男が 自分がゲイであることを自覚した上でそれでも 生きていくことで感じる心理的な味の事だと思う。 くどいようだが自分はゲイじゃないので想像だけれども 世の中に数多あるBLやらゲイやらの漫画は にがいのがうまい、を描いている「だけ」だと思う。 にがくてあまい、を描こうとするなら ゲイの心理にもう一歩、踏み込まなければ描けない。 この漫画「にがくてあまい」が凄いのは ゲイである渚の心理にも「だけ」でないレベルで 踏み込んでいるし、 同様に親子関係や仕事関係で屈折したものがあった マキの心理にも踏み込んでいく。 漫画家をめざし渚の兄と関わったミナミの心理にも踏み込む。 踏み込んで初めて見出せる「あまい」を見せてくれている。 単にイケメンのゲイとアラサー女の同居コメディではない。 ゲイという一般人がしらない禁断の味をあまいといっている わけでもない。 ゲイを切り口やとっかかりにして、 人の心や生き方に踏み込んでいくことでみつけられる 「にがくてあまい」を表現しているのだと思う。 さらに凄いのは、そうやってズカズカと渚やマキの 心に踏み込んだ上で、時によっては 単にイケメンのゲイとアラサー女の同居コメディとして 平気で渚やマキの心も 「踏み荒らしまくったりもする」 のだ。まあ主にギャグ回のオチとしてだけれども。 「人の不幸は蜜の味」という言葉もあるが、 唐突に無慈悲な面白コメディとしてソッチ方向に 舵を切って「笑えるにがくてあまい味」を 味あわせてくれたりもする。 そう思う。 くどいようだが自分はゲイではないので想像だけれども。

はらへりあらたの京都めし

嫌味を感じない楽しい京都

はらへりあらたの京都めし 魚田南
名無し

作者の魚田南先生は実際に京都府の隅っこのほうの 出身のようで、実体験をもとにした 「京都に憧れる京都人」を描いたみたい。 なぜか漫画の中ではムーミンが型崩れしたような「アラタ」 というキャラで登場してくる。 アラタは京都の北の山の上にある美術学校の生徒。 美味しいものを食べたい、出来れば女子大生らしくオシャレに。 幸いにして愉快な仲間とオシャレで美味しい店で 色々な料理を楽しみ味わう機会に恵まれるのだが・・ この漫画の良いなと思った点は、 「どう、これってオシャレでしょ」という ハナにつく嫌味を感じる展開がないところ。 なにせ京都だし、まして美術大学の女子大生。 私が今まで抱いていた京都や女子大生のイメージからすると 「これが京都のオシャレどすえ」という話が出てくるのかと思った。 「涙を流しながらぶぶ漬けを食うハメに」 みたいなシーンが出てきたりするのかと想像していた。 実際、オシャレな店でコジャレた料理を食べるシーン は多かったし、よくある 「貧乏学生が安居酒屋で飲んだくれる」という 基本は貧乏、みたいな話とは大分違ってはいたけれども。 けれどアラタのノリなのかホントの京都のノリなのか、 仲間とクダケタ京都弁で好き勝手言い合いながら食事をする シーンからは嫌味は感じられない。 京都って美味しい食べ物があって楽しい人達がいるんだな、 と思わせてくれる漫画だった。 ・・それが正しいのか誤解なのかまではわからんが 漫画として楽しく読めたのだからOK(笑)。 作風や絵柄に付いては読んだ人で好みがわかれるだろうな、 と思う部分はあった。 全体的には絵もストーリーも綺麗で、ちゃんと 漫画的に面白く描いている部分もあって私好みだ。 だが、料理とかはあまり食欲をそそらない。 なぜだろう? 細い線(フリーハンド中心?)で細かく書き込んでいるし、 料理や食器が微妙に重なった構図とか、 色々とこっているな、と思ったくらいなのだが。 出てくる料理が馴染みの無いものが多いので 味が想像できないからだろうか? 掲載されている各店の料理のお値段などからすると 思ったより安い。 なので京都に行く機会があれば是非食べてみたいが なんせ京都は遠いから、当分は漫画を読んで 想像して楽しむだけだな。

マンガ酒

酒豪列伝よりも下戸の喜怒哀楽語りが多い酒エッセイ

マンガ酒 新久千映 鈴木小波 北駒生 他
名無し

お酒大好きな酒豪漫画家連中が登場するかと思いきや 「実は私は下戸でして」で始まる漫画が多い。 どうらやコミック・ゼノン連載陣を中心に リレー形式で酒に関する話を語ってもらった エッセイ的な漫画を纏めた本らしい。 下戸でもいいです酒にまつわる思い出話でもいいし、 みたいなワリと緩い感じの企画だったみたい。 そりゃそうだ、漫画家がみんな 土田世紀先生や西原理恵子先生みたいな人 ばかりのわけがない。 むしろ、このくらいの人が揃うほうが普通。 これで酒豪ばかりのエッセイ漫画がそろったら、 コミック・ゼノンはどんな雑誌だよ、となるし。 漫画ゴラクやアクションならともかく(ゴメン、偏見です)。 そんな感じで、ヘベレケに泥酔した話とか 酒乱気味に大暴れして大失態みたいな話とか それほどにはなくて、 下戸からみた客観的な酔っ払い観察記、 みたいな話が多い。 この漫画を読んで酒を飲みたくなる人は少ないだろうが、 お酒にたまに触れる生活、 家族や友達に酒好きがいる日常、 酒が引き出してくれて知った自分や知人の意外な一面、 世の中には、そんなあれこれがあってもイイんじゃないの、 と思ったりはする漫画だった。 そういう意味ではいわゆる飲兵衛漫画とは 別角度からの酒肯定漫画なんだけれども、 果たしてこの漫画を企画した意図が そういうことだったのかどうかは解らない。

バリスタ

バリスタを目指したくなる爽やかな物語!

バリスタ 花形怜 むろなが供未
ななし
ななし

きょう10月1日はコーヒーの日ということで思い出した作品。主人公の香樹はコーヒーに並々ならぬ想いを持っていて、中学生の頃からコーヒーをイタリア風に「カッフェ」と呼んでいたほど。 https://res.cloudinary.com/hstqcxa7w/image/fetch/c_fit,dpr_2.0,f_auto,fl_lossy,h_365,q_80,w_255/https://manba-storage-production.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/uploads/book/regular_thumbnail/144679/63981935-64e7-4f2e-b842-fc7065f68baf.jpg 最初は本場イタリアで働いていた香樹が日本のカフェで働くことになるのですが、雑用メインの見習いから上り詰めていきバリスタの大会に出たり、新店舗の参考に京都でお茶や焙煎について勉強したり、とある事件を受けて仕事もコーヒーもやめて知らない町の場末のスナックで働いたり…。 **マンガらしくドラマチックなストーリーではあるけれど、コーヒーの文化や知識は本物が描かれ決して非現実的ではないところが魅力的。**主人公が前向きで爽やかで熱い性格なので、読んでいてすごく安心できるし気持ちがいいです。 バリスタという職業・コーヒー・コーヒー文化を具体的に知るのにもってこいの1冊です…!! https://piccoma.com/web/product/6706?etype=episode https://www.bookbang.jp/article/531741

玄米せんせいの弁当箱

食文化のありがたさを身をもって教えてくれる

玄米せんせいの弁当箱 魚戸おさむ 北原雅紀
マウナケア
マウナケア

このタイトルにこの表紙だと、弁当を扱う食マンガと思われがち。確かに食マンガであり弁当ネタも多く出てはきます。ただ、私はむしろ教育的な部分が大きい作品だと思うんです。主役は國木田大学農学部のちょっとかわった講師・結城玄米。この人、授業にぬか床を持ちこむは、大学に勝手に畑は作るは、やることなすことマイペース。ですがその正体は食文化史のエキスパート。「食べることは生きること」という信念に基づいて、一家で囲む食卓の大切さや、食べ物に対する感謝の気持ち、食文化のありがたさを身をもって教えてくれる、言動一致の人。そして彼の想いは関わる人たちにしっかりと受け継がれていきます。それは母親への気持ちの変化であったり、郷土料理の本質を深く知ることであったり。それを通して教え子たちが成長していく過程が感動的で、うらやましくもあります。押しつけがましくないのに、すっと人の心の中に入ってくる玄米先生の授業だったら、何度でも受けてみたいですね。私も農学部出身なので、もしこんな先生がいたら今ここでこの原稿を書いてはいなかったかも。

リサの食べられない食卓

これは是非単行本で読んでほしい作品

リサの食べられない食卓 黒郷ほとり
sogor25
sogor25

表紙に描かれている主人公・リサはお嬢様。彼女が住み込みで働く男・冬真のためにオムライスを作るが、それがどう見ても真っ黒。どうやら味見もしてないらしい。当然の如くクソ不味いわけだが、彼女はそんなことお構いなしに「今度は私の番」と冬真の首筋に噛みつき血を啜る。 そう、彼女は吸血鬼。だから『リサの"食べられない"食卓』なのである。 …というのが、冒頭10ページの内容。試し読みで1話を読んだ私は「なるほど、料理の味が分からない吸血鬼のお嬢様と彼女に捕まってしまった男とのメシマズ料理コメディなんだな」と察知する。 しかし、単行本を購入して2話以降を読み進めると、どうも様相が変わってくる。リサは吸血鬼であり、料理が下手。そのベースは変わらないのだが、話はどんどん予想外の方向に転がってゆく。そして1巻の最後になると、話は思ってもみないところに着地を決める。 ただ、それまでの過程で紆余曲折があったために予想を超えているように見えたけど、改めて1話を読み返してみると実は1話のオチから大きくは離れてない着地点に辿り着いていたことに気付かされる。 少なくとも1話の試し読みからは想像できない作品になっているのは間違いないので、試し読みで気になったひともそうでない人も、是非この1巻通しての展開のダイナミズムを感じてみてほしい。 1巻まで読了。