秒速5000km

恋愛における速度差が浮かび上がらせる本質

秒速5000km マヌエレ・フィオール ディエゴ・マルティーナ 栗原俊秀
兎来栄寿
兎来栄寿

新海誠さんの『秒速5センチメートル』は2007年公開。 この『秒速5000km』は2010年に出版。 タイトルをどれだけ意識して付けたのかは不明ですが、少なくともこの両作品の間には『君に届け』と『島耕作』くらいのスピード差があります。それは、実際の日本と海外における恋愛の速度差がかなり如実に表れている部分で興味深いです。 ただ、どちらも作品を彩る独特の色合いのセンスが抜群で、かつ存在する男女感の甘苦さという点で共通しているのは面白いです。この重なりから、場所を隔てても変わらない人間の本質が浮き彫りになってきます。 本作は2011年のアングレーム国際漫画祭最優秀賞を受賞した作品で、ここマンバでも原正人さんがかねてより注目しており邦訳化したいと仰っていた作品でもあります。今回、この日本語訳版が出たのは海外マンガファンからすれば念願が叶ったというところでしょう。 透明水彩で描かれるオスロのフィヨルドや、エジプトの黄砂に咽せるような熱気と夜の寒さは非常に鮮やかです。筆者のマヌエルさん自身が「知らないことについて語ることはできない」という教えからオスロやヴェネツィア、また建築家としてアスワンに住んでいた経験を元に描いており「たぶん、漫画を描くことを通じて、これらの土地をより深く、それまでとは違った仕方で理解するようになるのだと思います」と語っているのは興味深いです。 求めていたはずの幸せをどこかで見失いながら生きる人間たちの姿は、国境を越えて読む者の胸に響きます。 「私はまた息ができるようになった」 のような印象的な言葉のセレクトが、そうした感情を増幅させています。 普段、海外作品にはあまり触れないという方もこの機会にいかがでしょうか。

赫赫 一二〇〇年前の春

征夷大将軍と蝦夷のロミジュリ #1巻応援

赫赫 一二〇〇年前の春 トウテムポール
兎来栄寿
兎来栄寿

『東京心中』や『ジドリの女王』で知られるトウテムポールさんが歴史マンガ、しかも戦国や幕末などタレント揃いの時代ではなく奈良時代の坂上田村麻呂を描いていくという挑戦的な内容には期待に胸が躍りました。 なお、BLレーベルで出されており公称も歴史BLではありますが、少なくとも1巻の時点では男性同士で抱擁し合う程度でむしろ歴史マンガとしての趣が断然強いので、男性でも抵抗なく読めるでしょう。 阿倍内親王=孝謙天皇が寵愛した僧侶・道鏡が完全なイケメンとして髪の毛フサフサで描かれていたり、少しだけファンタジー要素も出てきたりしますが、基本的には史実に忠実なドラマを描こうとしているのが伝わってきます。 権力闘争が激しい時代において後の桓武天皇である山部王と、幼少期の坂上田村麻呂である利仁の国を良くして民を助けたいという志を同じくするふたりの出逢いから歴史が動き出していきます。 利仁は他人のために自分のものを躊躇なく分け与える清廉な心を持っていますが、優婆塞の老人に「本当に人を助けたことがあるかい?」「それは自分の力ではなく与えられたものではなかったかい?」と問われるシーンがとても良いです。理想だけでも、力だけでも、世界を良くすることはできないという厳しい現実を受け入れながら彼はどのように成長して行くのか。 更に、その優婆塞との暮らしの中で農耕や麻を使った布作り、ヘクソカズラの実を用いた調薬など当時の庶民の暮らしぶりが丁寧に描かれていくところは学びもあります。 今後の描写次第では学級文庫に置くには難しいかもしれませんが、奈良時代の歴史を学ぶ際に読んでおけば解像度が一段高まること間違いなしの良質な歴史マンガです。 なお、坂上田村麻呂といえば征夷大将軍であり蝦夷の征伐を成し遂げたことで有名ですが、彼はそのときの好敵手に対して敵味方を越えた友情があったという話もあります。BLという題材においては非常にうってつけの関係性であり、良い種の蒔かれたその部分が今後どのようにエモーショナルに描かれて行くのかは本作の最大の焦点で非常に楽しみです。

解体屋ゲン

これぞ、お仕事系のお手本と言っても過言ではない知る人ぞ知る神作品

解体屋ゲン 石井さだよし 星野茂樹
カワセミ㌠
カワセミ㌠

「派手な発破や重機をガチガチに使った珍しいお仕事系作品」 「あるあるネタからトレンドや風刺ネタに加え異世界ネタまでありとあらゆる引き出しが用意された圧倒的ボリューム」 「稀に一冊辺り5~11円で買える破格の大セールを仕掛けてくるメチャクチャな作品」 etc……… 調べれば調べる程気になって来る情報しかない上に丁度11円セールが始まっていたので既巻100巻を購入し、最近は解体屋ゲンばかり読み進んでおりましたが上記の情報に偽り無しと強く実感した神作品でしたね そんな神作品をざっくり説明しますと日本では珍しい爆薬を使った発破解体等を生業とする主人公:朝倉巌【通称解体屋ゲン】が様々な建築物や大自然はたまた黒い噂のある大企業等々を相手に奮闘するお仕事系作品になりますが、どの物語も練りに練られた内容に仕上がっており ・同僚や仲間との成長やすれ違いや恋愛事情からなるエピソード ・主人公ゲンの過去や知識力から生まれた奥深いエピソード ・財政や地方特有+人には言えない程の事情を抱えた問題絡みのエピソード ・談合や違法な取引等を汚職まみれの企業を相手に死闘を繰り広げるエピソード ・この仕事をしていて良かったと思わせる涙無しには語れない心暖まるエピソードetc… 読めば読む程お仕事系のお手本と言わんばかりのエピソードが盛りだくさんとなっておりますので少しでも気になった方は大セール期間問わずご購入されてはいかがでしょうか?

イケメン夫はゴリラ妻とプリティ娘を愛しすぎてる【同人版】

ゴリラというか、筋肉と優しさあふれる静さん

イケメン夫はゴリラ妻とプリティ娘を愛しすぎてる【同人版】 伊達しのぶ
ゆゆゆ
ゆゆゆ

タイトルで、んー?と思った方、Kindleで読める「透と静さん」を読んでから、こちらも読んでみてください。 印象が変わります。 私は印象が変わったことで、「透と静さん」の後日譚というか既刊にあたる、こちらも読みました。 どちらもおもしろいです。 元モデルでドラマや映画にも出演歴のある旦那さん。 元アスリート(柔道など)で身長190近くあって、北斗の拳のキャラクター並みの筋肉質で、女の子らしいものに時々憧れる、顔の彫りが深めでよく見たら美形の奥さん。 二人の間に生まれたかわいい女の子。 幸せなラブでラブな夫婦コメディで、とてもよいです。 くすっと笑えたり、ほのぼのしたり。 突出した特徴を持つ家族をそれぞれがそういうものと受け入れている(興味がない)点も良いです。 静さんの全方位に対する優しさ(筋肉対応)にも、惚れてしまいそうです。 「おまえのかーちゃんゴリラ」と我が子へ言ってきた男に対して、ゴリラっぷりを見せて圧倒させ、さらに心を奪うなんて、イケメン対応過ぎる。 https://twitter.com/date_shinobu/status/1646421180717608960

ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場

第一巻の表紙だ!

ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場 ゲームドラゴンクエストシリーズシナリオ エニックス出版局
ゆゆゆ
ゆゆゆ

第一巻だけ、巻数表示がないんですよね。 続くかは売れ行き次第だったんでしょうね。 たまたま本屋さんでドラクエが表紙の漫画を見つけて、買ってもらったのが、おそらく第ニ巻。 検索して、表紙をみて、心がときめいたからきっと、第二巻。 ゲーム画面では表現されない旅のシーンが描かれた、各巻の表紙イラストは、今見てもドキドキします。 なけなしのお小遣いで約1000円もする漫画はなかなか揃えられなかったので、第一巻表紙は表紙で印象に残っています。 たしか12巻までそろえました。 懐かしさのあまりウィキペディアを見たら ‘これらの中で「定番ネタ」として用いられたキャラクター造形や設定が、後に制作されたドラゴンクエストのメディアミックス作品やリメイク版、派生作品で逆輸入する形で公式設定になった例もある。『IV』で後に公式設定になった「クリフトはアリーナに片想いしている」「マーニャは酒豪である」などは、『4コママンガ劇場』の影響が見られる。’ とあったんですが、いやクリフトはファミコンのころからアリーナ大好きですよね? 「ひめに もしものことが あっては このクリフト…………。」 とあったもの。 え、このセリフは王への忠誠とも取れるんですか? ‥公式二次創作、半端ないな。 それから、楽屋裏の小話も好きでした。 風呂でタバコを吸って「屁が燃えた」という話は未だに忘れられません。 あれが大人とはこういうものだと知った、初めての経験かもしれません。 他の巻のイメージ画像として、Amazonのスクショを載せますね。 全巻表紙イラストを再び見たい方、メルカリが一番わかりやすいですよ。