兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
2021年から連載していた山本中学さんのラブコメが先日完結し、本日完結巻発売となりました。 杉村くんと檜さん。両片思いのふたりのあまりにも初々しくたどたどしいやり取りや、その日好きな人の前で取った言動を反芻してベッドの上で煩悶し奇声を上げてしまう姿に、読んでいる方も身悶えせずにはいられません。人を好きになるということのアンコントローラブルな喜怒哀楽や気恥ずかしさ、陶酔が詰め込まれています。ふたりとも優しいいい子なのが、また応援したくなる気持ちをブーストしてくれています。 何が良いかと言えば、山本中学さんが『繋がる個体』や『サブスク彼女』の先にこの『青春は変態』を描いてること。あれらの作品の後に、こんなピュアオブピュアな恋愛を見せられる。でも、そこは山本中学さんなので、完全に『マーガレット』テイストだけでは終わらない。「青春は変態」だから。そこも確かに紛れもなく大事な青春の要素なのです。 それこそ、2巻完結の本作ですがもし『別冊マーガレット』で連載されていたらあと10巻くらいは擦った揉んだが続いていたことでしょう。正直、このふたりに関してはそこも見たいという気持ちは否めません。じっくりじっくり気を揉ませてくれても構わないし、2巻の最後まで読んでこのふたりのその後をもっともっと読んでいたいと思うのは自然なことでしょう。 ただ、本作はその先に待ち受ける無限は読者の想像に委ねられています。それもまた一興。 1巻だけ読むと別の意味で悶えると思いますので、この機会に2冊まとめて買い、一気に読むことを推奨します。
まみこ
まみこ
1年以上前
逆?異世界転生物語なのは、他のレビューで御存知の通り。 威勢は良い、腕っぷしは強い、女を抱かせるとすぐ堕とす、寿司の握りの腕前は超一流、と言う与兵衛が、ぼんやりしたおっさん耕一に憑依して大活躍の、人情活劇!なんですけど。 でも、もう一つの側面として、今の(所謂)「グルメ漫画」の基本である、「伝統の味ってなんだろう?本当に旨いものなのか?」と言う問いが根底にあって、段々そのテーマが重要になってきます。 寿司屋與兵衛の寿司は、元禄時代の魚のバリーションも少なく、冷凍技術もなく、マグロだって猫またぎと言われる下魚だった時代の、イノベーションであり、それがスタンダードになっていく時代の産物でした。 では、それが今の時代に美味しいと思えるのか?が浮き彫りになってくるのです。 持ち帰り寿司バトルは、そのクライマックスで、與兵衛ではなく、耕一がお客さんに食べて欲しいがために、江戸前のプライドをかなぐり捨てて、シャリもネタも変えるのは、本当に素晴らしいです。 …すみません、わたくし生まれが西日本の人なので、江戸前のシャリが好きじゃないんです(???) だから、ラストの大阪寿司と江戸前寿司のバトルが未完で終わってしまった、これは本当に喪失だと思います。