ドミトリーや民泊ではなくパリにお部屋を借りて1ヶ月滞在する様子を描いた旅エッセイ。2冊あるうちこちらは「計画・空港(羽田)・機内食・滞在中・帰国」と、旅の全行程を描いたものになります。 たしかに1ヶ月滞在するなら自炊したほうが経済的…とはいえそれを実行できるのはすごい! 買ったフルーツの味が予想外でサラダに使うというシーンに旅の醍醐味を感じました(予想外のトラブルを工夫でなんとかするのは旅ならではの楽しみですよね) にしうら先生が描くご飯や街並みや人々がとても細かく可愛らしく、見ててキュンとしました…! また最初の方に登場した「旅に持っていったもの一覧」がイラスト付きで非常にわかりやすくて、これをスマホに用意しておけば長期海外旅行の準備は完璧じゃないか…!と感動しました。今度海外に行くときに使います!(いつになるかはわかりませんが) 「パリには19世紀に設置された公共の水飲み場がたくさんある」というのを初めて知ったので、次にパリに行ったら(いつになるかはわかりませんが……)ぜひ探してみようと思います♫ https://note.com/_some/n/n868ba0c59f25
海辺に暮らす女子高生と、彼女を喰べたい人魚が出会う物語。グロそうな内容にも関わらず、流麗な絵が心地良い。 水面が煌き、纏わり付く水泡が美しい光景の中で、主人公は生きる気力が無い。それ故に人魚に食べられると分かっても、それを受け入れている。無力感と水の浮遊感が絶妙にリンクして、厭世的な気分を共有出来る。 そんな彼女を「喰べ頃」まで守るという人魚は、同じ高校の生徒となる。活きの良い状態にしたい人魚に健康を気遣われ、主人公は元気になるのか?そして食べられる時、まだ死を受け入れられるのか? この無気力な浮遊感に癒されながら、様々な謎が明かされる時を待ちたい。 (愛媛県伊予がモデルとの事ですが、同じ愛媛の『熱帯魚は雪に焦がれる』の様な美しい海辺の光景が見られます)
急坂に幾重にも住宅が重なり、細い階段が複雑に続く町。懐かしい反面、廃れつつあるそこには心霊スポットが点在している。新聞部の女子はクラスの転校生女子を伴って、町の心霊スポットを取材して回る。 階段や廃墟好きな私にはどストライクなこの作品。ごちゃごちゃして、陰鬱としていて少し怖くて、退廃感が美しい。 心霊の謎を解く二人だが、転校生はどこか儚げで、古い風景に溶け込んでしまいそう。教室では接点の無い二人が、放課後だけ共に探索を楽しむ様子は楽しそうなのに、何処までも存在の不安が付き纏う。 心通わす二人の時間が、どうか消えないでと願ってしまう。楽しさの中に切なさを漂わせる作品だ。
フードコートでダベる二人の様子を、ただ眺めるこの作品。会話劇の面白さに全く飽きが来ない。 お嬢っぽい和田とギャルっぽい山本。素の顔を見せ合う二人は親友。山本の聡明さとカッコよさも意外すぎるのだが、見ていて面白いのは、カワイイ和田の変顔。これが良い顔するんだ……。 考える事もアホで結構下衆い事を言う和田。それを気怠げに山本が受け止め、突っ込む会話は不思議なテンポの漫才みたいで、横で聴いていたい心地良さ。 ズケズケ言い合う二人の信頼関係も随所に示され、至高のロマンシス。例えば親友同士の同居物語『伊勢さんと志摩さん』と併せて読むと、幸せになれるかも。
※ネタバレを含むクチコミです。
私はミステリー漫画の登場人物が「顔が良い」と、結構読める。美しい顔が恐怖にor暗い本性に歪むのも、沈んだ顔が美しい笑顔を取り戻す瞬間も堪らないのだが、それが劇画調だと、怖すぎる(なので金田一少年とか好きです)。 本作の凛々しい主人公も、彼女が憧れ、守ろうとする手弱女ぶりなヒロインも、周囲の協力者達も、美しい女性ばかり。その誘引力は強い。 彼女達を襲う怪異は、タイトルの通り「件」と呼ばれる〈予知〉の妖怪をベースとした物。そこにとある都市伝説を加える事で、迫り来る恐怖のある怪異を創作している。 ヒロインに迫るタイムリミット。怪異の「真相」を巡る物語はスリリング。九段下を舞台とした女性ばかりのミステリーは、美しく楽しい一冊だ。 【ゲームについて教えてください】 こちらの原作はゲームなのですが、ストーリー部分はこの漫画を読んでもネタバレとか大丈夫なのでしょうか?私はゲームやらないので良いのですが……。 それにしてもキャラクター原案はイラストレーターのはねことさんで、ゲームビジュアルは非常に美しいのですが、煮汁先生の漫画は全く遜色なく美しい。漫画としての勢いもあって、楽しく読めました。
困難な恋ほど、応援したくなるし、成就する瞬間の多幸感ヤバいですよね? 本作の主人公JKは、子供の頃から女好き。しかも決まって年上とくれば、その困難さは生半可では無い。 主人公が友人男子から、彼の母親のカフェについて相談を受ける所から始まる物語。彼の母親に秒で恋に落ちたJK、戸惑いながらもアタック開始! ……とはいえいきなりアプローチも出来ず、まずは息子の方からアプローチした為、かなりややこしい事に。この辺は男子がいい奴なので、あまり誰も傷付かないコメディとして安心して読めます。 それにしてももどかしい二人の距離。少しずつの偶然がどの様な展開をもたらすか……ぽんやり系美人ママとクール系JKのとてもしっくりくるツーショットと共に、ドキドキしながら楽しもう!こういう恋物語を読めるから、百合はやめらんねえ!と思える筈。
Amazonでレシピ本を見ているときに見つけて一目惚れして買ってしまったのがこのマンガ! 著者・杏耶さんのご実家の冷蔵庫には常時30個以上タマゴがストックされているのだとか…! 絵が本当に可愛くて美味しそうで見てるだけでうっとりしちゃいます🥺 https://twitter.com/ayatanponpon/status/1130091831696322566?s=20 その中で一番作りたいのがダブルタマゴサンド…! 厚焼き玉子を挟んだサンドイッチって見ると胸がキュンとしますよね…不思議。 なんとなく疲れが貯まっているときに読むと、カラフルな色合いと美味しそうなご飯に癒やされる一冊です。#1巻応援
ロシアの怪しげな組織が産み出した生物兵器を載せた船が事故を起こし、北海道に漂着するところから物語は始まる。まずは冒頭のプロローグを読んでみてほしい。とにかく掴みがバッチリな導入である。人間の都合で捕まえられ、勝手に改造され、売られようとしている動物たち。セリフはなくとも伝わるものがある。シムグルは凶暴でありながら、神聖で荘厳な風格を持って登場する。そして少しだけ猫らしい可愛らしさも残されていて憎めない。シグムルを中心に一癖も二癖もある動物たちが揃っており、(特に「ナマケモノ」は要注目。)言葉をかわさずに一致団結して反旗を翻すのだ。なぜ北海道で罪のない人たちを襲うのか?と思ったりもするが、怒りと本能のままに人間を次々と襲う動物たちを見ていると、細かいことは忘れて解放感すら感じるから不思議だ。#1巻応援
高校生の花井チカは同級生の君嶋に告白され、付き合うことになる。 しかし実は彼女は、人に対して"恋愛感情"というものを持ったことがなく、仲の良かった君嶋に対してもその"一線"を超えることができず、結果的に別れることになってしまう。 その後、大学の心理学部に進学した彼女は、ある教授との出会いから"恋愛感情"がわからない自分自身がどういう存在なのかを見つめ直し始める、という物語。 「恋愛感情がわからない」という説明で気付く人もいるかもしれないが、この作品はいわゆる「アセクシャル」をテーマとして暑かった作品。 しかし、主人公のチカが「アセクシャル」なのかと聞かれると、すぐには首肯できない作品でもある。 作中でも「アセクシャル(無性愛者)」とは「性別を問わず他社に対する性的な欲求を持たず、関心や欲求を抱かない人」という説明があり、チカも自身がこの説明と合致するという印象を抱いている。 しかし、チカは「自分がアセクシャルなのかどうか」という過程を通り、さらにその先の「自分がどういう人間なのか」という部分にまで考えを巡らせるようになる。 セクシャルマイノリティを扱う作品では、それぞれの"定義"というものが存在しているがためにその"定義"に沿った人物像という形で描かれやすく、実はそれは「男らしさ」「女らしさ」のような、本来セクシャルマイノリティとは対局に位置するはずの考え方に近づいてしまっているのかもしれない。 この作品では、登場人物が自らをセクシャルマイノリティという定義の枠組みに当て嵌めていくのではなく、定義を知ることで逆に自身がどういうアイデンティティを持っているのかを丁寧に因数分解して見つめ直すという過程が描かれていて、"定義"よりも"個"としての存在を大切に描いているような印象を受ける。 『性別X』などのエッセイマンガでは"定義"を説明しながらその定義に当て嵌まらない人も実際にはいるという説明が著者の実体験に沿う形で描かれることも多いが、もしかしたらこの作品はそういう意味でリアルに近い形でフィクションとしてキャラクターの成長の過程を描いている稀有な作品なのかもしれない。
接客の仕事をしたことがある人はもれなく、ある!いる!わかる!!を味わうことができる漫画です。また、こんなご時世だからこそ、リアル書店にしかない魅力をこれを読んで知ってほしい。 私は書店バイトの経験があるので読んでいると当時の思い出がよみがえります。カバー作るのとかラッピングとかシュリンクとか段ボール縛るのとか付録付けとか、やったなあ…。 これを読んで本屋で働きたいって思う人絶対いると思います。本が好きだったら、本屋で働くのがいちばんいいです。 たまにやけに特徴的に描かれた客が出てくるんですが、作者の方が現役書店員さんということもあり、多分この人は実在するんだろうなと思うと笑ってしまいます。めんどい客が来たら逃げるところとかも良いですね。気持ちすごくわかる。 2巻以降も続いてくれることを願って、#1巻応援。
おりたたみ自転車を買った作者が、輪行で行動範囲を広げて行くエッセイ。私は絵の愛らしさに惹かれて購入したのですが、内容にも心が洗われました。 近所のカフェから最終的にはしまなみ海道まで……えっしまなみ海道おりたたみで走れるの?様々な所へ行けてしまう自由さを手に入れる感覚は、例えば『渡り鳥とカタツムリ』と近い開放感。 散歩物としても、味のある背景絵と写真を交互に見せて楽しい。おりたたみ自転車の情報も得られますが充分ではないので、もっと詳しい『おりたたぶ』で補いたいところ。 おりたたみ自転車のある、楽しい生活を提案してくれる一冊です。
辺境の地を旅するラル・ビエントとジレ・クラッヒトの2人組。 彼らは「聖府」の命により諸国各地を周って伝承を蒐集・検証し、史実と比較しながら「聖誌」の編纂を行っていました。 この作品はそんな2人が各国で伝承にまつわる事件と出会を様子を描く作品です この作品は架空の世界を舞台にした、俗に言う「ハイ・ファンタジー」でありながら、その世界における各国の歴史や伝承に触れながら物語が進んでいく、 歴史ファンタジーのような雰囲気も帯びている作品です。 そして 岩石地帯や草原を基本とする風景に人々が纏う架空の民族衣装、 さらに竜や鳥獣などの架空生物を高い画力で描き出すことによってその世界観を生み出しています。 ラルとジレが立ち寄った国ごとに物語が描かれる1話完結型の作品ですが、1つのエピソードに数話を費やして描かれており非常に読み応えのある作品です。 また 2人の表向きの目的は「聖誌」の編纂ですが、どうやら裏に別の目的があるようで 物語が進むにつれてさらに壮大な物語になっていくことも予感させます。 1巻まで読了
舞台は聖なる泉から生まれる子供を魔女になるまで育てている、盃島という空に浮かぶ島。 300年続くこの島では魔法学校に通う魔女見習いたちが年に1度の祭りの準備に勤しんでいました。 しかし、穏やかな時間が流れていたこの島は、その祭りの日に15人の魔女見習いを残してその歴史に幕を下ろすことになる、という物語です。 島の中で育ち、外の世界を全く知らなかった魔女見習いたちが一夜にして故郷を追いやられることになるという導入から始まる、苛烈な世界観の作品です。 タイトルからも『十五少年漂流記』のオマージュであることが感じられ、ここから彼女たちが力を合わせて生き残っていく様子を描いていくのだと思うのですが、この作品はそれだけではなく、彼女たち(正確には"魔女たち")の「加害者」としての側面も描いていきます。 ここに盃島が滅ぶことになった理由が隠されていそうですが、故郷を追われた魔女見習いたちがいかにその事実を知ることになるのか、単純な物語では終わらない深い世界設定が伺える作品です。 1巻まで読了
どんな時もクールかつ事務的に仕事をこなすことから「氷鉄の女」というあだ名で呼ばれるOL・吉永奈央。 ただ、彼女はもうすぐ会社をやめて地元に帰る予定でいました。 そんなある日彼女は、先輩の男性社員たちが自分を落とせるかの賭けをしようと彼女の同期・里村紘一に無理やり告白させる相談をしているのを聞いてしまいます。 本来なら先輩たちに怒るべきところなのですが、実は吉永は長年密かに里村に片思いをしていて、その賭けの通りに里村に告白してもらい、地元に帰るまでの思い出として彼との交際を楽しめればいいと考えていました。 その後 実際に里村が吉永に告白し 吉永がOKすることで交際が始まりますが、吉永は里村が先輩たちの賭けに付き合わされていることを知っているため、里村が自分に好意を持ってるわけではないという考えが根底にある中で純粋な気持ちで交際を楽しもうとします。 一方の里村は 最初は吉永に対する後ろめたさのほうが強いのですが、少しずつ彼女に好意があるかのような振る舞いを見せるようになります。 そんな"どうしようもない賭け"から始まった2人の交際が時間が経つにつれてどう変化していくのかを描く作品です。 1巻まで読了
マスクをしていると美しい見た目をしているが、「私、綺麗?」とマスクを外すと耳元まで大きく裂けた口が露わになり、それを見た誰もが恐怖するという伝説の怪異「口裂け女」。 しかし、口裂け女が世間を騒がせていたのは1979年ごろのこと。 伝承としての信憑性が失われるほど口裂け女の怪異としての存在も徐々に薄れていってしまいます。 この作品はそんな「口裂け女」のみろくが、自身の力を取り戻すため怪異の逸話を管理する人間の一族「茶乃家」の当主である17歳の高校生・紅一に嫁ぐことになるという物語です。 ただ、みろく本人はこの結婚に納得しておらず、自身の力だけで力を取り戻すためにこの結婚を破談にしようと企みます。 そのために紅一に「彼が18歳になるまでに一度でも彼を怖がらせることができれば婚約を破棄してもらう」という賭けを提案します。 普通なら乗る必要のない賭けなのですが、なぜか紅一はこの賭けに乗り気です。 というのも、この縁談、自身に力を取り戻させるための政略結婚だとみろくは思っていましたが、実は紅一のほうは縁談とは関係ないところで元々みろくに惚れていて、この1年の間で逆にみろくのほうを口説き落としてみせると宣言します。 みろくが紅一のことを"恐怖に落とす"のが先か、それとも紅一がみろくを"恋に落とす"のが先か、という賭けの上に成り立つ、人間と口裂け女の不思議な結婚生活が始まります。 1巻まで読了
舞台は都立文永高校の麻雀部。 高校生プロ雀士である白鳥正宗は、後輩の一色麗花の打ち方を見て彼女がかなりの実力者だと感じていて、部活で麻雀を打っている最中も彼女のプレーの意図や思考について色々と尋ねてきます。 しかし、一色さんの麻雀の実力は白鳥が思うほど高いわけではありません。 というのも、彼女はテレビ対局で見た白鳥に憧れて麻雀を始め、プロの対局から学んだ麻雀中の所作は上級者そのものなのですが、肝心の麻雀のほうはまだまだ練習不足。 そのため、白鳥先輩の質問に対しても、本当は偶然いい結果が出ただけなのに、あたかも自分が意図して打牌したような"うまぶり"の答え方をしてしまいます。 この作品はそんな"うまぶり"で必死に自分の実力を隠しつつ、白鳥先輩に興味を持ってもらおうとする一色さんを描くラブコメ作品です。 高校生プロ雀士である白鳥先輩の麻雀に対する思考は非常に深く、一見違和感のある一色さんの打牌に対しても合理的な理屈を見つけてきます。 なので作中の麻雀の描写はラブコメマンガとは思えないほど高度なものになっています。 しかし一色さんは白鳥先輩が考えるような高度な思考ができておらず、いろいろ考えているフリをしてなんとか"うまぶろう"とします。 この「偶然起こった展開をさも自分の意図したものだと振る舞う」という表現はマインドスポーツの中でも偶然の要素の強い麻雀ならではのもので、一色さんの実力を過大評価する白鳥先輩と"うまぶる"ことでなんとかごまかそうとする一色さんの様子を2人の関係性として見事にラブコメに昇華している作品です。 この作品は これまでの麻雀マンガで表現されていた高度な戦術論をラブコメという形に落とし込んだ、まさに"ハイブリッドな作品"と言えるのではないでしょうか。 1巻まで読了
『綺麗にしてもらえますか。』では熱海の穏やかで美しい光景を描く、はっとりみつる先生。同時連載中のこの『かいじゅう色の島』ではもう少し荒々しく大きい、しかし美しい光景を描き、そこに二つの孤独を描写する。 離島に暮らす少女・棔(こん)と、家出少女の歩流夏(ふるか)。ぼっちの二人はまた、「普通の」恋が出来ない事も共通していた。 アワビの貝殻が供えられる社の前で、互いを知り、友達を一足飛びに近づく距離。発現する「かいじゅう」の不思議な力に包まれて、洞窟で触れ合い、睦み合う二人。 荒々しい波、磯、剥き出しの鳥居。優しくは無い場所で、二人の描線だけが柔らかい。 切なく苦しい世界で、二人はようやく見つけたお互いの幸せを願うことしか出来ない。二人はかいじゅうの生贄なのか、いつか引き離される時が来るのか……切なさが大きいからこそ、小さな幸せも、とてつもなく大きくなる。
本作は作者の「苦しみ」と解放のノンフィクションです。 性的マイノリティとしての苦難を描くのですが、その苦難とは何かと言えば、 ①肉体的苦痛・違和感 ②社会=人間関係からの精神的苦痛 ①についても具体的に、生々しく語られて抉られるのですが、冒頭から印象的に語られるのは②について。 同志と思っていた人の裏切り、仲間を探しに行った先での疎外感、過去に受けた裏切りなどの歴史が語られます。性的マイノリティの間でも居場所を得て安心することが難しかった「陰キャ」の作者の呪詛が、かなり明け透けに語られる。この恨み節には性的マイノリティだけではなく、「陰キャ」同志も同調できると思います(私にも響いた)。 切ない思い出と「陰キャ」の為の恨み節は、実は意外と広い賛同を得られるのではないか。そしてそこをきっかけに、(性に限らない)多様性への理解と、そこへと開かれた表現の可能性も広がるのではないか、とも思うのです。 自らの性交渉について諦めている「レズビアンではない」作者が、戦前の「エス文学」に救いを求め、美しい百合御伽噺を創作した第9話は「百合」の本質を明瞭に解き明かしている。そしてそれは、何故マイノリティの為の物語が必要か、という事……潜在的読者がどれだけいるのか、という事への回答だと言えるでしょう。
新刊ページで見つけて値段見てみたら220円だったので買ってみました(※各巻約20ページ)。そしたらメッッッチャいいじゃないですかこれ…!!すごく好きなやつでした! 正直本編を読む前は 「何でもない街を精細に描き込み、タイトスカートのOLさんがブラブラ徘徊する、マッタリゆるゆるの癒し系お話です。私の好きなものを詰め込みました。」 というあらすじで、よくある可愛い女の子が何もしない日常漫画かな…とあまり好みじゃなさそうだなと全然期待していなかったのですが、読んでビックリ! よつばと!のような緻密な背景! なんてことない街並みを1人で内心味わう孤独のグルメのようなモノローグ! なんと中身はブラタモリでした。最高〜〜!! https://twitter.com/yanmura/status/1186292824972521477?s=20 もっと言うと、「ブラタモリみたいにマニアックな視点で街歩きをしつつ、そこからアカデミックな部分を抜いて、街並みを眺めて自分が『いい…!』と趣を感じる心を大事にするお散歩」という感じ。 自分もこれよくやるので仲間がいる〜!! と読んでいて嬉しくなってしまいました。 これ絶対鉄筋入ってないだろみたいなブロック塀とか、玄関と公道がゼロ距離で家の壁に沿って植木鉢並べてる平屋とか大好きで、街中で見つけると「うわ〜、いい…!」って見ちゃうんですよね。 シーズン1の主人公女子アナ・早乙女さんの萌えは、早乙女さんが「スパッとハウス」と呼ぶ元長屋をぶった切って、一部だけ駐車場にしたりリノベーションした建物。 これ今度散歩するとき絶対探しちゃう…! 何よりこの漫画に共感したのが、早乙女さんがスパッとハウスの写真をSNSに上げないところ。 決して映えないし万人には理解されない風景でも、自分は確かにそこに趣を感じたから撮った写真。自分が好きで「いい」と思ってるから、他人からの「いいね」は別にいらないんですよね。 4巻からはシーズン2となり、主人公は親が再婚して高校生の妹ができたサラリーマンの来人に。 いきなり出来た女子高生の妹・美里という存在に戸惑いながらも、歩くのが好きだという美里に付いて行き、自分が「なにも見るものがない」と思っている地元・尾張瀬戸を美里の視点で見て回る。 この2人の距離感がすっっごくいい…! こういう義理の兄妹ものっていきなりゼロ距離でベタベタするエッチなJKが出てきがちですが、こちらはあくまで現実的な壁のある距離感。 特に来人のJK相手にキョドるわけでもなく、「あのお邪魔じゃなければついていってもいいですか?」大人に接するのと同じようにとても丁寧な言葉遣いで接しているところが素敵でした。 2人散歩の続きが早く読みたい! こちらの作品は漫画家の背景アシスタントをしているというやんむら先生の同人作品のようなのですが、大手出版社で連載始めればメチャクチャ人気出ると思います…! 月スピとかモーツーとかに載っててほしい。 というか本当に背景がうますぎる…これ写真加工じゃなくて描いてるんですよね? すごすぎる…。 あっという間にファンになりぜひ応援したいので全然1巻出たばかりじゃないんですけどマンバの「#1巻応援」タグで応援させてください。 いい漫画に出会えてよかった〜!
小さいころからミュージシャンになるのが夢だった主人公の葵。 しかし、夢を叶えることができないまま時間だけが過ぎ、彼女は自分に才能がないと気付きながらも現状から抜け出せず、体を売るという"仕事"ことでお金を稼ぎつつショーパブのような酒場で歌うという日々を送っていました そんなある日、"仕事"で謎の研究所のような施設に呼ばれた葵は、依頼主に「プレイを見せてほしい」と言われ、相手としてその依頼主が開発している"恋人型アンドロイド"のゆいを差し向けられます。 そこで一瞬、依頼主が離れて2人きりになる瞬間が生まれるのですが、その時 ゆいに「助けて」と囁かれます。 すぐに依頼主が戻って来たためその場では行動ができなかったものの、葵はゆいに心惹かれてしまう、という導入の物語です この導入からは夢破れた女性とアンドロイドの逃避行が始まりそうな予感がするのですが、どうやらこの作品はそんなにシンプルに物語は展開指定化なさそうなのです。 葵は相手がアンドロイドだということを理解しながらも相手をしていくうちに少しずつゆいに惹かれていくのですが、実はゆいが葵に対して語りかける言葉にはある"ウラ"があり、そうとは知らない葵の心は彼女の言葉にどんどん惑わされていきます。 さらに、この作品の重要な要素として「夢と現実」というキーワードがあるのですが、「葵のミュージシャンになる夢とそれが叶っていない現実」という序盤に登場した要素だけではなく、もう1つ、異なる意味での「夢と現実」という要素が登場し、そしてそのどちらもが葵を苦しめる要因になっていきます 2つの意味での「夢と現実」、そしてゆいの存在によって狂わされていく葵の人生が今後どのような道を辿っていくのか、最後まで目が話せない作品です。 上巻まで読了
家事万能のJK・明莉と大手メーカー勤務・塔子の同居物語。この作品で際立つのは、塔子の規格外の……何というか、ヒキョーさ。 家事が苦手でだらしがない、汚部屋在住裸族の塔子。しかし仕事時のスーツ姿はキリッとしてギャップが凄い……と言いつつそんなにオンオフに違和感がないのは、顔が良いせい?どちらの姿も良い〜良いよぉ〜と思ってしまう。ズルい。 そんな塔子に、明莉も翻弄される。妙に距離が近かったり、大量に残された女性物にモヤモヤしたり……そして何で○○されたの?と悩み続ける事に。 この大人の女、JKには荷が重くない? 1巻最後に、塔子の大きな秘密の一つが明かされる。これはもう、明莉も意識しない訳にはいかない!築いた家族としての信頼関係が、どんな心に生まれ変わるのか、ここからが本番だ!
舞台は杉並区にあるアニメ制作会社・スタジオアシタ。 ある日、原画マンの佐倉美代音が仕事の合間にコンビニに寄り戻ってくると、スタジオで仕事をしていた同僚が全員いなくなっており、その代わりに謎の女の子が一人佇んでいました。 自分のことを"召喚士"だというその少女・ソフィーに話を聞いているうちに、どうやら会社のスタッフ全員が逆に異世界のほうに転移させられたらしい、ということが判明します。 スタッフたちは転生先で救世主として世界を救わなければ戻ってこられないらしく、佐倉はソフィーと彼女が異世界から召喚した"戦力"を頼りに会社の運営を継続するために奮闘するという作品です。 何十人もいたスタッフが全員いなくなって会社は大ピンチなわけなのですが、ソフィーの魔法で映像を投射することで向こうの世界となんとか意思疎通だけはできるようで、佐倉は逐一連絡を取りながらなんとか仕事を回そうと奮闘します。 元々アニメーターとしては有能な部類であった佐倉ですが、当然1人ではアニメ制作はできません。 そんな中で、ソフィーが召喚する異世界生物たちが予想外の働きを見せて、なんだかんだ仕事が上手く回っていきます。 異世界からの転移がテーマの作品ですがお仕事モノとしても充分に完成されている作品で、そこに異世界生物がアニメ制作の仕事を頑張る様子や異世界に転生したスタッフたちが意外と向こうの世界に馴染んでいる様子など様々な要素が加わっているので、楽しめるポイントがたくさんある作品です 1巻まで読了
大学に入学し下宿を始めた主人公の緑 暖(みどり だん)。 入学直後の校内である女の子に一目惚れした彼でしたが、その日の夜 下宿に帰った時 その女の子・丘野奈々が自分の下宿の真向かいの部屋に住んでいることに気付きます。 この作品はそんな暖が奈々とお近づきになりたいと思いつつ、気付かぬ間にすれ違ったり、時々出会ったりしながら大学生活を送る物語です。 GANMA!で1日1ページずつ更新されていた作品で、作中時間も1ページあたり1日が経過するので、通して読むと暖の大学生活をそのまま追いかけているような気分になれる作品です。 その中で暖が微妙な時間差で奈々とすれ違ったり、下宿の管理人が買っている猫がお互いの家に遊びに行ったりする様子から、2人が気付かないうちに"同じ時間"を共有していることが分かります。 さらに大学生活のモラトリアムの中で周囲の人々も巻き込んで、次第に幸せな空間が広がっていく、そんな作品です。 単行本としては3/1に電子書籍のみという形で発売されていて、表紙にはナンバリングがありますが全1巻の作品だそうです。 300ページを超える大ボリュームな作品ながら基本は1日1ページの4コママンガで構成されているため、テンポよく読み進められる作品です。
ドミトリーや民泊ではなくパリにお部屋を借りて1ヶ月滞在する様子を描いた旅エッセイ。2冊あるうちこちらは「計画・空港(羽田)・機内食・滞在中・帰国」と、旅の全行程を描いたものになります。 たしかに1ヶ月滞在するなら自炊したほうが経済的…とはいえそれを実行できるのはすごい! 買ったフルーツの味が予想外でサラダに使うというシーンに旅の醍醐味を感じました(予想外のトラブルを工夫でなんとかするのは旅ならではの楽しみですよね) にしうら先生が描くご飯や街並みや人々がとても細かく可愛らしく、見ててキュンとしました…! また最初の方に登場した「旅に持っていったもの一覧」がイラスト付きで非常にわかりやすくて、これをスマホに用意しておけば長期海外旅行の準備は完璧じゃないか…!と感動しました。今度海外に行くときに使います!(いつになるかはわかりませんが) 「パリには19世紀に設置された公共の水飲み場がたくさんある」というのを初めて知ったので、次にパリに行ったら(いつになるかはわかりませんが……)ぜひ探してみようと思います♫ https://note.com/_some/n/n868ba0c59f25