ヲトメは義母に恋してる

義母子?百合コメの複雑さ #1巻応援

ヲトメは義母に恋してる 桐原小鳥
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

非常に発育が良い中学一年生が、子供の様な外見の成人女性と暮らし始めるこの物語。可愛い物好きなのに似合わない少女の悩みと、幼い容姿のせいで人に侮られがちな女性の悩みが並べ語られるのが印象的です。 ジェンダーへの違和等で無くても外見と内面の違和感は、多かれ少なかれ様々な人が抱くのかも知れないと、思いがけず気付かされる本書。他にも様々な複雑さと痛みが、優しさと共に描かれます。 主人公の鈴(りん)は、父が連れてきた再婚候補・寿々(すず)の愛らしさと、鈴に寄り添う心に絆され、寿々に初めての恋をする。 鈴が寿々と共に初めて過ごす「カワイイ」「女子らしい」時間。父親には難しい「女子の成長」に寿々が優しく対応するのも頼もしい。しかしそんな中で鈴の寿々への恋心は募り、でも寿々は父が好きだし……という鈴の心の揺れは切ない。 父は真摯で良い人なのですが、それが却って混乱を起こし、寿々が傷つく。そこで鈴の取る選択からは今後も鈴が苦しみ続ける姿しか想像できないのですが、全体的に温かなテイストの本書。優しさと複雑さの物語がどの様に紡がれて行くのか、期待したいと思います。 ※この作品は「マンバ通信」で芳文社四コマについて執筆されている、えむさんにTwitterで教えて頂きました。ありがとうございました!

死んでから本気出す

いじめられっ子が死んで幽霊になったら最強だった件 #1巻応援

死んでから本気出す 橋本くらら
sogor25
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学校でいじめに遭っていた15歳の高井瀬奈はある日、車道に飛び出したネコを助けようとしてトラックに轢かれてしまいます。 すると次の瞬間、目の前に"霊界の案内人"と名乗る少女・ファミリアが現れて、瀬奈が死んで幽霊になったのだと追われます。 ファミリア曰く、瀬奈には人間を驚かせる"幽霊の才能"があるらしく、そこで彼女は瀬奈にあるミッションを提案します。 それが「四十九日の間に100人の人間を驚かせることができれば異世界に転生させてもらえる」というもの。 そのミッションを聞いた瀬奈は、現世と決別し異世界への転生をするために人間たちを驚かせはじめる、という物語です。 自身がいじめられてきた経験が影響しているのか、驚かせる人間は"悪人"だけと決めて瀬名は行動を始めます。 そのため、序盤では勧善懲悪的な爽快さのある展開が繰り広げられます。 このまま"最凶の幽霊"として無双する瀬奈の様子が描かれるのかと思いきや、どうやらそういうわけではなさそうです。 そこには瀬奈をいじめていた同級生に対する瀬奈自身のトラウマや、現世に遺された母親の存在などがあり、さらに1巻の最後にはこれまでの物語からは想像できない思わぬ展開が加わることで、爽快感だけじゃないストーリーの魅力が生まれている作品です。 1巻まで読了

ヒラエスは旅路の果て

死出の旅路とロマンシス #1巻応援

ヒラエスは旅路の果て 鎌谷悠希
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

試し読みをすると、何だか随分明るい雰囲気で、生死の話をしていても深刻に見えないかもしれません。しかし先を読んでいくと、カジュアルさを纏いながらもそこには切ない思いがあり、胸に来る物語となっています。 親友を亡くした少女が、死期を悟った神様、死ねない男と共に「黄泉比良坂」を目指すお話。三人それぞれの死生観はどうしたって重くなりますが、それを美麗な画面と、かなりズレている三人の楽しい旅が和らげます。 少女がいかに親友への喪失感に苛まれているかが語られる。喪った大切な人への「執着」、そしてその「執着」を失う事への恐怖に、強く共感してしまう。 心に亡き友を想いながら旅をする、という形は例えば『マイ・ブロークン・マリコ』とも似たところがあります。その想いの強さも同様ですが、それは旅の同行者や出会った人によって、変化を起こすのか。それともその重い愛を保ったまま、少女は黄泉の国に辿り着くのか……。 そんなロマンシス(女性同士の愛情にも近い友情)的観点からも、今後読み続けたいと思います。 (勿論、人の視点を超越した神様、死ねない男それぞれの物語も今後注目。男色が描かれるので、百合好きさんはご注意を)

みかん氏短編集 ハッピーエンドはいらない

マイナスの為の百合 #1巻応援

みかん氏短編集 ハッピーエンドはいらない みかん氏
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

何かが傷つく時、壊れる時、失われる時の、隣にいる女性との関係性とエロスを描く短編集。重苦しさの分だけ、訪れる感慨は大きい。 関係性は女性同士ならではの部分もあるが、描かれる感情は昏さ、苦しさ、嫉妬、自己肯定感の低さといった、陰キャの百合男子にも思い当たる「マイナス」な物。 この「美しく無い」と感じる感情が、女性同士の交流と恋(=性欲?)で変化し、或いは肯定され、充足する時の喜び。「ハッピーエンド」もあれば、そうで無いものもある。しかし全ての短編に必ず「救い」がある。 ♡♡♡♡♡ ●好きになるなんてありえない/小学校で虐めていた子と、高校で再開。復讐劇は… ●ハッピーエンドはいらない/お嬢様とメイドの秘密の関係。しかしお嬢様の父の死去で… ●アイなんて知らない/演劇部の先輩の天才に掻き乱される自己肯定感の低い後輩。 ●会社を休んだ日のこと/失恋した幼馴染の絡み酒に付き合う、惚れた弱み。絡めるのは… ●ある会社の彼女たちのこと/行きずりに一夜を共にした女が、私の会社に転職。 ●ハッピーエンドはいらない、その後/後日譚。

おとずれナース ~精神科訪問看護とこころの記録~

患者の"日常"に寄り添う「訪問看護」の物語 #1巻応援

おとずれナース ~精神科訪問看護とこころの記録~ のまり
sogor25
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この作品の主人公は、病院内ではなく実際に患者さんの家を訪れて看護を行う "訪問看護師"として働いている小林さんという女性です。 元々は病院の精神科で働いていた小林さんですが、病院でのある経験を経て、「もっと患者さんに寄り添いたい」という思いから訪問看護師として働き始めました。 この作品はそんな小林さんが様々な患者さんやその家族と向き合っていく様子を描く作品です。 精神科が舞台ということで、作中には様々な疾患を抱える患者さんが登場します。 そして、患者さんの家を実際に訪問する"訪問看護"では、家族も含めた患者さんの"日常"に寄り添うことになります。 ただ仕事をこなすだけではなく、患者さんや家族の気持ちを想像し、その感情に向き合い続けていく、そんな小林さんの様子が描かれていきます。 精神科ということもあり辛い描写や内容も含まれていますが、絵のタッチが柔らかく作品全体に温かい雰囲気があり、だからこそ心に響く物語になっています。 単行本のナンバリングはされていませんが、連載誌のcomicタントではまだ連載が続いているようなので、引き続き応援していきたい作品です。

声の小さい小森さんとクソデカ大声の大林くん

テンプレを越えた優しさ #1巻応援

声の小さい小森さんとクソデカ大声の大林くん べっこうリコ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

声の小さな女子と声の大きな男子の甘々両片想いコメディ。この作品の良さは、〜らしさの「テンプレ」を薄めている所にあると思います。 声の小さな小森さんですが、特にコミュ障とか、オドオドしている感じはありません。笑いもすれば、はっきり気持ちも伝える(声小さくて伝わらないけれど)。 一方、声の大きな大林くん。彼の描かれ方がとても好き。 何って、大きな声なのに、威圧的で無い。 声も体も大きな男って、少し怖かったりするのが現実だし、漫画ではそういう部分はよく「強さ」「ガサツさ」「おおらかさ」と表現されます。しかし大林くんは、声の大きさを自覚して一応気を遣ったり(それでもつい大きくなって驚かれるけれど)小森さんの話を聞く時は黙って耳を澄ましている。性格も優しくて可愛い物が好み。 声が大きいのにカワイイ男の子……割と新しくない? 今までの漫画の「声小さい女=オドオド」「声大きい男=ガサツ」みたいなテンプレが薄れたキャラクターの物語は、全体的に愛らしく、甘々だけれども穏やか。バトルしたりしないフツーの男女の恋物語として、楽しく楽しく読めてしまうのです! 声が小さくて伝わらない系女子と、声が大きくてだだ漏れ系男子。どっちも頑張れ。

キョーダイシャッフル

これまでにない"入れ替わりラブコメ" #1巻応援

キョーダイシャッフル すのはら風香
sogor25
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マンションの隣同士の部屋に住んでいる結崎家と石見家。 結崎家には兄の桐也と妹の梢、石見家には姉の真麻と弟の和馬という同い年の双子がいました。 ある日、桐也と真麻が一緒に帰っているときに真麻が「私 桐也が好き」と告白をしてきます。 しかし桐也は咄嗟にその告白を拒絶してしまいます。 なぜなら…「本当は真麻は桐也の実の妹」だったからです 実はもともとは"桐也と真麻" "梢と和馬"という組み合わせの双子だったのですが、8年前のある日を境に真麻と梢の立場がそっくりそのまま入れ替わってしまったのです。 しかもそのことに気付いているのはなぜか桐也と和馬だけ。 つまり真麻目線では"幼馴染の男の子"である桐也に告白したのですが、桐也目線では"実の妹"に告白されたという不思議なすれ違いが生まれてしまっていたのです。 桐也の中では真麻の存在は"妹"のままなのですが、入れ替わりから8年も経っており、"隣の家の子"として接している時間のほうが長くなってしまったために真麻の告白をどう受け止めればいいのか困惑してしまいます。 本来は兄であるはずの桐也に抱いた真麻の想いは本当に恋なのかどうか、 そもそも入れ替わりは桐也と和馬の妄想や思い違いではないのか、 もし入れ替わりが本当なら この入れ替わった状態がずっと続くのか。 普通の入れ替わりモノでは生まれない複雑な感情に桐也たちが悩まされる、これまでにない作品になっています。 1巻まで読了