ぺそ
ぺそ
1年以上前
読切『おナスにのって』で岩田ユキ先生のファンになりました。とぼけた見た目のキャラクターとすこし不思議な世界観。岩田先生の描く漫画は温かくて切なくて大好きです。 https://shincomi.shogakukan.co.jp/eximages/winner/84/4301.png (画像は岩田ユキ『悪者のすべて』より) 容姿のことでいじめられていたけれど、連れ去られた先で覆面によって匿名という安らぎと友達を手に入れたミツル。 一緒にご飯を食べてくれて、二人組をつくるときに自分を選んでくれる友達がいる。そんな些細なことに幸せを感じ「ゆめみたい」と涙を滲ませる姿に胸を締め付けられました。 シュウが男前なのはシュウのせいじゃない。 ミツルが自分の姿に自信が持てなくなったのは、ミツルのせいじゃない。 あの場で「戻る」選択をすることは、自分に自信が持てない・価値を感じられない人間にとってあまりにも当然の行動で、誰も悪くなくて、つらい…。 後半で逃げる2人をジッと眺めていた総統の姿がとても印象的でした。 総統には、シュウに友情を求めるミツルが、陽を浴びようと首を伸ばす花に重なって見えていたんですね。 いろいろ書きましたが、どんなに言葉を尽くしても岩田先生の世界観の良さを表現できないので、とにかく読んで感じてください。 『悪者のすべて』岩田ユキ https://shincomi.shogakukan.co.jp/viewer/84/04/301/ 小学館 新人コミック大賞 https://shincomi.shogakukan.co.jp/winner/ (画像は本編より引用。この見ててホッとする温かい絵柄が好きです)
読切『おナスにのって』で岩田ユキ先生のファンになりました。とぼけた見た目のキャラクターとすこし...
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
令和5年1月14日。『四十九日のお終いに 田沼朝作品集』と初連載作品の『いやはや熱海くん』が同時発売となり、世界に田沼朝さんの才能が広がる記念すべき日となりました。 こちらの『四十九日のお終いに』の方は、ハルタで公開された3編に、商業未公開の5編と表題作の描き下ろし1編を加えたものとなっています。絵の変化が商業以前以後で顕著ですが、現在の画風は男女問わず間口広く受け入れられ易いであろう良いもので、好きです。 田沼朝さんは、絵の性質もあいまって何でもない日常における雑談を心地良く描く技術がとても高いです。それは、本作収録の最初の「海はいかない」を読んでも『いやはや熱海』くんの1話目を読んでも伝わるでしょう。 その最たるお話が「旅は道連れ」。大阪環状線に乗った受験生の少年が、たまたま出逢ったクラスメイトの彼女と西九条から天王寺方面まで同乗して駄弁るだけのお話なのですが、これが面白い。電車で移動してるだけの時間をこれだけ面白く描けるのがすごいなと思います。551など大阪ローカルのネタが多いですが、伝わらなかったとしても雰囲気だけでも全然楽しめる1編かなと思います。 表題作の「四十九日のお終いに」などは、主人公の葛藤や関係性などもう少しいろいろな要素が盛り込まれており読ませるお話です。これも連載作の『いやはや熱海くん』と共通するところですが、人間関係の絶妙なぎこちなさの描き方が良く、そこを乗り越えて関係性が進展して行くだけで気持ち良さが生まれているのも美点です。ダイレクトな行為や言葉だけでなく、些細な言動が誰かを傷付けもするが救いもするこの世界の美しさを掬い取っています。 「桃と道行き」の最後の1ページがくれる軽やかさなども本当に良いですね。 お薦めの短編集ですし、ぜひ『いやはや熱海くん』と併せて読んでみて欲しいです。両方を読むことで、お互いの味わい深さもより増します。