三國さんのバラ園

薔薇園で働く少女趣味イケオジ #1巻応援

三國さんのバラ園 澤枝すぽこ
兎来栄寿
兎来栄寿

かわいいおじさんは好きですか? もしお好きであれば、とてもお薦めの作品です。 「山田すぽこん」名義でBLを、「澤岻」名義で読切を描きちばてつや賞の準大賞にも選ばれた澤枝すぽこさんによる、一般向け商業誌の初連載作品です。 薔薇農家を引き継いで45年のイケオジ三國玄一郎。そして、玄一郎の薔薇園でのアルバイトに応募した高校生の小鳥遊ひなと、もうひとりのアルバイトである青年・佐伯亮太。彼らが織りなす、薔薇園でのほのぼのとした日常&お仕事コメディです。 玄一郎は一見怖そうな外見をしているのものの、中身はかわいいキャラクター(『わがままにゃんこ』通称″わがにゃん″)やスイーツが大好きという盛大なギャップを持っています。押入れの中にはグッズ祭壇が作られているほど。しかし、そのことを他人には隠していることで面白おかしい展開が生じていきます。 私もミッフィーちゃんやすみっコぐらしなどが大好きで、ケーキ屋巡りをするほどスイーツも好きなので玄一郎とは仲良くなれそうだなと親しみを覚えながら読んでいます。 とにもかくにも澤枝すぽこさんの絵が上手くて魅力的です。男性はカッコよく、女性はかわいい。そして人物だけでなく、美しい薔薇や薔薇園の描き込み、三國さんが食べたがるお菓子の描き込みなども精緻です。 あまり知らない世界である、薔薇の手入れの仕方などを読んで学べるのも楽しいところです。 本の顔である表紙に、薔薇と63歳のシブい髭面男性。それがかえって、他の本との差別化も図りながら本作の魅力を端的に表しているようでもあります。 ギャップ溢れるかわいいおじさんを摂取したい方、薔薇園の仕事に興味ある方、気楽に読める楽しいマンガを欲する方へ。

アニメタ!

元アニメーターがアニメ業界を描く、胸アツマンガ

アニメタ! 花村ヤソ
六文銭
六文銭

アニメ好きの主人公が高校卒業とともに、とあるアニメーション会社に就職。 他の新卒メンバーよりもうまくない、手が遅いなかで、人生を変えたアニメの感動を情熱に変えて成長していく物語。 端的にいって、めっちゃ胸アツだし、こういうクリエイターなどモノづくりに関わる人間の作品は大好物なので、本作もツボでした。 特に、技術はなくても情熱のある主人公が、上司のアドバイスをもとに、自分のなかで昇華し成長していく過程が応援したくなり、うまくできたときの喜びは共感しかないです。 作者自身が元アニメーターということもあって、新人のつまずきポイントや、ダメな例や良い例などの理由が明瞭で説得力があります。 また、どういうところを意識して描くのかを知れるのも、漫然と絵をみているだけの人間には興味深いです。 また、アニメ業界の闇深さ(原画1枚単価の低さ、時給に換算するとヤバイとか)も、しっかり描いていて、単純な夢物語やサクセスストーリーになっていないのも、個人的にはポイント高いです。 やりがいや情熱ではどうにもならないところもしっかり伝えて、その上でやるのか?やらないのか?の決断をするのは、知らないで決断するそれとは腹のくくりが違いますもんね。 自分はアニメ好きなのですが、同時にプロスポーツ選手同様、技術に差がある世界でもあって、一部のクオリティの高い作品や才能ある人間に寄ってしまう部分はしょーがないと思っています。 『これ描いて死ね』の「☆野 0」の担当編集だった金剛寺さんが言っていた 「同情は創作の敵だと考えます。」 (『これ描いて死ね』2巻参照) という言葉がピッタリあてはまって、アニメーターが食べていけないのにプロである以上同情するつもりはないのですが・・・ 業界の衰退具合も考えると、もう少しなんとかならんもんかね?とは常々思っています。 特に日本の優秀なアニメーターが海外にいってしまうとかのニュースをみると、危機感しかないです。 製作委員会方式のビジネスモデルが悪いのか、アナログで手間がかかりすぎているのか、ちょっと門外漢なのでわかりませんが、本作が、その切り口になってくれることを願ってやみません。 あとは、刊行速度が異様に遅いので(2023年7月時点の最新巻5巻が3年前・・・)、そこもなんとかならんのか?と願ってやみません。

大砲とスタンプ

棚卸しは大事なのだとよくわかります

大砲とスタンプ 速水螺旋人
ゆゆゆ
ゆゆゆ

架空の国、架空の戦争ではありますが、戦場の後方で戦う人たちの物語です。 撃ち合い、殴り合いでなく、紙の上で戦闘をする兵站部「紙の兵隊」たちの生活が、主人公を中心に描かれています。 あらすじいわく、「ミリタリー法螺漫画」です。 主人公の母国、大公国の軍には、陸海空にくわえて、兵站が存在します。  主人公は、ショートヘアなめがねっ子・マルチナ・M・マヤコフスカヤ少尉です。 食料や衣類や武器など、必要な物資を必要なところへ届ける手続きをする兵站軍。 兵站軍の士官学校を卒業し、アゲゾコ市にある補給廠に配属されるところから、物語は始まります。 四角四面すぎる主人公が、生真面目すぎて当初は疎まれつつも、その個性を大切にされているのが印象的です。 部隊の人たちもよくみれば、みんな個性的です。そしてアットホームです。 使えるものは使えるところで、うまく使えばいいという感じがします。 トラブルに巻き込まれた場合、主人公は銃で打ち合いなどは苦手なようで、かわりにクソ真面目な知識を元にした知恵で切り抜けます。 軍隊内の事情は、パワーでねじ伏せるのでなければ、決まりで乗り切るのが効率的なようです。 読んでいて混乱したのですが、登場する国は、主人公が属する「大公国」、そして占領したアゲゾコ市でともに連合軍を組んでいる「帝国」、敵国である「共和国」の3国です。 長い戦争のせいか、どの国も疲れています。 なぜ戦争をしているのかわからないのですが、振り上げた拳を下ろすのは難しいようです。 ちなみに、物語冒頭に毎回描かれている、緻密な兵器などの紹介も圧巻です。