爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇

モーニングからリトルプレスまで

爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇 森泉岳土
nyae
nyae

森泉さんといえば「爪楊枝で漫画を描く人」ですが、一番最初に掲載されている「最後のフェリー」は初めてボールペンで描いた作品だそうです。 あとがきに「そろそろペンで自分の線を描けそうな気がしたから」とありました。 普段爪楊枝で描いていることに対しては「自分でもよくわからない」と言っているのがなんか笑えました。 通常のマンガ誌に掲載されている読切等は読んだことがあったのですが、文芸誌やアーティスト個人に寄稿したものがあるのは初めて知りました(ランバーロールは読んでいます)。活動範囲が広いというのがわかる短編集です。大林宣彦監督って義理のお父さんなんですね。監督との二人のエピソードを描いた話が好きでした。 タイトルの「爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇」という普通ならどれかひとつの短編タイトルを付けたりするものですが、こういうかたちにしたというのになにか意味がある気がしてなりません。 またこれだけは強く言いたい。紙版を買って読むべし。 作品によって用紙が変えてあり(なのでさわり心地も違う)、ただお金がかかっているなという高級な感じはなく、リトルプレスのような自由さがあります。 ▼こんな感じ

ダークマスター オトナの漫画 完全版

コテコテの刹那の連打!!連打!!

ダークマスター オトナの漫画 完全版 狩撫麻礼 泉晴紀
ひさぴよ
ひさぴよ

狩撫麻礼&泉晴紀のタッグによる25編、560ページ超に及ぶ分厚い短編集です。 (連載時の名義はダークマター、泉レッドドラゴン) 狩撫麻礼さんの没後に刊行された完全版になります。 中身としてはオチがなくて意味がよく分からない話もありましたが、泉晴紀先生のギャグっぽい作画がハマってる所もあり、楽しめた話とそうでない話が半々くらい。 ーーーー 特に好きな短編 「ダークマスター」 表題作。味は良いが、店主の性格に難があって繁盛しない店を他人に任せることになり、店主の代わりになんでもやらせてしまう話。何を表現しているかは言わずもがなです。オチはないけど面白いっ。 「ミッションあるいは伝道」 高齢化した個人商店とニートをマッチングさせて、寂れた商店街を復活させようとする男の話。発想は凄い良いけどたぶんうまくいかないと思わせてくれる所が良い。 「眠らぬ男」 オチの秀逸さでは「オッパイ説」か、この話が一番好きですね。ネタバレできない面白さ。 ーーーー 話のバリエーションは多いので、昔からの狩撫麻礼ファンに限らず、「世にも奇妙な物語」のような不可思議な話、刹那的なショートストーリーが好きな方なら楽しめる短編集だと思います。

本場ぢょしこうマニュアル

80年代女子校の日常

本場ぢょしこうマニュアル 有間しのぶ
無用ノスケ子
無用ノスケ子

「その女、ジルバ」で手塚治虫文化賞を受賞した有間しのぶ先生のデビュー作。デビュー雑誌はヤングマガジンだったんですね。しかも、2巻で「作者は女子高校を卒業して大学生になりましたが」とありますので、もしかしてデビュー当時は現役女子高校生だったのでしょうか!?驚きです。1982年から8年間に及ぶ長期連載だったそうですが、青年誌で女子校日常マンガなんて、当時のヤンマガ読者さんに受け入れられていたのか気になります。絵について少し触れますけど、大変失礼ながら絵はほとんどノートに描いたような絵でした…。(漫画原稿用紙でもない?)トーンも使われてないようで、落書きにしか見えないコマもありました(←ホント失礼!)でも、絵がどうこうより、漫画に描かれている人達が面白いんです。淡々と学校や周りの出来事を描いてるように見えて、実に多種多様な生徒たちが漫画に登場します。よくある思春期の一コマであっても、一人ひとりの内面に踏み込んで描かれています。だからギャグ漫画なのにどこか嘘っぽくなくて、その人の本音を感じるのです。このような人間への観察力・洞察力こそが、有間しのぶ先生の凄いところなのだなあと思いました。

春爛漫

本宮ひろ志の半自伝的マンガ

春爛漫 本宮ひろ志
マンガトリツカレ男
マンガトリツカレ男

これ最初の方は読んだことあって確か「少年ジャンプ愛読者賞」に掲載されていたと思う。主人公である本宮ひろ志が編集者に漫画を書くには「インテリジェンスが必要」と言われたあたりで終わってたと思うが続編があったことを知った。 最初のは学生自体の悪さと自衛隊のエピソードがメイン。特にすごいのが本宮ひろ志の父親が某宗教信者であり本宮ひろ志の友達を勧誘しようとする話だがこれを少年誌に載せたのがすごい話だ。 「インテリジェンスが必要」といわれたあとを後半とすると、どうも掲載雑誌が変わったのか青年誌向けのシーンが多くなったりするが、漫画家のアシスタントやヤクザの見習いなどをやりながら生活をしていくが最終的にはヤクザの見習いをやめることになる。中学時代の悪友たち言われてマンガを書きはじめて「男一匹番長列伝」の連載が始まる。どんどん人気が出て行きアニメ化までされているがこの後思いっきり実話っぽいエピソードが入る。 少年ダンプの三周年記念パーティで大先輩の漫画家たちに 「はっきりいって好かんな きみの漫画」 「まったくですなあぼくたちが何十年もかかって少しづつマンガを向上させたのがあのガラの悪い漫画で5・6年は後退してしまったよ」 「なんといってもインテリジェンスこれがまるで感じられんよ」などむちゃくちゃ言われていた。その後のスピーチでやり返すのだがすごい実話っぽさを感じた。 男一匹漫画大将もいいけどこっちもすごいよかった

きょうも厄日です

息の長いシリーズになってほしい #1巻応援

きょうも厄日です 山本さほ
無用ノスケ子
無用ノスケ子

何かとトラブルを引き寄せてしまう作者の実体験を綴ったエッセイ。子供時代から最近の出来事まで、いろんな"厄"をユーモアたっぷりに表現されています。厄日の話ばかりでなく、友人の話だったり、ちょっとした恋愛話(厄あり)も入ってきます。私のお気に入りは、整骨院のおじさんの話。この話、何回読んでも笑ってしまいます。行けるところまで行ってしまう作者も相当おかしいのがよく分かるエピソードでした。漫画家の友人、おぎぬまXさんの登場回はマンガ好き必見で、おぎぬまXさんがいかにして29年ぶりの赤塚賞に入選したのか、実際にどういう人物なのか、この漫画を通して知りました。そして、特別編として収録されている世田谷区役所編。Twitterで話題になり知ってる方も多いと思いますが、世田谷区役所を相手に、三軒茶屋にある「まんがの図書館ガリレオ」を巻き込んだ大騒動を漫画にしたものです。詳細は読んで頂くとして、「描く。今日の出来事マンガにする」と並々ならぬ決意をした時の山本さほさんに痺れます。文春オンラインで、まだまだ連載中の作品ですので、この先も息の長いシリーズになってくれたら嬉しいですね。