ルポルタージュ

「恋愛」が持つ意味を改めて考えさせられる。

ルポルタージュ 売野機子
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

すごく良かった。 すごく良かった! 舞台はそう遠くない近未来である2033年。 主人公の表紙の女性は新聞記者で、とあるテロの被害者たちの追悼記事を書くために故人の遺族や友人・知人に取材してわまっていく。 故人に寄り添った丁寧な取材を通して、この社会における「恋愛」や「結婚」の輪郭を少しずつ捉えていくことになる。 ずっと読みたいと思っていたのに、こんなにいい作品と知ってたらもっと早くに読んでおくんだったと後悔・・。 何がいいって、人物と社会をすごく良く描けてるんですよねー。 それぞれの個人が抱えてる感情や悩みはあくまで秘匿されるべき個人のものなんだけど、それを取材を通していろんな人物の視点からつまびらかにしていくと、それまで外側から見えていた一面的なレッテルでは推し量れない立体的で複雑な人物像が浮き上がってくる。 「恋愛」を"飛ばし"て「結婚」するための出会い目的のシェアハウスでテロが行われるが、同じ目的のもと集まったはずの被害者たちにもそれぞれ全く事情があった。 ここでのテーマは、「恋愛」をダサいもの、古いとする潮流とそれを取り巻くいろんな事情と感情をもった人々、「結婚」、そして「性」だ。 骨太かつ心に優しく触れる繊細な描写に感動した。 恋愛なんてイマドキ流行らないよね、という風潮から逆説的に恋愛の良さ、そして悪さが浮き上がってくるなんて素敵すぎる。 この風潮に救われたように感じる人もいれば、行き場がなくなってしまう人もいる。 いたずらな社会の変化に、もてあそばれてしまった人たちがいる。 確かに、結婚という制度は時代によってどんどん変わってきている。 かつては家同士の政略結婚の意味合いが強かったが、欧米からの流れでトレンディドラマなども流行って恋愛結婚が主流になった。 そして、現代ではこの漫画の設定に少し近い現実的なもの、「婚活」という言葉が示すように就職のような「利」をとった考えで結婚する人が増えている。 恋愛自体が持つ社会における相対的な重要性は目に見えないスピードで日に日に変化していっているけど、実は「恋」の絶対的かつ本質的な部分って変わらないよね、というメッセージを感じた。 「恋」は本質的には「する」ものじゃない。 予期せず落ちるもので、突然で、とても理不尽だ。 社会的恋愛と本質的恋愛を混同するものじゃない。 本質的恋愛は、とてもロマンチックでとても残酷だ。 だから、どの時代においても社会制度が変わっても描かれるのだ。 取材を通して「恋」と一歩距離を置きつつも、「恋」を知り変わっていく主人公が愛しくてしょうがない。 あと、主人公の目が最高。 内容も最高なのだけど、なによりもあのじっとりとした色気のある目。 近年で最推しヒロインかもしれない。 素晴らしい読後感だったので、『ルポルタージュ‐追悼記事‐』での続きを楽しみにしている。

白米からは逃げられぬ ~ドイツでつくる日本食、いつも何かがそろわない~

海外に住む人は読んで損なし!

白米からは逃げられぬ ~ドイツでつくる日本食、いつも何かがそろわない~ 白乃雪
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

現在海外にいる日本人、これから海外に行く日本人が読むべき漫画! ドイツ人の旦那の元に嫁いだ日本人漫画家が、ドイツで欲しい食材が手に入らないのをどうにかこうにか他のもので代用しようというという試行錯誤が楽しい漫画だ。 かつて海外にいた日本人にとっては共感の嵐! そうか、そうやればよかったのか!という気持ちになる。 というのも、僕は帰国子女だ。 小学校6年生~中学校3年生の多感な時期をベルギーで過ごしたわけだけど、時折たまらなく日本食を食べたい、食べたすぎる~、うお~誰か食わせてくれ~という気分になったものだ。 食わせてくれというのが、義務教育中の甘ったれ感たっぷりなわけだが、この漫画の気分は痛いほど分かるのだ。 特にこの漫画の舞台がドイツということでベルギーと隣国じゃないか!と大興奮した。 わりと食の事情は近いものがあるので、うんうんと頷きながら読んだ。 僕が住んでいた2000年~2004年頃よりは日本食事情が少しましになっているような気がしないでもない・・? 手に入りづらい生魚をアボカドで代用したり、ぶり大根のぶりをぶつ切りのサーモンで代用したり、柚子胡椒をレモンで作ったり、お好み焼きのやまいもを牛乳で代用したり、柿の葉寿司を生ハムで作ったり、もう見てて楽しいし、ちゃんと美味しそう。 帰国子女のみんなー!もしくはこれから海外に行く人ー! これは買うしかないでしょー! 海外で食べるいい日本食マニュアルになります! そして、あらためて日本っていいよなぁという気持ちにもなる! ぜひ!