母の元カノと暮らした。

百合と不思議な家族のカタチ #1巻応援

母の元カノと暮らした。 宮城みち
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

母を亡くして引き取り手の無い中学生男子・ゆうくんは、母のはとこの女性・建子(やすこ)に引き取られる。ゆうくんが共に暮らすことになる建子と、同居人のおりょうとさゆりの三人にはある共通点があった。それは、三人ともゆうくんの母親の、元カノという事。 女性と付き合っていたのに、男性と結婚して子供まで産んだゆうくんの母親。様々なわだかまりがあるはずなのに、何故か楽しそうな三人の共同生活。そこにゆうくんが加わる事で、思い出は溢れ出すし三人は張り合い出すし……と動き出す一方で、ゆうくんの保護者として緩やかに協力する。 何となく気の合う「元カノ同士」という連帯は穏やかで良い。三人ともゆうくんの母親に多少未練があるのと、既に家族として安定した関係を築いているためか、この三人間での恋愛が示唆されないのも、子育て物として安心して読める(まぁ先は分からないが)。 三人がゆうくんの母親の思い出を語る時、そこには優しい愛がたくさんある。ゆうくんは三人それぞれの百合を増幅し強化する存在だし、クラスの女子関係も繋げる存在。 沖縄に多く見られるらしい現代の中学校での「姉妹制度」も描かれる本作、百合マンガらしく見えないかもしれないが実際は、とても百合に溢れた作品なのだ。 ※一時機Twitterで話題になっていた沖縄の姉妹制度についてのマンガを描かれたのも、本作の作者・宮城みち先生だったりします。 https://realsound.jp/book/2021/12/post-927924.html

ゴールデンゴールド

神ですら分からない現代の欲望

ゴールデンゴールド 堀尾省太
hysysk
hysysk

『刻刻』も大好きで本作も本当に楽しく読んでるのだが、先が気になり過ぎて我慢していたコミックDAYSを購読してしまった。今なら遡れば7巻の終わりから最新話まで途切れず読めるしめちゃくちゃ盛り上がってるから今ですよ今! 物語は終盤に差し掛かってるような気がする。7巻で「フクノカミは現代の人間の欲望や価値感覚が分からないのではないか?」という仮説が出てきた。我々は歴史を学ぶ時などに、過去を現在の感覚で捉えて「昔の人はこんなものを信じてたんだなぁ」などと上から目線になってしまいがちだが、実は「過去から現在がどう見えるか」という視点こそが重要なのだ。人間は昔からお金に振り回されてきただろうけど、今のように庶民がお金で頭がいっぱいな時代(株、FX、不動産、インフルエンサー、保険、仮想通貨…)ってあったのだろうか。 そういった「当たり前に過ごしているけど、よくよく考えたら変だぞこれ」っていうものを象徴的に表現するのに、ファンタジックな現象をうまく利用している。細かい描写に一貫性とリアリティがあって安っぽくならない。 堀尾先生自体はあんまりSNSとかやってなさそうなのに、IT系の話題もしっかり消化して小ネタに挟んでて面白い。あと個人的に恋愛描写が好き。心理戦とか駆け引きを描くのがうまいからかな。

ヒラエスは旅路の果て

死出の旅路とロマンシス #1巻応援

ヒラエスは旅路の果て 鎌谷悠希
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

試し読みをすると、何だか随分明るい雰囲気で、生死の話をしていても深刻に見えないかもしれません。しかし先を読んでいくと、カジュアルさを纏いながらもそこには切ない思いがあり、胸に来る物語となっています。 親友を亡くした少女が、死期を悟った神様、死ねない男と共に「黄泉比良坂」を目指すお話。三人それぞれの死生観はどうしたって重くなりますが、それを美麗な画面と、かなりズレている三人の楽しい旅が和らげます。 少女がいかに親友への喪失感に苛まれているかが語られる。喪った大切な人への「執着」、そしてその「執着」を失う事への恐怖に、強く共感してしまう。 心に亡き友を想いながら旅をする、という形は例えば『マイ・ブロークン・マリコ』とも似たところがあります。その想いの強さも同様ですが、それは旅の同行者や出会った人によって、変化を起こすのか。それともその重い愛を保ったまま、少女は黄泉の国に辿り着くのか……。 そんなロマンシス(女性同士の愛情にも近い友情)的観点からも、今後読み続けたいと思います。 (勿論、人の視点を超越した神様、死ねない男それぞれの物語も今後注目。男色が描かれるので、百合好きさんはご注意を)

おいしい学び夜

題名がとても秀逸

おいしい学び夜 大井昌和 北島和洋
名無し

調理師学校の、それも夜間部が舞台ということを 判りやすくて面白く題名で表している。 そして調理師学校が舞台のマンガって珍しい。 これは面白いかも、と思った。 しかし表紙の絵は、巨乳女子と それに興味がなさそうな男子の絵。 これはもしかしたら「おいしい」の意味が H系の「おいしい」マンガってこと? それはそれで嫌いなマンガではないが、 そっちばっかりのマンガだったらいやだな、 とちょっと不安になった。 読んでみたら、たしかにH系の要素もあった。 だが、それもありながらさらに珍しい展開の漫画だった。 登場人物たちがとくに調理師になるのが夢だったとか、 なにがなんでもなろうとか、そこまで必死になっていない。 主人公なんか自分も別に調理師になりたくないのに、 成り行きで入学して、それなのに屁理屈をこねて クラスメイトの退学を止めさせたりする。 そのへんの、熱血でもなければ緩すぎもしない、 みんな、それぞれの事情に応じてそのなかで 一生懸命に生きている、 という感じがちょっと新鮮なマンガだった。 そしてその感じはまさに題名によく表れている。 とりあえず第一巻を読んだ感想としてはそう思った。 ただし、一巻かけて各登場人物のキャラの紹介説明に 終わっている感じもした。 物語の種をまくのに、よく言えばじっくりと、 悪く言えば時間をかけ過ぎという感じはした。 一方で、調理技術の描写に関しては、専門学校のわりに ダシのとり方とか地味すぎる面は割愛している感じもしたが、 衛生管理などの「調理の基本」はちゃんと抑えていて 良い感じがした。 履修学科や試験の内容や学費や器具の扱いなども 細かく描かれていると思う。 また、主人公が本来は「科学系フリーライター」だとか、 調理学校に通いながら「刃物恐怖症」という設定が とても面白く、これからどんどんその点が面白く 描かれていくのだろうなと思った。 残りの二巻を読みたくなる内容だった。