ギャグなのかホラーなのか漂う狂気に翻弄される住みにごり たかたけし六文銭引きこもりの兄、要介護の母、アル中の父、モラハラ気質でバツイチの姉。 そして、都落ちして絶賛失業中の主人公。 この時点で濃度マシマシな家族構成だが、主人公が実家に帰省したところから始まる本作。 田舎出身の自分的には、あながち非現実的とも言えないのが、興味をそそりました。 言葉は一切発しないが、謎の存在感がある兄を軸に物語は展開されるのですが、冒頭でその兄が通り魔殺人を犯している夢を主人公がみていて、それが全話通して、こびりついて離れないんですよね。 兄の容姿も、ちびまる子の永沢くん(玉ねぎ)みたいに一見ギャグっぽい感じなのですが、この最初の光景のせいで逆に狂気すら覚えます。 ところどころ、例えばキャベツを部屋で千切りしてたり(それに血がついていたり)、主人公の同級生(女性)の名札でいかがわしいことしたり、狂気じみたことをしているので、あながち間違いではないのですが、それ以上のことをしそうな雰囲気が、常にある。 引きこもりかつ無口ってのが、否が応でも、その手の妄想をかきたてます。 似たように、父親もヤバいし、唯一家族の中でまともだと思った母親も、意外とキレてやらかすから、もうザワつきっぱなしです。 家族からみたら当たり前だったことが、世間では当たり前じゃないことって少なからずあると思うのですが、それを実際にありそうな絶妙なラインで、まざまざと見せつけられている、そんな作品です。 家族を再構築していく話なのか、それとも崩壊していく話なのか、ぜひ見届けたいです。「週刊少年チャンピオン」を知れる稀有な作品チャンピオンズ~週刊少年チャンピオンを創った男たちの物語~ 魚乃目三太六文銭「ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~」でも書かせていただきましたが、マンガ、広くとって出版業界を知れるマンガが好きなんですよね。 (余談ですが、ルーザーズは双葉社の「漫画アクション」の歴史が知れるので、こちらもおすすめです) マンバさんのレコメンドで紹介され、自分にとってドンズバな内容だっただけに興奮して読ませていただきました。 「週刊少年チャンピオン」の歴代の編集長に、当時のことを語ってもらう形式。 結論からいうとすごく良かった! 秋田書店自らが語るくらいなので、情報として正しさが担保されていることはもちろんですが、何よりこんな本を出すくらいだから皆「週刊少年チャンピオン」の愛に満ちているのがヒシヒシと伝わってきて読んでいて胸が熱くなりました。 特に、名物編集長だった壁村耐三編集長のところは激アツなんです。 「ブラック・ジャック創作秘話」を読んだことある人は、彼の破天荒さ、水虫をマッチで焼く姿が特に記憶に刻まれていると思いますが、本作でも際立ってキャラが濃い。 それだけに、少年漫画雑誌としては後発のチャンピオンを1位まで押し上げた熱量を感じます。 また、当時は終わった人として扱われていた手塚治虫に再起を促し「ブラックジャック」を生み出したのは上述の書籍で知っていましたが、半蔵門病院での手塚治虫との最期のやり取りが本作では載っていて、これには目頭が熱くなりました。(ネタバレなので割愛しますが、あの言葉に人間性の全てが詰まっていると思います。) 暴力的で、破天荒でありながら、情に厚い、ザ・昭和な感じって、自分も昭和な人間なだけに、グッとくるんですよね。 滅茶苦茶な面もありますが、こういう点が、編集部内でいつまで愛されている理由なんだと感じました。 と、壁村編集長の話ばかりしてしまいましたが、他の編集長も特に現代につながる部分は雑誌不況の影響下もあるので、それに抗い試行錯誤していく様は興味深く読ませていただきました。 チャンピオンにかかわらず、漫画、作品づくりに関わる人の思いや情熱に触れたい方はぜひおすすめしたい作品です。 全部「人」がつくっているんだと再認識させてくれます。今後の展開に期待しかない#1巻応援she is beautiful 凸ノ高秀 江坂純六文銭久々に興奮しました。 SFっぽくもあるのですが、ミステリっぽくもある本作。 その内容ですが、、 謎の研究施設・箱庭(ファミリエ)で暮らす少女たち。 彼女たちは10歳になると成績にならって「組み分け」という将来の進路がきまってしまう。 それぞれ「芸術」「学術」「生産」「労働」の4つ。 芸術・学術はまだわかりますが、「生産」は子供を数年おきに産まされる、「労働」は何らかの実験の被検体となる可能性もあるという、なかなかエグい設定。 主人公は、そのファミリエで暮らし、幼なじみで憧れの存在・光里(ひかり)と同じく「芸術」への組み分けを目指す少女・くるみ。 光里と同じ進路にいけるように日夜努力していたが、10歳になる直前、目を覚ますと14年の月日が流れてしまっていた。 傍らにいたのは、ファミリエでくるみに対していつも嫌味を言ってきた成績優秀の清香(さやか)。 なんでも10歳の誕生日直前にファミリエで事故が起き、その衝撃でくるみは眠るたびに記憶がリセットされてしまうのだという。 つまり1日しか記憶がもたない状態。 清香が言うには、上記のファミリエの事故のせいで行われるはずだった「組み分け」が免除されて、ファミリエから出て外の世界で暮らすことが許されたのだという。 戸惑うくるみに、清香が寄り添う。 かつて何かと突っかかってきた姿はそこにはなく、1日で記憶がなくなるわけですから、14年もの間毎日毎日、同じ質問に同じ回答で献身的にくるみに接してきたという。 そこに何か違和感を感じたくるみ。 夜に、飲まされそうになったクスリを飲むフリで飲まなかったら、記憶がなくならなかったことに気づく。 そこから徐々に清香に不信感をいだき、過去の自分が書いたであろうメモ 「清香を信じるな」 と、庭の木の下にあった謎の白骨死体。 清香の真意が何かわからず恐怖し、その家から出ていこうとする、くるみ。 しかし、「組み分け」が免除されたと言われていたはずだが、くるみは、外の世界ではおたずねもので、一般市民から狙われることに・・・という怒涛の展開。(長い) こんな感じで、最初は、ファミリエという強制子育て施設みたいなSFっぽい話かなとおもったら、一気に年数が過ぎて、そこから清香の謎の言動からミステリっぽくなり・・・次から次へと驚く展開に、読む手がとまらなかったです。 今後の展開が全く予想つかない、1巻の終わりもいい。 記憶が都度なくなるループをやっていくのかな? また、タイトルや最初の女性だけの世界に百合っぽさを期待しましたが、その点は現状あまりなかったので、ご留意ください。 何にせよ、SFミステリが好きな人にはおすすめしたい作品です。 こういう人社内にいて欲しい・・・隠密お局~あなたのホンネ見えてます~ かたおかみさお 保木本佳子六文銭社内で起きるちょっとしたいざこざや社員同士の衝突で落ち込む社員を総務のお局的存在・幸丘の言葉によって良い方向に向かっていく、有り体にいうとそういう話。 基本1話完結形式。 1話ごとに対象人物を変えて、幸丘の金言に自分自身の落ち度や弱みに気付かされ、やる気を回復していく様は見ていて爽快だし、悩む部分はサラリーマンの方なら誰でも共感できると思います。 主に人間関係だったり、キャリアのことだったり、ですね。悩みが尽きない部分です。 そして、そんな幸丘の正体は・・・ 断定はされていませんが、まぁ会社のエライ人です。(ということが容易に想像できるつくりなのでネタバレにはならないと思います) 一見野暮ったい風体で接するけど、出てくる言葉の切れ味で只者ではないことはわかります。 この設定も懐かしいし、自分は好きなんですよね。 社内を掃除していたおっさんが実は社長だったとか。 実際は、偉くなればなるほどそんなことしている暇なんてないのだろうけど、社員のモチベーション維持のためにこういう役回りの人は必須だなぁとか純粋に思ってしまいました。 色んな部署を常日頃からみており、問題ありそうな組織や人にさっと解決するための糸口を与える。 隠密お局とはよく言ったものです。 こういう第3者的監査っぽい人、ホント社内に1人はいて欲しい。目隠れかつ眼光鋭い新感覚キャラ如月さんは眼光炯々 紫良河みあび六文銭「目つき悪い子かわいい子」でも記載しましたが、 目にまつわるキャラクター描写は数あれど、私はどれも好きなんですよね。 目に特徴的なキャラって、不思議な魅力があって惹きつけられ、本作にもたどり着きました。 そして、また最高でございました。 前髪で目を隠している如月さん。 前髪で隠している理由は、目つきが悪いから。 確かに眼光鋭いのですが、眼光鋭いわりに性格が優しくて気弱でこのギャップがたまらないんです。 特に、私は1巻にあります剣道着を脱いだ後の笑顔にやられました。 目つき悪い子の笑顔って最高ですよね。 そして、またそんな可愛いさだけでなく、鋭い眼光で睨む姿は格好良くもあって、一挙両得です。(なんの) また新たな眼に魅力のあるキャラに出会えて、今後が楽しみです。忙しい現代日本人こそ読んで欲しいはるかリセット 野上武志六文銭休憩が大事だということを教えてくれる作品です。 読んでいて謎に納得してしまった。 煮詰まったときとか、何かが終わって次も頑張るために休憩って大事ですよね。 また、休憩の仕方って色々ありますけど、自分にとって何が一番リラックスするのかTPOに応じて異なりますよね。 本作の主人公・はるかも、執筆業を生業としており、締め切りに追われ忙しい合間をぬって、休憩していく様を描いております。 休み方の思いっきりも良くていいです。 散歩、銭湯、食事(主に酒)、ちょっとした遊び・・・などなど、その時その時に応じて休憩を工夫していきます。 これが、結構参考になるし、また自分もやっているようなあるあるも多い。 リラックス1つで、その後の生産性にも関わるので、 忙しい現代人にこそ読んで、参考にして欲しいと思いました。『ROUTE END』著者の最新作!DYS CASCADE 中川海二六文銭『ROUTE END』が控えめに言っても最高だったので、その著者さんの最新作と聞いてすっ飛んできました。 まだ1巻でしたが、良作の香りがプンプンします。 「警察署の駐車場に、12リットルの血液と1本の腕が入ったバケツが置かれる」 という感じではじまる物語。 前作同様、サイコサスペンスは言わずもがなですが、それ以上に美人上司とベテランのシニア刑事のバディという点が、興味をそそり期待値爆上げです。 この手の作品のバディって激アツですよね。 しかもこの美人とシニア刑事に、過去に関係があったようなのですが、 その内容はもっと後半で出すのかな?と思ったのですが、1巻ですぐにわかるのも個人的に良かったです。 出し惜しみしない展開の早さもさることながら、この二人にグッと感情移入できて、ストーリーに深みが増してきます。 1巻の最後が不穏すぎるし、長期的にみてベテラン刑事に何か起きてしまうのかハラハラします。 この手のバディものって何となく、どっちかが死ぬか、近しい展開になるものだと勝手に想像しちゃうので。 強いジジィキャラ好きな自分としては、その点も目が離せません。 SNSで流行る感はあるOLがゲーセンで会ったヤンキー男子高校生に懐かれる話 安田剛助六文銭ツイッターでバズった漫画の1つに出てきて読みました。 確かに、SNSが好きそうな感じがある。 SNSが好きそうな感じ、、、というのを言語化するのが難しいのだが、個人的には ・ギャップがエグいもの ・展開が一瞬で理解できる、ベタなもの ・誰も傷つかない優しい話 の要素が多い気がする。(あくまで持論です) 本作も、そんな感じです。 ゲーム大好きなOL・ハルが、たまたまゲームセンターで対戦したヤンキー・高荒(たかあら)をボコボコにしたら、懐かれたって話。 ヤンキーの風体だが、ワンコのような従順さとツンデレさのギャップがある。 例えば、ハルがゲーセンにくると高荒の表情があかるくなったり、ハルが他の人と対戦していると嫉妬したり・・・ まぁ、ベタベタなんですけど、そういう可愛いところがあるのを愛でる感じは嫌いじゃないです。 ヤンキーが奥手なのも含めて、良いギャップ。 お互い意識しはじめて、距離感が近づいてきてますが、どうオチるのかそこまで目が離せません!家族を殺され何十年の月日が経ち復讐鬼と化す鬼になる【単行本】 TETSUO六文銭休日も仕事をするようなビジネスマンだが、いたって平凡なサラリーマンな主人公。 子供と理解ある奥さんと一緒にごく普通の幸せな家庭を築いていた。 ある日、ピエロのようなお面をかぶった集団に家族が皆殺しにされ、自身も殺された・・・かと思いきや、一命をとりとめ、数十年の月日を経て目覚めるところからストーリーは始まる。 主人公も大分御老体になっている。 家族が惨殺された記憶だけが一部欠けていたが、ふいに思い出し、復讐鬼とかす流れ。 単話版で10話まで読了したが、正直わからないことだらけ。 主人公に不思議な力が覚醒してそうだけど、まだ不明な点が多い。 首謀者もわかったが、なぜ主人公の家族を殺したかまでの背景は不明。 それでも、息をつかせず、怒涛の展開は圧巻の一言。 先が気になる仕掛けが多々あって、読んでいて飽きないです。 あと、個人的にじじいキャラが強いの好きなんでその点も気に入ってます。 たぶん「鬼ゴロシ」が好きな方ならハマルと思います。 「鬼ゴロシ」よりも、ストーリーがシンプルな分とっつきやすいのも特徴です。 こんないい話だとは…大蛇に嫁いだ娘 フシアシクモ六文銭よく広告で見ていた作品なのですが、正直、広告のコマ表現が卑猥な感じだったもんで、 あーそういう話ね と、勝手にストーリーを推測して食指が動かなかったのですが、周囲の好反応もあって読んでみたら、タイトルのとおりだったという流れ。 まず大きな誤解がありまして (左が私の妄想→実際) 卑猥→卑猥じゃない、むしろ純愛 大蛇が悪いやつ→悪くない、むしろいい人 大蛇とえっさほいさする→それはする といった感じでした。 そして一番びっくりしたのが、大蛇様がめっちゃいい奴というか、めっちゃ可愛いところ。 風体は大蛇のそれなので怖いですし、脱皮とかもするので弱冠キモい(失礼)のですが、ミヨに対する思いが純粋で、それゆえに丁寧に扱う様子がモジモジして可愛い。 思いが伝わると素直に喜ぶ姿もかわいい。 山の主なのに、少年みたいに喜ぶ。 二人の関係が深まりつつ、二人の背景や過去についても少しずつ明らかになってきて、ますます目が離せなくなってきました。 ネット広告をみて、自分のような感想もった人、むしろそういう人こそ是非読んで欲しい作品です!「死」にこめられた思いよろこびのうた ウチヤマユージ六文銭火葬場で見つかった老夫婦の焼死体。 その夫婦は子供もなく、最近妻が認知症になり、夫がその介護をしていたという状況。 そこから介護疲れによる自殺とみなされたが、しかしその真相は・・・という話。 週刊誌の記者である伊能が現地を訪れ、事の真相を地域住民から聞き出していく展開は、ミステリーっぽさもあるけど、それ以上に人間ドラマ的な要素が強く、最後は感動した。 二人が死に至った思いというのが、懺悔でもあるし、故郷に対する思いもある。 何より、愛情もあるだろう。 相手を残して先に死にたくないという強い思いが、後半にかけて強くにじみでてくる様に、特に自分は感動しました。 子供のいないたった二人の家族だから到達した感情だと思います。 実際にあった事件ー老夫婦が焼死体で発見されたーをモチーフに、内容はフィクションではあるようだが、実際の事件にも、本作のような二人の何か思いがあったのか?と感じずにはいられません。 最期の瞬間、死に方にその人の人生観がでるとすれば、これほど美しいものはないのではないでしょうか? 単行本で繰り返し読むとジワる魅力ルリドラゴン 眞藤雅興六文銭一時期ネット界隈で話題になっていたが、単行本になったので読んでみた。 1回目読んだ時、なんでこれがこんなに話題になったのかわからなかったというのが正直な感想。(ディスりとかではなく) ただ、日常系特有の謎の中毒性があって、何回か読むと魅力がジワジワとわかってきた。 個人的には ・主人公がドラゴンになっても受け入れているクラスメイトのゆるい雰囲気 ・それでも時々出てくるドランゴンの現象(火を吐くとか)に漂う緊張感 そして ・お母さんの肝の座り方が格好いい この3点がツボりました。 ドラゴンになったというのに、全体的に会話など日常系っぽくゆる~い空気が流れているのですが、それでも時々、下手したら死に至るようなドラゴンの現象がでて(火を吐くところとか)、それがクラスメイトに影響を与える様は読んでいてヒヤヒヤします。 ただ、次の瞬間、それを受け入れているクラスメイトたち。 この優しい世界に、安堵するとともにほっこりします。 今の子は多様性(?)を重んじるから、いじめとかしないのかねぇ、とおっさんは謎に感心しましたよ。 最後に、お母さんが、超絶魅力的。 ドラゴンのハーフを産むような母だから、まぁ一風変わっているのでしょうが、さりげなく娘がドラゴンであることを学校側に根回ししていたり、特に父親(正真正銘のドラゴン)とのやり取りがスゴい! 主人公のルリも、ちょっとぼんやりしててかわいいのですが、お母さんの豪傑っぷりも魅力。 お母さんとドラゴンの出会いとか掘り下げて欲しいなと強く願います。 何にせよ、ジャンプ新シリーズで話題になった底力を感じました。 何度も読んで見ることをおすすめします。 « First ‹ Prev … 17 18 19 20 21 22 23 24 25 … Next › Last » もっとみる
ギャグなのかホラーなのか漂う狂気に翻弄される住みにごり たかたけし六文銭引きこもりの兄、要介護の母、アル中の父、モラハラ気質でバツイチの姉。 そして、都落ちして絶賛失業中の主人公。 この時点で濃度マシマシな家族構成だが、主人公が実家に帰省したところから始まる本作。 田舎出身の自分的には、あながち非現実的とも言えないのが、興味をそそりました。 言葉は一切発しないが、謎の存在感がある兄を軸に物語は展開されるのですが、冒頭でその兄が通り魔殺人を犯している夢を主人公がみていて、それが全話通して、こびりついて離れないんですよね。 兄の容姿も、ちびまる子の永沢くん(玉ねぎ)みたいに一見ギャグっぽい感じなのですが、この最初の光景のせいで逆に狂気すら覚えます。 ところどころ、例えばキャベツを部屋で千切りしてたり(それに血がついていたり)、主人公の同級生(女性)の名札でいかがわしいことしたり、狂気じみたことをしているので、あながち間違いではないのですが、それ以上のことをしそうな雰囲気が、常にある。 引きこもりかつ無口ってのが、否が応でも、その手の妄想をかきたてます。 似たように、父親もヤバいし、唯一家族の中でまともだと思った母親も、意外とキレてやらかすから、もうザワつきっぱなしです。 家族からみたら当たり前だったことが、世間では当たり前じゃないことって少なからずあると思うのですが、それを実際にありそうな絶妙なラインで、まざまざと見せつけられている、そんな作品です。 家族を再構築していく話なのか、それとも崩壊していく話なのか、ぜひ見届けたいです。「週刊少年チャンピオン」を知れる稀有な作品チャンピオンズ~週刊少年チャンピオンを創った男たちの物語~ 魚乃目三太六文銭「ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~」でも書かせていただきましたが、マンガ、広くとって出版業界を知れるマンガが好きなんですよね。 (余談ですが、ルーザーズは双葉社の「漫画アクション」の歴史が知れるので、こちらもおすすめです) マンバさんのレコメンドで紹介され、自分にとってドンズバな内容だっただけに興奮して読ませていただきました。 「週刊少年チャンピオン」の歴代の編集長に、当時のことを語ってもらう形式。 結論からいうとすごく良かった! 秋田書店自らが語るくらいなので、情報として正しさが担保されていることはもちろんですが、何よりこんな本を出すくらいだから皆「週刊少年チャンピオン」の愛に満ちているのがヒシヒシと伝わってきて読んでいて胸が熱くなりました。 特に、名物編集長だった壁村耐三編集長のところは激アツなんです。 「ブラック・ジャック創作秘話」を読んだことある人は、彼の破天荒さ、水虫をマッチで焼く姿が特に記憶に刻まれていると思いますが、本作でも際立ってキャラが濃い。 それだけに、少年漫画雑誌としては後発のチャンピオンを1位まで押し上げた熱量を感じます。 また、当時は終わった人として扱われていた手塚治虫に再起を促し「ブラックジャック」を生み出したのは上述の書籍で知っていましたが、半蔵門病院での手塚治虫との最期のやり取りが本作では載っていて、これには目頭が熱くなりました。(ネタバレなので割愛しますが、あの言葉に人間性の全てが詰まっていると思います。) 暴力的で、破天荒でありながら、情に厚い、ザ・昭和な感じって、自分も昭和な人間なだけに、グッとくるんですよね。 滅茶苦茶な面もありますが、こういう点が、編集部内でいつまで愛されている理由なんだと感じました。 と、壁村編集長の話ばかりしてしまいましたが、他の編集長も特に現代につながる部分は雑誌不況の影響下もあるので、それに抗い試行錯誤していく様は興味深く読ませていただきました。 チャンピオンにかかわらず、漫画、作品づくりに関わる人の思いや情熱に触れたい方はぜひおすすめしたい作品です。 全部「人」がつくっているんだと再認識させてくれます。今後の展開に期待しかない#1巻応援she is beautiful 凸ノ高秀 江坂純六文銭久々に興奮しました。 SFっぽくもあるのですが、ミステリっぽくもある本作。 その内容ですが、、 謎の研究施設・箱庭(ファミリエ)で暮らす少女たち。 彼女たちは10歳になると成績にならって「組み分け」という将来の進路がきまってしまう。 それぞれ「芸術」「学術」「生産」「労働」の4つ。 芸術・学術はまだわかりますが、「生産」は子供を数年おきに産まされる、「労働」は何らかの実験の被検体となる可能性もあるという、なかなかエグい設定。 主人公は、そのファミリエで暮らし、幼なじみで憧れの存在・光里(ひかり)と同じく「芸術」への組み分けを目指す少女・くるみ。 光里と同じ進路にいけるように日夜努力していたが、10歳になる直前、目を覚ますと14年の月日が流れてしまっていた。 傍らにいたのは、ファミリエでくるみに対していつも嫌味を言ってきた成績優秀の清香(さやか)。 なんでも10歳の誕生日直前にファミリエで事故が起き、その衝撃でくるみは眠るたびに記憶がリセットされてしまうのだという。 つまり1日しか記憶がもたない状態。 清香が言うには、上記のファミリエの事故のせいで行われるはずだった「組み分け」が免除されて、ファミリエから出て外の世界で暮らすことが許されたのだという。 戸惑うくるみに、清香が寄り添う。 かつて何かと突っかかってきた姿はそこにはなく、1日で記憶がなくなるわけですから、14年もの間毎日毎日、同じ質問に同じ回答で献身的にくるみに接してきたという。 そこに何か違和感を感じたくるみ。 夜に、飲まされそうになったクスリを飲むフリで飲まなかったら、記憶がなくならなかったことに気づく。 そこから徐々に清香に不信感をいだき、過去の自分が書いたであろうメモ 「清香を信じるな」 と、庭の木の下にあった謎の白骨死体。 清香の真意が何かわからず恐怖し、その家から出ていこうとする、くるみ。 しかし、「組み分け」が免除されたと言われていたはずだが、くるみは、外の世界ではおたずねもので、一般市民から狙われることに・・・という怒涛の展開。(長い) こんな感じで、最初は、ファミリエという強制子育て施設みたいなSFっぽい話かなとおもったら、一気に年数が過ぎて、そこから清香の謎の言動からミステリっぽくなり・・・次から次へと驚く展開に、読む手がとまらなかったです。 今後の展開が全く予想つかない、1巻の終わりもいい。 記憶が都度なくなるループをやっていくのかな? また、タイトルや最初の女性だけの世界に百合っぽさを期待しましたが、その点は現状あまりなかったので、ご留意ください。 何にせよ、SFミステリが好きな人にはおすすめしたい作品です。 こういう人社内にいて欲しい・・・隠密お局~あなたのホンネ見えてます~ かたおかみさお 保木本佳子六文銭社内で起きるちょっとしたいざこざや社員同士の衝突で落ち込む社員を総務のお局的存在・幸丘の言葉によって良い方向に向かっていく、有り体にいうとそういう話。 基本1話完結形式。 1話ごとに対象人物を変えて、幸丘の金言に自分自身の落ち度や弱みに気付かされ、やる気を回復していく様は見ていて爽快だし、悩む部分はサラリーマンの方なら誰でも共感できると思います。 主に人間関係だったり、キャリアのことだったり、ですね。悩みが尽きない部分です。 そして、そんな幸丘の正体は・・・ 断定はされていませんが、まぁ会社のエライ人です。(ということが容易に想像できるつくりなのでネタバレにはならないと思います) 一見野暮ったい風体で接するけど、出てくる言葉の切れ味で只者ではないことはわかります。 この設定も懐かしいし、自分は好きなんですよね。 社内を掃除していたおっさんが実は社長だったとか。 実際は、偉くなればなるほどそんなことしている暇なんてないのだろうけど、社員のモチベーション維持のためにこういう役回りの人は必須だなぁとか純粋に思ってしまいました。 色んな部署を常日頃からみており、問題ありそうな組織や人にさっと解決するための糸口を与える。 隠密お局とはよく言ったものです。 こういう第3者的監査っぽい人、ホント社内に1人はいて欲しい。目隠れかつ眼光鋭い新感覚キャラ如月さんは眼光炯々 紫良河みあび六文銭「目つき悪い子かわいい子」でも記載しましたが、 目にまつわるキャラクター描写は数あれど、私はどれも好きなんですよね。 目に特徴的なキャラって、不思議な魅力があって惹きつけられ、本作にもたどり着きました。 そして、また最高でございました。 前髪で目を隠している如月さん。 前髪で隠している理由は、目つきが悪いから。 確かに眼光鋭いのですが、眼光鋭いわりに性格が優しくて気弱でこのギャップがたまらないんです。 特に、私は1巻にあります剣道着を脱いだ後の笑顔にやられました。 目つき悪い子の笑顔って最高ですよね。 そして、またそんな可愛いさだけでなく、鋭い眼光で睨む姿は格好良くもあって、一挙両得です。(なんの) また新たな眼に魅力のあるキャラに出会えて、今後が楽しみです。忙しい現代日本人こそ読んで欲しいはるかリセット 野上武志六文銭休憩が大事だということを教えてくれる作品です。 読んでいて謎に納得してしまった。 煮詰まったときとか、何かが終わって次も頑張るために休憩って大事ですよね。 また、休憩の仕方って色々ありますけど、自分にとって何が一番リラックスするのかTPOに応じて異なりますよね。 本作の主人公・はるかも、執筆業を生業としており、締め切りに追われ忙しい合間をぬって、休憩していく様を描いております。 休み方の思いっきりも良くていいです。 散歩、銭湯、食事(主に酒)、ちょっとした遊び・・・などなど、その時その時に応じて休憩を工夫していきます。 これが、結構参考になるし、また自分もやっているようなあるあるも多い。 リラックス1つで、その後の生産性にも関わるので、 忙しい現代人にこそ読んで、参考にして欲しいと思いました。『ROUTE END』著者の最新作!DYS CASCADE 中川海二六文銭『ROUTE END』が控えめに言っても最高だったので、その著者さんの最新作と聞いてすっ飛んできました。 まだ1巻でしたが、良作の香りがプンプンします。 「警察署の駐車場に、12リットルの血液と1本の腕が入ったバケツが置かれる」 という感じではじまる物語。 前作同様、サイコサスペンスは言わずもがなですが、それ以上に美人上司とベテランのシニア刑事のバディという点が、興味をそそり期待値爆上げです。 この手の作品のバディって激アツですよね。 しかもこの美人とシニア刑事に、過去に関係があったようなのですが、 その内容はもっと後半で出すのかな?と思ったのですが、1巻ですぐにわかるのも個人的に良かったです。 出し惜しみしない展開の早さもさることながら、この二人にグッと感情移入できて、ストーリーに深みが増してきます。 1巻の最後が不穏すぎるし、長期的にみてベテラン刑事に何か起きてしまうのかハラハラします。 この手のバディものって何となく、どっちかが死ぬか、近しい展開になるものだと勝手に想像しちゃうので。 強いジジィキャラ好きな自分としては、その点も目が離せません。 SNSで流行る感はあるOLがゲーセンで会ったヤンキー男子高校生に懐かれる話 安田剛助六文銭ツイッターでバズった漫画の1つに出てきて読みました。 確かに、SNSが好きそうな感じがある。 SNSが好きそうな感じ、、、というのを言語化するのが難しいのだが、個人的には ・ギャップがエグいもの ・展開が一瞬で理解できる、ベタなもの ・誰も傷つかない優しい話 の要素が多い気がする。(あくまで持論です) 本作も、そんな感じです。 ゲーム大好きなOL・ハルが、たまたまゲームセンターで対戦したヤンキー・高荒(たかあら)をボコボコにしたら、懐かれたって話。 ヤンキーの風体だが、ワンコのような従順さとツンデレさのギャップがある。 例えば、ハルがゲーセンにくると高荒の表情があかるくなったり、ハルが他の人と対戦していると嫉妬したり・・・ まぁ、ベタベタなんですけど、そういう可愛いところがあるのを愛でる感じは嫌いじゃないです。 ヤンキーが奥手なのも含めて、良いギャップ。 お互い意識しはじめて、距離感が近づいてきてますが、どうオチるのかそこまで目が離せません!家族を殺され何十年の月日が経ち復讐鬼と化す鬼になる【単行本】 TETSUO六文銭休日も仕事をするようなビジネスマンだが、いたって平凡なサラリーマンな主人公。 子供と理解ある奥さんと一緒にごく普通の幸せな家庭を築いていた。 ある日、ピエロのようなお面をかぶった集団に家族が皆殺しにされ、自身も殺された・・・かと思いきや、一命をとりとめ、数十年の月日を経て目覚めるところからストーリーは始まる。 主人公も大分御老体になっている。 家族が惨殺された記憶だけが一部欠けていたが、ふいに思い出し、復讐鬼とかす流れ。 単話版で10話まで読了したが、正直わからないことだらけ。 主人公に不思議な力が覚醒してそうだけど、まだ不明な点が多い。 首謀者もわかったが、なぜ主人公の家族を殺したかまでの背景は不明。 それでも、息をつかせず、怒涛の展開は圧巻の一言。 先が気になる仕掛けが多々あって、読んでいて飽きないです。 あと、個人的にじじいキャラが強いの好きなんでその点も気に入ってます。 たぶん「鬼ゴロシ」が好きな方ならハマルと思います。 「鬼ゴロシ」よりも、ストーリーがシンプルな分とっつきやすいのも特徴です。 こんないい話だとは…大蛇に嫁いだ娘 フシアシクモ六文銭よく広告で見ていた作品なのですが、正直、広告のコマ表現が卑猥な感じだったもんで、 あーそういう話ね と、勝手にストーリーを推測して食指が動かなかったのですが、周囲の好反応もあって読んでみたら、タイトルのとおりだったという流れ。 まず大きな誤解がありまして (左が私の妄想→実際) 卑猥→卑猥じゃない、むしろ純愛 大蛇が悪いやつ→悪くない、むしろいい人 大蛇とえっさほいさする→それはする といった感じでした。 そして一番びっくりしたのが、大蛇様がめっちゃいい奴というか、めっちゃ可愛いところ。 風体は大蛇のそれなので怖いですし、脱皮とかもするので弱冠キモい(失礼)のですが、ミヨに対する思いが純粋で、それゆえに丁寧に扱う様子がモジモジして可愛い。 思いが伝わると素直に喜ぶ姿もかわいい。 山の主なのに、少年みたいに喜ぶ。 二人の関係が深まりつつ、二人の背景や過去についても少しずつ明らかになってきて、ますます目が離せなくなってきました。 ネット広告をみて、自分のような感想もった人、むしろそういう人こそ是非読んで欲しい作品です!「死」にこめられた思いよろこびのうた ウチヤマユージ六文銭火葬場で見つかった老夫婦の焼死体。 その夫婦は子供もなく、最近妻が認知症になり、夫がその介護をしていたという状況。 そこから介護疲れによる自殺とみなされたが、しかしその真相は・・・という話。 週刊誌の記者である伊能が現地を訪れ、事の真相を地域住民から聞き出していく展開は、ミステリーっぽさもあるけど、それ以上に人間ドラマ的な要素が強く、最後は感動した。 二人が死に至った思いというのが、懺悔でもあるし、故郷に対する思いもある。 何より、愛情もあるだろう。 相手を残して先に死にたくないという強い思いが、後半にかけて強くにじみでてくる様に、特に自分は感動しました。 子供のいないたった二人の家族だから到達した感情だと思います。 実際にあった事件ー老夫婦が焼死体で発見されたーをモチーフに、内容はフィクションではあるようだが、実際の事件にも、本作のような二人の何か思いがあったのか?と感じずにはいられません。 最期の瞬間、死に方にその人の人生観がでるとすれば、これほど美しいものはないのではないでしょうか? 単行本で繰り返し読むとジワる魅力ルリドラゴン 眞藤雅興六文銭一時期ネット界隈で話題になっていたが、単行本になったので読んでみた。 1回目読んだ時、なんでこれがこんなに話題になったのかわからなかったというのが正直な感想。(ディスりとかではなく) ただ、日常系特有の謎の中毒性があって、何回か読むと魅力がジワジワとわかってきた。 個人的には ・主人公がドラゴンになっても受け入れているクラスメイトのゆるい雰囲気 ・それでも時々出てくるドランゴンの現象(火を吐くとか)に漂う緊張感 そして ・お母さんの肝の座り方が格好いい この3点がツボりました。 ドラゴンになったというのに、全体的に会話など日常系っぽくゆる~い空気が流れているのですが、それでも時々、下手したら死に至るようなドラゴンの現象がでて(火を吐くところとか)、それがクラスメイトに影響を与える様は読んでいてヒヤヒヤします。 ただ、次の瞬間、それを受け入れているクラスメイトたち。 この優しい世界に、安堵するとともにほっこりします。 今の子は多様性(?)を重んじるから、いじめとかしないのかねぇ、とおっさんは謎に感心しましたよ。 最後に、お母さんが、超絶魅力的。 ドラゴンのハーフを産むような母だから、まぁ一風変わっているのでしょうが、さりげなく娘がドラゴンであることを学校側に根回ししていたり、特に父親(正真正銘のドラゴン)とのやり取りがスゴい! 主人公のルリも、ちょっとぼんやりしててかわいいのですが、お母さんの豪傑っぷりも魅力。 お母さんとドラゴンの出会いとか掘り下げて欲しいなと強く願います。 何にせよ、ジャンプ新シリーズで話題になった底力を感じました。 何度も読んで見ることをおすすめします。
引きこもりの兄、要介護の母、アル中の父、モラハラ気質でバツイチの姉。 そして、都落ちして絶賛失業中の主人公。 この時点で濃度マシマシな家族構成だが、主人公が実家に帰省したところから始まる本作。 田舎出身の自分的には、あながち非現実的とも言えないのが、興味をそそりました。 言葉は一切発しないが、謎の存在感がある兄を軸に物語は展開されるのですが、冒頭でその兄が通り魔殺人を犯している夢を主人公がみていて、それが全話通して、こびりついて離れないんですよね。 兄の容姿も、ちびまる子の永沢くん(玉ねぎ)みたいに一見ギャグっぽい感じなのですが、この最初の光景のせいで逆に狂気すら覚えます。 ところどころ、例えばキャベツを部屋で千切りしてたり(それに血がついていたり)、主人公の同級生(女性)の名札でいかがわしいことしたり、狂気じみたことをしているので、あながち間違いではないのですが、それ以上のことをしそうな雰囲気が、常にある。 引きこもりかつ無口ってのが、否が応でも、その手の妄想をかきたてます。 似たように、父親もヤバいし、唯一家族の中でまともだと思った母親も、意外とキレてやらかすから、もうザワつきっぱなしです。 家族からみたら当たり前だったことが、世間では当たり前じゃないことって少なからずあると思うのですが、それを実際にありそうな絶妙なラインで、まざまざと見せつけられている、そんな作品です。 家族を再構築していく話なのか、それとも崩壊していく話なのか、ぜひ見届けたいです。