兎来栄寿
兎来栄寿
7ヶ月前
ご‐ぜ【瞽女・御前】 〘 名詞 〙 ( 「めくらごぜ(盲瞽女)」の略 ) ① 盲目の女。〔文明本節用集(室町中)〕 ② 鼓を打ったり、あるいは三味線を弾いたりなどして、唄をうたい、門付けをする盲目の女芸人。瞽女の坊。 瞽女の補助注記 ( ②について ) 将軍や諸大名などの内局に仕えたり、箏、三絃の教授にあたったりする者もいれば、諸藩が盲女の救済、保護策としてつくった組織に所属し、遊芸を講じる者もいた。 『精選版 日本国語大辞典』より 本作は目の見えない小さな女の子のホタルが、瞽女として生きていくようになる姿を描いた物語です。 重篤な病気にかかった母のために、変若水を探し求めて行方不明になった父。 謎の蛇女。 神域の不思議と秘密。 ファンタジー・怪奇要素も交えながら、しかしそれは添え物で中心には人間同士が織りなすしっとりと、しんみりとしたドラマが据えられています。 ″ ずっと唄が下手な人も いつまでも転んでしまう人もいる だけど心さえ開いていれば 誰かと歩くことはできるから 人と生きるってそういうものだから″ という1話に出てきたセリフを読んで、ああこのマンガはとても手触りが良いなと感じました。 人生の先達であるおユキさんらがホタルを厳しくも優しく導いていく様子がとても良く、 ″ 他人に合わせて自分を作っちゃいけないよ″ といった人生において沁みる言葉をたくさん発してくれます。 そうした周囲の人の支えもありながら、ホタル自身も健気に懸命に奮闘する姿が堪りません。瞽女の中でも秀でた存在に与えられ特別な権利を得られる弁天塗香を目指して、ホタルは邁進していくことになります。 最新話では公称である「和風音楽冒険ファンタジー」の音楽の部分も素晴らしい演出をされていて心が湧きました。1巻を読んで気に入ったら、そのまま最新話まで読むのも良いと思います。 絵柄も相まって『ジャンプ+』らしさはもとよりメインストリームにある作品ではないですが、私はこういうマンガが存在し、読まれ、愛されることが素晴らしいと思います。解りやすい派手さはなくとも、岩陰でひっそりと咲く花のように美しい物語です。
ゆゆゆ
ゆゆゆ
8ヶ月前
原作となるイザベラ・バードの本は読んだことがある。 でもこれほど情景豊かに想像はできなかったし、イザベラ・バード視点のみなので、やはり周辺情報が客観的に描かれる漫画はやはり違う。 絵があると、それがすべて本当のように引っ張られてしまうのが弱点と何かで読んだ。 でも、自分だけの想像力では描ききれない、田舎の恐ろしいほどのノミやその他虫、そして不衛生さ。 それらが日常の様子として描かれ続けているので、漫画とはすごいものだなと思い知らされた。 そもそも、バード女史、よく行ったな。肉もないのに。 また、環境だけでなく、懐からボトルに入れた筆を取り出し記録をしたためる鶴吉の一連の仕草。 大人になったことを誇りに思う女の子の表情。 細やかな当時の人々の日常が、ドラマの何気ないワンシーンのように描かれていて、今は消え失せた文化を知らされる。 ちなみに、ヨーロッパより難儀な雑草が多い日本で、バード女史が農民が勤勉に働き雑草を刈るから「雑草がない」と表現したコマに、フフとなった。 有名な場面ですね。 キリスト教的な倫理観が根付いている現代の我々が、当時の日本へ気軽にトリップできる、すてきな漫画です。