ANAGUMA2021/08/24石化病と怪物の脅威から生き延びろ!SF古城サバイバル #完結応援モンスター映画やパニック映画の仕組みを考えてみると、多くの場合立ち向かうべき危機は基本的にひとつです。サメだったり災害だったりゾンビだったり。 『いばらの王』で最初に描かれる危機は石化病と呼ばれる奇病。主人公のカスミが石化病から逃れるための冷凍睡眠から目覚めるところから本作は始まるのですが、間髪入れずに第二のクライシスが発生。 恐竜みたいなモンスターが襲ってきます(マジで!?)。 病気と怪物、脅威がダブルで襲いかかってくるので単純計算で緊張感が2倍!おまけに古城もボロボロなのでそこかしこに死の危険が転がっています。(個人的に岩原作品で「必ず描いてるな!」と思っている水場の戦闘と潜水イベントもバッチリあります!) 命の危機に対処しながらも石化病の真実、登場人物たちの過去、カスミが抱えていた秘密が次第に明かされていくのがさながらハリウッド映画を見てるかのようなワクワク感。読み始めたら止まらなくなります。 長らく電子版が刊行されていなかったのですが、『DTB』や『ディメンション W』から岩原裕二を知った方はこの機会にこちらも読んでみてほしいです。 張り巡らされた伏線、ゾクゾクするような設定、起伏に飛んだ人間模様がスリリングなアクションとともに描かれる「岩原エッセンス」が本作にもたっぷり詰まってます。いばらの王岩原裕二
ANAGUMA2021/08/18中身小学生男子の美少女とのラブコメです硬派男子・柏小太郎と残念美少女・小鹿つかさのラブコメ!というフレコミだけでは本作の魅力は語り尽くせません。ふたりは幼馴染なのですが、かつて小太郎はつかさのことを「つかさ君」だと思っていたんですわ、そのあまりの男らしさに。 それが高校生になって再会したつかさ君は中身はそのままに姿はキュルキュルの美少女になって現れたもんですからもう大変ですよね。友情が。 硬派を気取っていた小太郎が話が進むにつれつかさ君のかわいさにアテられて当初よりしょうもなく見えてくるのがかなり面白いです。 もうYOU達付き合っちゃいなよと言ってしまうのは簡単ですが、恋と友情の狭間を永遠に漂ってかわいさを振りまいていてほしいというのが私の今の願いです。chicken or beef?さぎり和紗2わかる
ANAGUMA2021/07/27女子サッカーの過去と未来と今を考える #完結応援東京オリンピックが開幕しました。このクチコミを書いている時点で女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」は予選リーグ1分1敗、今夜実施のチリ戦の結果如何でリーグ突破・敗退が決まるという状況です。 『さよなら私のクラマー』の話をする前に少しなでしこジャパンの話をしたいと思います。 2011年にワールドカップを制して以降、翌年のロンドン五輪では銀メダル、2014年はアジアカップ優勝、2015年のワールドカップも準優勝(決勝は大敗でしたが…)と結果を残してきたなでしこ。 ところが2016年リオ五輪の出場権を失うと、2019年ワールドカップではベスト16で敗退(3大会ぶり)と大舞台での近年の成績は10年前を思うと物足りないと言わざるを得ません。男子サッカーの好調とは対照に直近の試合内容についてもかなり批判を浴びています。 『さよなら私のクラマー』は「私達が負けてしまったら 日本女子サッカーが終わってしまう」という能見選手のことばから始まります。 女子サッカーは男子サッカーに比べてまだまだマイナースポーツで、代表の強さがダイレクトに注目度に繋がり、ひいては競技そのものの継続に直結するということが『クラマー』では取り上げられていました。 勝たなければいけない。勝ち続けられる選手にならなければいけない。日本の女子サッカーの未来を背負える選手にならなければいけない。 これが『クラマー』で提示されたひとつのシビアな、そして乗り越えるべきテーマでした。 現実のなでしこジャパンは、10年前の輝きが過去になりつつある状況で今日の予選リーグ最終戦を迎えているわけです。 もしここで敗退となれば、なでしこジャパン、そして今後の女子サッカーを左右するひとつの分水嶺になるのでないか。能見選手のことばが強く心に残っている自分としては、そんな緊張感さえ覚えています。 『クラマー』はまさに女子サッカーのブームの激流の只中にあった作品だと思います。過去の栄光と決して明るくない未来を現実的に見据えながら、本作は爽やかに幕切れをします。いつもどおりの試合の中で。 どれだけ過去に囚われようと、どれだけ未来を憂いても結局は一試合一試合をやっていくしかなくて、それがそのまま女子サッカーの未来になる…というメッセージ。 オリンピックで苦境に立つなでしこを見て、本作を思い、さまざまなことを考えていました。どんな結果であれ女子サッカーの未来が輝いていることを願うばかりです。 長々と書いてしまいましたが今心から何が言いたいかと言うと「勝ってくれなでしこ!!!」ということです。本当頼む!!!さよなら私のクラマー新川直司
ANAGUMA2021/07/21再びアイドルとして輝くために #1巻応援かつて人気アイドルとして名を轟かせた五月メイでしたが今はコンビニのアルバイトとして過ごす日々…。そんななか、彼女の大ファンだった嶺田不二子と偶然にも再会し、今度は不二子とともに夢を目指すことに。 不二子自身、メイの輝きによってアイドルになることを決めたひとり。その不二子の声がメイの夢を再び呼び覚ますのは王道でグッと来る展開です。 アイドルものとして特徴的なのは作詞、作曲、振り付け、広報など「自分たちで全部やる!」という自家製アイドルグループとして活動していくところでしょうか。この辺はすごく今っぽい気がして面白いです。 家族の前で居心地が悪そうなメイのようすなどざわざわするようなリアリティと、夢に向かって再点火するエネルギーが爆発する爽快感の両方が味わえる分厚い作品でした。早く2巻読みたい!アイドリバティ詩原ヒロ1わかる
ANAGUMA2021/07/13絶対に好きにさせてくる幼馴染幽霊との戦い #1巻応援個人的な2021年度上半期そうはならんやろタイトル賞受賞作品です。 幽霊になってしまった魂野こわたちゃん、恋の未練をはらすため幼馴染の健太にここぞとばかりにパンツ見せたり猛アピール開始!!(豪速球すぎる) 一方の健太も満更でもないのですが、魂野ちゃんを好きになると成仏して一緒にいられなくなってしまうので絶対に好きになるわけにはいかないという旨の業を背負うことになります。でももう好きじゃん、それは!!! 別れのときがいつか来るのかなと思うと切なくなっちゃいますが、それを感じさせないくらいいつもアホ明るくてカワイイのがよいです。 「結ばれてほしいけど結ばれてほしくね〜!」って一生言い続けたいですね。幽霊になったからパンツ見せてもバレないよね!?ゆとりーぬ1わかる
ANAGUMA2021/06/29エロかわいすぎて合掌してしまう #1巻応援えっちだってだいじょうぶっ教!!(挨拶) 母親が淫魔の咲ちゃんは大好きな六原君(お寺の息子)の夢に破廉恥な姿で現れてしまい距離を置かれてしまっているのだ。その手のマンガだったら鉄板の設定ですが本作は全年齢向けなのでどうにか大丈夫です。だいじょうぶっ教です。 咲ちゃんも六原君もピュアゆえに毎回すれ違っちゃうのがかわいくて、エロ要素もカラッとした感じなので万人に刺さるんじゃないでしょうか(でもちゃんとエロいぞ) やたらエロいフランスからの帰国子女サキュバスライバルが出てきたり、話もサクサク進みますしギャグのテンポも小気味いい。特に咲ちゃんの友達の女の子コンビがいい味を出しています。「うおっ!エロだ!」と構えて手に取るよりもフフッと笑いたいときとなんかカワイイもん見てえな…っていうときに読むのがよいのではないでしょうか。2巻も合掌して待ってます。咲ちゃんは淫魔の子(合掌)ほとむら
ANAGUMA2021/06/213ヶ月の余命で変わっていく男の人生人生に疲れた男が寿命を買い取ってくれるという謎のお店で手にしたのは、残りの人生の価値をもとに査定された30万円。手元に残した余命3ヶ月をミヤギという監視員の女性とともに過ごすことに。 世にも奇妙な物語のような設定と、終始漂う退廃的な雰囲気が特徴の作品です。「余命モノ」という言い方はよくないかもですが、あまりピンとこなかったジャンルだったのに、本作には完全に心奪われてしまいました…。 始めの頃は主人公クスノキの鬱々とした暗い性格や振る舞いを冷めた目で見てしまうかもしれませんが、3ヶ月という限られた人生の中で彼は徐々に変わっていきます。そのキッカケはやはり隣りにいるミヤギ。 ただ見守るだけだった彼女の存在が物語とクスノキの人生に少しずつ光を当て始めてからは、残りページを読み終わってしまうのがもったいないような切ない気持ちになります。作品の中に滞在してるのが心地いい感じというか。 私小説的な語り口で、どことなく閉じた世界観。人を選ぶような気はしますが、なにか行き詰まりを感じてる方に読んでほしいかも。ほんの少しかもしれませんが、読む前より前向きな気持ちになれるはずです。寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。田口囁一 三秋縋 E9L1わかる
ANAGUMA2021/06/11阪急電車がつなぐ過去と現在と未来みなさま宝塚ときいて頭に浮かぶのはやはり歌劇団でしょうか。兵庫県に宝塚市という町があって、宝塚歌劇団はそこが本拠地です。関西圏以外の方には意外に知られていなかったりしますね。 本作の舞台はその宝塚。の周辺とそこを走るローカル線阪急電車。そしてどうでもいい話ですが私の出身も宝塚。地元がとんでもない解像度で描かれているの、う、嬉しい…!と思いながらずっと読んでました。 主人公の野仲さんは手芸が好きで雑貨屋さんで働いています。が引っ込み思案の性格でお友達がいないのが悩み…。彼女が偶然阪急電車のなかで小学校のころの親友サトウさんと再会したことから物語が動き始めます。 阪急ユーザー、生活圏と移動パターンが重なってくるのでこういうこと起きがちな印象。私の祖母も電車乗ったらしょっちゅう誰かと鉢合わせていました。 長く乗っている路線の風景って心に深く刻まれているものだと思います。たまたま私は阪急に縁があったのでより強く感じましたが、電車や駅と合わせて呼び起こされる記憶は多くの方がお持ちではないでしょうか。そしてその思い出は必ずしもいいものばかりではなかったり。 本作でも阪急電車という「タイムマシン」を通して徐々に二人の過去と思いが明らかになっていきます。 手芸という共通の話題をキッカケに関係が再開したことを喜ぶ野仲さんですが、サトウさんの方はどうもぎこちなくて「親友と再会!また一緒に楽しもー!」と無邪気な物語にはなりません。 なぜならふたりはもうこどもではなく、おとなになっているから。 二人のすれ違いの原因も幼い日の阪急電車にありました。ふたりのあいだに深い溝をつくった子どもゆえの残酷な出来事です。 野仲さんの視点で記憶をたどる時、思わず胸がキュッと痛んでしまうかも…。それほど生々しい質感があります。 とはいえタイムマシンは過去だけではなく、未来にも繋がっています。過去の友情を見つめ直したふたりを阪急が今度はどこに運んでいくのか、最後まで読み終えたあとには願わくばもう一度読み返してほしいです。 ふたりがあのとき何を考えていたのか、まさに電車に乗りながら思い返すような心地がして、じんわりと気持ちが染みてくるので…。阪急タイムマシン切畑水葉4わかる
ANAGUMA2021/06/04かつての同人事情と大バブル同人時代を描く個人的なネタで恐縮ですが通っている美容師の方から大昔にコミケの売り子バイトをされていた話を聞いたことがあります。なんでもバイト先は大層羽振りがよいサークルさんで、あまりにすごい勢いで売上があがるのでお客から受け取った札を片っ端からゴミ袋に突っ込んでいき、バイト代はそこから手づかみでバサバサと支払われるありさまだったそうな…。 聞いたときはオタク向けに面白エピソード盛っていただいてありがとうございますあっはっはとテキトーに笑ってたんですが本書を読んだ今、このコミケ昔話にナマのリアリティが乗っかってきてしまい震えが止まらなくなってます。 TwitterもPixivも存在しない時代の同人あるあるを克明に記録していることで知られる本書。個人サイト、便箋、カラス口、晴海トークなど鋭いジェネレーションギャップが次々繰り出されてきますがまだこれは序の口です。 なんといっても時代の証言者・高河ゆん先生が当時の大手サークルの実情をガシガシ語るパートがド迫力すぎて手に汗握る。がゆん先生が登場してからマジで空気変わります。 当時でも都市伝説とされていたエピソードの一例がこれ。 ・売上の入ったゴミ袋を廃棄したサークルがある ・会場に銀行員が来て売上を数えていた ・スタッフ全員でハワイ行った 結論から書くとどれも“真実”だったようです。なので私が伝え聞いた札束ゴミ袋日当の件も多分マジですね。なにこれ? でもなんかパワーとエネルギーが溢れる時代だったんだなーとか、今も昔も好きなものに全力でやるのが楽しさの秘訣だよなーとか夢もらえる気がしますね。全然まとまった感ないですが一旦これでお願いします。 繰り出される情報がカロリー高すぎてまだ受け止めきれずにいるので皆さんも是非読んで面食らってほしいです。腐女子になって四半世紀経つとこうなる御手洗直子3わかる
ANAGUMA2021/06/02異世界にサメ、召喚!! #1巻応援密かに超楽しみにしていたマンガの単行本が遂に出ました。 そう、異世界サメです。 世界を救う召喚士として訓練中の落ちこぼれ生徒シロミ・ラブカトラフ(なんて名前だ)がひょんなことから召喚してしまったのはなんとサメ!!そのサメがひょんなことから同級生の召喚士を全員食い殺してしまったために追われる身に…。 出てくるキャラクターがシロミちゃん以外基本クズしか居ないのもサメに優しい世界って感じでいいですね。どれだけ人が死んでも心が傷まない親切仕様で、むしろシロミちゃんには懐いているサメが一番かわいく見えてきます。ちなみにイチャついているカップルを優先的に食っていく生態のようです。 劇中では風魔法を活用したシャークネードの再現もあるのですが異世界ならではのエンチャント的な概念をサメ映画ネタと合わせてくるとは…と普通に舌を巻いてしまいました。本家を超える説得力を出してこられるとビビりますね。 サメちゃんのヴァリエーションに富んだ暴れ方を次巻でも期待します!異世界喰滅のサメくぼけん1わかる
ANAGUMA2021/06/01ネタバレ神様の部屋モノ多すぎ!! #読切応援「貴方の家はデカすぎます」と苦情を入れられたのは古来より人の願いを叶えてきたオドミツハノカミ様。捧げものを溜め込まんと自身の領域をちょっとずつ広げてきた結果東京ドーム50個分の土地を専有する事態になっていました。 そんなわけで政府はオドミ様宅の断捨離を決行。貴重な宝物を博物館などに収蔵するとしてどしどし運び出していきます。ところが対策チームの石巻さんが荷物の行く末を目撃、なんだか雲行きが怪しくなり…というストーリー。 神様なんか出てくるので緊迫感のある話になるのかなと思いきや「部屋がモノで溢れている奴にロクなのはいない!」「君もこんなおもちゃばかり集めているんじゃないぞ」とか耳の痛くなるセリフがビシバシ飛んでくるのでそっちの方向で臨場感がありました。他人事だとは思えませんな! 片付けという身近な話題を超常の要素ときれいに噛み合わせているのが見事で、見たことない新鮮さを感じられつつも親近感を覚えてしまって面白かったです。これくらい熱く部屋の片付けについて考えていきたいね…。片付けられない神様コンドウ十画1わかる
ANAGUMA2021/05/26主人公の性格が最高に推せるあらすじはそのままタイトルに書いてあるので特に言うことはないのですが、パワハラ騎士団でこき使われていた主人公のジードくん(※実力は規格外)、極悪な環境にいたにも関わらず一切ひねくれてなくて見ているとなんだか泣けてくる…。 依頼をいくつこなせるかの勝負でも評価の高い高ランクの依頼でなく、低ランクゆえ放置されている依頼を「依頼者が困っているはず」と率先して引き受ける姿が素敵でした。最悪の生い立ちからこれほどまっすぐな性格に育つの、奇跡と言っていい。 そんな感じで主人公が素直なので読んでるとほっこりします。絵も気持ちのいい線がビシバシ走っていてカッコいいです。異世界系でこういう絵柄は貴重なんや…。ジードくんの幸せを願って2巻を待ちます。ブラックな騎士団の奴隷がホワイトな冒険者ギルドに引き抜かれてSランクになりました(ガルドコミックス)ハム梟 寺王 由夜
ANAGUMA2021/05/24ネタバレ地方競馬の現実と夢を描くマキバオー続編『みどりのマキバオー』読み終わったので読み始めました。そもそも続編があるのも初耳だったのですが読んでみると内容も『みどり』からガラリと変わっていて驚いているところです。 というのも『みどり』の舞台は基本的に中央競馬。サラブレッド世界の巨大なピラミッドの頂点を描いていたのに対し、ヒノデマキバオーが走るのはその土台である地方競馬。それも高知競馬場という言ってしまうとかなり下の方の段に位置しています。 私自身も「ウマ娘」に触れ、週末テレビでやってる競馬番組くらいは見るようになったのですが、そこで放送されてるようなGⅠレースって本当にトップオブトップの世界であって、あれがすべてじゃないんだということなんですよね。 ミドリマキバオーたちの活躍も、さも当たり前のように描かれていましたが『たいよう』ではそうはいきません。 出走手当のためにろくなローテもなく連続出走するヒノデマキバオー、やっとの思いで地方重賞レースに入着するゴールデンバット、中央競馬に乗り込むためのトライアルに勝つことさえ大変なんだというこのもどかしさ! だからこそ熱い。 『みどり』のように決して華々しいことだけではない、泥臭くじれったい展開も続きます。だからこそヒノデマキバオーがこれから先、夢を叶えてくれたときにはどれだけの感動が待っているんだろう。その時が来るのを楽しみに読んでいきたいと思います。たいようのマキバオーつの丸2わかる
ANAGUMA2021/05/10地球に来襲する「蝶」を倒すヒューマノイドの戦い #完結応援突如飛来する異様の巨大宇宙生物、スモークを焚きながらそれに立ち向かう小さな人の影…「あれはなんだ、人か、いや鉄腕アダムだ!」という最高のビジュアルを引っさげて開幕するのがハードSF『鉄腕アダム』です。 『エヴァンゲリオン』のように来襲する「蝶」は全部で8体、地球に到達されると敗北、というタイムリミットがある戦いだというのが緊張感を煽ります。毎回敵方の蝶は進化を遂げていき、人類側は科学知識を生かした作戦で撃破していくことになるのですがこの科学のトンチの効かせ方が絶妙で「そんな戦い方が!」とワクワクしてしまいます。 蝶の襲撃の合間には人類側でもさまざまなドラマが描かれ、物語を貫く謎や設定が徐々に明らかにされていくのも読み進める強力な原動力になっています。アメリカがメインの舞台なので洋画・洋ドラっぽい雰囲気で進みながらもやることはロボアニメ!みたいなノリもツボでした。好き。 SFテイストの迫力に圧倒されがちですが、本作の核のテーマはヒューマノイドのアダムと天才科学者ジェシーの友情にあると感じました。孤独だった者同士がかけがえのない相手とともに自分のやるべきことを見つけ、定めていく物語だと思います。 全4巻ながら充実した科学用語の解説コラムも収録されており読み応えは抜群です。実際の巻数よりも遥かに充実した滞空時間というか、没入した時を過ごすことが出来たように思います。感謝。鉄腕アダム吾嬬竜孝1わかる
ANAGUMA2021/05/06ネタバレ鎖から解き放たれるふたりの物語 #読切応援これめちゃめちゃよかった…。ここ最近のジャンプラ読切だとダントツで好きです。 主人公は特殊な能力を持つ奴隷の少年エリクと監督役に遣わされたアンリ中尉のふたり。 画力がすごいのでもっとバトル描写が多くなるのかなと思いきや、会話を重ねてふたりの絆が紡がれていくのが素敵…。お互い奴隷と軍人という「鎖」に縛られていることを語るのがグッときました。 死刑を自由への切符として描くオチのセンスも好きです。二人のコンビもっと見てたいな〜って思わされました。戦闘シーンもすごそうだし、軍事ものとしての世界観も広がりを感じます。 見てみたい物が沢山浮かぶ素敵な読み切りでした。連載になってくれ〜!クサリ溶五郎
ANAGUMA2021/05/04これを読んで『地獄楽』の解像度を上げよう!ジャンプ本誌に掲載された読み切り2作や一部の登場人物にフォーカスした描き下ろしの小編5篇と設定集、対談などなどという構成。単行本のオマケマンガなどでも薄々感じられてはいましたが、本編には出てこないキャラの個性やバックグラウンドなどかなり緻密に設定されていることがわかって面白いです。 最初の頃にいた死刑囚の紹介読むと「懐かし~!」って嬉しくなっちゃいますね(転び伴天連のモロマキヤ!)。 個人的に一番面白かったのは藤本タツキ先生との対談。お互いの作品の魅力に思うところや、どんなことを考えながら週刊連載を乗り越えたのかなどなど…。近しい関係だからなのか、創作に対する姿勢が鋭い着眼点で語られていて読み応えありました。 特に『地獄楽』1話のナレーション演出に対するお二人のコメント、かなり細かい演出論まで踏み込んでいて勉強になります。 本編の情報がグンと増えて解像度が上がること間違いなし。本編をもう一度読み返したくなる素敵なファンブックだと思いました!地獄楽 解体新書賀来ゆうじ
ANAGUMA2021/04/28皆川亮二初の短編集 #推しを3行で推すやはり一番やばいのは『進撃の巨人』諫山創原作の将棋マンガ『the Killing Pawn』でしょうか。諫山節と皆川演出が重なって生まれた奇跡の迫力によって最強になっている感があります(小並感)。 どの短編も皆川亮二エッセンスがギュッと詰まっているので、ファンはもちろん皆川作品が初めての方にもオススメの一冊です。転送者 皆川亮二短編集皆川亮二1わかる
ANAGUMA2021/04/21ザ・ボーイズ #推しを3行で推すドラマが大人気のポスト・スーパーヒーローコミック『ザ・ボーイズ』、この度めでたく電子書籍で最後まで邦訳が読めるようになりました! 流石のAmazonプライムでもお見せできないようなシーンも堪能できちゃうのが原作のキレているところ。 数あるアメコミの中でも特に映像化のアレンジが凝っているシリーズだと思うので、ぜひともドラマ版と比べてみてほしいです!ザ・ボーイズガース・エニス ダリック・ロバートソン 上田香子 椎名ゆかり2わかる
ANAGUMA2021/04/19月面で侍が宇宙服着て抜刀!!! #読切応援『カラーレス』のKENT先生の読み切り!! 月でヤバい生き物が暴れ探査船が取り残されてしまう事態が発生、制圧に銃器が使えないため伝説の侍・トムラにお声がかかり…というアルマゲドン的な展開。最高。一言も喋らないまま話を進めていくトムラのキャラ造形がシブいぜ…。 月面で起きている出来事や設定についても多くは語らずという感じでしたが、クールな画面づくりと剣戟の演出が一貫していて素敵でした。いいSFを読んだ…。デストロノートKENT
ANAGUMA2021/04/19お前のような総理大臣が居るか!DAIGOといえばおじいちゃんが総理大臣で有名ですね。つまりDAIGOのお姉さんである影木栄貴先生もおじいちゃんが総理大臣ということです。 そしてこの『世紀末プライムミニスター』は女子高生が弱冠25歳の総理大臣に街中で一方的に婚約者にされてしまうという漫画。この前情報だけで読みたくなってきませんか? 随所で「お前のような総理大臣が居るか!」と突っ込みたくなってしまいますが、どうも裏話としては影木先生のバックグラウンドが記事になってしまい政治ネタが書きづらくなったという向きもあるようです。そんなわけであくまでファンタジーとして読むのが正しいのでしょう。総理番の記者も官邸付きのSPも全員総理の幼なじみなところとか好きです。 一方でところどころの政治家ネタがその世界の関係者でないと出てこないようなリアリティを持っているのも面白い。イロモノだと思って読み始めたら真面目に日本の未来を憂いていたりして…という具合に終始情報量多めで圧倒されながら読んでしまいました。これが『世紀末プライムミニスター』…。世紀末プライムミニスター影木栄貴1わかる
ANAGUMA2021/04/16SNS時代のお絵描き文化の光と闇 #1巻応援爽やかな表紙と物騒なタイトルが目にとまり読みましたがこれはかなり生々しい漫画だ…。「神絵師の腕全部折っていこうぜ!!」的なネタに惹かれて気軽に手に取るとやられてしまうかも。 SNSで人気絵師になるために必要なのは「バズり」。バズるために必要なのは「フォロワー数」。フォロワー数を増やすのに必要なのは有力な「人脈」。そう、SNSの世界では良くも悪くも絵そのものよりもコミュニケーションの価値が重視される瞬間が少なからずあるのです。 みなさんもTwitterなんかで素敵なイラストを描かれる方をフォローされてることだと思います。本作を読めば絵師が人気になる仕組みのみならず、彼らが身を置いている空間の感触が高い精度で追体験できる…気がします。 創作意欲と承認欲求に人間関係が合わさることで天国にも地獄にも変わるのがSNSお絵描き世界なのだ…。 バズをキッカケに破綻したフォロワーリス丸さんとの関係、小春先輩の思惑と正体、そして佐竹くんの創作の行く末がどうなっていくのか、今からめちゃくちゃ楽しみで同じくらい怖い!!!どんな答えを出してくるんだ…。 絵描いてる人が読んだ感想がマジで知りたいですね。君の筆を折りたい河原シノ
ANAGUMA2021/04/08原稿落手のために挑めゲテモノ食い!大物作家・芹沢錬太郎に連載を確約させる条件、それは担当編集が彼の目の前でゲテモノ料理を食うこと、すなわち「ゲテ喰い」の儀に挑むことであった…。次々現れるキワモノ料理を目の前に「ぜ、絶対に嫌だー!!」と言いながら毎回「食ってみるとうめー(泣)」ってなってる新人編集・朝陽さんの姿が読者の涙を誘います。 真面目な話するとやってることがガチのハラスメントじゃん!というレベルなので人を選ぶノリではあるかも。個人的には他人に強制するくせに芹沢先生は絶対に食べないのが特に印象悪くしてる気がします。「文豪たるものゲテ喰いたれ」つーんならお前も体を張れや! とはいえ絵もきれいだし女の子キャラはかわいいしなぜだか出てくる料理は美味そうに見えてきてしまうのでキャラのノリにも出てくるメシにもついていけるかどうかは読んで判断してくれ…!という感じですが、想像も及ばないような料理が出てくるのは純粋に楽しいです。代わりに登場人物が犠牲になってますが。 あとは朝陽さんと他社の編集の足立さんがキャッキャしてるとこ(表紙の絵)が尊いのでそこですね。そこ。次巻以降は芹沢先生もゲテ喰いに巻き込んで溜飲を下げてくれねーかなぁ!書いて欲しけりゃコレを喰えジェイ・加藤1わかる
ANAGUMA2021/04/07ネタバレ菌が暴れるSFモンスター・パニック!!!主人公の霧子は普通の女子高生…だったはずですがある日突然異常な菌に乗っ取られた家族に襲いかかられて人生が一変。彼女と交配しようとしてくれる菌に追われることになります。霧子とバディを組む倉鬼は七月作品らしく片手でデザートイーグルをぶっ放してくれるので安心ですね。 とにかく敵の菌モンスターたちがグロくて生理的な嫌悪感がすごいです。霧子とひとつになろうとするのもキモい! 追い詰められた籠城した警察署の中とかでも景気よく人間たちをガシガシ乗っ取ってきます。菌類たちに狙われる霧子がいかに生き抜くか、敵に打ち勝つかが物語の主軸になっているのもわかりやすくてノレるポイント。 3巻からはダイナミックなSF展開も入ってきて飽きさせません。菌が暴れる話からそんな展開にいけるの!?というワクワクがありました。ありがちなモンスターパニックものだと敬遠しないで読んでみて欲しいです。でもグロいの駄目な人はやめたほうがいいかも。ギジン七月鏡一 朝日曼耀8わかる
ANAGUMA2021/04/05小説家とそのファンの束縛百合…ときいて飛びついてしまったのですがことはそう単純ではありません。 ベストセラーを書き上げたあと、スランプに陥った主人公の小説家・ユウが出会ったのは自身のファンを名乗る不思議な女性・エル。お互いの悩みや身上を打ち明けるうちにふたりの距離はどんどん近づいていき、エルは書けなくなってしまったユウに対してゴーストライターを申し出ます。 生活と創作の両側面に入り込んでくるエルの存在。ユウは心身ともに大きく揺り動かされることに…と途中からヤバそうな空気がじわじわ漂い始めて読むのが止まらなくなりました。 ふたりが支え合っている姿に心を温められつつも、何が起こるのか常にゾクゾク…というふたつの意味で目が離せません。 ユウに度々送られてくるストーカーらしき手紙や、エルの性格の掴みどころのなさが洋画テイストといいましょうか、サスペンスの緊張感を演出していてよいです。この辺りの味わいはもしかしたら原作小説の『デルフィーヌの友情』からきているものなのかも? とはいえあとがきにもあるように原作とは物語の進め方がかなり違っているようです。『デルフィーヌ〜』そのものがまさに作家の自伝風に書かれた小説らしく、ユウのキャラクターとも重なってくるところがあり、こちらもどんな作品なのか読んでみたくなりました。私の彼女南Q太 デルフィーヌ・ド・ヴィガン1わかる