あうしぃ@カワイイマンガ2020/11/08愛され末っ子狐の劣等感 #1巻応援狐と神主の間に生まれた九人きょうだいの末っ子は、他の優秀で美しい兄姉と比べると、イマイチ。それでも兄姉と幼馴染男子に愛され、明るく過ごしていたが、ある時他人の言葉に傷つき……気がつくと「魅力(チャーム)の力」発動!周りメロメロ! ☆☆☆☆☆ とは書きましたが、「魅力の力」を使わない時の末っ子・久子(きゅーこ)も、ものっそい愛らしいです。のほほん明るい雰囲気に癒されるぅ〜。そして何より良いのは、人を否定する事が全く無いところ。愛されキャラ・久子は「愛する」キャラなのです! その事は兄姉も超カッコいい幼馴染・春人も分かっていて、そのままでいいと言ってくれる。なのに久子は納得しない。そして自分の魅力って何だろう……と悩み、模索するお話が始まります。 困ったことが起こると使ってしまう「魅力の力」で混乱を起こしつつ、春人と恋愛以前のイチャコラして、優しく楽しく愛らしい日々のお話、緩やか〜に進行中!ゆらゆらQ雨隠ギド1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/11/07超強配達人は友達が欲しい #1巻応援ダンジョン内に弁当お届け!配達人・カイエン君は冒険者・怪物の区別無く配達するが、邪魔する奴には容赦無し!超強い配達人だが、彼は友達が欲しい! 決してコミュ障では無いのに、友達に異様に拘るカイエン君。彼の望みは次第にいい様に利用され始め、「トモダチ」を餌に頑張らされるカイエン君、なかなか可笑しな事になっていく。矢鱈強いので可哀想では無く、笑えるコメディになっている。 ダンジョンのボスも冒険者も、分け隔てなく付き合うカイエン君の、気持ち良さとアホっぽさが可愛い! 食漫画としては食材がよく分からないので見所は無いが、和風な世界観とペンのタッチがとてもマッチして、不思議かつ勢いのある、楽しい冒険譚になっている。 (連載時は「ダンジョンデリバリー」となっていたのかな?) ◉◉◉◉◉ 巻末の読み切りは、主人公が自分で描いた異世界モノ漫画の主人公に転生してしまう話。自分の描いた話の駄目さにウンザリしながら、創作に盛り込んだ現実がリンクし、切実になっていく。この作品を傑作にするには……?ダンジョン&デリバリー鈴木小波1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/11/06香川男子×長野女子の同棲、割と幸せ進行前作『トナリはなにを食う人ぞ』で、見事恋を成就した元ズボラ女子・稲葉さん。社会人になり、料理男子の瀬戸君と同棲を始める本作、なかなか甘々です。 前作と比べ、お酒をがっつり飲んだり、エッチな攻防が繰り広げられたりと、オトナな内容多め。レシピも酒のつまみが増えつつ、作り置き・弁当・副菜等豊か。 何がいいって、稲葉さん一人頑張るわけじゃないところ。瀬戸君も自分の細かい性格を自覚して直し、お互いに生活をすり合わせ、感謝しあったりして、共に楽しく生活する。そんな二人を、素直に見習いたくなります。 一番盛り上がるイベントは、お互いの実家への帰省。食を含め互いの基盤を知ったり、親に認めてもらおうと頑張ったり。特に瀬戸君の実家・香川回は、地域の食、実家の家業や家族構成など、瀬戸君の背景が見えて人物像に深みが。私も長男だから、分かるよ〜。 安定している二人だけれど、実は物凄い偶然のご縁だと知っているから、こちらがこの二人にどえらく感情移入してしまう。おはようからおやすみまで生活を覗きながら、二人の奇跡の続きをいつまでも眺めていたい、そんな作品です。トナリはなにを食う人ぞ ほろよいふじつか雪
あうしぃ@カワイイマンガ2020/11/04撮る/撮られる三角関係舞台は岩手県盛岡市。高三のあかりは写真を撮る同級生・ユキと出会い、新しい世界を教わり、恋をする。 写真家を目指すユキと、彼女を追うあかりの撮る/撮られるが入れ替わる関係性。写真から互いの心を知る繊細さ。傷つく顔を撮らずにはいられないエモーション。「写真」を介して伝えられる感情は、多彩だ。 あかりの恋を軸に物語は進むが、あかりに恋する野球部の凛太郎、幼馴染の凛太郎を見つめるユキという三角関係が生まれ、切なさを加速させる。 それぞれが互いの弱さにつけ込み、都合良く築く関係性は、一時の安心の後、容易に崩壊する。その度に突きつけられる本心に、耐え切れず剥き出しになる感情は息苦しい。 一見「百合に挟まる」凛太郎だが、彼の恋心と真心が次第に見えると、彼のままならさが可哀想になってくる。彼も含めた三人それぞれに「受け入れられなかった」という瞬間が描かれ、崩れ落ちる苦しみの物語には〈三人の〉曲げられない恋心があり、それを突き詰めた先にある終局に感極まる。 三人のその後の、平和を祈りたくなる物語だ。彼女とカメラと彼女の季節月子1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/29徳島ロコドル繰り出す自虐と他県dis私は埼玉県民ですので、多少の自虐ネタには動じない自負があるのですが、この作品の自虐にはかなり驚きました。 徳島県の地元アイドル=ロコドルは、徳島のいい所をアピールしなくてはいけない筈なのですが、のっけから「何もない!」「田舎!」「県外の人は知らない!」と、地元を紹介しつつサゲるサゲる。強烈な笑い。 それでも紹介される名産や行事、地元あるあるは多岐に渡り、色々な事を知れる。私は本当に徳島のことを知らないなぁと、改めて認識させられます。 更には同じ西日本でもマイナーな所のアイドルが現れ、互いをdisりマウントを取り合い……田舎同士の低レベルな争いの中に各県の、思いもよらない特色が紹介され、毒っぽい笑いのインパクト故に、各地域の面白さが印象に残ります。 それにしても徳島弁、可愛い。時々無性に使いたくなるじょ! 【出て来る地域】 四国●徳島県・香川県・愛媛県・高知県 関西●和歌山県・兵庫県淡路島 中国●鳥取県・岡山県あわドルぐらし井上行広
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/29生口島JKの釣り×自転車ライフ #1巻応援尾道市に属する生口島(いくちじま)に引っ越してきた自転車好きのみかは、釣りをしているみうと出会う。不思議な因縁で巡り合う二人が、釣りを通じて意気投合し、自転車×釣りに興じる日々のお話は、始終明るく楽しげ。 この明るさ、舞台の生口島にも要因がありそう。瀬戸内海に浮かぶこの島は、レモンの産地でサイクリングも盛ん。島全体で現代アートを展示していたりと、楽しそうな所。 海は美しく、釣りには最高のロケーション。みうの家の古い日本家屋の珍しさや島のちょっとした食習慣など面白い。そしてそれらを素直に楽しむみかに、次第に打ち解けて行くちょっと内向的なみうの関係性も、既にいい感じ!しまなみくるくる多平優香
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/28現代っ子と神様、宇部の歪んだ時空冒険小学生達が撤去された古いお社を復活させると、スマホの中に神様が!冒険大好きな子供達だが、それから次第に不思議な現象に巻き込まれる……というお話。 妙に女子のパンチラが多くてちょっと辟易するものの、元気な子供達の冒険と民話・伝承の世界とがリンクする、スリルと知的トキメキが楽しい。 ……物語だけ読んでいると、ここ迄の感想になるのだが、この場所が(参考文献等から)山口県宇部市が舞台かも、と考えだすと、急に奇妙な世界観が立ち現れる。 既に埋め立てられている筈の「鍋島」が、古い姿のまま存在するという「時空の歪み」の中で、不思議な者との出会いが描かれる。また、保存された古い石畳や、地図に見当たらない?神社で、やはり時空の歪む現象が起こる。時折現れるブリキの看板のある街並や古民家など、時代が混在しているらしき世界観が見て取れ、郷土資料を調べてみたくなる。 スマホと古い神様の同居という「歪み」に始まり、様々に今と昔が混在し、古い「時層」が剥き出しになる町で、民謡を歌ったり巫女になったりと、色々な形で古い時と触れる小学生の冒険は、知的好奇心に訴えるものがある。チロリン堂の夏休みオオカミうお1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/28滋賀・琵琶湖古き一族の異能バトル!舞台は琵琶湖。湖より力を授かる一族の、分家の青年と本家の跡取り息子は、似た力を持つ一族の息子と高校で出会い、反目する。どちらかがこの地を出て行くか……という時に、彼らの前に、高校の校長が現れる。彼の目的は……? ◉◉◉◉◉ 巨大な琵琶湖と城の歴史、水路を船で通学する風景の非日常感と気持ち良さ(モデルは彦根等と言われますが、水路に関しては近江八幡も近いと感じました)。水を介して発生する異能は、水面を波立たせ、豪快にしぶきを上げて迫力! 異能自体は精神や時間に作用し、緊張感あるバトルが繰り返されます。しかし、登場人物たちは皆、異能に振り回され、異能を忌み嫌っている。誰一人として幸福にしない異能を、それでも使うのか……それぞれの覚悟が試される展開の切なさ。 そして男の子それぞれの愛らしさに加えて、女性陣も皆可愛い!異能と因縁に恋も加わって、スリリングなストーリーは読み応え抜群!偉大なる、しゅららぼん関口太郎 万城目学5わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/28富山・逃避の果・仮初の安息不倫にしろ逃亡犯にしろ、逃避行と〈北〉はよく似合う。後ろめたさを抱える身には、人目のない北の冬はうってつけ、という事だろうか。 『さらば、佳き日』の兄妹は、二人で共に在る事を選び、住み慣れた故郷を捨て、親と友を捨て、雪の降る北陸へと向かう。 故郷が湘南地域であることは、6巻ではっきりする(江ノ島タワーが描かれている等)。きらきら明るい海沿いの道の描写は1巻から印象的だが、同じ様に美しい海が、北陸に来てからの描写にも出てくる。 5巻に出てくる「天晴」は絵から恐らく、雨晴(あまはらし)海岸。富山県高岡市にある、岩の景観が印象的な海岸。他にも古い日本家屋や庄川の花火大会などから、ここは富山県だと分かる。 意外と穏やかで明るい雨晴海岸にて、妹の晃は、自分と不可分な海を想う。まるで隣の兄・桂一の事を想うように。 ここでは冬の厳しい富山を、暗く扱うことはない。光ある穏やかな地で、優しい人々に受け入れられる「夫婦」は幸せそうだ……受け入れられる筈もない二人の秘密を、どこまでも抱えたまま。 (6巻の書誌情報で「富山」とはっきり書かれているので、間違い無いと思います。4巻で桂一が「福井……だったかな」と言うのは、彼のいい加減さのエピソードになっていますね)さらば、佳き日茜田千4わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/25埼玉が誇る名実業家は攘夷志士?! #1巻応援これ、かなり驚きました。埼玉県民として県の誇る偉人の渋沢栄一について、知っているつもりでいましたが、業績ばかりに目が行って、その青年時代を思ったことは無かった。 明治政府で大蔵官僚として活躍した後、実業家として数多の企業や大学を設立し、日本の産業の基礎を作った渋沢栄一。その人がまさか、攘夷の志士であったとは! 豪農の息子であった栄一は、その賢さと真っ直ぐな心故に、倒幕の運動に身を投じる……と言うとやはり、実業家としての栄一像とズレがありそうに思えますが、彼を動かした幾つかの「言葉」を見ると、高い理想と優しさで「戦う」栄一を貫くビジョンが見えて来ます。 作者は阿佐田哲也や西本聖を描いてきた〈いぶし銀の名手〉星野泰視先生。熱い筆致で幕末の動乱と渋沢栄一の旅立ちを、ぐいぐい読ませます。次の大河ドラマや一万円札等、話題急上昇中の渋沢栄一を、今だから読んでおきたい!日本を創った男~渋沢栄一 青き日々~星野泰視1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/24秋田・群馬/一風変わった歴史物二点岩明均先生の戦国〜江戸期の中編二点。いずれもある程度史実に即し、誰もが知っている物の誕生秘話を描いて、読み応えのある物語になっている。 【雪の峠】 関ヶ原で西軍につき、今の秋田に領地替えとなった佐竹藩。藩主の判断を巡り、古参と若い近習の間でわだかまる中、新しい城の候補地を巡り対立が起こる。 切れ物の若い近習と、上杉謙信をよく知る古参は、頭脳で戦いながらも賢い者同士、理解し合っている。その複雑さ、合理性と矜恃とのせめぎ合い、世代交代の切なさ……様々な感慨の中で生まれる都市に、驚かされる。ああ、成る程! 【剣の舞】 上州(今の群馬県)で新陰流の当主・上泉信綱(かみいずみ・のぶつな)が「撓(しない、今の竹刀の元祖)」を考案する所から始まる物語。信綱の高弟は、ズブの素人の女性に撓で稽古をつけることに。 家族を殺し、自分を凌辱した武士に復讐するため、剣を教わる女性。その中で少し心を通わす二人だったが、戦は近く、仇討ちも目の前に。真剣勝負とは?剣は何のために?命を遣り取りする虚しさへの、柔らかな回答としての撓。静かな虚無感が、心に焼き付く。雪の峠・剣の舞岩明均3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/23クライマーズ・メンタル三者三様主人公・みよは豆腐メンタル。幼馴染のケイタはガンガン進んで周囲をかき乱す。もう一人の幼馴染・鉄はそんな二人に振り回されてペースを乱す……本作はオリンピックを目指す三人の関係性を中心に、クライミング競技者の「メンタル」を描きます。 家族の応援のプレッシャー、恋とパフォーマンスの因果関係の分からなさ、ライバルの存在と力み……競技者の心は難しい。 繊細に描かれる心模様と、それに苦しむ姿にはシビアな現実感があり、読んでいてもどかしく苦しい。しかしクライミングと向き合い、心を定めて高みを目指す彼女達を追う高揚感は、物凄い! 舞台の宇都宮の風物、クライミングジムや岩場までリアルに描かれ、講師のトップ選手も実在の選手がモデルになっている様です。 舞台から心理までリアルに描き、派手さはないけれど真剣な物語。4巻以降、みよの試練が示唆されますが、例え苦しくても、切実な心情を追うのを止められなさそうです。ストロベリー・キャニオン朔田浩美1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/22女性クライマーに「惚れる」視点1巻では少し奇妙なクライマーの生態と、挫折した女子の新たな一歩を描いた本作。2巻ではより本格的にボルダリングを描き始めますが、女子の楽しげなやり取りの中に、クライマーのカッコ良さがふんだんに描かれています。 これを読んで、クライマーに惚れない人はいないでしょう! 分かりやすいのは、鍛えられたボディ。全体的に大きなギャオ&細マッチョなむゆ先輩の彫刻の様な身体は、初心者のうーちゃん&たまちゃんと並ぶとより際立つ。そしてその身体がウォールで躍動する迫力!私の中の乙女心がトゥンク…します。 または精神性。ギャオの望みは「どんな壁でも登れるようにありたい」というもの。その高い志は、ただ自分を高める事に向けられます。強さと、誰かを追い落とさない優しさの同居。その在り方に憧れてしまいます。 そんな強く優しいギャオに、主人公・うーちゃんはかなり惚れて?しまっている様子。同じ道具使いたいだなんて……。そして、ギャオの言った「サイコーになる」を知りたくて、うーちゃんは今後も登り続ける様子です。 ギャオとボルダリングに救われたうーちゃんが、どんなクライマーになるのか……じっくり進む本作、少なくともあと10巻は読みたい!フリクションガールnoga1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/21クライムを、人生を貴女と共に #完結応援スポーツ物で、頂点目指して体を酷使し争う熱い物語が面白い、という事に、私も異論はありません。 しかし、ユース世代の競技者がオーバーワークの結果、怪我で競技を続けられなくなったり、心折れて競技自体を嫌ってしまったり……という話を聞く度に、もっと他の道はないの?と問いたくなるのもまた事実です。 クライミング競技の良い所は、トップを目指して凌ぎを削る世界がある一方、みんながそこを目指さずに、それぞれの達成度で「昨日の自分を乗り越える」喜びがある所だと思います。 その上で、『ぽちゃクライム』の主人公つぐみは、初心者ながらコンペに挑み、楽しさと緊張感、そして悔しさを抱き、ボルダリングにのめり込んで行く。 クライミングは個人の力でするけれど、その力は周囲の関係性から貰える力である……としゅう先輩の姉から語られる時、クライミングは単に勝敗を争う「競技」から、様々な関係性の中で歩んで行く「道」へと開かれて行きます。『ぽちゃクライム』では、つぐみとあいらが共に歩む道として、またはしゅう先輩となのこの過去と未来として。 スポーツ競技者の間に「関係性の物語」を丁寧に組み込んだ、きらめきに溢れる物語。クライミングも人生も、二人寄り添い励まし合い、進む喜び……こういう穏やかで明るいスポーツのあり方もいいなぁ、と思いました。ぽちゃクライム!みんたろう2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/18片恋/独白/不器用な距離感まず、妙に硬いモノローグが、何か面白いなぁと思ったのである。 それは、まるで外国映画の字幕の様にぎこちない文体で、女の子達が共にいて・少し会話し・表情を変えるコマを繋ぐ様に流れ、作品の心地良いリズムになっている。そしてそれは、不器用な女の子達の物語と、妙にマッチしている。 人間関係が酷く苦手な安達と、そこまでではないけれどそれなりに人付き合いが面倒なしまむら。体育館の二階のスペースで授業を共にサボる二人は、緩く一緒にいられる関係だった。 けれども安達は、しまむらに恋をする。 不器用すぎる安達の片恋。よく分からない安達の言動を、戸惑いつつやんわりと受け止めるしまむら。息苦しさと優しさの同居。多少の奇妙な話はありながら、それよりも細かく生真面目に語られる心情に、しっかり心を掴まれてしまう。 私が読みたいのは、変わった話や恋の駆け引きではない。私は難しい人の心、それがどうしようもなく動く瞬間が読みたいのだ……だから言葉を尽くした心情描写の後に、安達がふと漏らす「しまむら……」の一言、これだけで頭でっかちなモノローグが吹き飛ぶ程の衝撃に、思わずあぁ……と声が漏れてしまうのだった。安達としまむら入間人間 のん 柚原もけ6わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/17美少女ゲーム、三つの視点 #1巻応援ゲームメーカーでグラフィッカーとなる女性の視点から、1990年代以降の所謂「美少女ゲーム」の隆興を追うこの作品……と聞くと、「美少女ゲーム詳しくないしな……」と後ずさりする方もいるかもしれません。でも大丈夫!私も詳しくないけど、凄く楽しめました。 視点としては三つ。 ①1990年代の時代背景と美少女ゲーム大流行のリンク ②実在の会社名が出たり出せなかったりの可笑しさ ③美少女絵の進化と描き続ける心得 ■□□□ ①パソコンの普及と共に成長する「エロゲー」から始まるこのジャンル。地下鉄サリン等暗い事件、エロの規制を経て「エロゲー」はエロを抜いた「美少女ゲーム」へ変貌。そこで求められた物は、二人の女性グラフィッカーを駆り立てる。 基本OSのヒットにより、拡大する市場で膨らむ物語に、目が離せない! □■□□ ②この作品、実在のゲームタイトルやメーカー、その他名前がバンバン出てきます。しかしそれらを知らなくても面白いのが「名前を出せない」者の存在。伏字すらNGの某基本OSは苦笑いしかないのですが、場合によっては空白の横に「権利者不明により削除」と書いてあったり……背景の複雑さが垣間見えて楽しい。 □□■□ ③ 美少女ゲームに求められた美少女絵とは何だったのか……それは現在の漫画・イラストレーションにも波及する大きな潮流となります。 そしてこの作品、インタビューまで面白い!アリスソフトで初期から製作に携わってこられたイラストレーターのMIN-NARAKENさんのお話は、美少女絵に命を吹き込むこと、それを20年、30年続けていく為の心得を教えてくれます。 イラストレーターだけでなく漫画家も必見! □□□■ 歴史の波長が噛み合って、大きなうねりが生まれる。そのうねりの本質を知り、世界の末端からメインストリームへ飛び込んで行く物語は、ドキドキしますよね?そんな面白さが、今後紡がれそうな予感。今はまだ、貧乏臭いけど……期待!16bitセンセーションアクアプラス 若木民喜 みつみ美里 甘露樹1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/16パーリィピーポーも納得のリアリティ! #完結応援ANAGUMAさんが未経験の立場から本作の魅力を語られていて、ついつられて全部読んでしまったので、こちらからは経験者から見た本作の魅力を書いてみたいと思います。 ……フェスの入場口でリストバンド付けて、ステージに進んでいくと、向こうの方からズンズンって、低音が響いてくる訳ですよ。うわぁって小走りになって……1巻の初フェスのワクワクする描写、これ私知ってる。 かつてフジロックに6回行っている私が保証します。この作品、めっちゃリアルです! 例えばテント泊の朝が蒸し暑い!みたいな細かなあるあるが沢山あります。フェス前にフェス用プレイリスト作るよね。また渋谷のライブハウス側のコンビニの山盛りのゴミ箱とか、そんな細かな事が物凄く懐かしくて……よく知っている人ほど嬉しくなる描写がそこに。 新しい音楽との出会いと、何でも受け入れたくなる開放感。あんまりバンドを知らなくても、ダンスが下手でも、若くても歳取ってても、大体の人が何かしら楽しめる。空は広いし飯も旨いし、みんなフレンドリーだし、本当にミュージシャンにも会えるし……トイレとか虫とかは確かに問題だけれど、それさえ気にしなければ、極上の祝祭空間がそこに!……というのも全部描いてある。 大きいフェスに関してはメトロックやROCK IN JAPAN FESTIVALなど、日本人バンドメインのとっつきやすいフェスをモデルにされている一方、小さなフェスに拗らせ男子が好きそうなマニアックさがあったり。日本のフェス、数も種類も豊かになったのだなぁと、しみじみさせられます。 登場するバンドの、ジャンルや音色はほぼ描かれません。「音楽」ではなく、ジャンルや好みを超えた祝祭空間……あらゆるパーリィピーポー(party people)に開かれた「フェス」を描く事が主目的なのだと思います。 初心者・玄人それぞれの楽しみ方、ライブアクトで盛り上がった後ひとり余韻を楽しむ感じ、そして特にアウトドア趣味の方がフェスに行きたくなるような内容、ファッションや細かな持ち物まで、フェスのリアルと楽しさをこれでもかと描いた作品。 そしてフェスの無い日常を、フェスを目指して生きるパーリィピーポー達の物語を描き、厚みのある内容の全5巻!デイズ・オン・フェス岡叶3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/14JS×祖母(幽霊)のヒヤヒヤ料理! #1巻応援小六の楓花は母と二人暮らし。忙しい母に代わって料理したいのに、母は火を使ってはダメと言う。しかし彼女には味方がいた。それは……お祖母ちゃん(幽霊)!火を使わずに、お祖母ちゃんの知恵で何が作れるかな? ○○○○○ 直火禁止という、一見困難な縛りが入る料理漫画。さらに楓花は料理テクがある訳でもなく、割と危なっかしい事もする。 そんな楓花を支え導くお祖母ちゃんは、割とサバサバ系のお方。行き当たりばったり、何とかなる!という強者の主婦力で、手持ちのカードで何とかする方法を楓花に教えていきます。 そしてテキトー流で楓花と楽しくやりながら、美味しさだけじゃない、料理に込める気持ちをそれとなく楓花に伝えていき、楓花は大切な事に気づいていく。 作るメニューも本格的ではなく、なんちゃってメニューや手がかからない物、それでいて優しいメニューが多く、ガッツリした男料理を作りがちな私には新鮮でした。 それにしてもこの作品、料理によってレシピがアバウト。だってお祖母ちゃん、材料も味付けも今ある物でドンドン変えていくんだもん……でもそんな感じで、料理の「現場力」を楓花と私達に伝えてくれるお祖母ちゃんの心意気が、胸に染みる作品でした。おるすばんごはん王嶋環2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/10異文化の熱が伝統文化に風を起こす日本舞踊を学びに来た外国人と、そのにわか師匠のやり取りで、日本舞踊を美しく・カワイク紹介する漫画『さんさん桜』。内容については、たかさんが先に書かれたクチコミが、日舞の経験者の視点から興味深い紹介をされていました。 https://manba.co.jp/topics/24511 私はこの作品から「外国人が日本文化に携わる意義」について考えました。 たかさんも書いてらっしゃいますが、この作品では外国から学びに来た子が、とても「楽しそう」で、それがいいんですよね。その楽しみ方、夢中になる目に、一度日舞を捨てた青年は魅せられ、苦しみながらも再び日舞に向き合い始める。 熱烈な外国人の「日本文化の楽しみ方」は、例えば陶芸を描いた『へちもん~信楽陶芸日記~』や、茶道の作品『ケッコーなお手前です。』にも描かれていて、伝統の本質を知り・学びつつも屈託のない、それでいて熱心な楽しみ方が、どこか鬱屈としている「伝統の継承者」を救う。 伝統芸能の内部にいた時に、なかなかその美しさに気付けなかった、というたかさんの告白は、結構重要な事を指摘しておられると感じます。 伝統文化を生きる伝承者達が、見失ってしまう「伝統文化=自分の良さ」を、外部の人から教わる事がある。外から熱気を帯びて、その文化が好きだ!と飛び込んでくる人に、かき混ぜられて再び吹く風がある。そんな爽やかさが、この『さんさん桜』、そして例に挙げた『へちもん~信楽陶芸日記~』『ケッコーなお手前です。』などにも、確かにある。 異文化からの熱と、それに救われた伝統文化、という形を描いた3作品。そこから日本人の私も、自分達の文化の継承について……本質的な楽しさを知り、誰かに伝えることの大切さを、色々考えさせられました。さんさん桜くらの3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/09信楽焼作家女子と英国お嬢の師弟愛(或いは作家を生かすたった一つの言葉)日本で最も有名な焼物の一つ、信楽焼の作家である女子と、信楽焼を学びに来たイギリス女子を描いた本作。陶芸愛と、師弟愛に心温まる物語です。 若くして高度な作陶技術を持ち、亡き祖父に代わり工房を切り盛りする作家女子。そこに弟子入り志願したイギリス女子はかなりの資産家でありながら、陶芸への愛が深く、鋭い審美眼を持つ才女。最初は本気度を測りかねた作家でしたが、すぐにその熱意を知り、彼女の師匠になります。 しかし、問題は師匠の方にありました。様々な要因が重なり、作家としての自信を無くしてしまう彼女の力ない目と迷いは、周囲も読者もモヤッとさせます。 そんな師匠に、弟子が告げた一言…… どんな美辞麗句よりも、作家を勇気づけるその言葉。好きな物作りを、他人が肯定してくれることで得られる、作家としての自信。 芸術家・クリエイター(例えば漫画家やイラストレーター、デザイナーや文筆家なんかも含めて)に仕事を発注する人は、この弟子の言葉を知り、伝えることが大切だと思います。 納期を守るとか正確さとか、そんなことばかり褒めていませんか?それではクリエイターは消耗します。「自分じゃなくてもいいじゃないか」と。 クリエイターをやる気にさせるのは、たったの一言……彼らが創るものへの、敬意と愛と同調を込めた短いセンテンスを、この作品から見つけてみて下さい。へちもん~信楽陶芸日記~山珠彩貴2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/07茶道の楽しみ方を米国人と学ぼう!部員一人の廃れた茶道部に、米国留学生男子と茶道の家元の息子が共に訪れることから始まる、高校茶道部の活動物語。茶道という日本伝統文化の楽しみ方について、色々教えられる作品です。 日本文化を格闘術としか認識していなかった留学生。家元の息子の手前に触れ、何かを感じるものの、その心を理解するのには、幾らか時間がかかります。 喧騒を離れ、客に寛いで欲しいという茶の湯の心を理解するのに、邪魔になるのは「無駄を省く」欧米流ビジネス的な効率主義。そこから離れ、茶道の楽しみを覚えた留学生を苦しめることになるのは、一流ビジネスマンの父親という悲しみ。 一方、家元の息子は、茶道は一流だが人と和することが苦手。こちらも父親と、仲は悪くないが微妙な距離感。グイッと距離を詰めて来る留学生や、部員達との交流で彼は、茶の湯と父との、新たな向き合い方を見つけられるか。 茶道というと作法や道具に目が行きますが、本作ではそこよりも、茶席の回し方や設えの意味、意外な場面での茶道部の活躍など、多面的に茶道の「実践」が示されています。ノスタルジーや儀礼ではない、現代においても変わらない茶道の有効性が、ここにはあります。 日々の生活にゆとりを取り戻すために、誰かに茶席に招待されたいな……と、思わず考えてしまいました。ケッコーなお手前です。みよしふるまち2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/05二つの「縁」が繋がる異世界冒険譚! #1巻応援酒場の店員・ゆかりの命を救ったのは、記憶喪失の剣士・エン。二人の不確かな道が交わる時、不思議な縁が大きな物語を引き寄せる……。 ★★★★★ ドラクエ的世界観はとても分かりやすく、面倒な世界観の説明無しに、ゆかりとエンと、二人の周囲の関係性に自然と入っていける。 エンに惹かれて冒険者を志すゆかりだが、彼女は強力なスキルどころか、才能の片鱗も見せられない。それでもスリルに喜びを見出し、無茶をするゆかりと、ゆかりに友達と言われた事が嬉しくて、彼女を助けるエン。二人の思い合う心は、それぞれの縁を繋げていく。 ゆかりの友人達とも親しくなるエン。記憶喪失のエンを拾って共に旅をしてきたパーティ、王都でアトラクションを経営する「魔王代理」とその一味……全員がコメディに参加しながら、何か不明なものを内に秘めている。彼らが1巻の後半に少し繋がる時、平和な世界に大きな動きを予感させ、この先への期待感を煽る。 複雑な世界観はなくても、思い合う人々の「縁」を繋げて輪を広げて行くだけで、世界はこんなにもワクワクしていく。そういう楽しさを、今後もゆるく追っていきたい……本当に何も出来ないクセに、度胸は人一倍なゆかりを心配しながら。エンとゆかりしろううらやま
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/03格ゲーの解像度と好きの形現実から逃げるようにゲーセンに入った女子高生は、プロゲーマーを目指す女子と出会う。センスを見込まれ、共にプロを目指そうと誘われるが……。 □□□□□ 百合姫連載なのに、女子の恋愛は全く描かれない。微塵もだ。主人公はプロを目指す女子に格ゲーを指南されるが、センスと裏腹に格ゲーについて何も知らず、自分が本当にゲームをやりたいのかどうかすら、よく分からない。 根本的に自分を持たない人が、様々な出会いをきっかけに自分を知り、自分の「好き」の形を確かめていく物語。もどかしさはあるが、ラストに向かって主人公の心と技術が噛み合って、急激に成長する姿にドキドキさせられる。 私は格ゲーには詳しくないが、1秒を60フレームに分割するシビアな世界、細かな計算と先の読み合い、それを支える技術、煽り合う精神力等々、深い世界だと感じる。この辺に関しては、是非ゲーマーの方の解説を伺いたいと思う。いつかみのれば西あすか3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2020/10/02迸る「体液」作家・江島絵理! #1巻応援『対ありでした』の内容については前のクチコミを見ていただくとして、ここでは本作の作者・江島絵理先生の過去作を引き合いにして、本作の魅力を別角度から見たいと思います。 まず『対ありでした』の1巻表紙、カワイイ女子の「涙」が印象的です。結んだ口、溢れる大粒の涙。強い感情がもう、そこにはある。 江島絵理先生の前作『柚子森さん』でも、小学生女子の柚子森さんの「涙」が、印象的でした。女子高生の主人公・みみかに惚れられる柚子森さんは、普段はクールです。いつもテンパっている年上のみみかを、表情を崩さずにリードする役割。 そんな柚子森さんが、遂に涙を流す時というのは、感極まった想いと怒りが溢れる瞬間でした。思わずもらい泣くような、強い感情の大粒の涙。 一方みみかは、柚子森さんの前では常に紅潮しながら、汗をかいている。そして柚子森さんに気持ちをぶつける時、やはり大粒の涙を流す。二人の流す、ここぞという時の「体液」に、心を持っていかれるのです。 さらに前前作『少女決戦オルギア』では、例えば殺される間際の女子高生の、震えと共に汗・涙。今際の際に流れる体液が表現する恐怖に、同調してしまう……それは殺す側の主人公・水巻舞子の、汗ひとつかかないクールさとの対比で強調される。 さらに致命傷の傷から噴き出す血液は、瞬く間に怪物となって、敗者を喰らい尽くす。死の刹那の、黒い奔流。 ここぞという所、極まった瞬間に迸る体液の生々しさに魅せられる、江島絵理先生の創る画面。 『対ありでした』でもそれは、遺憾なく発揮されます。皆の憧れのお嬢様「白百合さま」は、普段は汗などかかない。湿度0%のさらっさら。それが人知れずアケコンに向かう時……汗をかき、負ければ涙し、噛んで血すら吐き……熱すぎる感情剥き出しの、度を越したゲーマーが湿度100%で表現されます。 そこにはやはり、熱く飛び交う、過剰な感情表現としての「体液」があるのです。 そんな白百合さまを、たまたま見てしまった主人公の綾。お嬢様を目指して格ゲーを捨てた綾に、その姿はどう映るか。綾は白百合さまに心動かされるのか、白百合さまに煽られて、体液を迸らせる時は来るのか……。 ○○○○○ 『対ありでした』を楽しまれた方は、江島絵理先生の「体液」と熱い感情のある旧作も、どうぞご覧下さい! 少女決戦オルギア https://manba.co.jp/boards/17564 柚子森さん https://manba.co.jp/boards/73510 対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~江島絵理8わかる