我々はどこから来たのか
ゴーギャンの絵にもあるように我々はどこから来てどこへ行くのか結局よくわからない。 蛇口をひねったら水は出るし、気づいたら自分という存在が在った。 飲むと妊娠する水を飲んだからお前が産まれたと父に言われた不眠症の男と、飲むと妊娠する水が流行りだした世界。 どっちも嘘だろと思ってしまうが、どっちも嘘ではなさそうな世界で物語は進んでいく。 現実離れしているのに、へぇそうなんだと流してしまいそうなリアリティがある。誰もが抱えていそうな、でも自分だけしか抱えていないような不安や葛藤が確かに描かれている。 考えても仕方ないことは考えなくていいかもしれないし、言わなくてもいいことは言ってしまったほうがいいかもしれない。 水がどこからやってきたのかわからなくても、そこに在ることだけは確かなんだなあとぼんやり思った。