その他の感想・レビュー3417件<<114115116117118>>子供のころに読んでトラウマになった骨少女 日野日出志マウナケアブタと呼ばれることに反発しダイエットを試み、痩せたものの逆に骨と皮ばかりになってしまった少女。やがて髪が抜け、肉がこそげ落ち、少女は文字どおり骨だけになって死亡。少女をいじめていた級友たちは祟りを恐れ、恐怖の日々をおくり…。子供のころに読んでトラウマになったなー、ってことしか思い浮かばない著者の、比較的最近の短編集がこれです。表題作の絵柄は以前と比べやや丸くなったような印象を受けますが、あいかわらず視覚的にグイグイとくる描写は健在。少女が骨だけになってからがその真骨頂で、おどろおどろした胸が苦しくなるような描写で、読む者の心にストレートな恐怖を植え付けてくれます。それにしても、単調で柔らか味たっぷりのキャラが崩れていくさまが、なぜこれほどまでに気持ち悪く思えるのか不思議。本短編集にはかなり昔の絵柄の作品も収められていて、わりとシャープなそれと比べてもはるかに凄惨な印象。現在の画風に至るまでにはどんな紆余曲折があったのか…。この恐怖表現方法の確立って、意外にもの凄いことなのかもしれません。ゴッサムを守るのはジョーカー…!!バットマン:ホワイトナイト ショーン・マーフィー マット・ホリングスワース 秋友克也ANAGUMAバットマン最大の宿敵といえば犯罪のカリスマ、ジョーカーです。 狂人である彼が正気を取り戻した時、ゴッサムに何が起こるのか、バットマンは彼を裁けるのか?という「もしも」を描いたシリーズ。 単に善悪の設定を入れ換えただけでなく、ブルース・ウェインという上流階級と、社会的弱者ジャック・ネイピアという対立構造を描くなど、現代のアメリカ社会を背景にしたテーマ構成が秀逸で、説得力があります。 市民の味方として声を上げた「ホワイトナイト」が現れたことで、法に縛られずに暴力を振るう「ダークナイト」とビランの違いはどこにあるのかという問題が浮き彫りになり、バットマンのフォロワーとして声援を送っていた読者の心も揺さぶられることに。 アルフレッドが病に倒れたことで深まるブルースの孤独、何時ジョーカーに戻るかわからない不安を抱えたジャックの葛藤…。 「ふたりのヒーロー」が悩み、傷つき、それでも戦うようすには胸が熱くなること必至です。 シリーズのヴィランも総登場するほか、ジョーカーを付け狙う黒幕ネオ・ジョーカーの設計などオタクが喜ぶ要素もタップリ。 特にクライマックスのバトルは『スパイダーバース』的なお祭り感があってテンション爆上がり。 映画になってくれ…!! 設定の奇抜さだけではない上質なエンタメに仕上がっているので、バットマンを読んだことがない人にこそ読んでほしい一作です!利権を賭けてイタリアのマフィアと日本のヤクザがサッカーで対決するお話極道イレブン 望月三起也マウナケアサッカーW杯を観ていて、今さらながら刺青を入れてる選手が増えてることに気付きました。プロレスならまだしも、接触の多い競技だし、免疫のないお国柄の選手だと威圧されないのか? だったら本物でもいいじゃん、と紹介するのが本作。横浜の利権を賭けてイタリアのマフィアと日本のヤクザがサッカーで対決するというお話です。サッカー通で知られる著者だけに、こんなタイトルでも実は正統派サッカー漫画では、と思ったらとんでもない。ヤクザ側のエースこそ元本職ですが、他はチンピラの寄せ集めチーム。レッドカードをエロ写真にすり替えるなんて序の口、ビー玉で目つぶし、ラインズマンの肩を脱臼させ旗をあげさせなくする、などまともなプレーはほとんどなし。無邪気でえげつなくてハードボイルド、というごった煮感がたまりません。勝つためには何でもする、この強い精神力、まさか日本代表への提言…ではないですよね。ちなみに同著者の作品で『騒世紀』という女子サッカー漫画もありますが、こちらもなでしこにはマネしてほしくないです。完結だと…プレイボーイ侍 原克玄さいろくめちゃくちゃ面白いのに。。。続き読みたい。。 明日から世界中がヤリマンだらけになるのではないかと思うぐらい天谷さんの言葉にはチカラがある。 稲が途中からチョイチョイ可愛く見えてきて自分がダメなのがわかる、そんなマンガ。 読めばわかる。 実話といえどもフィクションの典型例か呪魔の奪衣婆 杉原那月 日向名無し※ネタバレを含むクチコミです。んだよ…!この可愛さは!!ギガタウン 漫符図譜 こうの史代名無し鳥獣戯画ベースのイラストや素材って最近特に人気がありますね。 この本は「漫画特有の記号」=「漫符」をテーマに、戯画モチーフのゆる~い4コマで解説してくれています。もうね、本当にこのキャラクター達(特にウサギ)が可愛すぎて…ふむふむ言いながらにやけてしまいます。 「この世界の片隅に」でこうの史代さんを知ったんですが、こんなにキュートな動物を描くのか!!と感動しました。もうむしろ天谷になりたいプレイボーイ侍 原克玄名無し(天谷とは主人公のことです) 現実にこんな男がいたら間違いなく"""ヤバい"""のですが、女の子の誰ひとりとして傷つけておらず、周囲に向けた突拍子もないかと思えば妙に真理をついたアドバイスの数々は作中の登場人物だけではなく読み手である我々をも唸らせるほどの説得力があり、含蓄深い作品だと感じています。 信念があまりにもハッキリしていて何があってもブレない天谷の生き方は見ていて爽快感に似たものを覚えます。 概ね下ネタなので人は選ぶと思いますが、大丈夫な方にはおすすめです。 『監察医朝顔』のコンビによる一風変わった構成のホラー朧 OBORO 木村直巳 香川まさひとマウナケア『監察医朝顔』のコンビによる一風変わった構成のホラー。何が変わっているかというと、アンサーソングならぬアンサー怪談とでも言いますか、謎の美少女・月夜が、聞き出した怖い話のお返しに、少しだけ違った内容の怖い話を語る、という筋立てなんですね。月夜が聞く立場の怖い話は、キャラが柔らかいタッチで描かれ、逆に月夜が語る場合はよりリアルでシャープになっているという、驚異の人物描き分け技術をもつ著者ならではの凝った構成なのです。しかも同じストーリーをなぞる部分でも、単にコマ割りを変えました、というのではなく、構図ごとごっそり変更。より悲惨な話になるように工夫もされてます。また主人公の月夜も、語り始めるときはおちょぼ口がワニのようにぐっと広がるように描かれて、恐怖の案内人に適した風貌になるという芸の細かさもあり。この作品はずいぶん前に首都圏の駅前で配られていた無料マガジンに連載されていて、実は私、これ目当てで入手していたのですよ。単行本になっていない話もあるのでそれも電子化できるといいのですが。電気を作る人々発電ドクター走る! ビッグ錠マウナケア『包丁人味平』など知られるビッグ錠が電気を作る人々に取材を重ねて描いた力作です。この作品で取り上げているのは水力発電の現場で、そこにはダム工事のために働き完成を見ずに去る発破師がいれば、安定して貯水するために各取水口を確認して回る求水師がいる。彼らのような人たちがいなければ文明の火は灯りません。現代は食品や工業製品など、最終生成物は知っていてもその過程はブラックボックスになっていることが多くて、何が原料で加工の現場で何が起こっているかに注意を払うことがない時代。ですがそこには確実に人の手が入っているわけで、その存在の大きさをこの作品はリアルに感じさせてくれます。年末の選挙ではエネルギー問題に対する姿勢がクローズアップされることでしょう。ですが、震災から今日まで、この作品で描かれているような、「電気を各家庭に届ける」人たちのことについて、あまり見聞きしたことがなかった気がします。この時期に読んだのも何かの縁。なので、こういう人たちに触れた演説をする人がいたら、選挙では一票入れようかな。実在の人物・平賀源内を題材にした物語GENNAI 平賀源内~明日から来た影~ 松本零士マウナケア松本零士作品の中では珍しい部類である、実在の人物・平賀源内を題材にした物語。微妙にSFテイストも入っており、ある意味、とてもロマンチックな作品になっています。というのも、この作品は源内の親友である赤松の精蔵の視点で描かれていて、その目線というのが、著者の思い入れまるだしなんですね。著者の特徴であるモノローグのせりふもいつもより気持ちが入っていて、どんだけ詩人なんだよっ、て突っ込みたくなります。ストーリーも、冒頭こそ新しい技術に胸を躍らせる青年時代の源内と、彼といっしょに伊予から出てきた少々抜けてる精蔵と、わかりやすい主人公と脇役という設定なのですが、やがてこの関係も思い入れが強すぎて微妙に変化。2人が歳を取ってからはなんとなく関係が逆転してしまうことに。読めば精蔵は著者の分身であることは明らかで、まるで「俺が友を語るんだ」といわんばかり。この辺、あとがきにネタばらしがありますが、たとえ書いてなくても「昔からの知り合いのような気がしてきた」なんて気持ちだだ漏れですよ。 読み手を選んでしまうナンセンスギャグ漫画森繁ダイナミック 桃吐マキル 福耳ノアルマウナケアギャグ漫画にもいろいろあります。本作はそのジャンルの中でも好き嫌いが激しいというか、読み手を選んでしまうナンセンスギャグ漫画。どう思うかは感性に委ねられる部分が大きくて、人に薦めるときに面白さを説明しずらいんですよね。なので読むきっかけを見つけてみました。まず、この絵柄って見たことないですか? 著者はイラストでも有名で、かつて「COMIC QUE」の表紙も手掛けた方。本作は少々昔の作品で絵柄は古いですが、本編の巻末にカラー描き下ろしがあるので、こちらを見ればサブカル好きな人は「ああ、あの絵か」と思うはず。また「小学館新人コミック大賞」入賞作という箔も付いてます。さらに上下巻をセットで買うと付録本がついて、なんと古屋兎丸やしりあがり寿、押切蓮介のイラストを掲載! これで興味を持ってくれたなら、あとは主人公・森繁アユコの大暴走に付き合うのみです。赤塚不二夫もびっくり、吉田戦車も真っ青。なんて言うと大げさですが、この不条理感は数あるナンセンスギャグ漫画の中でナンバーワンだと断言します。かつてないほど現実とリアルタイムにリンクした作品ゴールデン桜 前川かずお 森橋ビンゴ 岡田紗佳sogor25みなさんは「麻雀」というものにどのようなイメージを持っているでしょうか。マンガで言えば有名なのは「アカギ」や「天牌」「むこうぶち」などでしょうか。いずれにしても、ギャンブルだとか、アングラな世界と近い存在という印象を持っている方が多いのではないでしょうか。 しかし最近、そのイメージを払拭しうる、新しいムーブメントが起こっていることはご存じでしょうか? 2018年、競技麻雀のナショナルプロリーグ「Mリーグ」が発足しました。Mリーグはプロ野球やJリーグと同様、一般企業がスポンサーとなってチームを運営し、囲碁や将棋のようなマインドスポーツとして麻雀を捉えて、賭博行為からの完全分離したプロスポーツとして運営されるプロリーグです。10月に初年度のシーズンが開幕し、全試合がAbema TVで生中継されるほか、パブリックビューイングとして、お酒や食事をしつつ、生の実況解説を聞きながら麻雀の観戦を楽しむという新たな楽しみ方も提供され始めています。 ここまでの説明でマンガ好きの方には何か思い当たる作品があるのではないでしょうか。そうです!「咲-Saki-」の世界観、これが現実世界で生まれようとしている、それがこのMリーグを中心としたムーブメントなのです! そんな近年のムーブメントを反映させ、現実に即した形で競技麻雀の世界を描いている作品がこのゴールデン桜です。 主人公はプロとしての一定の実績はありつつも日の目を浴びることのない生活を送る麻雀プロ・早乙女卓也。彼があることをきっかけに、"女性プロ雀士"として活動を始める所から物語は始まります。 競技麻雀ではかつての競技人口の少なさから女性限定の大会やリーグは存在しますが、基本的には男性と女性がフラットに闘うことのできる競技です。その点は他のプロスポーツや囲碁、将棋などとも異なる点かもしれません。また逆に、人気商売であるという側面から収入面では女性プロのほうが男性を上回りがちであるというのも麻雀プロの1つの特徴でもあります。男性が女装して活動するというのはベタな設定ではありますが、この"男女平等"と"男女格差"という相反する側面を兼ね備える麻雀業界を、フィクションの設定を用いてリアルに表現している作品です。 また、内容以外の部分でもこの作品は現実とのリンクを巻き起こしています。まず、あとがきにも描かれていますが、この作品の1話プロットが完成するのとほぼ同時期にMリーグ発足が発表、慌てて作中にMリーグの描写を取り入れるという経緯があります。更に、原作者の岡田紗佳さんは実際にプロ団体に所属する麻雀プロなのですが、2019年7月に行われた第2期のドラフト会議にて指名を受け、今年からMリーグの選手として闘うことが決定しました。しかも指名したチームの名前が"サクラ"ナイツで作品タイトルとも掛かっているという、何重にもリンクが張られた作品となっています。(ちなみに本作の連載は竹書房の近代麻雀ですが、サクラナイツのスポンサーはまさかのKADOKAWAというオマケつき) それでなくても"現役の選手が(監修ではなく)原作を担当するマンガ作品"というのは他のスポーツではなかなか実現しないことだと思いますし、内容としても麻雀の競技自体の表現は最小限に留められているので、ぜひ麻雀というものに触れたことのない方に読んで頂きたい作品です。 1巻まで読了。青春漫画といえばこれさきくさの咲く頃 ふみふみこnyae「人に勧めたい青春漫画Best」の中の1つです。 仲が良かった昔と違い、少し距離が開いてしまっている幼馴染の3人が主人公。 恋や進路に悩み、それぞれ人に言えない秘めた気持ちを抱え過ごした一年間の話。 希望どおりにならないことも自分なりに折り合いをつけながら子供と大人の狭間で揺れる思春期の心や、田舎町ならではの閉塞感や安心感を見事に描き出していると思います。 さすがふみふみこ!という感じです。 島の話って気になっちゃう時間島 松枝尚嗣 椙本孝思やむちゃ「廃墟」「無人島」のパワーワードに惹かれて読んだ。 タイムトラベルものって読むのにちょっと疲れるから、全1巻でちょうどよい長さかも。やっぱり原作があると話がきれいにまとまっていいね。細かいこだわりがたくさん詰まった作品ひょうひょう ネルノダイスキsogor25まず目につくのはそのメタリックな装丁。そしてなんだか作画密度の濃い建築物や背景、それに不釣り合いなほど登場人物らしきなにか。そのすべてをボールペンのみで描かれているというから驚き。いざ中身を読んでみると、その作画密度のアンバランスさはそのままに、会話劇はタイトルの通り飄々としていながら、時にクスッと笑えるような、時にとんでもなくドラマチックな、でもいずれにしてもあまりに非現実的な摩訶不思議な世界観が広がっている。 ネルノダイスキさんはもともとはコミティアで活動されていたマンガ家さんで、文化庁メディア芸術祭で新人賞を受賞されてもいるけど、私の知る限りでは商業誌での活動は全くされていない方。そして出版社のアタシ社は神奈川の三浦市で夫婦お2人だけで活動されている出版社。そんな、メジャーな場所ではなかなかできないようなこだわりがたくさん詰まった珠玉の1冊。 そして、帯のスチャダラパーBoseさんの推薦文が素晴らしくエモい。内容に全く触れずに内容を端的に表してるし、この推薦文に惹かれたならば読んで間違いない作品。香山哲さんのベルリン暮らしベルリンうわの空 香山哲さいろく紙は新宿御苑近くの某書店でしか見たことない(他で売ってるのか不明)がツイッターの宣伝活動で知れるいい時代。 単行本化されたのはまた嬉しい。凄い文化の違いを感じるけど。 なにより画風に特徴があり現代アートを感じざるを得ない。なんだかんだ良い意味で都会的であり田舎的でもある不思議と惹き付けられる絵なのだ。 そして今気づいたけど更に新連載始まってる! 今度のはフィクションぽさが更に強いけどいつか単行本になるであろう… 好き。 哲学的な世紀末方舟 しりあがり寿マウナケアしりあがり寿、と言えばシュールなギャグが持ち味。しかしこの作品はシュールはシュールですが、意図したギャグは一切なし。水の中に全てのもやもやしたことをぶち込んで世界は終わるのだ、といわんばかりの哲学的な終末を淡々と描き切っています。発端はやまない雨。歯みがき会社の方舟による世界一周キャンペーンが大ヒットする中、人々の生活は少しずつ壊れ始めます。この雨、というファクターは、物語を語る上で非常に重要なパーツ。群集心理によって起こる暴動の喧騒は雨音にかき消され、死体は雨に流され、たまった水に世の中の雑多な物は沈んでいく。そして残るは島影ひとつ見えない大海原。作品に”静かな”というイメージを与えるのにこれほど効果的な使い方はないと思います。この作品が描かれたのは西暦2000年。いわゆる世紀末。あとがきには著者による「輝ける未来」が創造できなくなった趣旨のコメントがあります。それから10年経ちましたが、この世界よりも、もっと閉塞感のある氷の時代になってしまったように感じるのは気のせいでしょうか。望月三起也の代表作であり最高傑作ワイルド7 望月三起也starstarstarstarstar_borderさいろく最高傑作って言ってしまっていいと思うので言ってしまおう。 故・望月三起也先生の代名詞のような作品。 あらすじは省くけど極悪人が悪党を始末していく様は最高にスカッとするしページ全てが今見ると芸術作品のように思える。 撃ち抜いた缶の形なんて知らなかったし、これを読んで「こうなるんだ」と思ってた(実際はデフォルメもかなりあると思う) でもバイクと銃がほんとに好きなんだなってわかるんですよね。たまらんです。 後半の展開のシリアスさは是非全部読んでって味わって欲しい。 ありがとうございました望月先生。学生でスパイでスーパーな主人公優しい鷲JJ 望月三起也さいろく望月三起也先生と言えばワイルドに銃をぶっ放し悪党を爽快にブチのめす「ワイルド7」のイメージが強い。 こちらはワイルド7完結後の作品で、主人公含む主要キャラ達がもっと身近な存在。 (ワイルド7は極悪人が主役なので) 相変わらず銃器の描写も素晴らしいし、学生である主人公が織り成すストーリーはまさに活劇。ワイルド7でも外せなかった名脇役達(副主人公と言っていい)の存在感も変わらず素晴らしい。今作でもそれぞれいいキャラしてるし、もっと一人一人にフォーカスした、寄った話もある。良い。 設定も凝ってるので結構考察も捗るのではないかと思う。なんでスパイなのに鈴つけてんの?とかね 犬神人かっこよすぎるイヌジニン ―犬神人― [電子新装版] 室井大資名無し続きが読みたいという声をよく聞くなと思って読んでみましたが、激しく同意します。 室井大資先生はエバタのロック、秋津あたりから読み始めたのでコメディイメージが強かったのですが、この漫画はわりとシリアス&バイオレンス。ただ、ところどころに室井節(?)が垣間見え、重くなりすぎずに最後まで読めます。 犬神人の人々、一見バラバラなように見えていざという時のチームワークの良さ。かっこよすぎる。続き…続きがほしい…オトナのストレス解消漫画ケンペーくん ならやたかしマウナケアオトナのストレス解消漫画といっていいのかなあ、これ。主人公・南部十四郎は、世を乱す不埒な輩をばったばったと斬り殺すというバリバリの愛国主義者。タイトルから連想される通り、その正体は第二次世界大戦時に東京憲兵隊に所属していた旧帝国陸軍の大尉で、時の首相と政界の実力者によって降霊された、世直しの使者なのであります。そりゃあ軍人さんの眼から見たら、20世紀末の日本人は万死に値する存在なのでしょう。この作品は、ケンペーくんの正義の鉄槌を襟を正してしかと見届ける漫画…などと思ったら実は大間違いなんですけどね。だって制裁を加える相手が巨悪じゃなくて小物ばかりなんですもの。うるさい暴走族や、軽薄なサーファー、後先を考えずに行動する若者に、日本語もろくに使えない適当な大学生。はてはパンクロックカーや嫌煙活動家、六本木ギャルまでもが制裁の対象になる。つまりは疲れたオジサンがイラっとくる相手ばかりなんですよね。で、これが意外とツボにハマって爽快に感じてしまうという。あ~あ、こんなんじゃ私もすっかりオジサンですなあ。この関係性に"百合"以外の名前を付けたい百合と声と風纏い 蓮冥sogor25同級生の恋愛話に今ひとつ乗り切れない高校3年生の女子・纏(まとい)。テレビ番組で恋愛感情を持たない"アセクシャル"という概念を知り、自分もそうなのだと自認する。そんな中、突然の雨で人気のなくなった教習所でとある女性・百合子と出会う。 一緒に遊ぶうちに親密になっていく二人だが、百合子から見た纏は"年の近い友達"で、一方の纏から見た百合子は"年上"で"友達"以上の感情を持ち始めている。百合子もそれに気付いているが、百合子もまた、自身は恋愛感情を持たないと自認していた…というお話。 現在一般に認知されてるジャンルで言えば、百合作品の中に含めるのが一番適してるとは思う。しかしながら、お互いに好意を持って接しているけど、纏からの百合子への感情は恋愛なのかどうか自分でも判別がついてない様子で、一方の百合子は明確に恋愛ではないと自覚している。読めば読むほどこの作品を"恋愛作品"ではない別の何かのように見えてくる。だからこそ、この2人の関係性には"百合"以外の別の名前を付けたくなってしまう。 また、好意の微妙な違いもそうだけど、例えば"都会の人"と"こっち(田舎)の人"だったり、"年上の友達"と"年の近い友達"のように、2人それぞれの視点によって捉え方が微妙に違う様子が描かれていて、それもとても興味深い。こういう微妙な差異を見せられると、当たり前だけど同じものを見ててもその捉え方は人それぞれで、結局、人間関係に絶対の正解なんてなくて、あるとすれば個々の相手に対する最適解くらいなんだろうなって感じる。 お互い好意を持ちながら些細な気持ちのすれ違いがあるこの2人が、今後どんな関係性を作っていくのかが凄く楽しみ。 ちなみに本編では"アセクシャル"という単語しか出てこないが、近い概念で"ノンセクシャル"という言葉があり、実は作者のtwitterで「ノンセクシャルとアセクシャルな女の子の話」と明言されていたりする。 https://twitter.com/skRe_n/status/1172067936132988929 このあたりの単語をちょっと調べてみてから本編を読むと、2人の関係性や好意の中身がより違ったものに見えてくるかもしれない。 1巻まで読了。 拭い去れない心の傷を芸術によって癒やそうとする道程わたしが「軽さ」を取り戻すまで “シャルリ・エブド”を生き残って 大西愛子 カトリーヌ・ムリス書肆喫茶mori店主テロ事件で同僚を喪った作者が、そのトラウマを癒やしていく道程の物語。 シャルリエブド襲撃事件。日本人には馴染みが少ないかもしれないが、2015年パリで風刺新聞社シャルリエブドをイスラム過激派のテロリストが襲撃し、10人以上の死者が出た。 偶然にも危ういところで難を逃れた作者は、拭い去れない心の傷を負う。なぜこのようなことがおきたのか、事件で亡くなった同僚たちと心の中で対話する。そして芸術や文学に沈潜していく。 作者の文学、芸術に対する造詣の深さは目を見張るものがある。 絵柄はとてもコミカルだが、たまにあらわれる水彩画の色合いがとても心に沁み、事件後のトラウマにもがく作者の姿がにじみ出ているようにすら思える。アカギを読んでると繋がってくる闇麻のマミヤ 福本伸行名無し巷では主人公は、アカギの娘なんじゃないかって言われてるみたいだね。 まぁでもたしかに一話の雨ざぁざぁの中、引き戸から登場するシーンはアカギを彷彿させるなぁ あと最新話でおっさんになった治(アカギの忠言どおりラーメン屋の店主になった)が青い顔して代打ちさせられてて笑った。本質変わらねぇなぁ<<114115116117118>>
ブタと呼ばれることに反発しダイエットを試み、痩せたものの逆に骨と皮ばかりになってしまった少女。やがて髪が抜け、肉がこそげ落ち、少女は文字どおり骨だけになって死亡。少女をいじめていた級友たちは祟りを恐れ、恐怖の日々をおくり…。子供のころに読んでトラウマになったなー、ってことしか思い浮かばない著者の、比較的最近の短編集がこれです。表題作の絵柄は以前と比べやや丸くなったような印象を受けますが、あいかわらず視覚的にグイグイとくる描写は健在。少女が骨だけになってからがその真骨頂で、おどろおどろした胸が苦しくなるような描写で、読む者の心にストレートな恐怖を植え付けてくれます。それにしても、単調で柔らか味たっぷりのキャラが崩れていくさまが、なぜこれほどまでに気持ち悪く思えるのか不思議。本短編集にはかなり昔の絵柄の作品も収められていて、わりとシャープなそれと比べてもはるかに凄惨な印象。現在の画風に至るまでにはどんな紆余曲折があったのか…。この恐怖表現方法の確立って、意外にもの凄いことなのかもしれません。