兎来栄寿
兎来栄寿
5ヶ月前
酒クズレッド! ヤニカスイエロー! 整形沼ピンク! やすらぎハーブグリーン!(仮釈放中) 多重債務ブラック!  スピリチュアルホワイト! みんな揃って! 非正規戦隊ヤサグレンジャー!! 大体そんな感じの、『池袋†BLood』や『おもしれー女はときめかない』の奥田薫さんが描く、戦隊モノコメディです。 「給料前借りして無断欠勤を続けた上に寮をゴミ部屋にしたまま飛んだパチンカスパープル」 など、清々しいほどのクズが目白押し。でも、みんなクズのお話が好きなんですよね。 元々の設定に加えて、奥田さんらしいテンポ良く繰り出されるギャグの連発で明るく楽しく読めます。 整形、推し活、スパチャなどネタも現代的なものから、千葉西部の東京都の県境に住む県民のプライドなどローカルネタまで幅広く。 腐り切った世界を愛と平和に満ちた世界に作り替えるために戦う闇の組織「暗黒微笑(ダークスマイリング)」のボスであるクレイジー・スマイルさんが私は推しです。スマイルさんの作った小松菜の味噌ピー和え、食べたい……。 初見では唯一の常識人に見える主人公・村崎ゆかりが、後々見せていく人によっては許せない行為にも注目です。ゆかりちゃん、それは人によっては本当に地雷だから……。 特にヒーローや戦隊モノに興味がなくとも、純粋にコメディとして楽しめるであろう作品です(どちらかというと、いろんなクズを楽しみたい方にお薦めかもしれません)。
兎来栄寿
兎来栄寿
5ヶ月前
「町田洋さんが新作マンガを描かれている」 その事実だけで世界の彩度が上がるような、祝福を覚えるような心持ちになります。 Kindle限定で突如発売された、この新作『ごみをひろう』は「ごみひろいを描く連作シリーズ」ということだそうです。 1P目からいきなり想像上の妻(なぜか星の見えるソファの上で歯ブラシを持っている)と会話を始める辺りの幻想感がとても町田洋さんらしいのですが、読み進めると思った以上に実務的な内容でした。 恐らく、皆さんも疑問に感じたことがあるのではないかと思います。汚れやゴミが付いてしまっていたり、飲み残しがあったりする缶やビンやペットボトルは、どこまでを資源ゴミとして出してどこからを燃えないゴミとすればいいのか。ふせん、シールの台紙、ねぎのテープはそれぞれ何ゴミに分別すべきなのか。 想像上の妻のように気にしない人はまったく気にしないであろうもの。しかし、気になる人はとことん気になるであろう事柄。 自治体によっても違いがあるのでこれが絶対という訳ではないですが、一度調べて子供とこうした境界線上にあるものをクイズ形式で検討し合ってみたら、良い学びの機会になりそうだなと思いました。 人が活動する場所では必ずゴミは生じ、美しい景色は何もせずには保てず誰かがごみを拾ったり掃除をしたりして綺麗になっている。それは当たり前にやられていても決して当たり前のことでなく、価値ある尊い営為であるということを静かに語りかけていってくれます。こうした人によってはまったく気にも留めない世界の片隅に向けられる眼差し、そこから情緒豊かに掬い語る様は、町田洋さんの素敵なところです。