青年マンガの感想・レビュー15414件<<541542543544545>>ルポルタージュを通して描かれる様々な"愛"の物語ルポルタージュ‐追悼記事‐ 売野機子sogor25今作は元々、今はなき幻冬舎「コミックバーズ」で連載されており、そちらで打ち切りの憂き目に遭った後、現在の講談社「モーニング・ツー」に移籍して連載を再開したという少し特殊な経緯を持っています。幻冬舎版は「ルポルタージュ」というタイトルで全3巻、講談社は「ルポルタージュ‐追悼記事‐」というタイトルで現在も連載中で、物語自体は連続していますが、講談社版から読んでも問題ない作りにはなっています。 幻冬舎版から一貫しているのは、恋愛すること自体が時代遅れという価値観の世界とその中で発生したテロの被害者たちの人生を描くというテーマ。これらをルポルタージュ作成のための取材という形で炙り出し、恋愛はもちろん、家族愛や友愛など、広い意味での人の愛を描く物語になっています。 この一貫したテーマ自体が毎回読ませる内容で面白いのですが、幻冬舎版から読み続けていると、逆に幻冬舎から講談社に移籍して変わった部分も見えてきます。 まず1点、幻冬舎版は1話5~60ページ、講談社版は1話3~40ページで構成されており、その結果、幻冬舎版では1つ1つのエピソードが重厚に、講談社版は物語の展開がよりドラマチックに動くようになっているように感じます。その辺りの雰囲気の違いを読み比べてみても面白いかも知れません。 そしてもう1点。幻冬舎版は新聞記者の1人、絵野沢(幻冬舎版2巻の表紙の人物)の視点が中心となって展開していきます。非・恋愛系の両親を持ち、その価値観に多く触れてきた彼女の物語は、物語の設定に沿って"恋愛"というものにフォーカスして展開、彼女のモノローグもかなり私的に寄っている印象があります。 その物語が、打ち切りの影響もあるのか幻冬舎版で一旦の結末を見せ、その後の講談社版ではもう1人の新聞記者・青枝聖(同1巻表紙)と、その恋人・國村葉を中心として展開していきます。2人の物語は、世界観に反して"恋愛"をしているという観点から語られる部分もありますが、それにとどまらず、テロの被害者のエピソードも内包したもっと大きな愛の物語へと拡大しているように感じてなりません。言わば、幻冬舎版の3冊の物語を土台に、より包括的な、懐の深い物語になろうとしているのではないかと思うのです。 一度は打ち切られた作品ではありますが、皮肉にも次巻で「MAMA」の巻数に追いつき、作者最長の作品になりつつあります。それに適う作品であることは保証しますので、興味を持って頂けた方は、是非土台となる幻冬舎版「ルポルタージュ」から手に取ってみてください。 2巻まで読了原作ファンなので読んだ裸者と裸者 孤児部隊の世界永久戦争 七竈アンノ 打海文三たか高校時代に原作を読んで超ハマった作品。 内戦が起き海外マフィアや移民が流入し、孤児・暴力・貧困が身近にある日本。 孤児ながらもキチンと住所と定職を持ち弟妹を養っている主人公が、突然拉致され少年兵としての人生を歩むというストーリー。 1巻だけ読んだけど、生い立ちなどのブ厚い背景設定をバッサリカットして、兵士としての戦闘に重きをおいた構成になっていた。 太くて力強い線が独特の雰囲気があって良かった。食道楽「YながFみ先生」の日常!愛がなくても喰ってゆけます。 よしながふみたか よしながふみ先生の描く漫画は、念入りに食事・調理シーンが描写されていることが多い。 西洋骨董洋菓子店、きのう何食べた?は料理をメインテーマにしているから、描写が細かいのはもちろんのこと、法律がメインテーマの1限めはやる気の民法でも藤堂が田宮のために朝食を作ったり、しっぽりした居酒屋で誕生日を祝うなど表現が際立っていて、「ああ、この人は本当に好きで食事シーンを描いているんだな〜」と、こだわりぶりに感心していた。 だからこそ、よしながふみの描く食事をテーマにした「半エッセイ的漫画」があると知った瞬間、Amazonで即注文…!(※紙しか出てない) 「こんな細かい食事描写を描く人は、いったいどんな食生活を送っているのか」。その理由を知ることができるとワクワクしながら読んだ。 読んでみると、よしなが先生はご自分で料理もされるし、お付き合いする相手については、「食事についてアレコレ感想を共有できる。美味しい食事をするためにわざわざ足を伸ばすことができる相手じゃなきゃ無理」というエピソードがあり、「ああ、やっぱりね。食へのこだわりの強い人なんだ…!」と、バッチリ腑に落ちた。 (回らないお寿司屋さんでの注文の仕方は、ぜひ真似しようと思います!) 主人公は「YながFみ先生」であり、「よしながふみ先生」ではない非実在漫画家と理解しつつも、いち読者としてはいったいどこまでが本当の話なのか興味が尽きない作品。ほのぼの夫婦が食べる!東京実在の名店グルメ東京BONごはん~おウチで作る名店の味~ 入江喜和nyaeサブタイトルにおウチで作るとありますが、 どちらかというと紹介されているお店に実際に行ってみたい、と思わせる内容でした。実際に日本橋のだしのお店に行きました! クリエイターの夫と編集者の妻という組み合わせが萌えます。 入江先生はこういうキャッキャした女性を嫌味なく描けるのがすごいですね。 満身創痍すぎるピュアラブストーリーフライングガール 笠辺哲nyae読めば誰でも、ピュアでまっすぐな(頭がおかしい、とも言えますが)キャラクターたちの虜になり、終わってくれるなと祈るほどになります。正直二巻で終わってしまったのが惜しすぎる。 主人公の山田が磯貝さん(表紙の女性)に恋をすることで、普通の人間であれば一発で命を落とすようなアクシデントに巻き込まれ、包帯まみれがデフォルトとなってしまうのですが、人間離れした純粋な心と鈍感さを持っている山田は、何があっても怒らない、逃げない、辞めない。磯貝さん大好き。狂ったように好き。 この本で描くのは磯貝さんと山田のラブストーリーだけではなく、 人間と山羊、生首とヤクザ、ヤクザと生き別れ森で一人生き抜いた息子との再会など、様々な垣根を超えて人間関係が交錯します。 個人的には、ヒロインの体臭が野生の熊と同じくらい臭いというのがツボでした。 試し読みをしてもらえばわかりますが、コマ割りとタッチが独特です。 時に、笑わせようとしているのか、真剣なのかどっち?と考えてしまいますが、何も考えずに読むのがいいです。 どのカテゴリーにも含まれない、読んだことのない漫画を読みたい!という人にオススメします。3.11後の8.6スカイフォール ~消し尽くせぬ夏の光~ 三門ジャクソン兎来栄寿陰キャな男子高校生の主人公が修学旅行で広島に行った際に、1945年8月6日早朝の広島にタイムスリップしてしまうお話。 釜石に住んでいて被災してしまった祖母を持ち、東京で3.11を経験した主人公。広島に原爆が落とされる前後の時間を過ごしていく中で、自身の経験を通した彼の思考に読者も様々なことを思わされます。 原爆と大地震。異なる部分はありますが、個人の力など到底及ばないそれまでの日常を吹き飛ばしてしまう無慈悲な破壊であることは共通しています。そんな経験は、時代を多少隔てたとしても同じ人間として普遍。そうであるからこそ、主人公はヒロシマでできることがあるのではないかと試行錯誤していきます。そして、時に無力さに打ち拉がれます。もし自分だったらそこで何を思い、何をするだろうか。何ができて、何ができないだろうか。そんな考えをせずにはいられませんでした。 ヒロシマから3/4世紀、東日本大震災から8年経った今こそ大いなる戒めとして改めて読み、思考する価値のある一冊です。宝塚で舞台化されるらしいので読んでみたシリーズ壬生義士伝 ながやす巧 浅田次郎大トロ新撰組とか微塵も興味ないんですけど読んでみたらけっこう面白いですね。 原作に忠実らしいので、原作の方も読んでみたくなりました。 かっこいい忍者バトルってこういうことだよヤオチノ乱 泉仁優一youdie渋い NARUTOや忍空みたいに分かりやすい能力バトルではない でも戦略と咄嗟の判断と肉体でもって、池袋のごちゃごちゃした街中で、回りに気づかれないように命のやり取りが繰り広げられている スパイアクションのスリルとかっこよさにしびれる まあそれはそれとしてキリネさんが可愛いよね本家より上品でまとまった仕上がりだが、終末……?終末のハーレム ファンタジア セミカラー版 LINK SAVANmampuku Web連載の人気お色気SF作品「終末のハーレム」のスピンオフ、というか今のところ(2巻現在)どの辺が終末なのか…… 普通のファンタジー作品にしか見えませんw ただ、さすが紙で連載してるだけあって絵やストーリーは上質です。 本家のほうは作画が女性ということもあり、ディテールに凝っていてキラキラ(むしろギラギラ)している印象の絵柄ですが、「ファンタジア」の方はもう少し落ち着いていて、デッサンがしっかりしているのでとても読みやすいです。(ざっくり乱暴な言い方をすれば男性的な絵。) 本家のほうはそれこそ成人向け業界仕込みの筆力でこれでもかとエロティシズムをぶっこんで来ますが、いかんせん全年齢向けとしてリリースしている以上、いくら細かく描きこんだところで画竜点睛を欠くというか、実用性においても中途半端であることは否めません。逆にファンタジアくらい身体の骨格や筋肉がちゃんと描写できているほうが、全年齢では強い気がします。「ToLOVEるダークネス」や「なんでここに先生が」もそうですし、エロに限らず主要な少年誌で連載されてるラブコメってみんな人体上手いですよね。 一応内容にも触れておくと、個人的に騎士のセリーヌが好みで、普通であれば主人公の幼馴染であるアウレリアに主人公を持っていかれるであろう「負けヒロイン」のオーラが濃い彼女ですが、タイトルからして「ハーレムエンド」が約束されているのでそこはひとまず安心か……キャラクターが生きている!それでも町は廻っている 石黒正数猫あるく石黒先生の引き出しの多さよ! ギャグやSFやホラーやサスペンスなど毎回色んなジャンルの話をそれ町の世界に違和感なく入れて描いているのが凄過ぎる。 そして主人公の精神的な成長をめちゃくちゃ上手く描けていると思いました。 父性に目覚めそう本田鹿の子の本棚 佐藤将まくらいえ私、未婚なんですけどね。 娘の可愛がり方を模索するベクトルがねじ曲がるのがわかりながらも、自分に正直にあけっぴろげな姿を鹿の子に見られまいとする建前が可愛らしくて、父性と娘性(造語)が私の中で葛藤するように生まれました。 これが母性なの…?長く連載してほしい話私の少年 高野ひと深やむちゃ漫画でショタコンの話を読むのはなんとなくためらわれていましたが、友達にすすめられて読んでみました。結果、思っていたようなきわどい内容ではなく、闇と光がバランス良く描かれていて面白かったです。二人の関係だけではなく、周囲の人(真修の友達とか)も気になるので、掘り下げて描いてほしいと思いました。 私は白人の少年(10歳くらい)が大好きですが、漫画で見るなら黒髪も良いですね。BOYS BE世代向け?ぴーかん! 玉越博幸mampuku 玉越先生といえば「BOYS BE」シリーズ(私は世代的にどちらかというとラブひななんですが)。それ以外の、とりわけ最近の作品は全然読んでないことに気づいたので古本で見かけた折購入。 古臭かったり画力が低下したりというのはある程度覚悟していただけに、危惧していたより遥かに「萌えれる」絵柄で驚きました。さすが一時代築いたプロの実力。さすがに元いたマガジンでやれる水準ではないですが、オッサン向け雑誌のお色気担当としてはかなりイケてる方じゃないですかね。 内容はまぁ、表紙見て想像した通りです(笑) 王道を行く狗になりたい王道の狗 安彦良和名無し安彦さんの漫画読んだことなかったので読んでみました。 言わずもがな絵がうまい。 違和感を覚えるシーンがない自然なアクション! 当たり前ですね…。 北海道脱獄から話がはじまるんですね。 悔しいシーン真に迫る感じたまりません。 一巻読了。読み進めます。 甲子園に受け継がれるアウトローの系譜砂の栄冠 三田紀房影絵が趣味さて、春の選抜高校野球大会が今日から始まりましたが、アウトローを制するものが甲子園を制するという物言いを皆さんはご存知でしょうか。すなわち、各地区の代表が集う甲子園といえども、高校生レベルの打者では、外角の低めギリギリのコースにピシャリと決められると攻略は難しいということです。まさしくアウトローを制して甲子園を制覇した実在の人物に早稲田実業の斎藤佑樹選手がいます。いつもここぞの時にはいちばん練習を積み重ねてきて自信のあったアウトローの直球を放っていたといいます。甲子園の決勝で最後の打者でありライバルの田中将大を三振に切ったのもアウトローの直球だったとか。 そしてここ、三田紀房の高校野球マンガにもアウトローの直球を武器にする投手が登場します。そもそも三田紀房というひとは生粋のスーパースターを描くようなタイプのマンガ家ではなく『砂の栄冠』の七嶋のような選手を主人公に据えるのは稀であり、そうというよりはむしろ、あくまでも凡人の域は抜き出ないけれどスポーツなり、受験なり、ある定められたルール内の隙を突いて「人生では負けても、試合では勝利する」といった、ある意味では小賢しく、ある意味では賢明な、物語の展開を得意とするひとでしょう。 三田紀房には『砂の栄冠』の以前に『甲子園へ行こう!』という高校野球マンガがあり、その主人公、鎌倉西高校の四ノ宮がまさしく小賢しくも賢明なピッチャーとして描かれています。彼もまた高校生レベルの打者では外角低めの攻略は難しいとの理由からアウトローの練習に励みます。そして、やはり、『砂の栄冠』にもアウトローの系譜は受け継がれている。ノックマンに率いられた下五島高校の下手投げエースの本多がまさしくそれでしょう。 けっして素材そのものには恵まれなくても、小賢しさと賢明さをもってどうにか立ち回ることができるのが高校野球という舞台、こうした選手たちが才能溢れる屈強な選手たちの足元を掬うことができるからこそ、高校野球は面白い。イチローが引退会見で語っていた「メジャーは頭を使わなくなってきている、日本は日本の野球を貫いてほしい」という言葉が今更ながら身に染みてきます。最後まで読まないとタイトルの意味がわからない地球0年 田辺節雄 矢野徹starstarstarstarstarマンガトリツカレ男アメリカ海軍から発射された核ミサイルをソ連/中国が迎撃し40分で戦争が終わったところから始まる。核戦争で壊滅的になったアメリカへ災害地支援という形で自衛隊が上陸した辺りから最後まで多少中だるみはしたが面白かった。 ちょっとラストが急だったな キラキラした15歳の4月をもう一度味わう漫画スキップとローファー 高松美咲starstarstarstarstarたか全世界の人〜〜〜!!みつみちゃんを愛してくれ〜〜!! まず愛嬌のある顔がイイ。 不器用かつ心配性ゆえに努力も人一倍するから成績が非常によい。 とっさの思い切りがある(※良い方向には転ぶとは言ってない)。 夢がでかい! 人を疑わなくて、とっても素直。 田舎から来た、不器用だけど真っ直ぐで自信に満ちた行動をするみつみちゃんに、垢抜けた東京の少年・志摩くんはドンドン惹かれていくし、読んでいるわたしも惹かれていく。 やだ、ページをめくるたび好きになっちゃう...! まさにあらすじの「『みつみちゃん』のまっすぐでまっしろな存在感が、本人も気づかないうちにクラスメイトたちをハッピーにしていくのです!」の言葉通り、読めばハッピーになるんです。 読めば目の前にワクワクする新生活が広がるマンガ。 もう一度15歳に戻れるステキな作品です。1話がカラー扉絵で読めるぞ〜!!ご恩は一生忘れません 北郷海たか1・2話がウェブで読めちゃいます! しかも1話の頭はカラーなんです、やったぜ! http://morning.moae.jp/lineup/874プリズムの咲く庭感想プリズムの咲く庭 海島千本短編集 海島千本いい漫画読み野郎絵がうますぎる アニメーターっぽいキャラデとレイアウトっぽい構図の決め方は若干否めませんが何しろ絵がうますぎるので! 目を引く構図と気持ちのいい構図、バチっと決まるポーズがさすがといったところ。このトビラとか好きです。 書き込みと鉛筆っぽいブラシも作風にあってらっしゃるな〜と。 ファンになってしまいました。 他国とかここでもないどこかの描写も素敵ですね。 ゴシックぽい建築物とメイドさんかと思えば次の話ではシチリアとかどこかその辺の海辺の街をデッサン力で何の苦労もなく描き切ってらっしゃる感じがします。 読み終わった後に幸せな気持ちになるのもいいですね。 影から日向にでたようなポッと暖かかくなる感じがして好きです。 長編になった場合どんな漫画を描かれるのかな、と期待してしまいます。 ゾンビの世界観×猫の新しい楽しみ方ウォーキング・キャット 北岡朋starstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)いやー、えー、めっちゃいい~このマンガ! ゾンビが溢れる世界で、青年と猫が出会って奥さんを探す旅をするわけです。 猫を愛でるマンガ、ゾンビを楽しむ漫画、それぞれにありましたけど、この組み合わせの良さったらないですね! 緊張と緩和がたまらない。 ゾンビに襲われる緊張感と猫の緩さ。 世界観的には、特殊な設定とかはなくすごくベーシックなゾンビもの。 1巻の終わりまでとりあえず読んでっていう。 そうか、このタイトルってそうだもんなーという感じ。 緊迫感の描き方や、たまに会う人間などの上手さがあるので単純にゾンビものとしても淡々と読めてめちゃくちゃちょうどよく面白い。 これもしかしてずっと読みたかったタイプの漫画かもしれないなー。全紳士、必携必読の「大人の教科書」王様の仕立て屋~サルト・フィニート~ 大河原遁mampuku 私は仕事柄ほとんどフォーマルな格好はしないのですが、読んでいると「宝物になるような一張羅欲しい!!」という気持ちが芽生えてしまいますw アメリカ等と同じで洋服の歴史が浅い日本では考えられないほどに、イギリスやイタリアはスーツというものにプライドを持っている国であることがわかります。それだけに大変に奥深く文化に根差していて、「粋」というものが文化圏によってこれほど異なるものかととても興味深い蘊蓄が満載でした。 そしてこの作品からはファッション蘊蓄モノとしての顔以外の、二つの表情を見出すことが出来ます。ひとつは「男の生き様論」としての側面。時に戦闘服となり時に装飾品、別のときには女性やゲストの引き立て役となる、紳士服は男の生き方の写し鏡でもあります。そしてもう一つは「フリーランス・クリエイターの仕事論」としての側面。主人公はスーツ一着に数百~数千万円という一見するとボッタクリのような価格をクライアントに提示します。しかし、彼の腕と彼が作り出す魔法にそれだけの価値を見出すことができた者だけが、その魔法を授かることができる。彼は職人の名に懸けて技術を安売りはしませんし、プライドにかけて一切の手抜きはしない。作り手としての理想像ですね。 全32冊+続編複数シリーズ続刊中とかなりの長期連載ですが、すべて読んでもまったく飽きたりネタや展開に既視感を覚えることがないのが凄い。「紳士服」というテーマの奥深さもさることながら、一話完結のそのすべてが美しい起承転結・序破急で構成されていて面白さがブレません。 これほどの傑作にもかかわらず今まで実写化などのメディアミックスが実現していないのは、やはり予算がかかりすぎるから……?癒しの純喫茶ギャグマンガ #読切応援喫茶とらんぽりん 佐久間薫名無し心が廃れたお客さんをあの手この手で癒す喫茶店。なぜそこまでするのか分からない。ただ読んでるうちに私も癒された。あのレゴブロックに似た客はまるで私。 これは哲学ではなく人生の指南書ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。 荒木宰 杉基イクラ 原田まりるsogor25ニーチェを始め様々な哲学者が現代に現界し、ごくごく一般的な女子高生であるアリサに哲学の教えを伝授していくという、あらすじだけを書くとかなり突飛な設定の作品のように見えるかもしれません。しかしながら実際に読んでみると、聞き手を普通の女子高生にすることで説明自体もかなり噛み砕かれて解りやすく配慮されており、かつ誰もが生きてて普通に体験する人間関係や自我の悩みに対してアプローチをするので話がすんなり入ってきます。 そして様々な教えを説いた後、最終的にはその教えを押し付けるのではなく、哲学の教えをどのように人生に活かしていくか、アリサを通して読者に優しく問いかけるような構成になっています。つまり、哲学の教えはあくまで道標であり、道標があることを知った上で自らの進む道を自分自身で決めてほしい、この作品はそのように問いかけているように感じました。 読むと思考が整理されて自分の人生に対して前向きになれる、不思議な感覚を味わえる作品。きっとこの作品は単なる哲学ではなく、哲学の教えに沿った人生の指南書になってくれるはずです。 上中下、全3巻読了かわいくて安心して読めるおそとにでようよ雨やんだら 夏花ナオトstarstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)ペットショップで売られている動物にもいろいろいて、これは人前に出るのが嫌でバックヤードに引っ込んでるへんてこな名前のカワウソ「雨やんだら」のお話。 そのカワウソ「雨やんだら」とは、お酒を飲むと話せるようになるという少し不思議な設定。 よく考えたら話すために仕事中に酒煽ってるっていうことになるから、店員含めみんなナチュラルにダメで面白い。 これからこのカワウソに他の動物との通訳頼んだりする展開もあるのかな? リアルタッチのカワウソのときもぐうたらなオッサン臭くていいけど、デフォルメのカワウソもくずでかわいい。 調べたらLINEスタンプあったので一覧見てみたら使いやすそうで購入。 かわいくて便利だった。 上手くいったら3分~5分くらいのアニメーションになって女性層からの人気出るんじゃないかなという感じもする。 サンリオのぐでたまとかみたいに。 個人的には、おしりがぷりぷりしてかわいかったら最高だな~。<<541542543544545>>
今作は元々、今はなき幻冬舎「コミックバーズ」で連載されており、そちらで打ち切りの憂き目に遭った後、現在の講談社「モーニング・ツー」に移籍して連載を再開したという少し特殊な経緯を持っています。幻冬舎版は「ルポルタージュ」というタイトルで全3巻、講談社は「ルポルタージュ‐追悼記事‐」というタイトルで現在も連載中で、物語自体は連続していますが、講談社版から読んでも問題ない作りにはなっています。 幻冬舎版から一貫しているのは、恋愛すること自体が時代遅れという価値観の世界とその中で発生したテロの被害者たちの人生を描くというテーマ。これらをルポルタージュ作成のための取材という形で炙り出し、恋愛はもちろん、家族愛や友愛など、広い意味での人の愛を描く物語になっています。 この一貫したテーマ自体が毎回読ませる内容で面白いのですが、幻冬舎版から読み続けていると、逆に幻冬舎から講談社に移籍して変わった部分も見えてきます。 まず1点、幻冬舎版は1話5~60ページ、講談社版は1話3~40ページで構成されており、その結果、幻冬舎版では1つ1つのエピソードが重厚に、講談社版は物語の展開がよりドラマチックに動くようになっているように感じます。その辺りの雰囲気の違いを読み比べてみても面白いかも知れません。 そしてもう1点。幻冬舎版は新聞記者の1人、絵野沢(幻冬舎版2巻の表紙の人物)の視点が中心となって展開していきます。非・恋愛系の両親を持ち、その価値観に多く触れてきた彼女の物語は、物語の設定に沿って"恋愛"というものにフォーカスして展開、彼女のモノローグもかなり私的に寄っている印象があります。 その物語が、打ち切りの影響もあるのか幻冬舎版で一旦の結末を見せ、その後の講談社版ではもう1人の新聞記者・青枝聖(同1巻表紙)と、その恋人・國村葉を中心として展開していきます。2人の物語は、世界観に反して"恋愛"をしているという観点から語られる部分もありますが、それにとどまらず、テロの被害者のエピソードも内包したもっと大きな愛の物語へと拡大しているように感じてなりません。言わば、幻冬舎版の3冊の物語を土台に、より包括的な、懐の深い物語になろうとしているのではないかと思うのです。 一度は打ち切られた作品ではありますが、皮肉にも次巻で「MAMA」の巻数に追いつき、作者最長の作品になりつつあります。それに適う作品であることは保証しますので、興味を持って頂けた方は、是非土台となる幻冬舎版「ルポルタージュ」から手に取ってみてください。 2巻まで読了